理想を求める者達も異世界から来るそうですよ? 作:幻想のtidus
『ギフトゲーム名“FAIRYTALE in PERSEUS”
プレイヤー一覧:
逆廻十六夜
久遠飛鳥
春日部耀
富久音秋世
原摘夏海
竜童龍悠
“ノーネーム”ゲームマスター:ジン=ラッセル
“ペルセウス”ゲームマスター:ルイオス=ペルセウス
クリア条件
・ホスト側ゲームマスターの打倒
敗北条件
・プレイヤー側ゲームマスターによる降伏
・プレイヤー側のゲームマスターの失格
・プレイヤー側が上記の勝利条件を満たせなくなった場合
・舞台詳細・ルール
*ホスト側のゲームマスターは本拠・白亜の宮殿の最奥から出てはならない。
*ホスト側の参加者は最奥に入ってはいけない。
*プレイヤー達はホスト側の(ゲームマスターを除く)人間に
*姿を見られたプレイヤー達は失格となり、ゲームマスターへの挑戦資格を失う。
*失格となったプレイヤーは挑戦資格を失うだけでゲームを続行する事はできる。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、“ノーネーム”はギフトゲームに参加します。
“ペルセウス”印』
☆★☆★☆
白亜の宮殿に怒声が響き渡る。
“ペルセウス”のプレイヤー達は名無しを倒す為に準備をしていたが、誰が予想できただろうか。
冗談にも程がある、とペルセウスの者達は歯噛みする。
使われているのは水樹、そして……
「水樹! まとめて吹き飛ばしなさい!」
飛鳥の一喝に応じる様に水樹は水流を放ち、荒れ狂う波の様に白亜の宮殿内を押し流す。飛鳥の威光の力を受けた水樹の力は並々ならぬものだ。
だが、準備の整っていたペルセウスを崩したのは飛鳥だけではない。
「GEEEYAAAAAAaaaaaa!!!」
龍の咆哮で宮殿が軋みを上げる。
水樹の放つ水流を巻き上げ、壁を穿ち、兵士を吹き飛ばす様に彼は暴れ回る。
龍悠は暴力の化身として力を奮う。
今回の一件は彼の逆鱗に触れている。
『仲間を売ろうとしている』という事実さえ分かっていれば良い。彼が動くには、これだけで十分なのだ。
「怯むな! 数を活かして抑え込むんだ!」
兵士達は陣形を組み直し、波状攻撃を仕掛ける。
剣戟と矢を伴う、攻撃の波を龍悠は───
「オオォォォォオオオオ!!!!」
拳を上に振り抜き上昇気流を作り上げ、兵士達諸共吹き飛ばした。
それだけではない。その一撃は天井に風穴を開け、白亜の宮殿に突風を巻き起こす。
「く、そォォ!
兵士の内の二人がギフトカードを取り出し、掲げる。
其処より現れるのは古代から中世、近代まで船乗り達の恐怖の対象とされてきた異形の怪物。
目と歯を一つずつしか持たず、人の頭と腕、白鳥の胴体と翼を併せ持つ異形の魔女達が真の姿を露わにして白亜の宮殿に降り立った。
本来は“ペルセウス”への挑戦権を獲得する為のゲームを担う者達だが、今回のゲームに勝つ為にルイオス達が兵士達の恩恵として連れてきたのだ。
『人遣いが荒いのォォ……そうは思わんか? デイノー』
『そうは言ってもな、二代目との盟約がある以上、無下には出来んだろう? なあ、パムプレードー』
『ヒッヒッヒッ! 私ゃ彼処の生意気そうな小娘の顔を歪むとこが見れればそれで良いよ』
順番に歯と目を手渡していく
彼女達は殺気を飛鳥へと向け、術を紡ぐ。
仮にも彼女達は海神としての霊格と地母神としての霊格を微量だが保持している。
そして此処は飛鳥が水樹で放った大量の水がある。
急激に足元の水場が水泡が湧き出し、その水位を下げていく。
ペルセウスの兵士達は直様、恩恵を用いて壁を形成して身を隠す。
そして放たれたのは水素爆発。水位が下がっていたのは水を水素と酸素に分離させた為だ。
ガスは弾けると同時に眩いばかりの閃光と大爆発を引き起こす。
辺りに煙が立ち込めているが確認は不要。
白亜の宮殿に重大な被害を
煙が突風と共に失せた。
誰がやったかは明白だった。
水素爆発の中、龍悠と飛鳥は無傷だった。驚くほどの事ではない。
龍悠は龍の純血の恩恵を所持しているのだ。箱庭最強種の一角を担う様な恩恵に水素爆発など最初から通用しない。
飛鳥は水樹で体を覆い盾となる様に指示を出したのだ。
威光の力を得た水樹にも龍悠と同様に水素爆発など効果を成さない。
そして、それを見て海魔が動き出す。
丸太の様に太い海魔の触手は白亜の宮殿を破壊しながら数多の船乗りを沈めた様に龍悠を狙い打つ。
グライアイも飛鳥を討ち取る為に再度術を紡ぐ。
紡ぐのは水流操作、岩の鏃の形成……どれも常人の体と同じ強度の飛鳥が受ければ致命の一撃。
海魔の触手が龍悠の体を捉える───
飛鳥に向かって致命に至る一撃を放たれる───
───だが
「しゃらッッッくせえええぇぇぇ!!!!」
龍悠海魔の触手を掴み、口を大きく開ける。
放たれたのは力の奔流。
他の触手を盾にするが奔流に抗える筈もなく、海魔は白亜の宮殿から押し流された。
『クラーケン!??』
「あら、余所見してて良いのかしら」
グライアイが驚愕で体が硬直したのを飛鳥は見逃さない。
水流操作によって放たれた水柱と形成された岩の鏃を水樹が放つ水流と根を操って防ぎ、飛鳥は凛とした声で言霊と共に威光を放つ。
「拘束しなさい!」
そして水樹は飛鳥の威光に従いグライアイへと根を伸ばし、巻きついていく。
『ちょっと、離せ!』
グライアイ達は体に力を込めるが水樹の根は飛鳥の威光により、ビクともしない。
“ペルセウス”が用意した異形達は二人に敗れ去った。
「さて、“ペルセウス”の兵士達……まだまだ踊れるかしら?」
飛鳥は笑みを浮かべて兵士達を見る。
その目は、「諦めたのか?」と告げていた。
「舐めるなよ……!
名無し風情に敗北する我々ではないわ!!!!」
「応とも! 我らは誇り高き“ペルセウス”だ!」
兵士達は飛鳥と龍悠に飛びかかっていく。
「来なさい“ペルセウス”! 雑兵なんかに私達は取られない!」
「ハッ! あの下衆なんかより
兵士達を雑兵と言い放ち自らに奮起する飛鳥と高揚感で晴々としている龍悠は兵士達を迎え撃つ。
そんな中、飛鳥は一人考える。
(私の恩恵は人心を惑わす魔女の恩恵なんかじゃない……!)
元の世界で人心を惑わす魔女と自覚した。
親族には遠ざけられた事もあったし、知らず知らずの内に親友と思っていた者達に恩恵を使っていた事もあった。
だが──
(私はまだ変えられるのよ……!)
黒ウサギは言っていた。
威光は人心だけでなく恩恵にも作用する、と。
魔女としての才覚ではなく、恩恵を支配するという方向に伸ばす事も可能なのだ。
ならば、あとは磨くのみ。磨いて磨いて磨いて……自らの望んだ形に大成させる。
(貴方達には悪いけど……私の威光の方向性を伸ばす為の練習台になってもらうわよ!)
故に彼女は威光を奔らせる。水樹は駆動し兵士達を迎え撃つ。龍の咆哮と兵士の怒号が彩る舞踏に飛鳥は踏み込んで行く。
☆★☆★☆
「人が来る。皆は隠れて」
物音と匂いを頼りに耀は不可視の恩恵を持つ騎士をその五感で捉えていく。
獣の如く腰を落として、不可視の騎士の後頭部に痛烈な一撃を放つ。
驚愕の声を発した騎士は前のめりに倒れこんで失神する。
騎士の頭から兜が落ちる。
「この兜が不可視の恩恵で間違いなさそう」
「ホレ、御チビ。お前が被っとけ」
十六夜は兜を拾い上げジンの頭にのせる。ジンの体は瞬く間に色を失い姿が消える。
“ノーネーム”のゲームマスターであるジンが見つかってしまえば敗北なのだから最優先だ。
「不可視の恩恵は……今回の鍵だ……索敵と奇襲は定石だな」
「連中が不可視の恩恵を使っているのを限定しているのは、安易に奪われないためだろうな。……なら最低でもあと二つ、贅沢言えば四つ欲しいな」
珍しく言い淀む十六夜。確実に最奥に進む必要があるのはジンと十六夜、秋世の三人のみ。耀と夏海を入れて四つあれば文句無しだが、欲をかいて見つかっては本末転倒だ。
「……!」
秋世は突如、闇を周囲に張りめぐらせる。
床に巡らせた闇が敵がいると知らせている。
その歩みはゆっくりと……だが確実に此方に向かっていた。
そして、それは黄金の剣を携え怪物だった。
緩慢な動きで剣を構え、闇を見る怪物。
「アクセス──我が
幻獣の類か否かはわからないが、夏海は闇から飛び出し、閃光と見紛う様な華麗な右ストレートを怪物の顔面に叩き込む。
だが、怪物の剣は推進力を得た様に加速し、夏海の体を捉えた。
吹き飛ぶ両者を見た時にジンの脳裏にある怪物の兄弟を思い出す。
そして今の加速はそれに類似しており、黄金の剣を持てる者と呼ばれた光翼馬の兄弟であるそれは───
「
「私が、これを抑えますから三人は先へ!」
夏海は怪物の前に立ち塞がり、足止めを買って出る。
「ああ……ついでにハデスの兜……一つ確保だ」
秋世は闇で手繰り寄せ、ハデスの兜を手に取る。
彼は闇を索敵の為だけに展開したのではない。ハデスの兜を最大効率で手に入れるためである。
「逆廻……使え」
ハデスの兜を十六夜に投げ渡す。
「お前の分はどうするんだ?」
「闇でカバー出来る……実証済みだ」
「そうかい」
「じゃあ私は……」
「ああ、春日部はお嬢様や赤髪ショタ、原摘のフォローだ」
「わかった」
そして耀も闇から飛び出し、怪物に挑んでいく。
二人が負ける道理はないが、あの緩急のある剣戟は対応するのは至難の技だ。二人がかりで慎重に戦うのがベストなのだ。
「じゃあ、夏海。やろうか」
「ええ、やりましょう」
鷲獅子の風が吹き荒れ、憤怒の炎が猛りを上げる。
黄金の怪物退治は彼らの仕事ではない。彼らの仕事は英雄狩りだ。故に露払いは彼女達の仕事となるが、何のことはない。
この程度の怪物を倒せずして“ノーネーム”の復興など出来る訳がないのだから。
☆★☆★☆
白亜の宮殿・最奥
黒ウサギの不安、懸念は最高潮に達していた。
理由はルイオスを見れば一目瞭然だった。
ルイオスの霊格が上昇しているばかりか
一週間前に会った時とは比較にならない。
元からルイオスは
鬼に金棒、虎に翼とは言ったものだ。
そして扉が開かれる。
十六夜、秋世、ジンの三人を見た時、何時もなら安堵できるはずなのに全くできない。寧ろ緊張の糸が更に張り詰めていく感覚だった。
「───ふん。使えない奴らだ……と言いたい所だけど今は気分が良いんだ」
ルイオスは彼らを見下ろす。その目は喜色に染まり、口は愉悦感に塗れ三日月に歪む。
「新たに手に入れた恩恵を試せるんだからさ!」
それは新しい玩具を手に入れた子供の様だった。
だがその玩具は魔性の暴力。振るえば値千金の恩恵に他ならない。
「……認めない」
そんなルイオスを見て秋世は認められない、と呟いた。
断じて違う。彼女が求めたペルセウスの姿ではない。これでは秋世の愛する
「ああ、嫌だ。認めない。この様な事実など許せない」
彼の足元で闇が蠢く。
闇も彼の怒りを表現するかの様に敵意を表す。
「ヤハハ! 良いね、良いな、良いぜ、おい! 白夜叉の所で見た時より楽しいそうじゃねえか!」
快楽主義者は揺るがない。相手の歯応えが増したなら楽しめる。もっと楽しませろ。十六夜の探し求めた物がこの先にあるかもしれないのだ。
だから──
「俺を楽しませてくれよ!」
二人の心の内はバラバラ。方や悲憤。方や歓喜。
だが彼らの目的は目の前の男を倒す事。
ルイオスの自信は揺るがない。
ギフトカードから星霊殺しの鎌・ハルパーと
それは原初の悪魔。
それは魔星の星霊。
「目覚めろ───“アルゴールの魔王”!!」
褐色の光は名無しの視界を染め上げ、白亜の宮殿に共鳴するかのような甲高い女の声が響き渡る。
「ra……Ra、GEEEYAAAAAAaaaaaa!!!」
人の言語野では理解不能の叫び。現れた女は体中に拘束具と捕縛用のベルトを巻いていた。
そして、女の目がルイオスを見る。
その視線は何故、
「さて、名無し狩りだ……!」
「ra、GEEEYAAAAAAaaaaaa!!」
アルゴールは両腕の拘束具を引き千切り、半身を反らせて絶叫を上げる。
開戦の狼煙は上がり、ペルセウスと名無しの戦いは幕を開けた。