理想を求める者達も異世界から来るそうですよ? 作:幻想のtidus
理想への序章
彼女は俺にこう言った。
『貴方なら
とある世界。
枯れ果てた大地に鉄の匂いが漂う其処に黒い球体があった。
それは見る者全てに嫌悪感や恐怖、死を予感させるであろう黒。
黒の中に居るのは唯一人。
それは青年だった。
髪は黒く、腰まで伸びている。
一番目を惹くのは、その目だった。
その目は病み、荒み、まるで全てを見下しているかの様に冷たく、重い。
そんな彼の元に一枚の封書が黒の中に漂っていた。
青年は久しぶりに驚愕と言うものを感じていた。
彼を囲う黒は、大抵の物を阻む結界……だが、この一枚の封書はそれをかいくぐり、彼の元に現れていた。
その封書には確かに彼の名前が刻まれていた。
数々の外法にも手を出した彼は、ここまで高度な技術を知らない。
彼はそっと手紙を手に取り、封を切る。
☆★☆★☆
とある教会。
もうボロボロになり廃墟となってしまった誰もいない筈の教会だが、其処に一人の少女が懺悔していた。
少女の身なりは、修道服は所々ボロボロになっており、元々綺麗だった茶髪はくすんでしまっている。
彼女は幾年も、この教会で許しを乞うていた。
そう、彼女は
そして、気づいた。
壊れた祭壇の上に置かれた自分宛ての封書。
少女は封書を手に取り、
「此れを読めば私は許されるのだろうか……」
許しを得られる事を願い、彼女は封を切る。
☆★☆★☆
別の世界。
微風が吹く草原には似つかわしくない轟音が響きわたる。
その音の中心には、赤髪の少年と
「いい加減くたばれ!」
赤髪の少年がしびれを切らし、目の前のナニカに特攻をかける。
ナニカは少年の行動を嘲笑うかの様に手から熱線を放つ。
その威力は普通の人間ならば、簡単に屠る事が出来るだろう。
だが、目の前の少年は
彼は熱線に右手を突き出した。
その右手は熱線を割り、赤髪の少年は突き進む!
ここで、ナニカは気づいた。
少年の皮膚が鱗の様になっていた事に。
だが、其れに気づいた所で、無意味だった。
少年は左手でナニカの頭部を砕き、ソレは動かなくなった。
「ヨッシャアーーー!」
少年は余程嬉しかったのか、勝利の雄叫びをあげていた。
そして、次なる獲物を探すべく辺りを見回すと
空から舞い落ちる一枚の封書が目に入った。
其処には彼の名前が刻まれていた。
少年は獰猛な笑顔で歓喜する。
「面白れェ、やってやるよ!」
そして、彼は封を切る。
其処には、こう記されていた。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その
己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、我らの“箱庭”に来られたし』
彼らは光に飲まれ、次の瞬間───
「ア?」
「コレは……!」
「ハアァァァァァァ!?」
彼らは上空4000mの地点に放り出されていた。
此処は完全無欠な異世界だったのだ。
そして、三人の目に映るのは、同じく召喚されたであろう三人と一匹。
修道服の少女の行動は迅速だった。
「アクセス──我が
その言葉と共に少女に六対、都合12枚の黒翼が顕現する。
そして、黒髪の少女と猫を抱えた少女に追いつき、二人を抱きかかえ地上に着地した。
黒い少年は眼下に広がる世界を見続けた。
湖の上に何層かになる膜が張ってある事に気がついた。
ならば、と彼は自らの身体を黒で覆ってそのまま落ちていった。
赤髪の少年は笑っていた。
彼は自らの欲求を満たせる人物が五人もいる事が嬉しいのだ。
そして、彼は拳を構え、放つ。その拳圧で落下速度を減速し、更に方向転換。そのまま地上に落下した。
☆★☆★☆
「お怪我はございませんか!?体調は!?どこか痛い所は!!」
修道服の少女は助けた二人に詰めかけていた。
あまりの剣幕に二人の少女は、押され気味だった。
「え、ええ、大丈夫よ」
「うん大丈夫」
「そうですか……よかったあぁ〜〜」
それを聞いて安堵したのか、彼女は腰が抜けたかの様に座り込んでしまった。
「ヤハハ、中々面白い歓迎だったな。だけどコレ、一歩間違えればゲームオーバーコースだぜ」
金髪の少年も湖から出てきていた。
「まず間違いないだろうけど一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは“オマエ”って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。それでそこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「……春日部耀。以下同文」
「……そう、よろしく春日部さん。それでさっき私たちを助けてくれた貴女は?」
飛鳥はボロボロの修道服の少女に問いかける。
「私は、
「ヤハハ、俺は助けられてないけどな」
金髪の少年が夏海を少し皮肉を言うが、
「申し訳ありません。私の実力では、彼女達二人を助けるのが限度だったもので……しかし、他の者達なら問題ない、と感じたのも事実です」
夏海は笑顔で応対していた。
「ヤハハ、実力を買ってくれてありがとよ、傲慢なるシスター様……もしくはルシファーの方がいいか?」
「訂正して頂きたい。私はルシファーなのではありません。……しかし、私が
「へぇ……面白いなお前」
二人は終始笑顔で会話しているが、正に一触即発と言った雰囲気だ。
そんな中で飛鳥は自己紹介を続ける。
「二人は置いといて、そこで寝転んでいる貴方の名前は?」
飛鳥は、寝転んでいる赤髪の少年に問いかける。
「ああ、俺?俺は
獰猛な笑みを浮かべて龍悠はそう告げた。
「よろしく龍悠君。で最後は野蛮で凶暴そうな貴方だけよ?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃った駄目人間なので用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれよ、お嬢様。──それと、最後は俺じゃねぇよ」
え?、と飛鳥と耀は疑問符を挙げる
「後はアンタだけだぜ。さっさと上がってこいよ」
その瞬間、湖の一箇所がドス黒く染まる。
まるで其処から悪鬼羅刹が出てくるかの様な奈落の底を思わせる。
そして、それは膨張を繰り返し肥大化する。
そして湖から出てきたの───
幾重にもなる黒い閃刃だった。
ソレは湖から伸び、十六夜達を狙……
わずに草むら目掛けて斬りかかり、木々を薙ぎ、斬り裂くと草むらから人影が現れる。
「チョッ、ちょっとお待ちを!」
その人影は少女だったが、ウサ耳が生えていた。
ウサ耳の少女は懇願する様に言うが黒い刃は止まることはなく少女の後を追う。
ソレは確実に少女の命を刈り取ろうとしていた。
「仕方ねぇな」
十六夜は呆れながら黒い刃に追われる少女を庇う様に間に入るが、黒い刃は御構い無しに十六夜ごと斬り刻もうと迫る。
だが……
「──ハッ──しゃらくせえんだよ!」
十六夜は黒い刃の側面を掴み、湖にいるソレを引きずり上げる。
ソレは抵抗しようとしたが、あまりに想定外だったのか呆気なく湖から引きずり出された。
出てきたのは十六夜と同じ位の年齢の少年だった。
「ヤハハ、釣れた釣れた。……さあ自己紹介してもらおうか?」
笑みを浮かべ十六夜は告げた。
「………お前達に名乗ると思うか?それに俺の邪魔をした?」
「何故って……それりゃ簡単だろ?其奴にはこれから、此処が何で、如何して俺たちを呼んだのかを説明してもらんだぜ?殺されちまったら困るんだよ」
少年の殺気を物ともせず、十六夜は軽薄な笑みを崩さない。
然し、目の前の少年の黒は止まらない。
「……そうか。どうも俺はお前と馬が合わんようだ」
そう言って彼の足元から黒の閃刃が十六夜に標準をあわせる。
「やる気か?」
湖の畔に殺意がうねりを上げる。
「待ってください!」
慌てて止めに入ったのはウサ耳の少女、黒ウサギだった。
「……なんだ、お前」
「私は黒ウサギです。今回、皆様を箱庭へ招待を依頼した者です」
内心黒ウサギは焦っていた。今、目の前で一触即発の二人の少年が暴れればどちらか一方が砕け散るまで続くのではないか、という確信にも似た何かがあった。
故に今止めねば、黒ウサギ達のノーネームの復興という目標が早速挫折する可能性がある。
「なら、黒ウサギ……お前に聞きたい」
先程まで殺気だっていた少年が急に黒ウサギに問いかける。
「箱庭と言ったか……
「はい!この箱庭の上層の方々なら所持している方もいる筈です」
「……そうか」
すると彼の殺気は霧散し、そのまま近くの石に腰掛けた。
「…………い」
「へ?」
「………
「問題ありません!」
黒ウサギは自信満々に言い切った。
「それでは……」
そして六人は黒ウサギに注目する。
「皆様!ようこそ箱庭の世界へ!」
黒ウサギは高らかに六人に宣言した。