理想を求める者達も異世界から来るそうですよ? 作:幻想のtidus
「問題児たちと地球の理が異世界から来るそうですよ?」とのコラボになります。
そして展開が早いです。
地球の理と闇──前編
空間を引き裂く一矢が黄昏の街を穿つ。
それは威嚇の一矢。彼は追われている身だった。
彼を追うのは蓮の花の装束を身に纏う美少年と額に三眼を携え、鎧を身につけた眉目秀麗な武人。
「威嚇などやめろ。我が神群の大英雄たる御身らしくもない」
蓮の装束の男はそう言うと手に持つ火尖槍を片手に、風火二輪で縦横無尽に駆け巡る。彼は西遊記の孫悟空に並ぶ程の知名度を誇る。
そして男は三面六臂の術法を使用し、手に多種多用な武具を装備し、その内の一つである火尖槍を投擲する。
火尖槍は轟々と燃えながら、大気を焼いて目の前の標的目掛けて突き進む。
まさに人間が受ければ即死に繋がる攻防を続ける両者。否、そうせざるを得ない程、目の前の標的は強すぎるのだ。
案の定、標的の男はたった一矢で第三宇宙速度で迫る槍をそれを上回る速度で矢を放ち、撃ち落とす。
「……無駄です。貴方達では私の事は止められませんよ
「やはり、そう簡単ではないか。御身の相手は我では務まりそうもないか……」
そう言って蓮の装束の男──哪吒太子は槍を拾い上げて矛先を向ける。
「だが、それでもだ。まだ戦えるのでな。中国神群、最強の英雄を我が武で捉えてみせよう」
「哪吒の言う通りだ。何故、貴殿程の者が神群の意向に背く」
標的の男は無言で夜空に輝く月を見上げ一言……
「私は何としても
男の霊格が膨張する。
かつて九つの■■を射落した大英雄が目の前の二人を打倒するために本当の一矢を放とうと構える。
「我が一矢で塵となるぞ?」
この出来事は瞬く間に箱庭中に伝えられる。
中国神群に於いて最強と謳われた大英雄が東側へと進軍を開始した。
☆★☆★☆
「暖かいですね、飛鳥さん」
「ええ、そうね原摘さん……」
暖かな日差しが照らすペリベット通りを夏海と飛鳥は歩いていた。二人は“ノーネーム”の財政難を打破する為にギフトゲームに参加して来たのだが……
「それにしても春日部さんは何処に行ってしまったのかしら……」
「そうですねぇ……問題は無いと思いますが、変な輩に絡まれてなければ良いのですが……」
「心配よね……」
そう、本来なら耀も此処にいる筈なのだが帰り道の最中に逸れてしまったのだ。
「十六夜君達にも探してもらう?」
「確かにそうですね……あれ? 飛鳥さん、アレって耀さんじゃありませんか!?」
夏海の視線の先には“春日部耀”が居た。
然し、様子がおかしかった。
まるで誰かと話しているような……
人混みの所為で誰と喋っているのかは分からないので飛鳥と夏海は近づいてみると……
「甲、アレ一緒に食べようよ」
「ああ、そうだな耀」
空気が凍った。
何だアレは?
私達の友人である春日部耀が知らぬ男と一緒に恋人の様に仲睦まじく歩いているではないか。
「飛鳥さん……私の見間違いでしょうか……」
「否定したいけど……事実みたいね」
否定したいが否定する為の材料が彼女達二人にはなかった。
そして二人は衝撃の事実を前に……
「春日部さんから離れなさい! このナンパ師!」
「耀さんから離れなさい! この色情魔!」
耀と一緒に居る男にシャイニングウィザードを放つ事しか出来なかった。
「ガッ!!!!」
赤髪赤眼の男はシャイニングウィザードを食らって空中で三回転しながら店に突っ込んで行った。
「甲!??」
「大丈夫、春日部さん!? あの男に何もされてない!?」
「あの色情魔……罪深いですね……!」
「あ、いや……え!? 飛鳥も何して……! それにそこの人は……」
“耀”は困惑し、狼狽えていると、
「うわ、甲が店にめり込んでるよ!?」
「何があったらこうなるんだい?」
黒髪金眼の少年と白髪碧眼の少年は甲と呼ばれる少年を気づいかい手を貸していた。
「ああ、サンキュー。悠雷、真、大丈夫だ……それにしても何するんだ。飛鳥と……誰だ?」
甲は訝しそうに夏海を見つめながら呟く。
「これって……もしかして、
「そうみたい……」
「何をごちゃごちゃ言ってるんですか!? 色情魔達は早々に耀さんから離れなさい!」
頭を痛める甲と問答無用な夏海。
そんな夏海を諌める様に真は告げる。
「まあ、説明するので、とりあえず“ノーネーム”まで行きましょうか」
「そうだな。まずは誤解を解かなきゃな」
こうして彼らは“ノーネーム”へと戻って行った。
☆★☆★☆
──“ノーネーム”本拠
「俺は名前は
「よろしくな!」
「よろしくお願いします」
「分かっていると思うけど別世界の“春日部耀”です」
彼らの誤解は解け、数人を除き“ノーネーム”の談話室に集まっていた。
因みにこちらの世界の耀は店で買い食いしていたらしい。
「別世界の箱庭からの来訪者がいるとは……二百年生きてきて初めて聞きますね」
「箱庭ってヤベェな! やっぱり」
黒ウサギと龍悠は別世界からの来訪者に驚き、片や嬉々としていた。
「申し訳ありません……まさか別世界の方とは存ぜず……」
「まさか……ねえ……」
飛鳥と夏海はシャイニングウィザードの件について謝罪する。
「あ、いや。初めて別世界からの来訪者を見ればそう思うのは無理ないし、お前らが友達の事を大事に思っているっていう証拠だろ?」
それ対して甲はあたふたしながら頭を上げる様に言う。
「まあ、
「いや、違うから!?」
悠雷にすぐさま真はツッコミを入れる。
この時に
すると甲が黒ウサギに問いかける。
「こっちの“ノーネーム”のメンバーはこれで全員なのか?」
「あ、いえ。今此処に居ないのは十六夜さんと秋世さんだけです」
現在、十六夜は“サウザンドアイズ”から話があるとの事で白夜叉の元に行っており、秋世は“ペルセウス”とのギフトゲームから、ふらっと何処かに行ってしまっている。
「秋世……?」
甲の胸中に秋世の名を聞いた瞬間、何かが渦巻く。まるで何か怨敵が近くにいる様な……本能が警鐘を鳴らしていた。
「まあ、御二人の事ですから直ぐ戻ってくると思われますよ?」
「甲? 大丈夫……?」
「あ、ああ……大丈夫だ……」
甲の様子を気に掛ける“耀”。
そしてそれを察した耀は話題を変えようとする。
「私はそっちの事を聞きたいな」
「あ、私も聞きたいわ」
「黒ウサギも興味あります!」
「俺も、俺も!」
殺到する様に甲達に詰め寄る飛鳥達。
流石の甲達もあまりの剣幕に押されるが───
「──俺も興味あるな」
談話室の扉の方から聞こえた声が空気を凍らせた。
「あ、秋世さん! 此方、別世界の箱庭の──」
黒ウサギの声が談話室に響く。
そして──
「──バーニング・シフトlevelⅦ!」
甲は四肢に焔を纏い、身体強化を極限まで高めた焔の拳を秋世に目掛けて振るう。
轟音が“ノーネーム”の本拠に響き渡る。
「なッ!? 甲、どうしたんだよ!?」
「一体何を……!」
「甲!!!!」
悠雷や真、“耀”は突然の甲の行動に驚愕し、一歩も動く事が出来なかった。
そんな中、甲はさらなる追撃を仕掛ける為、外まで吹き飛んだ秋世を追う。
☆★☆★☆
──“ノーネーム”廃墟
廃墟と化している“ノーネーム”の施設まで吹き飛ばされた秋世は空を見上げながら
闇で防御して尚この威力。
褒め称えよう、及第点だと内心微笑む。
そして、甲は廃墟と化した家屋の屋根に着地し、眼下の秋世を見下ろす。
「ふむ……然し、もう少し舞台を慮ったらどうだ? 無粋にも程があると思うんだが……」
「………………」
甲の瞳は冷たかった。
そして彼は口を開け、一言。
「………お前はなんだ?」
この一言に尽きた。
かつて別世界の箱庭で出会った怪獣王とは違う感覚。目の前の
“此奴は危険だ”
そして、此奴は■■■■共と何故か被るのだ。
「ふむ……俺が何か、か……」
甲の質問に対して考え込む秋世。
「強いて言うなら人間だよ」
「お前みたいな人間がいるかよ!!!!」
甲は足から焔を噴出し、再び焔を纏った拳を振るう。
最初から全力、先手必勝──甲はあらん限りの力を振り絞る。
対する秋世は俯瞰するかの様に自然体。
そして腕をタクトを振るう様に動かし、足元より現れる闇が甲の拳を捌いていく。
「まだだ! イデオンソード!!!」
さらに甲は
徐々に剣戟のギアを上げ、一心不乱に斬り続ける。
然し、甲が相手をしているのは無謬の闇。
今まで甲が相手をしてきた者達とは方向性が異なる異形なのだ。
そして突如として甲と秋世の間を隆起した大地が隔てた。
「チィ──!!」
甲は飛翔し、体勢を立て直して両手の掌にマナを集中する。目の前の闇を祓う為に。
「ウルティメイトプラズマショット!!!!」
放たれるは極大の炎弾。
秋世は数多の術法を使用する。
大地の障壁、大気の渦、水流の蛇を作り上げ、炎弾を削らんと殺到する。さらに炎弾を避けて闇の閃刃が甲に狙いを定め、蛇蝎の如く接近する。
「オオオォォ!!!」
然し、それで貫かれるほど柔ではないと、甲は炎の剣で防いでいく。
共に千日手。相手が新たな手を出せば、自分もさらなる手を出すという繰り返し。
「ふむ……面白いな
「………俺には城崎甲っていう名前があるんだよ。だからと言ってお前に呼ばれたくないけどな」
「俺も随分と嫌われたものだ……然し、君は壊す者ではなく、守る者ではないのかな? 君のそれは自分の役割と反しているのではないのかな?」
「………お前は危険だ」
甲が言っているのは何も強さの事を言っているのではない。寧ろ強さという点に於いては此処にいる何人かと拮抗している。
ならば頭脳か?
否、頭がキレるかもしれないがそれではない。
ならば何を危惧しているか……それは秋世の存在そのものだった。
目の前の闇を放っておけば、いつか大変な事態を引き起こしかねない。
甲は本能で感じ取ったままに行動しているに過ぎないのだ。
「俺はお前の事を認められない……いや、お前は、
「ふむ……」
面白い奴だ、と秋世は含み笑う。
「俺が君に教える必要性は全くないと思うのだが?」
「そうかよ……」
そして甲は目の前の秋世を粉砕すべく、マナを手繰り、自らの心象を確固たるものとする。
「───一に無」
謳うは、愛する者を守る為に振るう勝利の凱歌。
「───二に絶」
地球の理は
この一撃は未来を紡ぐ為のモノ。例え何者であろうと、その先をへと進んでみせる。
「───三に勝!」
故に砕けろ。自分が愛したモノの為に。
これぞ勝利の号砲だ──!
「──ガーディアンビートォォ!!!」
拳は極大の炎を纏い、放たれる。
全身全霊、全力の一撃は大気さえも焼き尽くす。
これには秋世の深淵めいた黒い眼が揺れ──
「“カタストロフェ”起動……終に廻りて閉ざせ──疑似創星図」
揺れているのは秋世だけではない。
大気が、大地が鳴動し、その闇に恐れ慄く。
これぞ星を砕く一撃。
これがお前の幕引きだ、と秋世は振りかざす。
「秋世さん!!!!」
「甲!!!!」
追いついてきた黒ウサギ達は止める為に疾駆する。
然し、帝釈天の眷属も、最速の雷も、此処にいる誰であろうと、もう間に合わず止められない。
未来を紡ぐ為の一撃と星を砕く一撃がぶつかろうとした瞬間。
二つの矢が大気を裂き、彼らの足場を破砕した。
そのまま二人の一撃は喰らい合いながら天へ舞い、箱庭の天幕を貫いた。
☆★☆★☆
ペリベット通りを走る二人の影。
二人は家屋を足場にし、何棟もの家屋を破壊しながら“ノーネーム”へと向かっていた。
一人は逆廻十六夜。
一人は階層支配者、白夜叉。
彼らが急いでいるのは無理もない。
「で、本当なのか!? 其奴の狙いが黒ウサギだってのは!」
「応とも。彼奴は確かにそう言った様だ。 ……そして奴なら絶対にそうすると確信できる」
「………俄かに信じがたいが、そんな奴ならもっと前に行動に移してんじゃねえのか?」
十六夜の疑問は尤もだ。
件の男が月界神殿を狙っているとならば、もっと前に、それこそ“ノーネーム”が没落した後、すぐにでも奪いにこれた筈だ。
だが、それをしなかった。
ならば其処に理由がある筈だ。
「理由は簡単じゃ。彼奴は太陽の主権の何れかを使わねば
「つまり、今までは何処か別の場所に居たってのか?」
「簡単に言えばそうじゃ。 ……まあ、目先の問題はそれではない
問題は、彼奴が
男の性格を合わすのは、先の一件だけで十分測れるだろう。
例え、同じ神群の仲間であろうが立ち塞がれば誰であろうと踏破する。
中国神群の哪吒太子や二郎真君は瀕死の重傷。神霊である二郎真君に至っては死にかけていた。
決して折れず、揺るがず、曲がらぬ大英雄。
敵に回せばこれ以上の脅威はない。
白夜叉達がノーネームの門前へ差し掛かった時、天幕を貫く二つの力の奔流を目にした。
「もう来ておるのか……!」
「急ぐぞ白夜叉!」
二人の足が大地に亀裂を生む。
音を超えて疾走する二人が大英雄に辿り着くまで後───
☆★☆★☆
未来を紡ぐ一撃と星を砕く一撃が喰らい合いながら天幕を貫く。
秋世や甲、“ノーネーム”のメンバーは驚愕する。天幕を貫いた事ではない。
驚愕している理由は、
漆の様な美しい黒髪の男──否、弓兵。
皆が察する。この男が射ったのだと。
皆が動かぬ中、男は口を開く。
「そこの月の兎よ」
「……何でございますか」
黒ウサギに緊張が奔る。
溢れんばかりの男の覇気に抗いながら黒ウサギは背後に隠した金剛杵を握りしめる。
(此処には……別世界の箱庭の同士がいる中、彼らには指一本触れさせない!)
そして男は用件を言う。
「貴女が持つ月の主権──月界神殿を此方に渡して欲しい」
「──嫌と答えたら?」
「力付くで奪うまで」
男は弓を構え、矢先を黒ウサギに向けた刹那──
「お前は──俺達の仲間に何するんだよ!」
「別世界とはいえ、仲間に手を出そうとする奴を野放しにはできないな」
悠雷は迸る雷を身に纏い、光の軌跡を描きながら男に斬りかかり、真は空間跳躍で拘束にかかる。真が追い詰め、悠雷が仕留める。
まさに無謬の連携攻撃。彼らはお互いを知り尽くしている故にこそ出来るコンビネーションだ。
悠雷の刺突が男の頬を切る。
そして男の横を通過する形になった悠雷は体勢を立て直し、閃光の如き速度で猛追し続ける。
それをサポートをするか如く、真は『黄泉丸』を抜刀する。この刀は人でないモノに絶大な迄の斬れ味を誇る。
目の前の男にはペーパーナイフ並みの斬れ味しかないが、彼の一矢を防ぐ事ができ、尚且つブラフにさえ使えるのだから。
一振り毎に門を潜り、前後左右と縦横無尽に転移し、攻撃を続ける。
男は紙一重で彼らの攻撃を避け続ける。
一つの判断がミスへと繋がる攻防の中、真は零距離まで転移し、拘束しようとする。
然し──
「──空間跳躍ですか……成る程、利便性が高い恩恵の様だ」
──男は真の神出鬼没たる空間跳躍を読み切るに到り、真の腕を掴んだ。
零距離への空間跳躍を察知する様な行動など真は行っていない。然し、目の前の男は用意に掻い潜ってみせた。
「然し、残念だ。貴方の様な使い手など何人も見てきた」
男は経験則で真の行動を読み切ったのだ。
箱庭に於いて境界門を開く事が出来る者は多数存在する。ただその中でも真の空間跳躍は利便性が高いだけであって、驚く程の物ではないと男は酷評を下す。
「クッ──!」
真は黄泉丸を全力で振り下ろす。
まだ黄泉丸の人体に対しての効力を知らない筈だと読んだからだ。
門を開き、縦に振り下ろす斬撃を横一文字の足狙いの斬撃に切り替えての攻撃は男にとっては意表を突きに至る。
「だが、それがなんだと言うんだい?」
男は虚を突かれながらも、足を狙った斬撃を足を上げ、振り下ろすという単純な動作で刀を抑え込んだ。
そのまま真を地面に叩きつけ、胴体を足で押さえつけた。
「グ……ア、が……!」
「真!? テメエ!!!!」
閃光の如き速度で接近する悠雷。
然し、弓兵が取った行動が上だった。
経験が裏付けた武が悠雷の動きを捉える。如何に速く動こうとも、人体が可能とする攻撃動作は限られている。それを見切れば、如何に雷を纏おうとも見切ることは可能だ。
十、百を超える雷速の剣戟を最小限の動きで躱し続ける。
悠雷は一旦距離を弓兵から離れる。
今のままでは届かないと分かったから。
だが、それは同時に攻撃のチャンスを相手に与えてしまったのだ。
「君、神霊の血脈だろう?」
悠雷の背筋が凍りついていく。
声に臆した訳でも、実力差を感じたからでもない。自分の魂が狂い叫ぶ。
あの一矢を受ければ即死だと。
あの一矢は神を殺し、星を堕とし、数々の天災を沈めた最強の一矢。
彼の偉業を讃えるが如く、その逸話をこう呼んだ。
「刮目せよ。これが本当の落陽と知れ──」
彼が成した偉業の中で、特に異彩を放つ逸話をこう呼んだ。
「霊格解放──射日神話……!」
九つの太陽を射落とし功績を讃えられた男の本気の一矢が半神たる悠雷目掛けて放たれる。
星が、神が、天災が、ただの一矢で吹き飛び、風穴を開ける大威力。
空間を裂き、大音響を響かせながら飛来する矢は悠雷を捉え、そして───
「しゃらッッッ……くせェェェェ!」
間に合った十六夜の蹴りが矢の軌道を横に逸らした。否、逸らす事しか出来なかった。
「間に合ったか……無事か黒ウサギィィィ!」
「キャア!? 白夜叉様、時と場合を考えて下さい!」
抱き付こうとしてくる白夜叉をはたき落す黒ウサギ。
「……貴女でしたか。白夜王」
「久しぶりじゃの
旧知の仲であるかの様に話を進める両名。
「此処にいる者達に手を出すな。私の手から奪おうものなら階層支配者として……否、魔王として、貴様を葬り去るぞ?
白夜の地平の恐怖を知らぬ訳でもあるまい」
「だから、それがどうかしたのですか? 貴女とて私の権能は知っている筈だ。然し、私には余り時間がないのだ……
余り気は進まないが……仕方ない」
突如、上空より舞い散る黒い羊皮紙。
別世界の“ノーネーム”の者達を巻き込んで歴史に抗った者を象徴する試練が始まる。
『ギフトゲーム名“大羿”
嗚呼、友よ、人々よ。何故嘆き、悲しんでいるのだ?
輝く天上の烏たちよ。どうかその御威光をお納め下さい。人々は貴方達の威光に抱かれ、焼き焦がされ、此処を地獄と呼ぶのだ。
どうか、一人になってはくれまいか?
でなくば我が一矢は貴方達を射抜いてみせよう。
嗚呼、人々よ。何故困り果てている?
蔓延る天災の脅威に晒され続けるならば弓を引こう。遍く悪獣を射抜こうぞ。
嗚呼、最愛なる我が妻よ。人の生を忌避する貴女を天へと至らせよう。
願うならば探し続けよう。貴女が天へ昇るまで。
我が願いは彼女に会う事。
この軌跡を辿った先を見据えねば、落陽には至らない。
“后羿”印』
射日神話と讃えられし英雄が動き出す。
眩いばかりの光が、皆を包んだ。