悪魔これくしょん -デビこれ-   作:ハーメルンkpx

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他者は、報酬・義理・人情のいずれか1つ条件を満たせば使役することが出来る。
また、そのときの強制力は報酬、義理、人情に順ずる。

そして、これは人為的に悪魔を作り出そうとしたときの、その容易さとも同じ順列である。

人の中にはお金さえ積めば、人殺しの依頼をも良しとする人種が事実として存在する。

人はお金、情愛、道徳の順に、その媒介によって、悪魔になりやすい。


MISSION 06 地獄洋の悪魔<カレー> - 衝撃の覚醒 - ~ 胃を労って眠れ ~
MISSION 6-12


体育訓練。

いつもであれば、妙高型二番艦の那智が教鞭を執って、駆逐艦の指導をする時間である。

たまに、足柄や羽黒が代打で立つときもあれば、補助として入るときもある。

が、今は違っていた。

 

 

「どんなことするっぽい?」

「さぁ……? というか私たち駆逐艦以外の人たちまで……」

「空母組の人たちと戦艦勢、重巡に軽巡の人たちまでいるわね」

 

 

普段とは違うので、夕立の疑問はもっともではあるが、睦月もそれに対して答えを持っているわけではなかった。

睦月や如月の言うように、艦種の別なく、その場には大勢いた。

妙高型の三人まで揃っていて、駆逐艦の輪よりもずっと後ろの方に並んでいる。

 

 

「全員いるんじゃねこれ」

「点呼は取ってないからわからない……」

 

 

適当に答える望月に、それに冷静に返す弥生。

そして、そわそわと落ち着きのなく、どこか興奮気味に待機に我慢している根性型駆逐艦とただ単に、退屈を隠しきれない駿才型駆逐艦。

 

 

「っ……」ソワソワッ

「おっそーい……まだー?」

 

 

実は、今回のこの訓練は事前に詳細が通達されたことはなく、

急遽、平常の予定を変更して組み込まれたものであった。

 

話が変わるが、実はその場にいる全員が体操着ブルマかジャージだった。

 

しばらく、わいわいがやがやと姦しく騒いでいた群れだったが、

先頭に今回の訓練監督官が現れ、それは自然と収まっていった。

 

 

 

 

多くの者が、今目の前にいる監督官が何を言い出すのか、ということに

関心のすべてを寄せていたはずである。

 

 

「――まずは、お前等全員の体幹のバランスから見させてもらうぞ」

 

―ザワザワッ

 

「体幹……?」

「バランスって航行のときの?」

「……今さら?」

 

 

「――ちょっとーっ? 言われた物全部用意したわよー。

 はぁ~……やっぱりもう一人来てもらうんだったわ……」

 

 

一同が騒然としている中、気付いていた者がいたのかいなかったのかは不明だが、

その場には居なかった陸奥が小走りに群れに寄って来た。

両手にそれなりの大荷物を持っている。

 

 

「ああ、悪いな」

 

 

((あれ? 陸奥さん私服……))

 

 

少し頑丈そうなビニール製の手提げ袋を見るに、外出許可の元、外に買い出しに出ていたのだろう。

 

 

「……お前、その恰好のままやるのか?」

「え、あたしもやるの?」

「全員つったろ」

「え。記録係じゃなかったの?」

「両方だ」

「えぇ……人使い荒いわね……。わかったわ、着替えてくる……」

 

「「……」」

 

(陸奥さんっ……くっ!)

(……チッ!)

 

 

先程までの場の騒然とした空気は収まったが、代わりに微妙な空気感に切り替わる。

金剛型姉妹の方に至っては、また一段違う空気が漂っていた。

実際には、他にも点々と似たようなスポットはあった。

 

 

「……とりあえず、スタンド立てるか」

 

 

面倒くさそうな空気にはあえて触れないスタイルなのか、

"当人"は意にも介さず、陸奥がその場に置いて行った大袋から何かしらを取り出そうとする。

そしてそれを覗き込む駆逐艦。と、その他の幾人かの艦娘たち。

 

 

「ん? それは……?」

「あー知ってるそれ!」

「私も見たことあるかも」

「なんでそれ?」

 

 

様々の声。

バッティングティーだった。次いで野球バットとボールが取り出される。

 

 

「バットとティーは3セットだ。ボールは……9か。

 あいつ、店で見栄でも張ったのか? 持てるだけつったろ……」

 

 

実際はどうだったのか、それは置いておくとして、ダンテは続ける。

 

 

「ティーはそれぞれ適当に離れて三か所に置いて、バットと、あとボールは3個ずつ持って行け。

 ボールはほとんどねェから戻すやつもいるぞ。それも適当に決めといて、後で向かい側で待機しろ」

 

「はい! 外野やりたいっ!」

 

 

面と食らっている面々の多い中、元々普段から活発なとある駆逐艦から、

面白そうだと言わんばかりの声が意気揚々と挙がる。

 

 

「haha, まぁ実際、そんな盛り上がるようにはならねェと思うがな」

 

「「……?」」

 

 

何ゆえ買い物に? なぜ買ってきた物がそれ? なんで訓練で野球練習?

これだけ大勢いて盛り上がらないとは?

授業が訓練が始まって以来、終始疑問符の尽きない一同だったが、号令のあった後は皆素直に動き出した。

幾人かは訓練開始初期から、疑問の他にずっと胸の内に募っている物が未だにあったようだが。

 

 

「……」

「……加賀さん?」

「……あ、はい」

「行きましょう?」

「……ええ……」

 

 

 

 

各々設置は完了したようで、次第に再び、訓練監督の元へと整然と集まり出す。

設置後の動きに関しては、ダンテとしては、そのときになってからまた別途流すつもりだったので、

特に話はしなかったが、自然と自分の所に集まってきた艦娘たちの様子を見て、

ダンテは内心、感心していた。

 

 

「――よし、次のを話すぞ。まずは3つのグループに分ける。基準は体格だ」

 

 

一瞬、場がざわつく。

重巡高雄から手が挙がる。

 

 

「えっと……艦種で分かれる、ということでしょうか?」

「いや体格だ。大まかに大・中・小で分かれろ」

 

 

聞き間違いでも、監督者の思い違いでもないことを一同は理解する。

 

 

「海側にある方のティーから順に、小・中・大の組で後で集まれ。

 とりあえず全員、一旦真ん中のティーの所に来い」

 

 

ダンテの後に続く形で、ぞろぞろと全員移動を開始した。

 

 

 

 

「――あー……、テンリュウ、来い」

 

「! お、おうっ!」

 

 

中央のティー周辺に円状に広がって集まった後、監督に第一に呼ばれたのは天龍だった。

 

 

「へへっ、一番手か。燃えるねぇ! 思いっきりかっ飛ばしてやるぜ!」

「意気込んでるとこ悪いが、目を瞑ってやってくれ」

「……へっ?」

「あとチャンスは一回だけだ」

 

 

一瞬で、全員が監督の説明に集中して聞き耳を立てる。

 

 

「一回やった後、そっからさらに3グループに分ける。

 ……そうだな、適当にABCでいい。

 今度の基準は、当たったやつ、かすったやつ、外したやつだ」

 

 

直前まで、楽しそうにしていたメンツの顔が若干陰る。

 

 

「スイートスポットってのはわかるか?」

 

「スイートって、あまい……だっけ?三隈」

「いろいろと意味はあったような気はしますの……」

「……甘い……あ〇……?」

「ちょっ、熊野っ……///」

「確か……バナナの?」

「えぇっ!! そっちぃ!?////」

(それはシュガースポットよ、榛名……)

「そっちって、どっちですの?」

「えっ!? いやっ……///」

「ハイ! 雑誌とかでおススメ特集されたデートスポットのことデース!!」

「あぁ!なるほどっ! さすがお姉さま!!」

 

 

一人、顔を真っ赤にして目口元を緩めながら、やたらと大声を上げている重巡がいた。

 

 

「ok... 難しい話はナシだ。

 ボールをバットの芯部分で打てたやつはAグループ、

 それ以外で打ったやつはB、そもそも当てられなかったやつはCだ。いいな?」

 

 

騒めき出す艦娘たち。

明確な返答などは聞こえてこなかったが、ダンテは構わず続ける。

 

 

「テンリュウ、ティーにボールをセットして、

 それの高さが自分のヘソの位置と同じになるように調整しろ」

「お、おう……」

 

「出来たら、ポジションに立ってから目を瞑って打て。それだけだ」

「それっていつもの冗談じゃなかったのかよ……。わーった。――あっ」

「どうした?」

「そういや記録は? 陸奥さん待たなくていいのか?」

「あぁ、これの記録は取らねえ。ただのグループ分けだ」

「う、うん……?」

 

 

 

 

天龍がセットを完了し、バットを振る直前までの準備を終える。

ダンテも、周りに控えている艦娘も天龍を固唾を呑んで見守っていた――

 

 

「ちゃんと飛ばせよ、天龍!」

「天龍ちゃん頑張って~♪」

 

 

――わけでもなかった。摩耶の野次・龍田の激励が天龍に向けられて飛んでくる。

 

 

「……言われなくてもやってやるってーのっ!!」

 

―カン…

 

 

乾いた音がした。

その後、ボールはボテッと地面に落ちる。

 

 

「「……」」

 

「……ほれ、次だ。どんどん打ってけ。ティーは一応その都度、セットし直しだからな。

 自分が打つ所のティーは間違えんなよ、若干でも手間が増えるぞ」

 

 

ダンテのその言葉の後、皆は移動を始める。

 

 

「ほな鳳翔、うちらも中組のティーの方行こか」

「……えっ……」

 

 

 

 

「――なんでやっ!?」

「一目瞭然でしょう、早く行ってください。

 後がつかえているの。こんなこと、とっとと終わらせたいのよ」

「行きましょう龍驤ちゃん! あんまり騒がないで……///

 途中まで付いててあげるから……!///」

 

 

「……なぁ、大将……オレって……」

「お前はBだ」

「……うっす……」

 

 

「あいむれでぃっ!」―ブンッ …スカッ…

 

「「……」」

 

「……えーと、どっちの意味だったのかな?」

「は、発音が……」

「どっちにしてもアウトなバッティングだったと思うんだけど……」

 

 

「――ええっ!? そんなぁ!!」

 

「Oh... 比叡だけギリ中組ネー……」

「まぁ、ほんの一時の間だけですし……。このあとはまたわかりませんが……」

「誰から行きましょうか……?」

「よし、では一番手はこの長門が行かせてもらおう。榛名、そのバットをこっちによこしてくれ」

「あ、はいっ」

 

「……んー、重巡以上はほとんど大組はかしら?」

「えっと……私たち高雄型と妙高型は……そうね、概ねそんな感じね。

 ……あぁでも、最上型と空母組はまちまちね……」

 

 

「…………ちゃー、しゅー……ぬーいっ!」

―カキーンッ!!

 

「なにそれっ!?」

「でも打った!? アホみたいな掛け声だけど打ちましたよ!?」

「マジか~っ!? なんでこの後がうちなんじゃー!!」

 

 

 

 

ある程度は誰もが予想したであろう結果となった。

Aが当然一番少ない。しかし、Cが予想外に多い。

Bと同じか、もしかするとそれより若干多い可能性すらある。

 

この結果に、多くの艦娘が愕然としていたが、監督であるダンテの反応は逆だった。

 

 

「……まぁ、こんなとこだろうな」

 

((!))

 

 

「――お待たせー。……え……?」

 

 

遅れて合流した陸奥に対し、一斉に皆の視線が集まる。

 

 

「なにこの空気……」

 

「あとはお前だけだ」

 

「……?」

 

 

 

 

「……なんか注目がすごい気がするんだけど……」

 

 

目を瞑りながらでもわかるのか、陸奥は言った。

 

 

「いいから打て」

 

「なんなのよ、もう……っ!」

―カキーンッ!

 

「「!!」」

 

 

「……ま、だろうな」ha

 

((……?))

 

 

 

 

全員が打ち終わった。

艦娘はそれぞれ、A・B・Cの組に分かれ、群れをなしている。

"一見したところでは"、三組各々の共通点は見付け難い。

艦種も様々なのだ。当然、体格も。

ひょっとすれば、気付いている者もいたのかもしれないが、

"それ"が明確にわかっているのは、おそらくこの場にいるただ一人なのだろう。

 

 

「――んじゃ次だ。さっそくで悪いが、さっさと始めるぞ」

 

 

先のことがあってか、皆が身構える。

次はどんな奇妙なことをさせられるのか、と。

 

 

「HA! そう力むなよ。今度のはもっと簡単だ。すぐに済む」

 

 

その言葉を信用した者は、実際には少なかった。

 

 

 

 

―パシャ

 

「――ん?」

 

「はい、オッケー。もういいわよー」

 

「え、今撮ったのか?」

 

「ええ。んー……はい」

「……うぉ!? マジで……?」

 

「テンリュウ、お前は2だ」

 

「ん? 2?」

 

「ああ、B2だ。忘れるなよ」

 

 

場所は少し変わって、グラウンドの大広場から離れた用具倉庫の裏。

艦娘たちが集まっている場所からは、完全に遮られている。

 

 

「……なぁ大将、これもだけどさ、結局今までのってなんなんだ?」

 

「あとで全員にまとめて話す。次のやつを呼んで来い。

 そしたらお前も群れとは離れて少し休憩だ。先に終わったやつらのとこで固まっとけ。

 あと、まだのやつには何をやったかは話すなよ」

 

「……わーったよ」

 

 

返事の後、天龍は、まだまだ残り人数の多い群れの方へ駆けて行った。

 

 

「……これ、けっこう2が多いわね」

 

「Hah... 俺の見立てじゃ、"4分の3"が2だ」

 

「そんなに……。ていうか、やっぱりこれって全員分撮っていくのね……」

 

「ああ」

 

「ん~作業自体は楽なんだけどねぇ。

 やっぱり皆、いきなりやれって言われても戸惑っちゃってるし、

 単純に人数で時間はかかりそうね」

 

「事前の情報も準備も何もなしで、いきなりやらせてどうなるか、ってのも見てるからな」

 

「……あたしもいきなりスマホよこせって言われて、ポーズ取らされた後に

 写真撮られたときは、何かと思ったわよ……」

 

「HaHaHa. おっと……言い忘れてたぜ。ムツ、お前は――」

 

「A1?」

 

「……おう」huh..

 

「了解」フフフッ

 

 

 

 

「――それでは、次は陽炎を呼んできます」

 

「ええ、よろしくね」

 

「……」

 

 

"記録"が終わった後、不知火は速やかに場を離れ、自分の姉の方へ番を告げに行った。

それを見送った直後、軽く"伸び"をしながら陸奥がこぼす。

 

 

「ん~っ……はぁー……。半分ってところねぇ」

 

「……ああ」

 

「このあとは、全体に向けて話すのよね?」

 

「そうだ」

 

「そのあとは?」

 

「各クラス毎に現状を把握させた後、それぞれにメニューを作る」

 

「各クラスって、A・B・Cと1・2の組み合わせの6クラス?」

 

「そういうことだな」

 

「――って、メニューってあなたが作るの?」

 

「ざっくりしたやつな。……つっても、手を借りたいとこもあってな……。

 それ頼めるか?」

 

 

返事の代わりに、にやにやとした表情で陸奥がダンテを見返す。

 

 

「……なんだよ」

 

「あたししかいないんだ?」ンフフフッ

 

「ン、ああ……」

 

「いやぁ、人使い荒いわねぇ~」

 

「……」

 

 

言葉とは裏腹に、語調も口元も緩みきったまま、ぼやき始める陸奥だった。

 

 

「秘書艦って、こんなに大変だったのねぇ~。

 それとも"ここ"だけなのかしら……。何にしても一人で勤め上げるのは大変ねぇ」

 

 

なんとも言えない顔を、ダンテはしている。

それを知ってか知らずか、陸奥は続けた。

 

 

「ねぇ?」

「……あ?」

「間宮の新作って、あなたのアイディアらしいじゃない?」

「……あー、どうやらそうらしいな」

「……最近、少しくらい自分にご褒美があってもいいかなーって思う日が多々あるのよねぇ」

「……」

「そういえばあたし、まだ誰かさんに貸しにしてる分が――」

「オーライ、この後でな……」

「……ふふふ」

「……なぁ、ムツ」

「あら、なに?」

「お前のその、秘書艦ってやつなんだがな」

「ええ……?」

「それってのは別に、お前じゃなくても――」

「は?」

「」

 

 

 

 

……続くっ!!

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