平成のワトソンによる受難の記録   作:rikka

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126:人外兵器と事務員追加と飲み

「えぇと、京極君……でよかったよね?」

「はい。京極真と申します。杯戸高校空手部にて、主将を務めております」

 

(そういえば蘭ちゃんが去年の夏あたりにそんな話してたっけなぁ。コナンが静岡で事件に関わったって所しか覚えてなかった)

 

 俺と真純、それにちょうど京都の大岡家との調整から帰ってきた恩田さんの報告書と議事録の提出を待って、緊急面談という形になった。

 

「あぁ、思い出した。京極真って杯戸高校の『蹴撃の貴公子』か!」

 

 知っているのか真純!

 

「そういえば蘭さんが、以前おっしゃってましたね。杯戸高校に、自分に拳銃の弾の避け方を教えてくれた人がいるとか」

 

 師匠や先生みたいなトンデモティーチャーがいたわけでもないだろうに、なんで高校生が銃弾の避け方知ってるんだよ! 高校を卒業する前に人間卒業すんな!

 

「それで、園子ちゃんと付き合っているっていうのは分かったけど……どうしてわざわざ一介の探偵に弟子入りを?」

 

「……一介の?」

「探偵?」

 

 そこの二人、言いたいことがあるならあとで聞こうじゃないか。

 

「はい。実は先日、園子さんからお父上が一目会いたいとおっしゃっている、とご自宅にお誘いを受けまして」

「待って、OK、もうその時点で話は読めた」

「ええ!? もうかい、ボス!?」

「あぁ、うん、まぁ……」

 

 真純や京極君は驚いて目をパチクリさせているが、どうやら恩田さんも同じ読みをしたようだ。苦笑いしている。

 

「朋子さんにボロクソ言われたんじゃない?」

 

 京極君が目を見開いて驚いているけど……うん。

 図星だったか。

 正直、その時の光景が目に浮かぶようだ。

 

「そ、その通りです。私のような若輩者では園子さんの相手としてふさわしくないと思われたお母上が、園子さんに大変お怒りになりまして」

「京極さんは空手部主将なんですよね? なら、朋子さんに『鈴木家に武力は不要』とか言われたのではないですか?」

 

 恩田さんの推測に、またまた京極君が驚いて目を見開く。

 

「ご、ご推察の通りです。さすが、世界一の名探偵。慧眼(けいがん)、お見事です」

「止してくれ、本当の名探偵は恩田さんみたいな部下達で、自分はただのまとめ役さ」

 

 いやホント。

 安室さんや恩田さん達がいないとどうしようもないからな。

 それと、今でこそ自前で回せるくらい金は用意出来るけど、最初期の次郎吉爺さんの渾身のバックアップがなかったらここまでの組織は作れなかった。

 

「恩田探偵のおっしゃる通り、自分のような男は鈴木にふさわしくないと怒鳴られました。お父上の執り成しでその場は収まったのですが……その時に小さく囁かれているのを耳にしまして」

「なんて言ってたの?」

「その……誰もが、突然浅見探偵のようになれるわけではない、と」

「……状況に流されまくってる若造一人に期待しすぎだろう、鈴木財閥」

 

 鈴木財閥に喧嘩を売るつもりはないし、そもそも何かあったら協力するっていつも言ってんのになんでわざわざ俺を取り込もうとするのか。

 越水の会社の方なら、関わった事件の件から多種多様な企業を抱えているから分からんでもないが……そっちにはノーリアクションなんだよなぁ。

 

「場を悪くさせてしまったお詫びにと、格闘技の観戦が趣味だというお父上を次の大会にお誘いしたのですが……」

「朋子さんも付いてくるって言いだしたんだろ。見極める……いや、今の段階でそこまで強い言葉は使いそうにないな。みっともない所を見せないようにとかそんな感じの事を言われたかな?」

「はい、その通りです」

 

 あのさぁ……。

 朋子さんさぁ……。

 ホントさぁ……。

 

(あの人、基本年下イジめるのが趣味の人だから放っておいていいと思うんだけどなぁ)

 

 まぁ、向こうがそうやって身構えてくれるからこっちもなんとなくゲーム開始を察して色々と美味しい思いさせてもらってるけどさ。

 関連会社の株だったり資材だったり技術人材の囲い込みだったりその他諸々、こっちの組織固めにブーストかけさせてもらったりとか。

 

「自分は、次に園子さんのご両親とお会いするまでに、多少なりとも園子さんにふさわしい男へと成長した姿を見せなければなりません!」

 

『……真純、必要あると思う?』

『微妙』

『ですねぇ』

 

 恩田さんも判断に困るのかあいまいな笑みを浮かべている。

 いやぁ、どうしたもんか。

 

 そもそも空手の大会で空手以外に何をどうやって見せるつもりなのか。

 

(ただ、京極君自身は絶対確保案件ではあるんだよなぁ。間違いなく)

 

 コナンや小五郎さん、組織の面々などの超重要人物というほどではないが、それに次ぐ立ち位置にある鈴木園子の恋人で、戦闘力は蘭ちゃんの言葉を信じるなら彼女よりも上。

 

 絶対、アクションが必要な時にふっとそこに配置される駒だ。

 何度か事件に巻き込まれる事があるだろうし、場合によっては容疑者にされたり面倒な目に巻き込まれる上に、爆発で吹っ飛ばされたり銃で撃たれたりするんだろうなぁ。

 

 ……いやもう銃で撃たれて避けてたか。コイツ人間辞めてやがる。怖。

 

「鈴木史郎会長のお目にかなう浅見探偵から、次代の鈴木としての教育を! ご指導ご鞭撻を賜りたいと思い、こちらへ参上いたしました!」

 

 ソファに腰を掛けていた京極君が立ち上がり深く頭を下げる。

 

「どうか! どうか弟子入りを許可していただきたいのです!」

 

「恩田君、君の護衛兼研修生としてよろしく」

「ええ、そう来ると思っていました」

 

 恩田さんも俺と同じ答えにたどり着いたか。

 まぁ、うん。あれだ。

 

 史郎さんに上手くやられたよね。

 こういう策は朋子さんの趣味じゃない。

 

 ともかく、そういう事なら恩田さんに預けておくのが一番だわ。

 手が足りていない事務員に放り込もうかと思ったけど、それはこの子や史郎さんの望む方向性とは違うし。

 

「え、あの……」

 

 もう一悶着あると思ってたのかキョトンしている京極君。

 いやぁ、そもそも園子ちゃんの彼氏って時点でほぼこうするのは決めてたし。

 

「うん、だから採用。――あ、キチンとバイトとして雇うから給料は受け取ってね?」

 

 リシさんみたいに向こう側からキチンと依頼されてっていう形ならともかく、高校生を子弟って形で無償で働かせるなんて、たとえ一分一秒でもウチであってはいけない。

 

 どこかで絶対この子には仕事を手伝ってもらう事になるんだし。

 

「まぁ、俺が直接教えるって言っても何を教えていいか分かんないから、とりあえずは鈴木の仕事に絡むことが多い彼――恩田さんを教育係にする。で、いいかな? 多分、京極君の希望に一番添える選択肢だと思う」

「は、はい! ありがとうございます浅見探偵!」 

 

 そう言ってもう一度頭を下げる京極君。

 

 よし、まずを制服作るための採寸からだな。

 アクションあるのがほぼ確実な彼には、できるだけ急いで制服仕立てないと。

 

 ウチの制服、防弾性のために微妙な調整とかあるから一着一着オーダーメイドなのが玉に瑕。

 ぶっちゃけ普通に防弾チョッキ買った方が滅茶苦茶安いんだよなぁ。

 見た目で不安にさせるから、ウチはもうこのスーツで行くけど。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

〇11月28日

 昨日から恩田君に付けた京極君だけど、実際の腕を見せるために安室さんやマリーさん、真純あたりと格闘させてみた。

 まさか格闘成績トップのマリーさんから五本中二本取るとは思わんかったな。

 

 ただ、本人としては大満足だったみたいで、安室さんやマリーさんにまた手合わせしたいと話していた。

 真純は三本取られたのがすっごい悔しかったみたいで、こっちも安室さんや沖矢さんに格闘戦の練習を持ち掛けていた。

 お前高校生探偵なのに、どうして戦闘力伸ばしたがるんだよ。

 俺みたいなサポート役だったら盾になったり足止めしたり口封じに殺されかかったりする必要あるから戦力必須だけど、お前らはまず知能で戦う側だろうが。

 

 恩田さんから上げられた京極さんの教育方針の計画書に目を通したけど、現場を見せるついでにまずは語学を叩き込むつもりのようだ。

 まぁ、英語が出来ないと理解できない所もあるだろうしなぁ。

 ついでに教育係に沖矢さんも付けるように陳情された。

 数学も叩き込むつもりのようだ。

 

 まさに遠野さんも毎日一,二時間ほど沖矢さんに教えられているけど、スナイパーには計算というか数学が必須だもんだぁ。

 距離測定のための計算用にメモ帳と鉛筆を二人とも常に持ち歩いているし。

 

 元々京極君は武者修行のために休学してるし、時間には困らない。

 うん、少なくとも俺は本当に困らない。困らなさ過ぎて逆にずっと困ってるんだけどさ。

 

 語学は恩田さん、数学は沖矢さん……阿笠博士達との実験にも混ぜて科学知識も一応入れておくか。

 あと爆弾解体演習。

 

 会長候補としての教育に必要かな、とも思ったけどこれからも爆破されまくる鈴木だしな。

 最低でも爆発物に関する基礎知識くらいは持たせておいたほうがいいだろう。

 

 

〇11月30日

 

 以前うちにある銀行強盗の捜査を依頼してきた浦川芹奈さんが、うちのスタッフに加わった。

 正確には銀行を辞めた後、越水の会社に勤めようと面接に行ったらしいが、ふなちの提案でこっちの事務員として働く事を提案された。

 

 元々は犯人を見つけて自分の手で復讐してから自殺しようとしていたが、犯人は銃撃戦の末に俺と安室さん、山猫隊で拘束、その後警察に引き渡して逮捕。

 本人の自殺は源之助によって止められた。

 源之助に止められたってどういうことだよ。

 メアリーがそう言ってたけどさ。

 

 ともあれ、恩返しも兼ねて働きたいと言ってくれたので是非もない。

 背景に裏関係のモノがないのはとっくに調査済みの人間だから信頼できるし、問題ないだろう。

 

 というか、優秀な後方要員が増えるのは本気でありがたい。

 これで双子はもちろん、整備の仕事も押し付けてしまってる小沼さんの負担も減る。

 

 

〇12月2日

 

 一人増えただけで全然違う。

 嘘のように書類が溶けていく。

 

 ついでに京極君も、例えば郵便物のラベル張りのような事務方の雑務作業を手伝ってくれるから効率が段違いである。

 

 仕事内容がもうちょい機密とか極秘事項から離れたモノだったらガンガン人員増やせるんだけどな。

 越水の会社の方で使えそうな人員見繕ってもらおうか真剣に悩んでしまうな。

 

 今日は恩田さんやウチの傘下の医療関係者数名と一緒に、例の病院船についての設備等に関しての打ち合わせに八代グループの船設計士である秋吉美波子さんに会ってきた。

 

 なんというか、ふなちから聞いていたけどマジで妃先生に雰囲気が瓜二つだった。

 髪型同じにして並んでいたら、後ろ姿だけだとどっちがどっちか分からなくなるかもしれん。

 

 とりあえず大きめの模型が出来たら搬入や搬送口の調整して、目途が付いたら二隻作ろう。

 一隻はカリオストロに送って、もう片方はこちらで使わせてもらおう。

 

 ヘリ空母としても使える船は役に立つ。

 

 

〇12月5日

 

 久々に休日がガッツリ被ったので、七槻と飯に出かけたら殺人事件が起こった。

 爆弾はもちろんミサイルとか核とか謎の鉱石とかは一切ない。陰謀もない。

 そうそう、こういうのでいいんだよ。

 

 流水亭っていう、最近人気の和食の店だったのだが……いや、人気店だからか?

 この世界、うかつにいい店に立ち寄れないな。

 店は基本全部個室で、各部屋を横切るように人工の小川が流れてて、注文すると船の模型が注文した料理や酒を運んでくるっていう洒落た店だったのに……ホントにもう最悪だ。

 

 殺されたのは縄文大学の助教授、金田圭三。29歳。

 

 幸い事件は無事に解決。

 まぁ、例によって例のごとくトリックを用意してくる実にらしい犯罪者だったのだが、真っ先にアリバイで容疑を外された奴に目星付けて色々探ってたらあっさり解決。

 まぁ、七槻もいたし途中でたまたま来てた検事の九条さんも力を貸してくれてスピード解決だった。

 

 その後せっかくの食事も台無しになったし、今日は晩飯も流水亭の持ち帰り用の寿司を買って帰る予定だったし、桜子ちゃんもお休みだし、そしてあれこれ凝ったものを作る気力もなくなったので気軽にカレー。

 

 帰りにスーパーによって材料購入。肉を何にするかでちょっと七槻と揉めてじゃんけん勝負。

 結果、負けて牛肉になった模様。

 豚肉の何が悪いというのか。

 ひいきだ。差別だ。今度ふなちと桜子ちゃん、楓に哀も交えて肉会議を開かなければ。

 

 まぁ、肉では負けたけどしめじの大量投下を認めさせたから実質引き分けだ。

 七槻め、今回は見逃してやる。

 

 

〇12月10日

 メディアが落ち着いてきたので、哀と楓をこっちの家に戻すことにした。

 哀の方はともかく、楓は王三郎さんの依頼もあるから戻せてよかった。

 阿笠博士の家に預けている間、王三郎さんの所の長男長女の二人が家の近くをうろついていたみたいだし、もうちょっと時間かけていたら馬鹿な真似をしていたかもしれん。

 

 アイツらがやらかすのは別にいいんだけど、それで阿笠博士に被害が出ようものなら不味いから冷や冷やした。

 一応世話役の桜子ちゃん以外に警備も付けてたけど、やらかす奴はやらかすからなぁ。

 

 不動産王、片寄王三郎の資産。

 具体的にいくら位かは分からないけど、まぁかなりの資産だろう。

 狙われるのも無理はない。

 ……思えば、瑛祐君が俺を疑う理由になったほどだし。

 

 そうだ、明日楓を連れて王三郎さん家に行って来よう。あのトリック屋敷もまた楽しみたいし。

 

 

〇12月11日

 どうして金持ち連中は片っ端から俺を養子にしたがるのか。

 王三郎さんから養子とか資産受け取ってくれとか遺言状とか言われるとは思わんかったわ。

 朋子さんといい史郎さんといい若者の胃をいじめるの止めてくれませんかね。

 

 俺も恩田さんも薄々そうだと考えているけど、京極君の弟子入り案件、あれ絶対史郎さんの仕込みだよね。

 事の始まりが、史郎さんが一目会いたいって誘った所からだし。

 京極君が聞いたって言うあのつぶやきも、わざと聞こえる様に言ったんでしょホントもう……。

 

 それにしても楓、マジで王三郎さんの隠し子じゃないだろうな。えらく執心しているというかなんというか。

 お茶を飲みながら王三郎さんと話してたら、いつの間にか楓が、連れてきていた源之助を抱きしめたまま眠ってしまっていたので、今日はそのまま王三郎さんの家の離れに泊まっていくことになった。

 

 マジで源之助、子供相手だと大人しいな。

 ずっと抱きしめられてるのにほとんど身動きせずに抱き枕になってる。

 

 俺が同じことしたら俺の目の前に腕を出してゆっくり爪を剥いてくるのに。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「なら、年明けにヴェスパニアとカリオストロの共同経済特区構想の発表に行くのは透、お前と恩田君、越水さん、それに鳥羽さんで行く形がベストか」

「例の蜘蛛の連中の件もあるから、ジョドーも連れて行く。護衛役としてこれ以上ない人間だからな」

 

 ようやく一番やっかいな仕事のほとんどが終わって安室さんも俺もゆっくりできる日が来たので、こうして宅飲みである。

 実質事務所だけど。

 

「まったく、一応一息つけるようになったとはいえ、本格的に気を抜くにはまだまだだな」

「ホントにね。それこそ先週までは、俺か安室さんのどちらかが事務所にいないとヤバかったしねぇ」

 

 こうして日本酒空けながら安室さんが作った刺身やら煮物やらに箸をつけているのに、出てくるのは仕事の話ってのも悲しいもんだ。

 

「それが無事に終わったら一月末にはシンドラー・カンパニーのコクーン完成パーティーか」

「正確には、樫村さんとトマス・シンドラーとの会談ですねぇ……面倒な予感がひしひしと……」

「お前が面倒事を引き寄せるのはいつもの事だろう、透」

「それを言われると辛すぎて酒が進みますなぁ」

「それこそいつもの事だな」

 

 めんごめんご。

 でも、そういう安室さんはこれだけ酒飲むの珍しいですよね。

 

 下で飲む時とかニューヨークみたいなバーボンのカクテル2,3杯しか飲まないのに。

 

「ひょっとして安室さん、日本酒の方が好き?」

「ん……。あぁ、深く考えたことはないけど、言われてみれば確かに日本酒の方が多いかもな」

「なら、今度亀倉さんの店がオープンしたら一緒に顔出しに行きません? 料亭だから日本酒も種類揃えるって言ってましたよ」

「本当か? それはいいな。あの人の料理は和洋どちらも出汁やブロードがすごく丁寧で、ぜひ勉強させてもらいたいと思ってたんだ」

 

 探偵から料理人にジョブチェンジするつもりですか?

 

「そういや安室さんも自分で出汁のストック作る人でしたね。俺にはさすがに無理だぁ……粉末出汁万歳」

「お前の所は無理もないだろう。そもそも、住んでる人数が人数。大家族だからな」

「桜子ちゃんいなかったら、家事もそうだけど楓の事で相当悩んでいたのが容易に想像つく……」

「彼女には感謝しろよ? 彼女がいなかったら、いつぞやの時のようにお前着の身着のまま出所して事務所の風呂かシャワー室で軽く汗を流してすぐに仕事っていう生活にすぐ逆戻りだ」

「ホントホント」

 

 いやまったく。

 ウチの大黒柱なので、紹介所通さずもう直で雇ったしなぁ。

 

 彼女の親代わりだった若松さんにもキチンと挨拶しにいったし。よろしくお願いしますと頭下げられたし……。

 無下にできねぇ。

 

「……あぁ、そうだ。例のプログラム。DNA探査システムはどうなっているんだ?」

「訳ありっぽいのでとりあえず機材も含めて厳重に保存、保管。ちょっとシンドラー・カンパニーは動きが怪しいので、話し合いの時もまずはダミーを持っていこうと思ってます」

「……物理的に消去しかねない、と?」

「あれに俺達が関わるように仕込んだの枡山さんですからね。プログラム自体に何もなくても、それが作られた理由とか作った人とかそういうあたりにトラップというか……こう」

「火種がある可能性が高い?」

「……まぁ、あってもおかしくないかなぁって」

 

 あれホントになんなんだろうな。

 トマス社長はなんか焦ってる感じがするし、樫村さんからはなぜか「色々とよろしくお願いします」とよく分らん頼みをされるし。

 お願い事をするならちゃんと内容言ってくださいよ。お会いしてからお話ししますとかそういうのいいから。

 典型的な死亡フラグだから。

 

「透、セキュリティには特に念を入れておけ。色々状況が怪しいというのもあるが、ロシアの一件以降サイバー攻撃が凄いんだろう?」

「……まさか、ウチが世界中からD-DOS攻撃受ける日が来るとは思わなかったなぁ。まぁ、内部の方には影響ないけどさ」

「攻撃元はある程度特定しているんだろう?」

「一応。でもまぁ、ほとんどはゾンビボットで……。いや、大本も大体わかってるけど」

 

 なぜか大暴れしたロシアよりもアメリカからクソみたいに攻撃されてる。中国からは元々受けてたけど。

 俺が何をしたっていうんだ奴らめ。

 

「サーバーも増設したし、物理的にもサイバー的にもセキュリティは今できる最上位に設定。こっちの主なプログラマーに今、ハニーポットなんかも含めて対策全部強化してもらってる」

「……お前と事務所を始めてから色々あったが、先日のロシア以降から事態の加速度が尋常じゃないな。お前、恩田さんと一緒に何回吐いた?」

「なんという汚い質問。まぁ、かなりの回数かと」

 

 俺か恩田さんじゃないと対応できない仕事が雪崩起こしたからな。

 もうちょっと初穂にそういう経験積ませたら恩田さん、安室さんレベルまで情報を共有させて交渉の仕事もさせるか。

 

 ロシア以降は安室さんも――いや昔からそうだったけど今回は特に無茶ぶりしちゃったからなぁ。

 

「浦川さんが来てくれたのはありがたいが、やはり早急にスタッフを増やすべきだ。サイバーセキュリティに対応できる人員も含めてな」

「だけど扱う情報の重要性と求められる機密レベルが跳ね上がりすぎて、募集もうかつに出来ないんだよなぁ……って、ふなちとも前にこの話したな」

「中居さんか。今思うと中居さんの事務処理レベルってきわめて高かったんだなぁって思い知らされる」

 

 安室さんから見てもやっぱりそうか。

 純粋に書類の量に圧殺されかかってた時に、ギリギリとはいえ双子と一緒に捌き切った女だもんなぁ。

 

 越水の所に預けてよかったと思う反面、アイツがいればなぁと思う時がある。

 

「スタッフ……スタッフかぁ。防諜意識の高い人で誰かいい人いないの、安室さん。引き抜けそうな人」

「いればとっくにお前に紹介している」

「まぁ、ですよね」

 

 うーん、やっぱりこういうスパイ送り込みやすいシチュエーションを作ってみても反応示さないか。

 もうこの人白でいいんじゃないか? 仮に裏切ってもそこまで踏み込んだ裏切りはしないと見た。

 

 裏切る可能性があるとしたら……うーん、こう、ダークヒーロー的な真犯人を見つけるために親しい人間をも利用するとかそういう方向性……かなぁ。

 目的自体はこっちと被ってるというか。

 

 そういう状況になりそうな役どころは……駄目だ、やっぱ公安くらいしか思いつかん。

 潜入捜査ってなると厚生省の麻取とかかとも思ったけど、安室さんが俺達に関わった時にはそういう話とは縁がなかったし……。

 

 俺に関りがあるとなるとFBIかもと思ったけど、思い返すと入所したばかりの頃のキャメルさんにすごい警戒心持ってたしなぁ。

 

 ……いや、待て待て怜奈さんみたいにCIAって事もなくはないか。

 もう一つの方は特定せず、とりあえずどこかの潜入捜査官が二足の草鞋を履いているって感じでとりあえずまとめておこう。

 

 決めつけて動いてるとどっかでしっぺ返しが来そうだ。

 

 あ、そうだ。

 

「そういえば、例の話マジで言ってます?」

「うん?」

「副所長、初穂に任命し直してくれって話」

「あぁ、そのことか。当然だ。ロシアの一件で分かったよ」

 

 

 

 

 

「俺はどうにも、お前の代わりを務めるよりも隣で暴れる方が性にあっている……という事がな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで探偵が暴れる前提の話をしているんです? 絶対におかしいですよね?」

 

 

 

 

 

 

「……安室さん? 待ってなんでヘッドロック――高速でわしゃわしゃすんなあっつっあっつい!! 毛根が! 毛根が燃え尽きる!!」

 

 

 




rikkaのコナンコラム

〇京極真 18歳 杯戸高校3年生・男子空手部主将
 CV:檜山修之

初出:原作コミック第22巻File.8「それゆけ園子」
      アニメ第153・154話『園子のアブない夏物語』

ここまで本作を読まれている人にはもはや紹介不要と思えるコナン界のZ戦士。
初登場の時は恒例の容疑者枠だったが、典型的な怪しすぎて怪しくない人で絶対犯人じゃないと思ってたが、誰が腕にナイフぶっ刺されてもうめき声一つ上げず涼しい顔で女口説いて犯人ぶっ倒す超人と想像できただろうか。

その後キッドとの対決で完全に人間を辞めるとは本当に誰が想像できただろうか。

筆者的にもっとも劇場版での活躍を色んな意味で心配した男である。
……そうか、今考えると『紺青の拳』ってコナン映画の平成ラストを飾った映画になるのか。

本編では日本にいるが、原作では武者修行のために海外を転々としている。
そのため出番は非常に少ないためアニメ855話『消えた黒帯の謎』で彼がメインのアニオリ回が作られた時は本気で驚いた。

この回や『こうのとりミステリーツアー』のように蘭や園子たちや少年探偵団といった常連ではなく、ちょっと出番が少なめのキャラが出るアニオリは大好物なので出来ればもっと作ってほしいものである。





このコラムを書くためにちょっと調べたがコイツ妹いたのか。
大丈夫? その子ピアノを軽々と持ち上げられたりしない?

なお、ピクシブ百科事典の彼についてのページには、ミステリー漫画には似つかわしくない『戦績』という項目がある。

一通りコナンは読んでるけど、京極さんってどんな活躍してたっけ? という方はぜひ飛んでみよう。

きっと昔のコミックスやアニメを観返したくなると思います。


〇浦川芹奈
CV:桑島法子

file671-674 探偵たちの夜想曲
コミック:76巻
DVD:PART21-8

本作81話『止められない流れ』にて登場して、その際恒例のコラムも書いておりますがずいぶん前なのでもう一度さらっと紹介。

まず何が大事ってCV桑島法子。もうこれだけで素晴らしい。
次に、探偵事務所籠城事件というとんでも事件でもなんとか無傷で乗り切ることができた毛利探偵事務所を完全に事故物件にした大戦犯でもある。

大した奴だ。

恋人を殺した銀行強盗を探しだすためにあれこれ画策し、犯人を殺し尽くしたら自分も自殺するつもりだったがそれをコナンに止められる。

今思うと、すでに二人本当に殺していてそれがバレているのにコナンと協力できた珍しい犯人ですね。

なお、彼女の登場した事件は本格的にバーボン編が始まる事件でもありました。

いや、本当にこの回豪華なので、思い返したい方はぜひアニメを観返してみましょう。



【事件コラム】

〇流水亭に流れる殺意
 アニメオリジナル第161話

 某鼠ランドの小さい世界などを思い出させる水のアトラクション的な料亭
 初めて見た時から衛生面は大丈夫かと問いたくなる。……まぁ、あれ蓋とかしてればまだいいかもしれんが、入り口近くで料理そのまま載せた船が橋の下をくぐらせるのはあれ多分アウト。

基本的に美人が出てる作品の方が大好きなんですが、これはそうじゃないのに妙に記憶に残ってる事件でした


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