それが人である。
逆に、抱えきれないほど持っているときに限れば、よく人に与える。
これもまた人である。
十分でない、あるいは持っていないにも関わらず、他人に与えられる者を聖人と呼ぶ。
他人から奪うくらいならばと、自死できる者は準聖人である。
これらはどちらもおおよそ人ではない。人をとうに超えた存在に他ならない。
~ Streak 006 ~
ダンテ
「こんな朝早くから準備やってるんだな」
陸奥
「ええ。
前も、わりと規模の大きいものになっちゃったし、
今日の夕方にはもう前夜祭を始めるから、だいたいこんなものだと思うわ」
ダンテ
「Hu-m」
陸奥
「各鎮守府で行われる恒例のお祭りは、全国で一斉に行われるんじゃなくて
微妙にずらして催されるの。 比較的、距離の近い鎮守府同士の日程が前後するわ」
ダンテ
「へぇ」キョロキョロ
陸奥
「それには理由があって、
全国の各鎮守府の監督官、うちの場合はあなたになるわけだけど――」
ダンテ
「……」
陸奥
「その全国の監督官が一堂に会して、単純に交流を持ったり、
今後の軍事活動において、もしかしたら協同作戦とかもあるかもしれないから、
そのときに円滑な連携行動がとれるようにとかまぁいろいろ理由はあるんだけど、
そんな感じの定例行事が年に一度はあってね」
ダンテ
(そりゃまた面倒くさそうだな……)
陸奥
「ただ、やっぱり年に一度っていうのもあれだし、
だからと言って、頻繁に集まるとかいうことになって、
各鎮守府の監督官がよく鎮守府を留守にするっていうのもいけないから、
こういう各地イベントのときに、せめて隣接してる鎮守府の監督官同士には
少しでも交流の機会を持たせておくべきだっていうのが、大本営の方針なの」
(まぁかなり特殊なうちの場合は、これまではそういうのは長門姉とあたしと大淀で
協力してなんとかやってきてたんだけど……)
ダンテ
「hm...」
陸奥
「それで今日の前夜祭なんだけど、
今回はあちらの方から来てくれることになってるから――」
ダンテ
「そのヨソのお偉いさんに挨拶しろってか?」
陸奥
「端的に言えばそうね。
鎮守府の一般公開は明日なのよ。 今日は内輪」
ダンテ
「……hum」
陸奥
「なに、もしかして緊張?」ンフフフッ
ダンテ
「違ぇよ……。
ま、何を言やァいいのかってとこはあるけどな」ha
陸奥
「あぁ、それに関しては……まぁ別に心配いらないわ。
実を言っちゃうと交流といっても、もうほとんど形式的なものなのよ。
ここと、あそこの鎮守府だとね……」
ダンテ
「?」
陸奥
「というか事務的な事についてはあたしがもう全部話すし、
交流会自体はすぐに終わると思うわ」
ダンテ
「すぐ? わざわざ遠くから来てるんだろ?
それだけなのか?」
陸奥
「用件が済むとすぐ帰っちゃう人なのよ、毎回ね……」
ダンテ
「…フーン」
陸奥
「報告されてる戦績を聞く限りじゃ、けっこう優秀な人みたいなんだけど
なんというか、人当たりはあんまり、ね……」
ダンテ
「……」
陸奥
「効率主義っていうか……。
……あくまで噂話程度のことなんだけど、それもあまりいい話は聞かないのよね……」
ダンテ
「……そうか。
まぁ、話はわかったぜ。
要はそんときになったら、お前の横でほとんど突っ立ってりゃいいんだな」haha
陸奥
「ええ、そんな感じ。
初めましてとさようならだけ適当にやってくれたらそれでいいわ」
ダンテ
「了解」
陸奥
「その後は、明日の本番に向けての全体の安全確認とリハーサルよ」
ダンテ
「……リハ?」
陸奥
「一般の民間の人を招くわけだから、一番大事なのは安全面のことなんだけど、
それに加えて、やっぱりお祭りの中で不測の事態や失態なんかがあると
民間のっていうより、上のお小言がうるさくなるのよ……」
ダンテ
「板挟みか。辛いところだな」ha
陸奥
(……)
「まったくよ……。
明日のお祭り本番は、お昼から夜遅くまでかけて通しの大掛かりのものだから、
今日のリハーサルはとても大事なの。 皆もすごく気合が入ってると思うわ。
だから、ちゃんと全員の所を回って様子を見に行ってあげてね。
他人事じゃないのよ? "て・い・と・く"?」フフフッ…
ダンテ
「huh... ま、退屈はしなさそうだな。 わかったよ」キョロ…
陸奥
「……」
陸奥
(……大丈夫、準備はちゃんとしてあるわ……)
「……スゥ……ハァー……」←背を向けて心を調える
―キョロ
ダンテ
(……お、すげぇ。さすがジャパンの"OMATSURI"だな。そういうイベントもあんのか)
「ph~♪」
スタスタスタ
陸奥
(浴衣着の用意だってあるし……! ……よしっ!)
「……あ、あのねっ! それで今日の前夜祭なんだけどっ
い、一緒に見て回らない……?
その方が私も補佐役としてついててあげられるわけだし、都合がっ
……って、あら……?」
……
陸奥
「…………フフッ………ふふふふふふっ……。
……うん、決めた。 もう決めたわ。
明石と夕張に頼んで、発信器を作ってもらいましょう。
あたしから半径3メートルでも離れようものなら、ブザーが鳴る機能付きのやつ。
それを付けさせましょうか。 そうよ、そうしましょう」ウフフフフフ…
――――――
五十鈴
「……はぁ、ほんと無意味ね……」
(今日だって、"この私"に意味があって連れてこられたわけじゃない……)
五十鈴
(……今日が終わって鎮守府に帰ったら、明日……)
「……私は……」
―ザッ
「Hey, Cute Diva.」HA HA-
五十鈴
「……は?」クルッ…
背後からの突然の呼びかけに、五十鈴は困惑しながらも振り向いた。