理想を求める者達も異世界から来るそうですよ? 作:幻想のtidus
──ペルセウスは偉大な英雄なんだよ。彼の功績はギリシャ神話の中でも高い部類だと私は思う。だから、私はペルセウスを心の底から尊敬しているんだ。
英雄好きの彼女は光と見紛う様に笑って言いのけた。
俺は彼女の笑顔に見惚れていた……
懐かしくも、鮮烈なまでの大切な俺の思い出の一つだ。
☆★☆★☆
現在、“サウザンドアイズ”の支店、白夜叉の私室に一同は揃っていた。
階層支配者、白夜叉。
“ペルセウス”リーダーのルイオス。
鎖で拘束された吸血鬼、レティシア。
“ノーネーム”の夏海以外の全主力メンバーである黒ウサギ、十六夜、耀、飛鳥、龍悠、秋世の計六名。
「うわお! ウサギじゃん! 噂には聞いてたけど、まさか本当に東側に居るなんて思わなかった! つかミニスカにガーターソックスってかなりエロいな! ねえ君、うちのコミュニティに来ない? 今なら三食首輪付きで毎晩可愛がるぜ?」
ルイオスは下卑た笑みを浮かべ、舐め回すように黒ウサギの全身を視姦する。
きっと黒ウサギは彼の性壁にど直球なのだろう。
寒気を感じた黒ウサギは十六夜の背中に身を隠す。飛鳥はそんなルイオスに不快感を感じたのか泰然とした態度で返した。
「これはまた、随分と典型的な外道が出たわね。先に断っておくけど、この美脚は私たちの物よ!」
「飛鳥さん!?」
「うん、黒ウサギは私たちの共有玩……友達だよ」
「耀さん、今共有玩具って言いそうでしたよね!? というか言おうとしましたよね!?」
「うん」
「ち・が・い・ま・す! 飛鳥さんも耀さんも真面目なお話に来てるんですからいい加減にして下さい!」
突然の所有物発言と玩具発言に慌ててツッコミを入れる。
「ならば取引しよう! 金貨百枚でどうじゃ!?」
「乗った!」
「乗りません!」
龍悠と白夜叉のコント染みた掛け合いにもハリセンが奔る。
ルイオスはノーネームの漫才を腹を抱えて笑い、秋世はただルイオスを見ていた。
「以上が“ペルセウス”が我々に振るった内容です。ご理解いただけましたでしょうか?」
「う、うむ。ペルセウスの所有物・ヴァンパイアが身勝手にノーネームの敷地に踏み込んで荒らした事。それらを捕獲する際における数々の暴挙。確かに受け取った。謝罪であればまた後日」
「結構です。あれだけの暴挙と無礼の数々、我々の怒りはそれだけでは済みません。ペルセウスに受けた屈辱は両コミュニティの決闘をもって…」
「いやだ」
唐突にルイオスが口を挟んだ
「決闘なんて冗談じゃない。それにあの吸血鬼が暴れ回ったって証拠があるの?」
「……ある」
秋世がそう言うと奥から縛りあげたレティシアを連れてくる。
石化していないレティシアを見てルイオスは歯噛みする。
「此奴は……我らの本拠を荒らし、さらには攻撃までしでかした……オマケに俺は捕縛用に放たれた光に巻き込まれたしな……否とは言わせない」
「チッ───使えない奴らだ……!」
「おい……! 彼奴らはお前の仲間じゃないのかよ……!」
龍悠は怒気と殺気を放ちながら問い詰める。
ルイオスはそも当然のように答える。
「はあ? 無能な奴らなんて要らないし、それを仲間と思うわけないだろ? 精々駒止まりさ」
「テメエ!!!!」
彼の怒気が部屋を軋ませる。
激怒した龍悠はルイオスの胸ぐらを掴もうとするが、
「……やめておけ……その気持ちはゲームまで取っておけ」
秋世が右手で制止を促す。
「……それに俺も此奴を英雄の子孫などと信じたくない」
同感だ、とルイオス以外は心中で肯定する。
「……彼女が言っていたペルセウスとは似ても似つかない……はっきり言って期待外れだ……」
「言ってくれるね……! 良いぜ……ゲームは一週間後だ! 首を洗って待ってろよ名無し共!!!!」
「ヤハハ! 死亡フラグ立ててんぞ」
「は! お前らの尊厳から何から何まで貶めて奪い尽くしてやるよ……!」
相変わらず傲岸不遜な笑みを浮かべる十六夜。
ルイオスは肩をわなつかせて部屋から出て行く。
「さて……おんしら、覚悟はできておるの?
奴の持つ恩恵は、破格の物が多い。油断すれば……」
「問題ないね」
十六夜は即答する。
「俺の座右の銘でな“強きを挫き、弱きも挫く”ってのがあんだよ。あのお坊っちゃまの鼻っ柱なんかへし折ってやるよ」
「同感ね。あんな外道に負けるもんですか」
「うん、レティシアを完全に取り戻そう」
「仲間を大切にしねえ奴なんかに俺は負けねえよ」
「……元より言うまでもない」
五人の反応はまちまちだがルイオスに負けるつもりも無いし、そもそも負ける事など考えていないと五人の目が物語っていた。
「皆さん……」
「……それに俺は今回、英雄の代役だ……まあ英雄などとはかけ離れているが……」
「だろうな」
「でしょうね」
「うん、そう思う」
「以下同文」
「……お前ら其処に直れ、はっきりと言い過ぎな気がしてならん」
『やだね!』
秋世は事実だと認識しているが、あまりにも即答だった為にツッコミを入れ、何かを考え、そして……
「まあ……なんだ。俺が言うのもアレなんだが……“ペルセウス”に目に物見せようか……」
秋世が突然発した言葉に全員は無言で頷き、拳を突き合わせる。
名無しによる英雄退治が幕を開けた。