そのかわりに忘却力は極めて大きい」
アドルフ・ヒトラー
今日においては、次のように言っている政治屋も実在する。
「3年後には覚えていないだろう」と。
1年耐えれば、国民は忘れ始める。
2年経てば、国民の義憤は薄れる。
3年も経てば、国民は完全に忘れる。
実際の所、日の本の国では計画犯罪・スパイ・テロ・カルトの活動は、"2年"の間隔を置けば、再び成功を収めることが出来る。
この国を侵略したいのであれば、過去にヒトラーが用いた手口と同じ方法を採れば良い。
只々、衆愚が忘れるまで待てば良いのだ。それはたったの2年である。
~ Streak 041 ~
20XX年○○都内 某所・・・
――Hum...
……ったく、相変わらず年明け早々からハードな"お仕事"だぜ……。
こんな時は、流石の俺でも多少の"あたたかさ"ってなモンくらいは
恋しくもなっちまうもんだ……。
ダンテ
「……言っても仕方ねぇ、か」huh...
……ン?
……オゥ、兄弟。 今日は"本当にイイ夜"だよな。
心まで疲れ切った骨身にはよく凍みる……。
冷たい風が肌を貫いて、スカスカになった心まで吹き抜けていくってのは
ここまで来るとむしろ爽快だ。
あまりの"痛さ"に、たとえ一瞬でもそれまで陰鬱だった気分も
嫌な思い出も忘れちまうからな。
欲を言えば、心と記憶の辛気臭ェ部分なんざ、風がゴミを掃いていっちまうみたいに
ずっと遠くに吹き飛ばして行ってほしいもんだが……。
……悪い、変な話をしちまった。
今日は俺もどうかしてるらしい。 忘れてくれ。
ダンテ
「…………」
…スタスタスタ…
……アン?
何でこんな夜更けの時間に、こんな薄暗い所に繰り出して来てるのかって?
……別に、深い理由があるわけでもなけりゃ、面白味のある話でもないさ……。
正直な所、殴られたり胸に剣ブッ刺されたり
眉間に銃弾撃ち込まれたりなんてものの方がカワイイもんだったぜ。
……アイツのお小言は、銃弾なんかよりも遥かに頭のど真ン中に響く。
泣かせたりなんてしちまったらそれはハートにクるし、そんな日は一日中、
腹の奥底が"揺さぶられて"しょうがねぇ……。
本音を言わせてもらえば、流石に俺も少し疲れちまったのさ……。
ダンテ
「...Hmm...」
……こんな夜は歌でも聞いてみたいもんだ。
何時だったか、こんな俺にだって歌を理解する気持ちくらいはあったんだってことを
気付かせてくれたような歌を。
どんな男よりも荒々しく、
どんな女よりも繊細に、人の心の悲しさを歌っているような……そんな歌を。
スタスタ…
ダンテ
「…………ん?」
……明かりか。
……さっき見えてたか? あんな店……。
今点いたのか?
ダンテ
「…………」……スタスタ
・・・・・・
ダンテ
「…………」
なんだこの店。
小奇麗でイカしてはやがるが。
ダンテ
「……"Dream ○ Club"?」
ナイトクラブか……?
……まぁ、この際ダンスもいいかもな。
……つっても、チケットはおろか、予約すらないけどな……。
ダンテ
「……いや。
そういや、そもそも今はサイフすらアイツに――」
受付嬢
「いらっしゃいませ! ドリーム○ラブへようこそ!」
ダンテ
「……あ?」
受付嬢
「当店は、心のピュアな方だけが入会を許される完全会員制のクラブです。
お客様につきましては、当店自慢のホストガールと楽しいひと時を過ごして頂き、
リフレッシュして頂くのが当店のサービスとなっております」
ダンテ
「……」
……ピュア?
ダンテ
「...haha..
いや、悪い。 いつもの通りを一つ間違えちまったらしい。 最近寝不足でね。
来た道を戻るよ。 "冷やかし"ちまってすまなかったな」クルッ…
受付嬢
「――あ、お待ちください!」
ダンテ
「?」―ピタ…
受付嬢
「……おめでとうございます!
おなたは今日から1年間、このクラブの会員として認められました!」
ダンテ
「……は?」
どんだけベタな詐○商法だよ……。
ダンテ
「……せっかくだが、今は手持ちがない。 会員費なんて払えないぜ?」
受付嬢
「会員費は無料なのでご心配は無用です!」
ダンテ
「……」
受付嬢
「これからの一年間……入場料さえお支払い頂ければ、
週末ならいつでもご来店頂けますよ!」
ダンテ
「……フーン、そいつはいいね」huh.
受付嬢
「ただし……会員でいられるのは1年間限定です!
この期限を過ぎるとお店に入店できなくなりますので……。
あらかじめご了承くださいね!」
ダンテ
「ああ」…
受付嬢
「それと当店は、週末のみの営業です! そちらも注意してくださいね!」
ダンテ
「了解だ。 それじゃ、来週末に出直すぜ」
(ここの通りは気を付けるか)
受付嬢
「……今日は初日の入会説明ということで、本来であればこれでおしまいなのですが、
なんと今回だけお客様に限り、特別に……」
ダンテ
(ン……?)
受付嬢
「実はですね、本日ですと当店所属のホストガール全員が出勤しておりまして、」
ダンテ
「……」
受付嬢
「ですので、もし今からご入店頂けるのであれば、
その全員の中からご希望のホストガールをご指名して頂くことが可能です。
……いかがなさいますか?」
ダンテ
「……ph~♪
今日は"なんてイイ日"なんだ。 "我ながら"ツいてるぜ」HA HA-!
受付嬢
「…!
当店では、お客様を癒してくれるステキな女の子たちが確かに出迎えてくれますよ!」
ダンテ
「Sweet. 最高だね」ha!
受付嬢
「それでは、さっそく! こちらが――」
ダンテ
「オット、待ってくれ。
今日というこの瞬間、そして折り重なって今あるこの奇跡に
神様に感謝を捧げたいところだが、まずは何よりも……」
受付嬢
「……?」
ダンテ
「……君に」ニコ
受付嬢
「!?
い、いえ……お気になさらず……///」
ダンテ
「……さっき、"特別に"と言ったか」
受付嬢
「え? は、はい……」
ダンテ
「……hm」
受付嬢
「……?」
ダンテ
「ちなみにお嬢さんは指名できないのかい?」
受付嬢
「ご指名はわたく……え? 私ですか?
い、いえっ……私は…///」
ダンテ
「そうかい。 なら、やっぱ来週末にまた来るとするぜ。
いろいろ気を回してもらったのに悪いな。
神様を試したりするもんじゃねぇらしいが、俺は次の機会を信じることにするよ」
受付嬢
「……え……」
ダンテ
「それじゃあな」
受付嬢
「ぁ……待ってくださいっ! 本日、多くのサービスが割引でっ……!」
ダンテ
「正直に言うと、今は全く持ってねぇんだ」
受付嬢
「……大丈夫です!
普通は当店ご利用の二回目からクーポン券をお配りしているのですが、
それを今から特別にお渡しします! それに初回のご指名とボトル1本は無料です!」
ダンテ
「……入場料は必要なんじゃなかったか?」
受付嬢
「……それも今回だけ特別に……!」
ダンテ
(限定とか特別がやたら多いな……いよいよアウトな臭いがしてきやがったもんだ。
……こいつは面倒事になる前にとっとと立ち去った方がいいか)
受付嬢
「それでは改めまして、こちらが当店所属のホストガールたちです。
一緒に過ごす女の子を指名してくださいね」
ダンテ
「……おい、俺はまだ――」
受付嬢
「? ……あぁ、顔写真だけでは判断しかねますか?
承知いたしました。
それでは、私の方から簡単にご紹介いたします。
まずはこちら、左上から――」
ダンテ
「……」
相変わらず、話を聞かねぇ美人に当たることが多いよな、俺も……。
受付嬢
「~~~~」
ダンテ
「……あー、待った、待ってくれ」
受付嬢
「っ……ぁ、はい……すみません……。
もう少しゆっくりの方がよかったでしょうか……。
日本語がお上手だったので、つい……」
ダンテ
「……huh.
……とりあえず、栗毛色は全面的にNGだ」
受付嬢
「ぇ……あ、はいっ……?」
ダンテ
「あとはショート……あー、細かく言や、ボブカットだな。
それでくせっ毛だったりでもしたら最悪だ」
受付嬢
「…………ふむ……それでしたら、ロングヘアーの方が……?」
ダンテ
「ロングか……ストレートなら"今は"遠慮したいね……」
受付嬢
「なるほど……」フムフム…
ダンテ
「そのストレートロングで、もしオールバックにしてるのがいるんなら、
悪いが俺の所は避けて通るようにしてくれるとその時間、
俺は安心してくつろげるだろうよ」ha..
受付嬢
「承知いたしました。 では、すべてそのように……」
ダンテ
「thx. あとの細かいことは……まぁ、任せるぜ」
受付嬢
「かしこまりました。
それでは、店内にて少々お待ちください。
ただ今より、ホストガールを迎えに行かせますので」
ダンテ
「……どうも」
・・・・・・
・・・
・
DC -店内-
「「いらっしゃいませっ!」」
ダンテ
「……ph~♪」
(思ってたのとは違うな。 ジャパニーズスタイルか? ……が、雰囲気は悪くねぇ)
「大変申し訳ありません、もうしばらくお待ちくださいますようお願いいたします。
まもなく、ホストガールが到着いたしますので」
ダンテ
「ああ」
……さて、何かあったら即トンズラだな。
特に悪徳でもなかったら、金は次回のときにでもちゃんと支払うか……。
それで終いだ。
ダンテ
「……静かだな」
これが日本のクラブなのか……?
??
「――貴方がそうね。私を指名したのって」
ダンテ
「……ア?」
――――――
???
「――銀髪で赤い服の大男? ……あー、それだったらあっちの方に――」
??
「っ……本当ですか!? すみません、ありがとうございました!」
タタタターッ
「いえいえ?」
・・・・・・
―タタタッ…
??
「ッ…ハァハァハァッ!」
所変わってこちらは、いつもの制服とは違い、お洒落に着飾っているにも
関わらず、場にも柄にも似つかわしくなく奔走している女性が一人。
??
「ハァハァ……ッ…………くっ……やっぱり、私の方も厳しすぎたのかも……」
一度息を整え、落ち着きを取り戻した女性は、そう一人ごちる。
??
「……大好物なんですものね……やっぱり2週間に一回のデリバリーくらい、
認めてあげるべきだったんだわ……」
後悔を口にする女性。
??
(………ここなら人通りはないわね……)…シャラッ……ギュッ…
一瞬の思案の後、女性は自身の首からかけていたペンダント、
厳密にはタリスマンと呼ばれる物であろうそれを握りしめる。
すると、その物の中心にある小さい石がわずかな煌めきを漏らした。
??
「……」…スッ…
ほどなく、女性は身を低くして両手を地につけた。
そして、鼻を地面すれすれまで近づける。
頭の位置は低いながらも、お尻だけは高いまま突き出している女性のその様子は
もし、事情のわからぬ人間が傍目にでも居たならば、
その目には大変奇異に映っていたことだろう。
??
「……スンスンスンッ…」
それはまるで、犬が鼻を鳴らしているかのような音だった。
??
「……あっちの方か」スクッ…
タタタタッ!
今度は短く、また独り言を言いながら、おもむろに立ち上がった女性は
またすぐさま走り出した。
とある方角へ、今は確かに間違いのない足取りで。