俺、リィン・シュバルツァーは修行の仕上げとして俺に八葉一刀流を授けてくれたユン老師とは違う、もう一人の師とも言うべし人と立ち合っていた。そしてそれも終わりが近づき、
「はあぁぁぁぁ!終の太刀・暁!!」
俺は今放てる最高の技を放つ。
それに合わせて師匠も俺の知る限り一番強力な技を放ってきた。
「飛ーーー流、ー頭ーー!」
互いの技がぶつかり合い、拮抗するかに見えた瞬間、俺の方が打ち負け吹き飛ばされた。
「グッ!」
地面に叩きつけられるが、なんとか受け身をとりその反動で体を起き上がらせるが、目の前に刃が突きつけられた。俺の敗けだ。
「ここまでだな」
「はい、ありがとうございました。でもまさか一方的に打ち負けるとは思いませんでした。流石は師匠です」
立ち会いが終了となり、お互いに得物をしまい礼をする。老師から学んだことを自分なりに全部出せたと思うが、最後の打ち合いの結果を考えると自信がなくなってくる。
「俺は師匠じゃないって言ってるだろ。ユン老師に頼まれて稽古つけてやっただけだからな」
そう言って師匠呼びを否定してくるが、俺の中でこの人はやはり師匠なのだ。扱う流派は違うし、特に技を伝授されたわけでもない。それでもこの人は俺の師匠だ。なにより、
「師匠のお陰で俺はあの力を使いこなせることが出来るようになりました。そして壁を乗り越えることができ、老師から奥伝を授かることが出来たんです」
そう、あの力に怯え初めは老師から初伝で修行を打ち切られた俺だったが、師匠から稽古をつけてもらい老師から教わっていた天然自然の理。そして 俺を愛し慈しんでくれた両親に妹のエリゼ。俺が想い、俺を想ってくれる人たちに気付いたとき、あの力......神気合一を使うことが出来るようになった。
師匠は、『俺が与えたのはきっかけだ。お前ならいずれたどり着いたさ』と言ってくれるが、正直自信はない。自分で自分の歪みを理解がしつつも、それに目をつむり、背をむけていた俺が気付くには容易なことじゃない。下手をするときっかけがなければ一生気付かないかもしれなかった。
こうして前進むことができた俺は、老師に修行を再開してもらい、つい先日奥伝を授かった。最も授けた当の老師はすぐに旅に出てしまったが。
そして修行の一区切りとして師匠と立ち合っていたのだ。
「お前に足りないのは経験だ。身体能力や、八葉の技の冴えなんかは俺から見たら十分に奥伝として合格だ。だが、それを活かすだけの下地がお前にはない」
経験が足りない?どういうことか気になった俺は聞いてみた。
「経験が足りないというのはどういうことですか?」
「そのままだ。戦闘経験はとにかく、人生経験はお前はまだまだだ。人は様々な経験を経て成長していく。ある程度事情があったとはいえ、ほとんどこの郷の中でしか経験がないお前はまだ人として未熟だ。戦闘経験だってユン老師や俺を抜かしたら魔獣くらいしか相手してないだろ?」
なるほど。確かに戦闘経験は老師と師匠、そして修行として連れられたアイゼンガルド連峰の魔獣くらいしかない。修行の成果を見せる為に父さんと打ち合ったり、エリゼに稽古を付けたことはあるがそれは除外だろう。それにほとんどユミルから出たこともない俺の人生経験なんてあちこち旅して回っている老師と師匠と比べられもしない。
そう考えていたところに師匠から声がかかった。
「たしか来年の四月からトールズ士官学院に入る予定なんだろ?そこで色々なことをしっかり経験してこい。そうすればもっとお前は上に来れる。今お前に言えるのはこれくらいしかないな」
「まだ入試も始まってませんが......そうですね、わがままを言って入るんです。自分を高める為にしっかり学んできたいと思います」
そう言って来年からの入試と来年からの学院生活(予定)への決意を新たにしていると、師匠が腕を組み考え込んでいた。そした何か思い付いたような顔をすると、
「今三月だからまだ丸一年あるわけか。おいリィン、お前帝国を一周してこい」
と衝撃発言をした。
「は?」
いきなりかけられた言葉に反応出来ず、間の抜けた顔と声を晒した。
この思い付きのような師匠の言葉が始まりで俺が様々な絆を紡ぐことになるとは、この時には全く思いもしなかったのである。
師匠に関してはある程度設定が決まってますが、師匠の流派の元ネタは皆さん想像通りだと思います。(隠す気あるのかないのかはっきりしろよ自分)
初めはあの流派使う転生オリ主を妄想したんですが、リィン好きだし、リィンと絡むヒロイン好きだし。というわけでリィンのもう一人の師という形で出しました。
ちなみに作中で出てきた奥伝というのは原作の中伝の一個上で剣聖と呼ばれる皆伝の一個下と位置付けてます。
続きはまた妄想が爆発したらということで。では!
ちなみに一番好きなリィン×???のキャラはラウラです。次点でアリサ、アルフィンですかねぇ。