平成のワトソンによる受難の記録   作:rikka

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130:パーティ前夜

「ったく、来てるなら来てるってそういえばいいだろうが」

 

 夜中の毛利探偵事務所。

 家主である毛利小五郎と娘の蘭は用事で出かけており、留守番をしていたのは江戸川コナンだけ。

 

 だからこそ、芝居を打って怪しい人物をおびき出すには十分だった。

 

「母さん、それに父さんも」

「久しぶりじゃのう、有希子さん。優作君も」

 

 望遠鏡さえあれば探偵事務所を観察できるグルニエの家に引っ越してきた住人である老夫婦。

 この事務所にて、江戸川コナンが何者かに射殺される光景をカメラ(・・・)で覗いていた彼ら――特に彼女は慌てて毛利探偵事務所に駆け込んできたのだ。

 新ちゃん! と叫びながら。

 

 その時点で、老夫婦の正体は確定していた。

 

「もう……気づかれちゃったのは仕方ないけど、脅かさないでよ新ちゃん」

「ったく」

「まぁ、今回はしてやられたな有希子。阿笠博士を味方に付けられた我々が不利だった」

 

 もはや演技を止めた老夫婦は、それぞれの顔に張り付けていたマスクを脱ぎ捨てた。

 マスクの下から現れたのは、世界でもトップクラスの推理小説家と、その妻である大女優。

 つまり、工藤新一の両親である。

 

「それで? なんでわざわざこっちに来たんだよ」

「おや、聞いていないのか? お前も知っているだろう? 明後日の『コクーン』完成披露宴に出席するためさ」

「コクーン? あれって……ああ、いや、そういえば最初はゲーム機として開発されたんだったか」

 

 コナンからすれば、アレはゲームというよりは一種のスパコンだった。

 物理演算はもちろん、気温や風向などの気象情報に海流、海温などの環境情報などのデータも蓄積されて、実際にそれを可能な限り高い精度で組み込んだ疑似体験を可能とする装置。

 実際には難しい、強い痛みや怪我を伴う可能性がある実践的な訓練でも、まずはその装置で試すことで事前に準備が可能だった。

 

 浅見透も当然この恩恵を強く受けていて「この装置なら何回でも死ねるし体と脳を痛みに慣らすこともできるし便利でいいわぁ」と、例えばどのくらいの高さからどういう場所に落ちれば自分は死なずに着地できるのかといった、限界値を見極めるようなシミュレートを痛覚設定そのままで行っている。

 

 なお、シミュレート内容のハードな設定を何度も依頼され、根負けしてしまった金山が真っ先にやったことはシミュレートルームへのAED設置と医療チームによる緊急救命班の待機要請である。

 

「彼の所有するコクーンは、どれも特別な改良や調整、あるいは増設されている。単純なスペックではあの事務所のコクーンの方が圧倒的に上だろう。開発主任の樫村からも、そう聞かされている」

「俺も一度経験したけど……ん? ちょっと待った」

「なんだ、新一」

「コクーンの件でこっちに来たんなら、あの中華街で俺達を襲った中国人は?」

 

 まだ老人の正体に見当がついていなかった間、コナンは浅見の車で、共に変装した優作を尾行していた。

 そうしてたどり着いた中華街のとある骨とう品店の奥で、彼と密談をしていた謎の中国人の老人を発見。

 

 ここまではよかったのだが、うっかり音を立ててしまったコナン目掛けて急に老人が青龍刀を投げつけ、とっさにコナンの盾になろうと飛び出した浅見が青龍刀を白羽取りで受け止めてしまう。

 

「あぁ、彼は取材対象者だよ。あの骨董品店の店主は、若い頃大陸で活躍した義賊の首領でね」

「滅茶苦茶いい笑顔で棍構えて襲い掛かってきた時は、奴らの仲間なんじゃねーかと焦ったじゃねーか!」

「いやぁ……尾けられているのには気付いていてね。当然そのままあの店に忍び込むだろうと予測していたから、ちょっと脅かしてくれないかと頼んだんだが……」

「まさかいきなり青龍刀ぶん投げるとは思わなかった」

「加えていうなら、お前の助手君が飛び出してきて、無傷で受け止めた事も想定外だった」

 

 多分、一番予想外だったのはあの中国人のおっさんだったろうなぁ、とコナンはあの時のことを思い出していた。

 受け止めた青龍刀をクルリと回して自然に構えた浅見透の姿に、義賊時代の血が騒いだのか近くに転がっていた棍を足で拾い、構える老人。

 

 そこから始まったのは突然のカンフー映画のワンシーンだった。

 斬ろうとはせずとも、得物を上手く使って棍を叩き落そうとする浅見透。

 踊るような浅見透の斬撃を最小限の動きで受け流し、隙を見て急所を突いて気を失わせようとする老人。

 

 繰り広げられる大激闘。

 

 技と技のendless battle。

 

 帰ってこいミステリー。

 

「いやぁ、一時はどうなるかと思ったが、お前が無事に退避したのを確認して彼も綺麗に撤退したし、あの老人も思わぬ一戦を非常に喜んでくれてね。おかげで取材がはかどったよ。彼には改めて、礼を言わねばな」

「喜んだのかよ!?」

「あぁ。義賊時代でもあれほどの使い手は滅多にいなかったとね。次回作の『ナイトバロンvs謎の中国人』は傑作になりそうだ」

 

 本当にそれ傑作になるんだろうな? という疑惑の目を送るコナンに、優作はコホンっと咳ばらいをして、

 

「まぁ、なによりお前が心配だったというのがあった。……先日のヴェスパニアの件といい、この数か月でお前の周囲でとんでもない事件が多発していたからな」

「そうよ? 新ちゃん電話で事件の事聞いても、『大丈夫』としか言わないじゃない」

「それじゃあ、グルニエの窓から覗いてた望遠レンズ付きのカメラはなんだよ?」

「あら……バレてた?」

 

 コナンと一緒に尾行している間、変装していた有希子と話しながら観察していた瀬戸瑞紀からその考察と推理を聞いて、おおよそ工藤家の家族だろうと踏んだ浅見透はとっくに手を引いて溜まった書類やメールとの格闘に時間を費やしているためこの場にはいない。

 

「三階だからって窓開けっ放しにするなよなぁ。それもカメラ付けたまま。あんなんあっさり見つかるに決まってんだろ」

「だぁってぇ~~! せっかくだし、小さくなった新ちゃんの写真をい~~~~っぱい撮っておきたかったんだも~~ん!」

 

 もしこの場に浅見透がいたら、危機管理に関して数分悩んだ後に主人公補正という言葉にたどり着いてそういう物かと勝手に納得していただろう。

 

「それに、しばらく放っておいたらいつの間にか怪しい男が新ちゃんの助手とか名乗ってやりたい放題してるじゃない!?」

「やりたい放題って……むしろ、俺が役目を押し付けちまっただけっていうか……」

 

 元々は森谷帝二の爆弾事件に、江戸川コナンが浅見透と共に介入した件への咄嗟の言い訳だった。

 それがどこからか情報が洩れ、鈴木財閥相談役である鈴木次郎吉に目をかけられた所へのスコーピオンによる襲撃。

 

 事件に積極的に関わるようになった探偵事務所設立(強制)以降はともかく、浅見透が江戸川コナンに関わり始めたばかりの頃は本当に全部偶然だった。

 

「しかし、すでに彼は力を得た。あまりにも不自然な速度で、あまりにも不自然な方向に」

 

 だが、今では浅見透は流れを作り出せる男だ。本人が自覚しているかどうかはともかく、それは第三者の目から見て間違いのない事実である。

 

「探偵事務所の所長として大成し、今ではより優秀な人材を抱えて多種多様な企業を抱えて勢力を伸ばしている。本人は所長を自称しているが、実質は浅見グループの会長だ。それほどの存在が、なぜ、お前に献身的とまで言える協力を続けている?」

「それは! ……それは……」

 

 浅見透からすれば、協力は当然だった。

 江戸川コナンが事件を一つ解く度に、世界が次のステップへと進む可能性は高くなる。

 

 だからこそ、江戸川コナンという『小学生』が事件を解決するのに邪魔になるシチュエーションをことごとく排除するために、浅見透はここまで奮戦してきた。

 

 存在しないハズの江戸川コナンという人間を実在させるためのカバーストーリーの作成と定着。

 見た目が小学生であるため現場に入りづらいという彼のハンデを軽減するための捜査一課への根回し。怪しまれず、かつ嫌味にならない程度の顔通しと実績の喧伝。

 江戸川コナン自身に加えて周囲の人間の緊急事態に備えての装備や設備の購入、開発、研究。

 構築した情報網や、それによって入手した情報の迅速な共有と提供。

 いざという時の盾役。

 

 全て一文にもならない――というわけではないが、それでも江戸川コナンに関連する活動が大赤字なのは間違いない。それも、桁違いの。

 

 にも拘わらず、浅見透がそれらに関して手を抜いた事は一度もない。

 むしろ数か月に圧縮された年々を通して、更に力を加えている。

 

「新一、お前と彼が知り合ったのはつい数か月前だ。にも拘わらず、なぜ彼はそこまでお前の力になろうとするか、聞いた事はあるか?」

「い、いや……」

 

 休みが開いた時は阿笠博士と共に少年探偵団のメンツと共にキャンプや釣りに出かけたり、そして巻き込まれた事件を共に解決している。

 

 用事がない時は浅見透の事務所を冷やかして、待機している調査員と新刊の推理小説の話をしたり、解決した事件の話を聞かせてもらっている。

 

 気が付けば、浅見透とその周囲は完全に江戸川コナンの日常に、『当たり前にいる』人間になっていた。

 

「彼がお前の力になっているのは事実だ。それに関しては疑いようもない。だが、逆になぜそうするのか? それに関しては謎が多い。資金源や人脈、人材の入手法に加えて、ノウハウなど何もないハズの無名の大学生が、なぜ瞬く間にここまで組織を拡大できたのか。謎しかないと言っていい」

「…………」

 

 

 

「だから、直接会ってみようと思ったのだよ。謎と噂と――たくさんの功績だらけのワトソン君に、ね」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

――ふん! いちいち言われんでもわかってるっつってんだろ! もう切るぞ!!

 

 

(おっとぉ、ドアの向こうから罵声が……。)

 

 グルニエの家に引っ越してきた謎の老夫婦に関しての一件は、コナンが昨晩決着をつけた。

 瑞紀ちゃんとも話していたが、予想通りとくに事件性や緊急性はないとの事なので、安心して明日の事について一応確認しておこうと毛利探偵事務所を訪ねたら……突然の罵声に迎えられている。

 

(電話越しの会話っぽいし、妃先生かなぁ)

 

「失礼しまーす。小五郎さん、酒とつまみ持ってきましたよー」 

「あ゛ぁん?! ……あぁ、透か」

「あ、お兄ちゃん! いつもごめんなさい……あぁ、もうテーブルの上吸い殻と空き缶だらけで……お父さんもちょっとは片づけてよ!」

「別に気にしないでいいよ蘭ちゃん。小五郎さん、適当に座っていいですかー?」

「馬鹿野郎、今更んな事一々聞くな。ご立派なパーティでもないのに座らねーで酒飲む奴がいるかぁ!」

 

 うーん相変わらずの対応で変な笑いが出る。

 昼に訪ねた時でもたまに飲んでるからな小五郎さん。

 そして問答無用で俺にも飲めって言ってくるから堂々とご相伴に預かれる。缶ビール万歳。

 

 ……あぁ、でも今は志保が自室にいるんだよなぁ。

 こ、コーヒーがぶ飲みしたら匂いとか誤魔化せないかな……。

 

 …………。

 

 いいや、とりあえず飲んでから考えよう。

 

「お、刺身残ってるじゃん。コナン、そっちの醤油皿使わせてもらっていいか? ありがとう」

「まだ何も言ってねーよ。……別にいいけどさ」

 

 おめーどうしたんだよ。朝から歯切れ悪いなこの野郎。

 

「あ、小五郎さん。明日のパーティ、酔いすぎないようにしてくださいね?」

「あぁん? んだよ、オメーまで英理みてーなこと言いやがって」

「明日のパーティ、途中で沖野ヨーコさんが歌うんで、下手に悪酔いしちゃうと彼女に迷惑が――」

「了解しました! 不肖毛利小五郎! 明日のパーティでは悪酔いせぬ事をここに誓います!!」

 

 この切り替えの早さよ。

 さすが迷探偵毛利小五郎。

 

 コナンとか蘭ちゃんは冷たい視線送ってるけどそういう所、自分大好きです。

 今度恩田さんと行く例のバニーガールクラブにこっそり誘うか。

 女の子可愛いし優しいし飯もまぁまぁだし酒がある。

 パーフェクト。

 

「にしても、英理って妃先生の事ですよね? なにかあったんですか?」

 

 俺がここに着く前まで電話でやり合っていたみたいだし、いつもの奴があったんだろう。

 

「あぁ、大した事じゃねぇよ。明日一緒に行くんだから、ちゃんとクリーニングした服は持っているのかとかヒゲは整えて来いとか色あせてないネクタイはちゃんとあるのかとか明日の飯で食べすぎたり飲みすぎたりしないようにとか細かい事をネチネチネチネチ……っ」

「ネチネチってなによー。お母さん心配してくれてるのに」

「余計なお世話って言うんだよアレは!」

 

(うっわぁ、身だしなみに関してはまんま七槻に言われてる事だわ……)

 

 ウチの場合だとクッション役のふなちとか家事やってくれる桜子ちゃんいるし、ガチで喧嘩らしい喧嘩したのって多分四国の一件の時のが最後だけど……。

 

 そういえば、例の盗聴器の件で七槻やふなちが俺の家に住みだすようになった時に真っ先に俺の家に追加されたものが姿見だったな。

 ちゃんとした服を着ろとネチネチ言われていたのを思い出す。

 

(他の人の服作るのは好きだし色合いとか考えるの好きなんだけど、自分の着る服選ぶのは面倒なんだよなぁ)

 

 ジャージとスーツ万歳。シワとか染みさえなければ普通に見えるから選ぶ事考えなくていい。

 

「おいコナン」

 

 あれこれ言っている蘭ちゃんの言葉を、焼き鳥の串を咥えながら聞き流している小五郎さんを尻目に、そっとコナンの耳を借りる。

 

「蘭ちゃんのあの感じからして、ちょっと前に小五郎さん、妃先生と直接会ってた?」

「あぁ。事件でちょっと……まぁ、解決した直後におっちゃんのファンの女子大生にデレデレしてまた喧嘩別れだったけど」

「……ひょっとしてだけど、その出会った切っ掛けって蘭ちゃんが小五郎さん……いや、二人に内緒でセッティングしたんじゃない?」

「大正解」

「……上手くいく訳がないんだよなぁ」

「うん、ない」

 

 蘭ちゃんはやり方が下手すぎる。何がしたいかは分かるがなぜそうしたとツッコみたくなることが多すぎる。

 

(メインがコナンと組織の話なら、小五郎さんと妃先生の復縁はそれにきわめて近いサブなんだよなぁ)

 

 進むかどうかの確証はないが、二人の仲の改善を手伝う価値はある。

 そもそも、妃先生の所には九条検事共々日ごろから滅茶苦茶世話になっているし……。

 

 娘の蘭ちゃんがサプライズとかやっても面子で上手く動けないだろうし、う~~~む。

 ……まぁ、やるだけやってみるか。

 

「明日せっかくお母さんと食事するんだから、あんまりヨーコさんにデレデレしないでよ?」

「ったくうるせぇなぁ。せっっっかくヨーコちゃんに会えるってのに話しかけないわけにはいかねーだろがい!」

「この間みたいにお母さんを怒らせるような事はしないでって言ってるだけじゃない!」

 

 うーん、見事なバッドコミュニケーション。

 まぁ、こういうのって身内だからこそ難しいんだが。

 

「まぁまぁ蘭ちゃん落ち着いて。小五郎さんも、その缶もう空いちゃってるでしょ?」

 

 さっきから喉が全然動いてないし、中身はもうないけど席を立って新しい缶取りに行くのもバツが悪いけど手持ち無沙汰でとりあえず飲むふりしていたと見た。

 

「ほら、とりあえず一杯やって……」

「お、おお、悪いな透」

 

 とりあえずもう少し飲まそう。

 蘭ちゃんのお小言でちょっと酔い覚めちゃってるし。

 

 さて、どういう方向で攻めるかな……。

 まぁ、とりあえず酒飲みながらタイミング計るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 三時間後 ――

 

 

 

「別になぁ……喧嘩してぇわけじゃねぇんだよ」

「ええ、ええ」

「だけどよぉ、これまでのやり取りとか娘の前とかそういうのがあるとよぉ……」

「分かります分かります。大体が引けない状況になっちゃってて、つい強く出ちゃいますよね」

「そうだよ! そうなんだよ!」

「そういう……まぁ、なんというかチャンスがあって、それをキチンと物にしようと頭で計算してても大体横やり入って狂いますしねぇ」

「透ぅ……おめぇはいいよなぁ……。周りにいる女は皆優しそうでよぉ……日頃からちゃ~~んとお前の面子立ててくれてぇ……」

「いえ、家の中に入った途端にヒエラルキー変わるんすよ」

「……頭、上がらねぇか」

「上がりませんねぇ」

 

 

 

 

「蘭姉ちゃん。なんかあそこだけ急にオジサン臭くなったんだけど」

「…………そうだね」

 

 

 

 

「透ぅ……なんかいい手はねぇのか。俺ぁ、お前以上に女の扱い上手いヤツ知んねぇぞ……」

「いや、俺いつも振り回されてるんですが」

「なに言ってやがるテメェ……この間だって佐藤刑事と二人で飲んでたじゃねぇか」

「いいえ、あの人間違いなく人を都合のいい抱き枕か人力馬車だと思ってます。絶対。……酔いつぶれたあの人警察宿舎の部屋まで見つからないように運ぶのクッソ大変だった……」

「馬鹿野郎、男だったらそこでグッと踏み込めぇ、グッとぉ……ヒック」

「いや、覚悟無しに踏み込んだら捜査一課の野郎どもに事故死させられますんで」

 

 

 

 

「ねぇ、コナン君」

「なに、蘭姉ちゃん」

「この前、見たことある刑事さん達が、お兄ちゃんの事務所の前でスゴい怖い顔して(たむろ)してたのってひょっとして……」

「見なかった事にした方がいいよ、蘭姉ちゃん」

「……そうだね」

 

 

 

 

「ただ、そうですねぇ。明日の雰囲気を壊さない方法は多分あると思いますよ」

「……ちなみにどんなんだ?」

「知りたいですか?」

「…………」

「小五郎さん」

「おう」

「知りたいですか?」

「……………………ぉぅ」

「じゃあ、はい」

「……なんだぁ、その手は」

「千円」

「なにぃ!!?」

「千円です」

「金取んのかテメェ!?」

「大切な情報にして、かつ小五郎さんの今後を決めかねない指針ですよ? 情報提供者としての責任を持つためにも金銭での取引という形が一番適しているかと」

「こ、このやろ……っ」

「で、どうします?」

「…………っ」

「小五郎さん」

「……きっさまぁ……っ!」

「どうします?」

「……くそぅっ! 持ってけぇいっ!」

 

 

 

 

「財布じゃなくてお尻のポケットから生の千円札取り出したわ。うわ、しわくちゃ……」

「……多分、おじさんのいざっていう時の予備金じゃないかな」

 

 

 

 

「毎度ありがとうございます」

「それで……お前ならどうするんだよ?」

「簡単な事です。いいですか、今から言う三つの事を常に頭において行動するんです」

「……三つ」

「ええ、三つ。女性が求めているのは愛情とやさしさと気配りの三つです」

「……愛情、やさしさ、気配り」

「そうです、それを頭の片隅において、自分が行動を起こす前に一歩立ち止まるんです。それで一番厄介なシチュは大体解決します」

「…………」

「…………」

「……それだけ?」

「はい。簡単でしょう?」

「そうだな。ウッハッハッハッハ!!」

「ハッハッハッハッハ」

「…………」

「……小五郎さん」

「おう」

「その手はなんです?」

「千円返せ」

「嫌です」

「…………」

「…………」

 

 

 

 

 

――てんめぇっ! 金持ちの分際でなにせっこい真似してんだ!!

 

――何言ってるんですか俺今これ以上ないくらい誠実に答えたじゃないですか!! これは正当な報酬です!!

 

――あんな小学校の道徳授業でふわぁっと出てくるような単語三つでどうにかできるんならとっくにどうにかなってるわぃ!!

 

――小学校の先生に謝ってください小五郎さん!!

 

――まずお前が俺に謝れ!!

 

――やだ!! 俺悪い事してないもん!!

 

――貴様ーーーーーっ!!!

 

 

 

 

「お、お兄ちゃん……」

(くっだらねぇ……)

 

 

 

 




なお、浅見は結局事務所に泊まった模様


忘れていた。予告していた追加コラム

〇『米花町グルニエの家』
アニメ:file418(アニメオリジナル)

当時なんかすごい好きだったアニオリ回。
……というか、アニオリで工藤夫妻が出てきたのってこれだけなんじゃなかろうか??

歩美ちゃんからコナンへの強烈なアプローチに始まり夢砕ける元太光彦両名。
そういえば元太はうなぎ一筋になって、光彦も灰原さん灰原さん言い始めて歩美ちゃんにアプローチかける描写完全に消えましたね

元太はまぁ、いかにもな食いしん坊キャラだから分かるんだけど光彦君はキミ大丈夫?
気が付いたら一番のマセガキになってない? 年がもうちょっと上だったらnice boat要員になりかねないよ??

……やっぱりアレだ。天国へのカウントダウンでのあの相談がアカンかったんや。

そして出てくる謎の中国人。
まずなぜ日本にいるのかもそうだけど工藤先生、ミステリー作家として『ナイトバロンvs謎の中国人』というC級臭いタイトルはもうちょいなんとかなりません???





本来だったら存在しなかった工藤ママに妃先生も追加しての、次回ベイカー街開幕。

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