理想を求める者達も異世界から来るそうですよ?   作:幻想のtidus

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地球の理と闇──後編

 誰も居ない灼熱の地に彼は一人佇んでいた。

 何をするでもなく、ただただ……月の昇らぬ灼熱の世界で空を見上げて自責する。

 

 英雄神、救世主、大英雄……彼を賛美する称号は数あれど、彼は最も身近にいた妻を助けることが出来なかった。

 

 故に、此処で待ち続けた。

 己は自分の意思で箱庭に赴くことが出来ない。誰かが彼を召喚するまで、彼は待ち続けるのだ。

 

 もし、誰かが己を召喚するのなら、それこそ彼女を救えという天命だ。ならば迷う必要などない。それこそ己の使命なのだから。

 

 

 ☆★☆★☆

 

 

 灼熱の大地をただひたすらと進み続ける耀と飛鳥、白夜叉達。

 何処まで進もうと女仙・西王母は影の欠片も見当たらない。ゲームのルールに記されているならばヒントなりなんなりが用意されている可能性がない訳ではないが……

 

「やはり、この勝利条件は不老不死の恩恵を探すのではなく、それを用意しておかねばクリア出来ん条件かの?」

 

 白夜叉は不老不死の薬の逸話は元より薬を探すのではなく、不老不死の恩恵を所持していなければクリア出来ぬ条件ではないかと推測する。

 

「確かにその可能性はありますが……だとすると残されたクリア条件をなんとかクリアするしかありませんね」

 

 黒ウサギの表情は険しいものだった。

 残されたクリア条件はどれも難関だ。

 太陽を落とすのは白夜叉なら可能かもしれないが、后羿の一矢が此方を何時狙っているかもわからない為、迂闊な行動はとれない。

 

「ねえ、黒ウサギ」

 

「飛鳥さん? どうかしましたか?」

 

「いえ、ちょっと気になることがあるのだけれど」

 

 飛鳥は契約書類を片手に黒ウサギに問う。

 このゲームが始まってから疑問に思っていたその一点を。

 

「后羿が欲している月界神殿……彼は何故、それを狙っているのか。

 これだけはなんだか釈然としないのよ」

 

「ええ、月界神殿は箱庭に於いて十五に分割された月の主権ですからね。この箱庭においても優秀な恩恵です」

 

 実際、黒ウサギが所有する月界神殿は並の人間相手ならば容易に命を奪う事さえ可能な権能だ。

 この説明を聞かされても未だに釈然としない飛鳥。

 すると今迄考え込んでいた耀が口を開く。

 

「ねえ、白夜叉。后羿が会いたい嫦娥って后羿を裏切ったんだよね?」

 

 耀の疑問は尤もだった。

 后羿の妻である仙女、嫦娥は后羿と共に神霊から人間として降天させられ、その現状から打破したいが為に后羿に不老不死の薬を採ってくる様に懇願する。

 

 そして后羿は望み通り不老不死の薬を二つ、西王母から貰ってきたのだが嫦娥は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

「私が同じ立場だったら絶対にもう一度会いたいなんて絶対に思えない。

 まあ、それは個々の性格にもよるんだろうけど」

 

「ふむ……その伝承については私も知っているが正しい伝承は推察できんだろうな。

 恐らく、その伝承は詩人が改変したのだろう」

 

「詩人? 改変?」

 

 飛鳥と耀は聞き馴れない用語が飛び出し、小首を傾げる。

 

「箱庭に於ける人類の幻獣の一種じゃ。

 時に歌声で、書物で、様々な形で世界の功績をこの世に記し、歴史の改竄さえ容易く行う者達だ」

 

 白夜叉の説明に耀と飛鳥も開いた口が塞がらなかった。

 それが本当なら、詩人の影響は計り知れない。

 もし、何処ぞの英雄が詩人の嘘、偽りの功績を歌われてしまえば、歴史は改竄され、忽ち弱体化してしまう事さえあり得る。

 

 そしてタチが悪い事に、詩人の大半は

 ()()()()()()()、という理由で歴史の改竄を行うのだ。

 

 王の悪名を広め、吸血鬼の伝承を捻じ曲げてしまってさえ可能にしてしまう。

 

「私の推察では嫦娥もその一人なのではないだろうか。

 仮にも仙女だ。そのような俗な考えを思いつくかと言えば……私としては俄かに信じがたい。

 后羿の狙いは十中八九、月の主権を触媒に嫦娥を箱庭に召喚する事だろうの」

 

「召喚? 黒ウサギが私達を箱庭に呼んだ様な?

 

「Yes! 星の主権を触媒にすれば触媒の、星に関する逸話を持つ者達を召喚する事ができるんです」

 

「后羿も太陽の主権を使う事で召喚される神霊、英雄の一人じゃ」

 

 ここで耀が得心した様な表情を浮かべ、口を開く。

 

「なら……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 耀の言葉を聴いた瞬間、白夜叉達は耀に注目する。

 

「よ、耀さん、ゲームの中断条件が分かったんですか!?」

 

「うん、良く見たら中断条件に関しては私達でも簡単に分かる内容だったし、きっと達成できる……と思う」

 

「私には全然、分からないのだけれど……」

 

「じゃあ、ゲームを中断させる方法を手短に説明する。

 達成する為の鍵は白夜叉と黒ウサギの二人」

 

 指を二本立てて、黒ウサギと白夜叉に目を向けて話を続ける。

 

「この契約書類の終盤の『私の願いは彼女に会う事』っていう一文が中断条件を指しているんだと思う。

 なら、後は簡単。黒ウサギの恩恵を触媒に白夜叉が嫦娥を召喚すれば、このゲームは中断される」

 

 確かに耀のいう中断条件が正しければ、現状において最も生還率の高い方法だろう。

 だが、白夜叉の表情は険しかった。

 

「うむ、召喚か……できん事はないが、私は仏門に帰依しておる身、弱体化しておる。 時間がかかるぞ?」

 

 白夜叉は仏門に帰依する事で霊格を下げ、階層支配者の地位に──四桁の外門に座している。確かに昔ならば即座に召喚し、中断させる事も可能だ。

 しかし、現在の白夜叉では召喚する為には少々時間を有する上、白夜叉自身も月に関する逸話を有していない事もある。

 故に嫦娥の召喚は難しいのだ。

 

「それでも、構わない。お願い白夜叉」

 

 耀の頼みに白夜叉は──

 

「ふふふ……では、始めるぞ」

 

 大地から白い風が吹き始めた。

 

 白夜叉が使用するのは超高密度プラズマの局地的な放射で物質界の境界を打ち砕く、史上最悪の召喚式が駆動する。

 ───ゲームの閉幕は近い。

 

 ☆★☆★☆

 

 

「ォォォォォオオオオ!!」

 

「ラァァァァァァァア!!」

 

「クッ────!?」

 

 炎を纏った拳と星を揺るがす拳が后羿に迫り来る。その一発一発は十六夜と甲の出し得る限りの全力を振り絞った連撃(ラッシュ)

 后羿は二人の攻撃をギリギリのところで躱し続ける。

 

 されど十六夜と甲は、決して離されてたまるものか、と必死に喰らいつく。

 

 ──后羿には弓の逸話以外に有名な逸話が存在していない。

 それは卓越した弓術による英雄譚を象徴しているが、同時に弱点を晒している。

 

 そう、弓の逸話しかないのなら、弓以外は使えない。

 

 そう思い至った二人は果敢に攻め立てている。

 

 決して后羿に弓を撃たせないために……

 決して后羿に距離を置かせないために……

 

 すると灼熱の大地の遥か彼方で白い風が吹き荒れる光景を一堂が目の当たりにした。

 

「ふむ……白夜叉か……何か策でも思い浮かんだか」

 

 秋世が呟くと后羿は苦虫を噛み潰したかのような表情を見せた。

 まるで、その手は打たれたくなかったと言わんばかりの表情はすぐさま消え失せる。

 

 刹那、后羿の足元が爆ぜた。

 否、后羿が本気の一矢を地面目掛けて放ったのだ。大地は揺れ、砕け、融解し、 破壊の限りを尽くし、弓兵自身をも飲み込んでいく。

 

「グ、オ、オ、ォォォォォオオオオ!!」

 

『────ッ!?』

 

 弓兵は止まらない。

 次々と矢継ぎ早に矢を地面に放ち続ける。

 その一撃、一撃で自らの体が損傷する事など御構い無し。

 その爆風に乗り、どんどん距離を離していく。

 

 

「おいおい、どうなってんだ彼奴……!」

 

 

 后羿は七孔噴血など物ともしていない。

 身体は既に死に体。如何に大英雄といえど致命的だった。

 しかし、后羿は倒れない。

 身体に鞭を打ち、再起し続ける。

 

 

 甲と十六夜は足場を踏み砕き、第三宇宙速度で食らいついてみせる。

 

 

「オラァァァア!!!」

 

 

 大地を揺るがす拳が后羿の鳩尾へと叩き込まれる。

 そのまま流れるように焔剣の二刀を甲は放ち、十字を刻む。

 

 

「さて、魅せろみろよ……!」

 

 

 その言葉と共に

 何故だ?

 何故倒れない?

 これは如何なる現象か?

 甲や十六夜、“耀”の三人が考えるている中、秋世だけが目の前の現象の正体を知っている。

 

 

「……簡単な道理だな」

 

「あ?

 何が言いたいんだよ」

 

 

 甲は秋世に問いかける。

 そして秋世の返答は想像だにしない物だが、決して納得出来ない物でもなかった。

 

 

「単純だ……アレの意思の力と言えば良いのだろうな。……アレは意思の力だけで不屈を、覚醒を果たしているのだよ」

 

 

 英雄と呼ばれる者達は正しい意思の奮起で今以上の力を発揮する、正しく覚醒とも呼べるそれは一部の英雄にとっては馴染み深いものだろう。

 そして今、后羿は覚醒を果たしている。

 

 

「安心しろ……質ではお前達も負けては、いないだろう」

 

 

 秋世の言葉は暗に、『負けたくないなら、アレを超えろ』と言っている。

 それに応えるかの様に彼らは、

 

 

「──当たり前だッ!」

 

 

 甲の声が響き渡る。

 それはこのゲームの参加者達全員の思いを代弁していた。

 

 

 しかし───

 

 

「──私は二度と、私の愛を失わない」

 

 

 后羿は甲達を狙わずに、八つの矢を番えた。

 瞑目し、神経を研ぎ澄ませる。

 これぞ真なる日輪の最期、神話の再現に他ならない。

 膨大な力の奔流が巻き起こる。

 

「私は負けぬ、私は死ねぬ、私は償わなければならない」

 

 

 紫電の如き軌跡を描いて、八つの矢は天上へと射出された。転じ、天で輝く日輪が怪しく脈打ち───

 

 

「嫦娥……私は貴女を愛しているッ!!!!」

 

 ───故に日輪よ、消え失せろ。

 例えゲームで負けようと、嫦娥だけは己の手で助けてみせる。

 后羿は敗北覚悟で目の前の障害を打破する為に、真の黄昏を此処に創り上げる。

 

 そして変化は訪れる。

 肌が徐々に灼かれている感覚を秋世達は感じていた。

 それもそうだろう。

 何故なら、()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

 

「なっ!?」

 

「嘘……」

 

 十六夜と“耀”が驚愕の声を上げる。

 しかし、それはゲームの勝利条件を知っている者なら当然の反応と言えるだろう。

 このゲームの勝利条件は三つだ。

 

 不老不死の恩恵を后羿に譲渡する事。

 

 数々の悪獣を屠る事。

 

 そして、天の日輪を九つ落とす事。

 

 これぞ、現状の后羿が打てる最善手にして、切り札。

 名を───

 

日輪は黄昏へと紡がれる(グミヤー・シェ・リー)!!!!』

 

 堕ちてくる日輪は姿を変え、八柱の火烏となって飛来する。

 はためく翼、燃ゆる空、ある種の美しささえ醸し出し、飛翔する日輪。

 これが生み出すのは誰も残らぬ黄昏のみ。

 

 

 人の身で受ければ、正しく死を招くだろう。

 しかし、───

 

 

「ウルティメイト────」

 

 此処にいるのは常人に非ず、

 人類を救う事を確約された英雄がいる。

 他種族との絆を育む少女がいる。

 人類を■■■為の■■■たる男がいる

 

 

 

 そして、人の世を救う、心優しき救世の怪獣がいる。

 大気から、大地から、マナというマナを掻き集め、八つの日輪を掻き消すために、極大の光球を創り上げる。

 

 

「────プラズマァァァァアア!!!!」

 

 

 放たれたのは、物質化する程の膨大な質量を兼ね備えたマナ。

 開放されたエネルギーの奔流は日輪を食い止めようと鬩ぎ合う。

 

「負けられねえのはお前だけじゃないんだよ、后羿!

 お前が嫦娥を助けたいと願うのと同じくらいに……!

 俺は此奴らをお前の願いの為の犠牲になんかさせてたまるかッ!!!!」

 

 

 俺たちには愛がある、友情がある、絆がある。それらは決して后羿に劣らないという自負もある。

 死力を尽くし、智謀を尽くし、蛮勇も尽くした。

 ならば、後は勝つだけだ。

 それに……

 

 

「甲ッ!!!!」

 

 

 愛する女に応えぬ男など存在しない。

 守り、護り、守護り抜く。

 

 己の限界など既に超えている。

 身体は軋み、悲鳴を上げている。

 

「オオォォォォォッ───!!!!」

 

 しかし、だからなんだと甲は限界を超えて力を振り絞る。

 己の矜持、愛を貫こうと奮起する。

 

 されど、落ち行く日輪は止まらない。

 力を振り絞ろうと、まだ届かない。

 

 一手、二手……理不尽なまでの奇跡の差が明確な壁となって立ち塞がる。

 

 

 こうなってしまえば、どうする事も出来ない。徐々に日輪がエネルギーの奔流を喰らっていく。

 

 

 訪れるのは敗北という未来。

 

『GEEYAAAAaaaaaa───!!!!』

 

「アクセス──我が強欲(シン)

 

「トールハンマーッ!!!」

 

 そう、そんな未来、訪れる筈がないのだ。

 突如としての開かれた境界門より放たれる星の恩恵を付与された咆哮(ブレス)、太陽の炎、雷電のの金槌。

 

 それらが共に日輪を押し返すが、まだ二手足りない。

 

 

「──ッ!

 十六夜、それと富久音 秋世ッ!

 秋世に関しては本当に業腹だけど……お前らが頼りだ!」

 

 あの日輪を押し返せ、と甲は言う。

 秋世は気に入らない。本能が告げているのだ。

 しかし、それを差し引いても、皆を守る為にお前を頼ってやる。

 

 そんな甲に二人は───

 

 

「ヤハハハ! 良いね、良いな、良いぜオイ!

 クライマックスらしく、完全無欠のハッピーエンドといこうじゃねえか!!!」

 

「お前と同じ、というのは本当に何故か……腹立たしい。しかし、願われたのならば応えねばなるまい」

 

 二人の手に極光が顕れる。

 片や極光の柱、片や闇の光球。

 光と闇、白と黒、共に対極の存在と言わんばかりの二つの宇宙。

 

 

「終わりだぜ、后羿」

 

「お前の……敗因は、きっと奴らが相手だった事だろう」

 

 一人は笑みを、一人は憐れみを浮かべて、手に持つ奇跡を落ち行く日輪に振り上げる。

 それはまるで世界を支える柱。

 絆の象徴と称するに相応しい一撃は日輪を嘘のように搔き消した。

 

 

 ──灼熱の大地に白き風が吹き荒れる。

 

 

 ☆★☆★☆

 

 

 目の前に迫っているのは絆の象徴に相応しい一撃。荒削りだが、見れば見る程、魅せられる。

 

(ああ──これが報いか)

 

 嫦娥を助ける為に、と神群の仲間を傷付け、裏切り、果てに待っていたのは己の敗北という結末だった。

 

 因果応報───己は嫦娥を救えなかった。

 悔いても悔いきれない。

 

 されど、英雄たる己を彼女は愛していたのだ。ならば最後は英雄らしく散るのが常道だろう。

 そうして、手に持つ弓を捨て、敗北を受け入れようと……

 

 

 刹那、白い風が灼熱の大地に吹き荒れる。

 ──懐かしいと感覚だ。

 

 敗北が迫る中、自分の身体に触れる温もりを感じた。

 後ろを振り返れば───

 

 

「ああ……」

 

 諦めそうになっていた。

 もう会えないと思っていた。

 目から涙が溢れ出る。この再開だけを夢見て己は───

 

 ──帰りましょう、后羿。

 

 彼女にされた状態で、后羿は消えて行った。

 しかし、最後に秀美な笑みを浮かべたのだ。

 

 ☆★☆★☆

 

 

 后羿との戦いから一週間、彼らは“ノーネーム”本拠前で別れの時を迎えていた。

 

「別世界の耀さん、くれぐれも色情魔(甲さん)には気をつけて下さいね?」

 

「う、うん。夏海は相変わらず甲の事、色情魔呼びなんだね」

 

 夏海は繋いだ手をブンブンと振って、別世界の同士との別れを惜しんだ。

 

「いや〜、まさか別世界に来て最初のギフトゲームで、ここまでボロボロになるとは思わなかったよな」

 

「確かにね。僕も正直、悪獣相手は懲り懲りだよ」

 

 肩を竦ませて悠雷と真は笑う。

 

「オイオイ! しっかりしろよ!」

 

 そんな二人の背中に龍悠は軽く平手で叩くと傷に響いたのか、声にならない絶叫をあげて地面を転がる。

 

「そう言えば、甲くんと秋世くんは何処に行ったのかしら?

 さっきから見えないのだけれど」

 

 飛鳥は周囲をキョロキョロと見回し、甲と秋世がこの場に居ない事に気がついた。

 

「彼奴らなら廃墟の方に行ったぜ、お嬢様」

 

「うん、話があるんだって」

 

 十六夜と耀が“ノーネーム”の廃墟を指差す。

 それを聞いた者達は皆一様に何かを感じ取っていた。

 あの二人が本当の意味で分かり合う事はないと確信しているから。

 

 

 ☆★☆★☆

 

 

「で?

 ……こんなところまで連れてきてどうするつもりだ?」

 

 相も変わらず、胡散臭い態度を崩さず、あくまで秋世はスタンスを貫き通す。

 甲は秋世の襟元を掴み上げ、廃墟の壁に叩きつける。

 

「お前、一体なんなんだよ……!」

 

「……なに、とは?」

 

「惚けんなよ。俺はお前の本質を理解したくないのにしちまった!

 お前の性根は壊れてる!」

 

 激情に任せて彼は秋世を顔を殴る。

 しかし、感じるのは言い知れぬ不快感。

 殴っている、当たっている、傷つけている。けれど手応えを感じることがない。

 

 そして、秋世は目の前の自分を見ていない。

 そう確信しているからこそ、問わずにはいられない。

 

「お前は何の為に、どうして“ノーネーム”に入ったんだ」

 

 本能が告げるのだ。目の前の男は害悪になる、早急に殺せと。

 しかし、その害悪が何故、“ノーネーム”を手助けしているのかが分からない。

 

「……単純な話だ……俺は俺の目的を最短で果たそうしているだけだ……」

 

「その目的ってのは何だ?」

 

 甲は四肢に炎を纏って、秋世の行動に備える。

 そして、秋世はゆっくりと口を開き──

 

 

「────────」

 

 

「──は?」

 

 秋世が口にした理由に開いた口が塞がらない。何だそれは、何故そんな事に辿り着く?

 理解不能、目の前の此奴の謳う未来を甲は容認どころか理解も共感も出来ない。

 更に問い詰めようとするが……

 

「さて……時間切れだ」

 

 時間切れ、その言葉通り甲の身体は光の粒子に包まれつつあった。

 それが意味しているのは己が居た世界への帰還。

 

「では……さらばだ地球の理、次会える日を期待している」

 

「──は、心にもねぇ事、言ってんじゃねえよ、破綻者」

 

 そうして彼らは元の世界に帰っていた。

 あり得ざる二つの物語の干渉は、これからの物語の過酷さを語ったのか、意味があったかは分からない。

 

 それど此処に物語は存在したのだ。

 理解出来ずとも、共感出来ずとも、其処にあった歴史は決して何者かに脚色された偽りではない。

 

 これにてあり得ざる物語は終幕を迎えた。

 

 






これにて、コラボ最終話となります。
コラボさせていただいた阿喪to鴉紋さん、魅力的なキャラを貸していただき、ありがとうございました!

次回より本編をこうしんしますので、次回からも読んでいただけると幸いです
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