理想を求める者達も異世界から来るそうですよ?   作:幻想のtidus

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これは彼女自身の罪の始まり。
彼女が感じていたのは狂おしい程の自己嫌悪。

彼女の罪とは───


幕間の物語──少女の断片

 罪とは──なんだ?

 罰とは──なんだ?

 

 ある人は言った──弱きは罪だと。

 ある人は言った──罪とは規範や道徳から外れたものだと。

 

 この類の問答に終わりはない。

 これらの答えは一人一人、同じ意見でも差異が必ず存在しているのだ。故に罪も、罰も千差万別。

 人の数だけ罪も罰も存在している。

 

 

 ならば、私の罪とは?

 私への罰とは何?

 そんな自問自答を睡眠している状況で夢としてみていた彼女の眠りは───

 

 

『起きなさァァァァいッ!!!!』

 

 

 三人からなる大声が、彼女の部屋を揺がして意識を強制的に浮上させられた。

 

 

 ☆★☆★☆

 

 

「もう、夏海(ナツミ)ちゃんはお寝坊さんだよね〜」

 

「そう言うなよ白百合(シラユリ)。夏海は昨日かなり飲んでんだからよ」

 

美香(ミカ)が飲ませたんじゃない……」

 

「そうそう! 沙良(サラ)ちゃんの言う通りだよ!」

 

 ギャアギャアと夏海を尻目に口論を始める三人の少女達。

 夏海は見慣れた光景を微笑みながら見つめていると、ある異変に気付いた。

 

「あ、あの……みんな」

 

 夏海は恐る恐る、三人に声をかける。

 

「どうしたの夏海ちゃん」

「どうしたんだ夏海」

「どうかしたかしら?」

 

 三人は先程まで口論していたにも関わらず、息ぴったりで返答してきた。

 

 夏海は三人の顔を一瞥し、息を整え、そして───

 

 

「なんで……私を含めて、みんな服着てないんですか?」

 

 

 ……

 

 ………

 

 …………

 

 言葉が、続かない。

 三人は誰一人として夏海と目を合わせようとしない。

 

 そして───

 

 

『てへ♪』

 

 夏海の声にならない絶叫が響いた。

 

 

 ☆★☆★☆

 

 

「酷いです! 私が酔ってるからって私を……その……、」

 

「何方かと言えば夏海ちゃんが私達を──」

 

「問答無用です!」

 

 有無を言わせぬ夏海には鬼気迫るものを感じる三人。

 しゅん、としている白百合。

 耳が痛いという表情の美香。

 完全に右から左に流している沙良。

 

「もう………私の気持ちとかその他諸々考えて行動して下さい」

 

 夏海は顔を紅くして俯く。

 その様子を見て、三人は話題を変える。

 

「そうだ夏海、お前に朗報がある」

 

「朗報………ですか?」

 

 最初に言いだしたのは美香だった。

 美香は手持ちのバックから紙束を取り出し、テーブルの上に広げた。

 

「お前の罪、もとい能力を消す方法を私達三人で探して見たんだ」

 

「夏海ちゃんの能力は、七つの大罪………だっけ?

 確かに、その罪自体を消す方法は探せなかったんだけど……」

 

「消せないなら、相殺すれば良いと考えたんだ」

 

「相殺………ですか?」

 

 

 夏海は首を傾げる。

 自分の身に宿る能力、七つの大罪は超能力や魔法等とは違い、正真正銘の悪魔や神のそれだ。

 しかし、それを相殺するならば、それ相応のモノを用意しなければならないのでは、という疑念を抱く。

 そして、沙良がその疑問に答える。

 

「夏海の疑問は(もっと)もだよ。確かにアンタの異能(ちから)は私らからしたらあり得ない。

 だけど、罪がアンタの力なら、その罪と相克になるような概念を手に入れれば良い」

 

「例えば七元徳、対神徳、枢要徳とかの力を夏海が手に入れる事が出来たなら………」

 

「夏海ちゃんが大嫌いなその(ちから)を消せるんだよ!」

 

 えっへん、と胸を張る三人。

 夏海は俯いたままだった。

 白百合が夏海の顔を覗き込む。

 

 夏海が泣いていたのだ。

 そのまま床に座り込み、顔を手で覆う。

 

「本当、に……消せ……るんですか?」

 

 嫌悪していた。憎悪していた。疎ましい、煩わしい。

 人とは全く違うし、毎夜毎夜、気を抜けば身体と精神を乗っ取られそうになる恐怖が襲ってくる。

 

 私は生まれてはならない人間だっと思っていた。罪に塗れ、化け物の烙印を押された人生。

 

 しかし、目の前の少女達は手を差し伸べてくれた。

 差し伸べられた手は温かくて、優しくて、光に満ちていた。

 

「手掛かりはある」

 

「後は探しに行くだけだ」

 

「そして夏海ちゃんの気持ち次第だよ」

 

 三人は問う。罪から逃れたいかと。

 夏海は顔をゆっくり上げて───

 

「お願い、私をそこまで連れてって下さい……!」

 

 普通の少女になりたい。

 故に答えなど決まっていた。

 そして彼女達は笑う。

 

「オッケー、目的地はイスラエルだ」

 

「じゃあ、行くよ夏海ちゃん」

 

 白百合は夏海の手を取る。

 

「えっ、今からですか!?」

 

「「「当たり前」」」

 

 手を引かれるままに夏海達は走り出す。

 たった一人を、罪の坩堝から引き上げるために。

 こうして、原摘(はらつみ)夏海(なつみ)は罪から解放され、普通の少女としての人生を歩む。

 これから未来(さき)……幸せに満ちた人生を謳歌する

 

 

 

 

 

 

 ───筈だった。

 

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