今年の映画次第でさらに設定吹っ飛ぶかもしれません。今更でしたね!
いくぞぉ!
「ったくおめぇさんは……ちっとは懲りるってことを覚えろ!」
「は~~~い!」
「……無駄だ、次元。この男の女好きは直らん」
「オメェに言われたくねぇんだよ、五右衛門。あのJKに頭上がらなかったって知ってんだからな俺!」
ルパンの野郎、また不二子に騙されやがって……。
これで何度目になるんだ。いい加減、数えるのも馬鹿らしくなってきたぜ。
「それで、どうするルパン?」
「こっから行動開始か?」
地下金庫までの道を、今度こそ斬鉄剣を手にした五右衛門が屋根からまっすぐ斬り開いてルパンを上まで運んできた。
城のてっぺんから見る光景は綺麗なモンだ。
「もちろん。五右衛門も改めて合流したし、ここからよ」
「……だが、お宝は不二子が持っていってしまったのでは?」
ルパンが地下金庫に忍び込んだ時点ですでに狙っていたお宝、『クイーンズ・クラウン』は盗まれていたという話だ。
ご丁寧にあの女、自分の姿を模した人形の形の爆弾まで用意していたとか。
だからいい加減に不二子とは距離を置けってんだ!
なんだってアイツにまで声をかけたんだ!
「いんや、騒動が起こるのを予測してたあのジラードって公爵が素早くここを包囲しやがった。いくら不二子でも逃げるに逃げられなかったハズさぁ」
「……と、なると?」
「大方お宝持ったまま適当なメイドに変装して紛れ込んでるんじゃねぇかなぁ」
「まだ王宮の中にいるって事か!」
「そういうこと……お、アイツも動き出したか」
ルパンの視線の先を追ってみると、この王宮の警護を任されている兵隊――衛兵が歩いていた。
そのすぐそばには、身ぐるみを剥がされた男が倒れている。いや、その男の側に素早く駆け寄った『影』が二人いた。
「ありゃあ……カリオストロの……」
「カゲか。まさか、透が?」
「いい手際だぜ、ホント。探偵やってるのがもったいねえ」
駆け寄った二人のカゲは、すばやく身ぐるみを剥がされた男――本当の衛兵を担いでどこかに消えていった。
アイツの命令で動いているんなら殺しはしねぇだろうが……。
「まさか、王宮中で入れ替わってるんじゃないだろうな?」
「さすがのデンジャラスボーイでもこの短時間にそこまでの人員は手配できないでしょ。あのジラードとかいう公爵様を追い詰めるための布石って所かな?」
「……なるほど。詰めのための駒か」
王宮内部には基本兵士や警官はいない。
そして銃火器を持ち込むことは禁止されていて、所持できるのは極一部の人間のみ。
ジラードがここでなにかやらかすにしても、用意できる人員は衛兵かSPに絞られる。
で、あの自称探偵ヤロウは、そこを根こそぎ抑えるための一手を打ちやがった。
「トオルの野郎、えげつねぇ真似しやがる」
「ほーんと。これじゃあどうあがいてもあの公爵に勝ち目はないわ。お前らどういう教育したのよ。『先生』に『師匠』なんだろ?」
「どういうって……少なくともこんな真似は一つたりとも教えちゃいねぇ。ちょっとした生きるコツって奴だけだ」
「同じく」
獲物の解体の仕方、食べられる物かどうかの確かめ方にサバイバル術一式に簡単な体調管理のコツとか……みろ、俺はまっとうな先生じゃねぇか!
……いやまぁ、銃を分解させたり組み立てさせたり、撃ち方を教えたりはした。
アイツやけに呑み込みが早いし、拳銃に関しては天性のモノを持ってたからついつい調子に乗っちまったのは否めねぇが――
大体、一番調子に乗ってたのは五右衛門だろう。
アイツ、手裏剣術やら指弾やらを嬉々として叩き込んでやがったからな。
師匠って呼ばれた上に教えたことをすぐに吸収するからよっぽど嬉しかったんだろうが。
「生きるコツねぇ」
「とにかく、あ奴が動くなら派手なことになる。紛れ込むなら今のうちだ、ルパン」
「だな。そんじゃあさっそく……お、ちょうどいいところに」
辺りを見回していたルパンが、ちょうどよく一人で歩いている男を見つける。
あの男とすり代わるつもりなのだろう。
「あぁ、おいルパン」
「なぁに? これからあそこのちょび髭さんに眠ってもらう所なんだけど」
「他にもうろついている連中がいるようだが、そっちはどうするんだ?」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「安室さん、首尾はどう?」
「滞りなく。瀬戸さんが偽の伝令を利用してジラード派の衛兵幹部を全員拘束しました。もう全員こちら側の人員と入れ替わってる」
「瑞紀ちゃんなら、当然皆の顔も?」
「変装させていました。目の前で見ても変装と分かりませんでしたよ」
「よし。……SP内部の裏切り者の方は?」
「沖矢さんと鳥羽さんが確保しています。こちらも声帯模写が出来る沖矢さんが、ジラード派の方へ士官の真似をして偽の情報を流しています。こちらの動きは気付かれていないでしょう」
よしよし、念のためにバレた時の保険もかけておけば問題ないか。
大勢は決まっている以上、こちらの敗北はない。
ジラードは森谷以下だが頭森谷という残念な奴だ。勝ちを拾える駒じゃない。
流れに任せていけば……まぁ、特に問題なく勝てるだろう。
一番嫌なのは逃げられることだ。あとは殺されたり自殺したりして口が利けなくなること。
キース達との交渉もそうだけど、ロシアでのアレコレについて色々聞きたいことがあるし、死なれては困る。絶対に。
「所長の方はどうです? 周りをうろついている連中は分かりました?」
「あー、うん、片方は。どうもロシアの人間のようです」
またかよ、と本気で思ったわ。
いや、またというより……ヴェスパニア鉱石絡みに食いついていたのは枡山さんに乗せられた人間だけじゃなかったってことか。
「……ジラードを始めとする証拠の隠滅?」
「可能性はありますね。ロシアの一件、政府も裏で一枚噛んでいたとしたら、すぐにでもその痕跡は消したいでしょう」
「謀略は続く、か。あんまり得意な分野じゃないんだけどなぁ」
安室さんと恩田さんに全部放り投げたいけど安室さんはいざという時に必要な所にすぐ動かせる万能選手だし、恩田さんはこれ以上仕事を増やしたらさすがにオーバーワークになる。
カリオストロ関係の仕事で関係書類の山やら根回しやら反対勢力を抑えたりやらを、一緒にゲロゲロしながらこなした仲だ。
なんだろうなぁ、最近じゃあ恩田さんが安室さん並みの戦友に思えてきた。
「ジラードを暗殺しようにも人目が多すぎる。少なくとも現段階でそっちの線はないとは思うから……」
それ以外。紙の書類があるかどうかは分からないが、なんらかの取引記録は残っているはずだ。
ジラードが自分の勝利を確信したままならば、急いでそれを消そうとはしないだろう。
「ジョドー達に手引きさせるから、安室さんちゃちゃっと関係書類やデータ回収してきてもらえる?」
「気楽に言う仕事内容じゃない気がするんだが?」
キャメルさんや恩田さん、遠野さんあたりなら顔を青ざめさせる所だが、安室さんは苦笑一つで済ませてくれるからついつい頼ってしまうなぁ。
……割と現場での運用考えている遠野さんは訓練少し増やすか。
狙撃は当然だけど情報収集、情報精査みたいな合法的な諜報の基礎を押さえてくれていると、色々と使いどころが増えて助かる。
まったくもう、探偵事務所なんて持つもんじゃねぇな。経営もそうだけど同時に部下の安全とか教育も考えなくちゃ悪くなる。
遠野さん、俺がいない間も爆発物解体シミュレーションで練習続けて、レベルCの八割はクリアしたみたいだし基礎体力も付いたみたいだし、そろそろ高難易度サバイバル実習とか降下訓練にも同行させるか。
とりあえず犯人に襲われても返り討ち――あるいは逃走できるくらいの体術,体力と緊急時に慌てずに爆弾みたいな危険物の解体や一時保存が出来て、かつ機密情報や顧客のプライバシーを漏らさない防諜能力、顧客や容疑者から信頼される人心掌握術に、出来る事ならば些細な証拠を一つでも多く発見できる観察力とそれを覚えておく記憶力……あと日常会話からでもある程度人物像や周囲の環境を把握できるくらいの分析力と、万が一閉鎖した環境に放り込まれても生存できるサバイバル技術を持てばようやく普通の探偵だと言えるだろう。
俺としても安心して運用できる。
出来る事ならそれに加えて二つくらい特技が欲しいけど、遠野さんは沖矢さんが絶賛する射撃センスがあるしなぁ。
……女性だし、護衛としての訓練も追加してみようかな。
男のキャメルさんじゃあガードしにくい相手もやっぱいるし、瀬戸さんは動けない時があるし。
あとついでに情報の扱い方や守り方もそろそろ覚えてほしいし……。
警視庁とか公安に教官役誰か紹介してもらえないか掛け合ってみるか……いや、ジョドーに弟子入りさせればいいか。トップクラスの諜報員が近くにいたわ。
……なら、まずその前に。
「安室さん、遠野さんも連れて行って色々教えてあげてくれない?」
「そこで更に仕事量を笑顔で増やすあたりが実に浅見透という男だな」
「兄貴分だからついつい頼っちゃうんですよ」
ほら、そうやって不敵に笑う所とか頼もしすぎる。
「危険な研修というわけか?」
「ロシアの一件を体験しても辞めるとは言わずに新しい事を覚えようとしてる人ですからね。従業員に伸びようとする意欲があるなら、全力でサポートするのって優秀な上司の仕事のひとつじゃありません?」
「違いない」
笑いを噛み殺そうとして殺しきれていない安室さん。
そうだよなぁ、この人教育係としても優秀……本当に万能選手だな。
初手で安室さんを所員として確保できたのは偶然に近いモノだったけど、俺達が躍進できた最大の理由な気がする。
(そう考えると、俺の現状ってホントに森谷カスと青蘭さんのおかげってことになるんだよなぁ。よくも悪くも)
青蘭さん、どうしてるかな。
多分シリーズ化したライバルキャラみたいな存在だろうから、そのうちコナンの前にまた出てくるだろうけど。
……また俺を殺しに来てくれるかなぁ。来るだろうな。
また安室さん達とコクーンで戦闘訓練しておくか。
今ならロシア戦を乗り越えた遠野さんも、不意打ち要員としては十分脅威だしいい感じに経験値積めそうだ。
「了解だ透、遠野さんと合流して関係書類の確保に動く。が、作戦の前に少し聞いておきたいことがある」
「なんです?」
「お前は、この組織を最終的にどういう形に持っていくつもりだ?」
「……探偵事務所って意味です?」
「いや、お前のグループだ。もはや財閥、というべきか。……半年も経たずに、よくもまぁやったものだ」
「財閥って……いや、まぁそう言われてますが……」
それなりに技術やノウハウを持ってる会社の社長やら幹部がポロポロとよく殺されるから、そういうのを吸収してきただけなんだけどなぁ。
会社しかり人材しかり。
俺はただその後の環境を整えながら運営しているだけなんですわ。
工場とか建築会社とか病院とかならいいんだけど、デザイン会社だったり有名なヨガ教室だったり菓子製菓会社だったりとバラバラだから、たまに次郎吉の爺さんに相談に乗ってもらって……最初は鈴木に投げるつもりだったのになぁ。
……次郎吉の爺さん、なんで会社を鈴木に取り込ませずに俺や七槻、恩田さんにやらせたんだろうな。
それもめっちゃ楽しそうに。
おかげで俺とか恩田さんがゲロゲロ吐く日が一週間に二回以上はあるわけなんだけどどうしてくれるの?
「そっちは普通に営利目的で。自分がやりたかったのは、情報網を兼ねた民間と行政をより密接につなげる組織作りだったんですよねぇ。で、その運営費を稼げるようになればいいかなぁ……なんて思ってアレコレしてるわけなんですが」
殺人や強盗といった犯罪によって構成されている世界なら、当然だけど犯罪が起きやすい構造になっているハズだと俺は仮定していた。
その世界の時間を進めるのもそうだけど、進んだ後の事も考えると警察や行政側の人間――当然綺麗な人間に限るが、そういう人間と仲良くなっておくのは必須事項だった。
加えて、実際にコナンと出会って殺人事件に巻き込まれるようになってから感じていた殺人のきっかけ。
些細なすれ違い、経済的な理由、コミュニケーション・トラブルその他もろもろ。
回避する方法はあったのにそれに気付けなかった、そしてその相談もできなかったために起こる悲劇の数々。
その予兆を素早く察知し、こっちからアクションを起こす。あるいは周囲の人間や行政へ働きかける組織。
……加えて爆弾事件を始めヤベェ事件が多発するから、警察や消防が間に合いそうにない時にそれまで持たせたり傷病者の保護や応急手当といった初期対応の部署を増設したりしてたら、次郎吉さんやら自衛隊やら公安から変な仕事が回ってくるようになってそれに対応する組織作りやってたら訳わからんことになったんよなぁ……。
本当にどうしてこうなった?
今度は私立の大学を運営することになったし、ただでさえアレコレ増えてる研究施設をさらに持つことになったし枡山さんの自動車会社もクリーニング終わって完全にウチで受け持つことになったしうごごごごご。
「まぁ、組織が大きくなりすぎたのも分かってます。だから公安も警戒してるんでしょうし」
蜂一号の時から風見さんホントによくウチに来るようになったしね。
風見刑事がウチによく来るのは、監視も兼ねているんだろうなぁ。
まぁ、公安とつながりがあるって周りに見せるためってのもあるんだろうけど。
……うん、実質今のウチって探偵事務所の仕事もやるけど、同時に防諜にもかかわる事のある……ある意味でシンクタンクみたいな組織になってるから仕方ないか。同時に厄介事を請け負うとかわけわからんけど。
例の組織を潰してコナン達が戻るまでには、半官半民の組織として認識されるようになっていればいいなぁ。
「君はもう、実質公安の協力者だからね。加えて影響力が極めて大きい財閥を持つ男だ」
「最初っからそのつもりですよ。別に公安――というか警察や行政と敵対するわけでもなし。会社が大きくなって企業になった時からそれなりの国への奉仕は欠かしていませんよ」
税金の事は置いても、絶対に警察や行政の仕事を楽にしている自負はある。
七槻の所を使ったヒューミント部署のおかげで事件が起きる前に察知して、いくつかの火種は事件化する前に消すことに成功している。
枡山さんやそれ以外に様々あるけど密輸ルートもかなり見つけ出したし……まぁ、消すたびに新しいルートが増えて行ってイタチごっこになってるけど……。
「知っている。だからこそお前は経営……というか運営に専念して危険な案件は俺や沖矢さんに任せろと言っているんだが」
「何言ってるんですか、そういう時こそ俺の出番ですよ。特にロシアみたいな大事ならば」
多分もう二,三回くらいはあるんじゃないかな、こういうパターン。下手したらそれ以上。
長期間続いている作品なら似たパターンの事件とかでてくるだろうし、まだまだヤベェパターンだってちらほらあるに違いない。
核が出てきたんなら炭疽菌みたいな生物兵器とかが絡む事件だってあっておかしくないし……ありそうだ。
いや、あるな。
防護服や防毒マスクも阿笠博士に発注しておこう。
「……お前が少し前までただの大学生だったというのがいまだに信じられないよ、透」
安室さん、最近ため息多いですね。大丈夫? 幸せが逃げてません?
「一緒に探偵事務所やってた時が懐かしいなぁ。あの時が一番好きでしたよ」
安室さんに、七槻やふなちと一緒にゼロから作ってた頃は本当に楽しかった。
そういうと、安室さんはようやくうれしそうに笑って
「透」
「なんです?」
「日本に帰って諸々片付いたら、事務所の二人部屋を貸せ。どうせ落ち着いたら全所員に交代で長期休暇入れるんだろう? 朝まで飲むぞ。肴は俺が作る」
「……いい日本酒、次郎吉さんから頂いてきます」
おっと、銭形のおじさんが皆を呼び出し始めたか。
潜り込ませたカゲから鏡の反射光による合図が来た。
さっさと終わらせよう。
ロシアとは別に水無さん達CIAも動いてるってジョドーから報告あったし、そっちも止めないと。
この国、マジで石ころ一つに死ぬほど呪われたなぁ。
安室さん、頭森谷野郎の相手お願いしますね?
俺その間にちょっとロシアとアメリカ相手に交渉してきます。
〇ジラード、邪魔者を一掃して全部罪はルパンに押し付ける気満々で東屋に衛兵を引き連れていく
〇なお、その衛兵は全員カゲである
〇すでに事実はバレていて、世良や安室、小五郎にコナンにキャメルやリシ、鳥羽に双子その他もろもろがいる。