125:帰って来た日常(仕事と爆弾と厄介事)
帰国して一か月とちょっと。――実際にはどれくらいの時間に圧縮されてるかは分からんけど、メディアに対応しつつ事後処理その他もろもろを恩田さんと安室さんと連携して処理。
「死ぬ」
「同じくです」
「ここまでとは……」
やべぇな、恩田さんはともかく安室さんのここまで疲れた顔とか初めて見た。
秘書室の方だと双子と幸さんも缶詰だろうなぁ。
小沼博士は阿笠博士と沖矢さんと一緒に新しい研究施設に出張中だし。
「ヴェスパニアとカリオストロの共同経済特区及び工業団地の方は、予定通り国境に沿った場所に設ける方向で調整完了してるから、後は具体的な段取りの打ち合わせやお披露目その他諸々っと」
「所長も恩田君もえげつない真似をしますね。これ、実質領土の割譲でしょう?」
安室さんが珍しく冷や汗をかいている。
……いや、最近だと珍しくないな。
もうちょっとで色々片が付くし、その時こそがっつり飲みましょう安室さん。
次郎吉さんから最高級の日本酒確保しているので。
「日本側との折衝、米露両国とのクッション役に内部工作員の排除に厄介な軍需物資の管理問題その他もろもろをこっちで片づけたんだぞ。賠償金も含めて安いくらいだ」
「私も同感です。……ついでに、こちらはただでさえ狭く、しかも観光資源のために開発が難しいカリオストロが、喉から手が出るほど欲しかった工業や経済のための要地を手に。向こうは内戦直前にまで陥った政情不安を拭い、国の再建を目指す強いアピールが出来る。win-winですよ」
まったくもってその通りである。
どちらかと言えば負けない交渉を目指す恩田さんだけど、今回ばかりは腹に据えかねてたのか相当ギリギリの所を攻めたなぁ。
うんうん、いい傾向だ。
ヴェスパニアからは手を引くという旨の密約に加えて、合衆国の方の支部の人材その他諸々の手配にも協力してくれると、わざわざヴェスパニアまで来てくれた大統領がニッコリ笑って関係書類にサインしてくれたし問題なし。
なんか帰りに変な連中に襲われたけどジョドーが対処してくれたしヨシ。
なんだったんだろうな、あの青い蜘蛛の入れ墨入れた奴。
個々は強くても連携がクソだったとかなんとか……。
「まったく、少し前まで君は僕らの生徒だったのに……今では立派に対外交渉の第一人者だな」
真面目に恩田さん、一段落ついたらそろそろ教育役も兼ねてもらおうかな。
……遠野さん……は、まず探偵として教育必要だしなぁ。
幸さんにレクチャーしてもらうか?
俺の秘書とはいえ――というか秘書だからこそいざってときに色々お願いするかもしれんし。
「この間所長にも言ったが……最近、所長だけじゃあなくて君も長年の戦友に思えてきたよ、恩田君」
「少し前まで、安室さんやキャメルさんの後ろをヒィコラ言いながら走っていたのが懐かしいですね」
そういや、今では息切れもしなくなってるな恩田さん。
ちょっと前の雪山訓練でもクソ重い通信機材背負ってキチンとタスクこなしてたし。
出張前には一級総合無線通信士の資格も取れたし、今度はヘリの飛ばし方覚えてもらうか。
「で、書類は完成した?」
「一月後の工業特区に関する発表に使うスピーチ原稿はとりあえずまとめました」
「マスメディアに向けた説明の段取り、鈴木や長門と言った友好グループへの誘致、かつて枡山憲三が所有していた自動車会社の工場移転……と、それに関しての越水君の所の資材調達部が組み立てた資材の輸入、搬送計画の概要も来ている。法務部のチェックも入っているこれは、恩田君とジョドーさんに渡しておけばいいのかな」
「お願いします。……で、一番の問題なんですが」
ここ、浅見探偵事務所は米花駅前のビルである。
当然人目を惹きやすく、しかも大勢が集まりやすい所だ。
今思うと探偵事務所としては不適格にも程がある立地だ。
なぜここを用意したんだ次郎吉の爺さん!!
「これ、どうしましょうか?」
閉めているブラインドを少しずらして外の様子を窺う。
―― こちら、東洋テレビリポーターの
―― 東海テレビです! 浅見探偵! 一言でいいのでコメントをいただけないでしょうか!?
―― 政界に進出するという噂もあるそうですがどうなんですか!?
―― 日売テレビの水無怜奈です。先月のロシア騒動以来、御覧のように浅見探偵事務所前には連日報道陣が詰め寄っており……
おい今声が聞こえたぞ007!
報道陣煽ったのそもそもアンタだろうが! ADの篠原さんとか経由で日売テレビの内部情報ちょいちょい漏らしてもらってるんだからなコルァ!!
手出しが出来ない一般人で数を揃えて煽り散らすとか人の心がないのか! この悪魔! 外道め!
「安室さん、恩田さん、何か妙案はあります?」
「いいから今すぐ出ていって人身御供になってこい」
「同意見です。世良さん達バイト組が来る前に片づけてください所長」
お前ら!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「浅見君、大人気ねぇ」
「……ま、私や夏美さんを助けに来てくれた結果だから今回はしょうがないけど……もうちょっとこう、陰に隠れてこっそり出来ないものかしら」
とあるプールバーの側にあるマンションの一室。
浅見透が用意したセーフハウスの中でも特に巧妙に隠してある中の一つこそ、灰原哀こと宮野志保の姉――宮野明美の今の隠れ家だった。
「でも、こうしてお姉ちゃんとゆっくりするのはすごい久しぶり」
「そうねぇ、アクアクリスタルの件からずっとドタバタしてたし、こうして二人でお茶なんて滅多になかったしね」
湯気が立ち上がるティーカップに口を付け、灰原哀はほぅ……っと息を吐く。
点いているテレビでは、チャンネルを回しても回しても浅見透や見慣れた所員の誰かの顔が映っている。
ほとんどはヴェスパニア政府の人間と共に色々あった事態の説明をする姿や、様々な国の政治家と並んで談笑している姿といった、つい先日までのヴェスパニアで表舞台に出た時の映像ばかりだ。
だが時折、どこで撮ったのかロシアの一件での監視カメラに映っていた大立ち回りや、ヴェスパニアでの事務所員の動きがチラホラと出ている。
(今頃、浅見透はもちろん周りの人間も頭が痛いでしょうね)
「ま、確かにしばらくは浅見透の家は目立ちすぎるでしょうしね」
「もう一人の子はどうしてるの? 中北楓ちゃんだっけ?」
「今は阿笠博士の所に移動してるわ。……彼女、不動産王の片寄王三郎の隠し子疑惑があるから、欲を出したマスコミが色々聞き回るかもしれないし」
「……身体的に守るっていう意味だと、浅見君の所は鉄壁なんだけどね」
宮野明美が苦笑で済ませているのに対して、灰原哀は頭を痛そうにしている。
「カリオストロのカゲも付いたわ。そういう意味では使える人員は増えたし、護衛役には事欠かないんだけど」
「探偵っていうには物騒よね、彼。……まぁ、その物騒さに私達は助けられたんだけど」
テレビではさかのぼって、今回の事件の発端になったスコーピオンの事件についてコメンテーターが話している。
肝心の内容はペラペラに薄いが、まぁそんなものだろうと灰原は聞き流している。
「本人の素は能天気なのが二重に腹立たしいのよね、アイツ。気が利くんだか利かないんだかよく分らないし」
灰原は、姉と一緒に焼いたクッキーを煎餅のようにバリバリと齧る。
「それで、これから浅見さんはどうするって?」
「とりあえず、メディア対策でしばらくはアチコチに出てくるんだって。恩田さんや安室さんと一緒に」
「あら。マスコミを避けるんじゃなくて?」
「ちまちま水をかけるより、燃やし尽くした方があと腐れがないそうよ」
「あの人らしいわねぇ」
宮野明美は、直接浅見透と顔を合わせることはあまりしないが、メールや電話のやり取りはよくしていた。
主に浅見透から、宮野志保の学校や家での様子などをこまめに報告していた。
灰原は、小さいケースの中に積まれている手紙――数か月にしてはやや多すぎる量の手紙を見て、頭痛を抑える様に頭を押さえる。
「? 哀、どうしたの? 大丈夫?」
「う、うん。大丈夫。」
一瞬だけ走った痛みを忘れるために、灰原は熱い紅茶を軽く啜る。
「それより、あの人はどうしたの? 一緒に住んでるんでしょう?」
「あぁ、秀――じゃない、昴さん?」
死んだはずの二人であるため、本名はうかつに出せない。
宮野明美自身も、違う名前を使って瀬戸瑞紀の親戚の
むろん、変装してだ。
「あの人は昨日からしばらく出張。なんでも、浅見さんが作ってた島が完成したから、その確認にいく阿笠博士や小沼博士の護衛も兼ねて様子を見に行くんだとか」
「……作った? 島を?」
「ええ、正確には浮島だったかしら。なんでも環境関連の調査や実験に加えて、太陽光とか海流、風力とかの発電装置の実験場だとか」
「どこまで手広くやるつもりなのよ、あの男」
さきほど走った痛みとは違う痛みに、灰原は頭を抱える。
「ご飯の種を増やすために手を伸ばすのは当然だとかなんとか。昨日電話で言ってたわね」
「ぜっっったい、加えて裏でもなにかやってるわね!」
「……浅見さんにはホント辛辣ね、哀」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
〇11月13日
メディア対策と並行して組織固めを続けなきゃならんのが辛い。
とりあえず前々から阿笠博士に頼まれていたグリーンエネルギーの実験場も完成したし、これでコナンの装備の強化や開発も進むだろう。
あのスケボーもそうだけど、どうしても太陽光発電や小型で高性能なバッテリーがアイツの装備には必要だ。
今の様に制限が多いままだと、また妙な危機イベントが生えて俺たちはともかく蘭ちゃんとか園子ちゃんがギリギリな状況に追い込まれかねん。
ついでにカゲや山猫の装備の研究所も出来るだけ人が入りづらい場所に作る必要があるし、人工浮島による研究設備の話も都合が良かった。
金かけた研究施設である浮島の方に目が行くだろうし、一緒に買った無人島のいくつかをメインとして開発しておこう。
問題はどこに施工を頼むかということで、今日はずっとその事を考えているんだけど。
次郎吉さんにまた頼むのも、なんだか優しい祖父母に付け込んで小遣いせびる孫みたいで情けなくはあるんだけど、防諜関係考えると頼めるのがそこしかない。
自前のゼネコンもなくはないけど、こっちはまだ小さいしなぁ。
セーフハウスとか防犯,防諜関連の装備や設備のテストルームの方で手一杯だし。
書いてて思い出したけど今回組織からスパイしに来ている安室さんとかマリーさんには他の人員の三倍くらい頑張ってもらったし、褒美に突かれても痛くない程度の情報流してあげようか。
ジョドーとメアリーと一緒にそこらの選定しないとな。
明日メアリーの所に顔出すか。
忙しくてメールと電話でしかやり取りしてなかったからな。
〇11月14日
出会い頭にメアリーにぶん殴られて関節キメられた。
なんでやと思ったらあの女優さん、キッドじゃなくて組織の重要人物で、メアリーにあの薬を飲ませた張本人なんだとか。
それがウチの事務所に記憶をなくして助けに求めてくるとかメインストリームが確実に一歩進んだということなので喜んでいたら蹴り飛ばされて急所思いっきり踏んづけられて悶絶してる所をさらに関節キメられた。
ごめんて。
まぁ、その後新装備一式渡したらちょっと機嫌直ったけど。
カリオストロのぶっ壊れ金属鎧は小さくなったメアリーの体には重すぎるから、それを利用した金属繊維と光ファイバーを利用した特殊電気紡績技術を使って、彼女が仕事の時に好んで着ているライダースーツに近いものを作って来た。
真純が正しくキチンとサイズ測ってくれてて助かった。
細かく色々指定したから漏れがあるかと思ったらしっかりやってくれたからな。
おかげで、あのやや硬めで分厚い服でもかなり動きやすく作れた。製作者としては鼻が高い。
朋子さんに前、ブランド立ち上げるなら協力するとか言われたけど鵜呑みにしちゃってもいいくらい今回のは自信作だ。
デザインもそうだけど防弾性も確認済みだし、足音がしにくい特殊合成ラバー製の足元。保温保湿機能に防水性、耐火性、それに試作品着た状態で実際に撃たれて衝撃の具合も確認している。
今の手持ちの技術で作れる最高レベルのスニーキング・スーツだ。
……量産体制さえ整えば、ウチの標準装備として作るか。
まぁ試運転として軽くボコられたけど、それでも動きのキレは変わってなくてホント良かった。
あとは顔を隠すのも兼ねた、頭部を守るヘルメットだな。
軽くて頑丈で、出来れば防毒機能もつけてやりたいけど研究部門の成果次第か。
〇11月16日
安室さんとマリーさんに流した情報――大学関係で今勧誘している教授のリスト。
それをヒントに変な動きを見せる所あるかなぁと思ってたらドンピシャで当たったわ。
さすがに強硬策には出てないけど、ウチの事務所内部にスパイを送り込もうと画策しているみたいだ。
手の内読めるし、対策も練ってあるからいいんだけどさ。偽情報流すとか。
まぁ、これで組織の下っ端のほうだけど、接触の仕方というか動かし方のパターンの一つは把握した。
守り方の情報が一つ手に入ったってのは悪くない。
これ自体がダミーの動かし方かもしれんから、そこらへんも計算に入れないと悪いけど。
マリーさんは、動きからしてこっちでの仕事を通して枡山さんの動きを把握するのが本命か。
情報の入手はあくまでついで。
うまくいくなら枡山さんの暗殺が目当てって所だろう。
止めとけとは思うんだけど伝え方がなぁ。
あの人の用意したボードの上で下手に動くと手痛い反撃を食らうぞマジで。
完全に流れに乗って相対するか、完全に予想を裏切らないとあっさり死ぬってマジで。
多分、この感覚分かるのは俺だけなんだろうけど。
そういえば、事務所に爆弾が届けられたけどジョドーと双子が即時発見して即解体してくれたそうな。
昇給プラスボーナス追加ね。
〇11月20日
夏美さんが正式にウチのスタッフになった。探偵事務所ではなくグループの一員としてだが。
パティシエとしての腕と家の力を使って、少しでも俺のために稼ぎたいとかいう下手したら俺がヒモ一直線になりそうな言葉と共に頭下げられたらもう俺どうしようもねぇ。
美人だしもういっそヒモになって彼女の元でゴロゴロしていたい。
ダメかな? って七槻に聞いたら誰から教わったのか関節固めて拘束してからのジャイアントスイングで庭に放り投げられた。マジで誰だ教えたの。首が折れかかったわ。
それと、俺に金塊の奪取を依頼してきたジュディも協力者になった。
まぁ、代わりとして彼女の祖国。とある東欧の国というかその他もろもろというか、の復興に手を貸すことになったが別に構わない。
カリオストロ同様、俺の手で好きに出来る要地の入手は重要事項だから助かる。
問題は国の復興とかいうカリオストロ並みの難題を抱えたことだ。
いや、金には困らんし、しばらくは好景気を演出することはできるだろうけどそうじゃないだろうからどうしろと。
とりあえずは堅実な工業化で労働場所確保しよう。向こうの支社はそれこそジュディに任せて……あと工場も出来るならこっちの欲しい物作らせてこっちで買う……マッチポンプ感ひどいなこれ。
最悪鈴木に協力頼むか。こっちはまぁ、最悪乗っ取られてもキチンと運営さえしてくれれば別にいいし、むしろ向こうに売り払うのもありかもしれん。
朋子さん、最近隙あらば俺と園子ちゃんを二人で遊びに行かせようとするし、なんとしてでも鈴木に取り込みたいってのが見え見えで困る。
こっちが大きくなれば躊躇するだろうと思ってたんだけど、逆効果だったかぁ。
とはいえコナンや阿笠博士のサポートするには金はいくらあっても困らないし、事件のせいで路頭に迷うだろう人を見てるとなんか後ろめたい感じがするし……利益自体はちゃんと出せてるし……。
うん、やっぱ仕方ないわ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
――どうか! どうかお願いいたします!!
「? なんか外が騒がしいな。まだ押しかけてくるメディアとかあったっけ?」
「先日の爆弾騒ぎの件じゃないか? ヤクザの事務所でもないのに透兄の所に送り付けるとか大ニュースだよ」
「馬鹿だよねぇ。俺がそういう手の対策をしていないと思ってるのかね」
「もうその発言の時点でいろいろおかしいんだよなぁ。……そういえば透兄、自宅にも手を加えてたよね」
「おう。事務所と同じ手荷物や郵便物のチェック体制はもちろん、物理的にロケットランチャー撃ち込まれてもドアさえ閉まってれば余裕で耐えれるわ」
「透兄、自宅と要塞の違いを分かってる?」
ウチの制服にもすっかり馴染んだ真純が、大量のチェック済み郵便物の山と戦いながら茶化して来る。
今はジョドー以外に所員もいないから『透兄』呼びだ。
……いや、一応リシさんもいるんだけど、先日大金星を挙げた双子から手荷物や来客のチェック体制を教えてもらっている所だ。
外の大声の主の相手してるの、そのリシさんかもしれないなぁ。
「真純とメアリーのいる家も同じくらいの強度はあるよ? 窓は全部防弾ガラスだし、壁も当然。ついでに離れの倉庫には、真後ろの空き家への隠し通路もある」
「忍者屋敷もびっくりでドン引きだよ透兄……、いつ作ったの」
「元々あのセーフハウス、ストーカーみたいな付きまといの類の被害者を一時守るための家だし」
「あぁ、そういえばそんなこと言ってたねぇ」
越水の所の会社でも近辺で発生した犯罪や不安要素の分析は進んでいるけど、多いのはやはりつきまといだ。
典型的な男女間のストーカーもそうだけど、地味に多いのが元夫婦とか元親子。
最低限の警戒で済むのもあれば、あからさまにヤバイDV案件などまで多種多様。
そういう家を知られている人の避難所としてランダムに購入して防犯設備を強化した一時的な貸家だ。
「そういやメアリーはどう? あのスニーキングスーツ、量産体制さえ整えばウチの標準装備になるんだけど」
「滅茶苦茶気に入ってるよ。あんなに機嫌がいい所なんて久々に見た」
「まぁ、嬉しそうに俺をボッコボコにしたからなぁ」
「むしろ、よく透兄マ――メアリーさんと互角にやり合えるよね」
「いやいや、全然互角じゃないでしょ、徹底的にボコられてるし」
そもそも、向こうがたまにリーチを間違えるからなんとかもってるだけで実際の実力は全然足りてないわ。
「しかもメアリーの奴、日に日に俺の扱いがクッソ雑になってるんだよなぁ。バリバリ他人行儀で警戒されていた頃が懐かしい」
「家でも透兄の事よく話してるよ。奴にはアレが足りないコレが足りないって」
「……師匠、先生に続く三人目の教師かぁ。なんて呼ぼう。
「すっごい嫌そうな顔で透兄の足を踏みつける姿が目に浮かぶよ」
「奇遇だな、俺もだ」
そういえば、諜報関係のアレコレに関する講義をいつも開いてくれてるなぁ。
正直すごい助かってる。
メアリーを直接ジョドーや真純達以外の所員と会わせるわけにはいかないから、その講義の内容テキスト化して安室さんや恩田さん、ジョドーとの会議によく使ってるなぁ。
……こっちの防諜に穴を空けようとしている可能性も捨てきれないから、第二第三のチェック入れてるのはゴメンね、メアリー?
今度高いケーキとお茶を持ってご機嫌伺いにボコられるか。
「ジョドー、お茶を頼む。二人分な」
「かしこまりました」
声をかければスッと出てくるジョドー。
まさに名執事だ。戦闘も出来るし。
山猫隊のリーダーが頭を下げて色々厳しくしごかれているようだし、教育役が増えるのは本当にありがたい。
「旦那様、世良様、銘柄はいかがいたしますか?」
「俺はいつも通り。真純は?」
「あ、透兄のと一緒でいいよ」
「かしこまりました」
真純も紅茶飲むようになったなぁ。
事務所に来るようになった頃はいつもコーヒーだったのに。
「そういえば透兄、例の爆弾の出どころは掴めたのか?」
一応安室さんと瀬戸さんが調査をしているけど、ジョドーの持つ裏のツテも使って捜索している。
「偽装の手口から先日の秘密会談後に襲ってきた連中じゃあないかっていうのがジョドーの見解。まぁ、それだけだからまだ捜査を続けているけど」
「あぁ、あの蜘蛛の……。そういえば、あの時返り討ちにした連中ってヴェスパニアに拘禁されてるんだよね? なにか吐いた?」
「いんや、その後まもなく死亡。死人に口なしさ」
「…………ヴェスパニアか、あるいは他国の口封じ?」
「まだなんとも……。ただ、どうもあの入れ墨自体が毒で、一定時間が経つと体中に回る仕掛けだったみたい」
「なにその変態集団」
「それな」
一応毒の成分サンプルはヴェスパニアから回してもらって、志保の偽装ラボに送付済み。
念のために解毒剤かそれに準ずるものの作成を急いでもらっている。
しばらくの間はお姉さんと一緒にゆっくりしてもらいたかったけど、事が事だけに急を要する。
こっちも護衛計画はカゲを始め、万全の体制を敷いている。
……そういえば妙に病院周りのFBIが大人しいな。ようやく諦めたか?
まぁ、アイツらが張ってたのダミーの病院なんだけど。
「まぁ、姑息な手に出ただけで奇襲がない所を見ると、少なくとも現段階じゃあマンパワーでこっちに勝つ自信がないって事だろう」
「……警戒だけは怠るなって事?」
「あぁ、学校とかは気を付けてくれ。お前の帝丹校制服、改造したんだしさ」
「上だけ防弾仕様でもねぇ」
心臓に直撃弾もらっても死ぬ確率下がったってだけでもそうとう違うだろ。
内臓も守れるし。
「あぁ、それと真純。今度のシンドラーカンパニーとの、ゲーム機としての『コクーン』完成披露パーティーについてだけど、お前も沖矢さんと――」
なんか妙な事になってるアレについてちょっと細部を説明しておこうとすると、ドアが軽くノックされる。
「? ジョドーかな……どうぞ?」
お茶が煎れ終わったのかと思ったら、入ってきたのは双子メイド――下笠姉妹だ。
「申し訳ありません、所長」
「至急、ご指示を仰ぎたい事態が……」
相変わらずの交互に喋るミステリアス口調。
うん、いいね。なんかこう、不思議な美人双子って実に探偵事務所って感じだよね。
「ひょっとして、さっきからずっと外からするあの大声かい?」
真純の問いかけに双子が同時に頷く。
「実は、先ほどから所長への面会を希望される方がいらっしゃいまして」
「今はリシ様が後日アポイントメントを取るようにと対応されてらっしゃるのですが、その方も全く引かれず」
俺に会いたい連中ってのは多いけど、大体はマスメディアだよな。
それでも大体は一応アポを伺う電話かメールは来るもんだけど……。
「年の頃は? 若い?」
新人が暴走したとかならその新人に思いっきりサービスしてこっちに取り込もう。
メディア対策は二重三重にしておいて損はない。
「はい」
「おそらく、高校生かと」
思わず、真純と顔を見合わせる。
「…………高校生?」
――ですから、所長にはお伝えしますので後日……っ!
――ご迷惑をおかけしているのは重々承知なのですが、時間がないんです! 何卒! 浅見透所長にお目通りを!
聞こえてくる声は確かに若い。男の声だ。
でも高校生?
俺の中で高校生でこっちに絡もうとする奴って瑛祐君しかり重要人物なんだけど。
――我が名は京極真! 鈴木園子さんとお付き合いをさせてもらっている者です!
真純が郵便物の一つを取り落し、俺は書類を取り落す。
……なんて?
――どうか! どうかお目通りを!
――私、京極真は!
――浅見探偵への弟子入りを志願します!!
「……なんて?」
「透兄に弟子入り志願だってさ」
「……なんで?」
rikkaによる、ちょびっとしたメモ書き程度の解説
〇東洋テレビリポーターの
ルパン三世 The Last jobより
アスカである。アスナではない。ハリセンとか振り回さないし魔法を無効化する能力など当然ない。
が、ハイレグ忍者である。
ハイレグ忍者である。
NARUTOじゃないんだからもっとちゃんと忍びなさい。
実は劇場版コナンVSルパン三世にちょっとだけ登場している。
※ADの篠原さん
〇篠原浩子(28歳)
アニメオリジナル789話
『女王様の天気予報』
前に一度紹介した記憶がありますが、念のためにちょいと紹介。
日売テレビのADとして登場しました。当然容疑者です。(まぁ、当たり前か)
〇ジュディ=スコット
ルパン三世~ロシアより愛をこめて~より
解説を入れたかどうか覚えてないので念のためここで。
本作のゲストヒロイン。ルパンではなく五右衛門のヒロインと言っていいが、肝心の五右衛門はほとんど何もしていなくて笑う。
実はアメリカに逃げていたアナスタシア皇女の孫である。
ソ連のあれこれによる経済の混乱で落ちぶれた祖国のため金塊を狙っていましたが、本作ではその立て直し役として浅見を指名。
金塊を報酬に祖国の立て直しを要求。
普通に考えればロシアの事っぽいけど、本作では東欧のどこか架空の国ということにしておこう。
自分も書いててやっべとなった。
※浮島
元ネタはこち亀。
中川財閥の所有する実験場でしたが、これは面白いと採用。
本編では太陽光を始めとするグリーンエネルギーの実験場に加えて環境関連の観測や研究や装備開発その他諸々に使われる予定というどうでもいい設定。
後々本編使うかもしれません。
コナンのスケボー、最近じゃあ夜でも余裕で全力で長時間ぶっとばしてるところから超強化されているとみて思い浮かんだ設備です。
※メアリーのスーツ
光ファイバーを利用したという時点で分かる方もいるでしょうが、元ネタはMGS2のスカルスーツ。
メタルギアシリーズのスニーキングスーツはかなりツボ。
特に2のは無駄がなくて好き。
※変態集団
いずれ詳しく解説。