理想を求める者達も異世界から来るそうですよ? 作:幻想のtidus
───箱庭2105380外門・内壁
“六本傷”の旗を掲げたカフェテラスには七人と一匹がいた。
一人はピチピチタキシードを着た巨躯の男──ガルド=ガスパー。
一人は“六本傷”のカフェテラスの店員。
一人は、黒ウサギ達のコミュニティ“ノーネーム”のリーダー、ジン=ラッセル。
残りの四名と一匹は、異世界から箱庭に呼ばれた、
春日部耀、久遠飛鳥、原摘夏海、そして富久音秋世と三毛猫だ。
現在、彼らはガルドに勧誘を受けていたのだ。
ガルドが口にしたのは黒ウサギ達が隠していたこと全てだった。
そして、ガルドはこう言った。
「黒ウサギ共々、私のコミュニティに来ませんか?」
彼のコミュニティ“フォレス・ガロ”は2105380外門付近で活動可能な中流コミュニティは全て支配下に置いている。
然し、ジンの“ノーネーム”は旗も名もない、謂わば弱者の立場なのだ。
どのコミュニティからも信用されず、息も絶え絶えのコミュニティなのだ。
この箱庭に於いて、常道ならば“ノーネーム”に加入せず、“フォレス・ガロ”の誘いを受けるだろう。
───しかし、其れは
「結構よ。だってジン君のコミュニティで私は間に合っているもの」
真実を見抜くことができない愚か者の選択だ。
飛鳥の言葉にジンとガルドは顔を窺う。
「春日部さんと原摘さんは今の話をどう思う?」
「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだもの」
「そんなんですか?じゃあ飛鳥さんと私で、友達一号、二号に立候補して宜しいでしょうか?」
「……うん。飛鳥も夏海も私の知る女の子とちょっと違うから大丈夫かも」
耀に友達ができたことにホロリと三毛猫が涙を流している様に見えた。
「それに飛鳥さんの質問ですが……私はガルドさんより、黒ウサギやジンさんの方が、ずっと好意的に思えます。なのでガルドさんのコミュニティに入るつもりはありません」
ガルドは顔を引き攣らせながら、三人に問う。
「失礼ですが、理由を教えてもらっても?」
「私は先程申した通り、ジンさんのコミュニティに好感が持てそうだからです」
「だから、間に合っているのよ。春日部さんは友達を作りに来ただけだから、どちらのコミュニティでも構わない。そうよね?」
「うん」
「そして、私は──おおよそ人が望みうる人生の全てを支払って箱庭に来たのよ。それを小さな一地域を支配しているだけの組織に迎えてやる、なんて言葉で魅力的に感じると思う?だとしたら自分自身の身の丈を考えたらどうかしら、このエセ虎紳士」
三人はそう言い切った。
ガルドは怒りに体を震わせるが、会話が始まって一度も言葉を発していない少年──秋世に目を向け。
「でしたら、ミスター。貴方はどうしますか?」
その言葉で全員、秋世に目を向ける。
彼はこの現状で、ずっと何事もない様に紅茶を飲んでいた。
まるで、今目の前で起きていることが世界の裏側で起こっている紛争をテレビで見ているかの様に。
「……ミ、ミスター?」
故に彼は他人に関心する様なことはあまりない。
彼の今までの十七年の人生に於いて、関心を持ったのは片手で数えられる程度だろう。
「…………」
「ミスター!?」
ガルドは秋世に問うが返事が返ってこず怒りが上限を超えそうになり、腕に力を入れるが、なんとか残った理性で自称紳士としての体面を守ろうとしてる。
漸くガルドに気づき秋世は口を開く。
「……ああ、悪い。話は聞いていたんだが、それを反芻していてね。ガルド……と言ったか、君に一つ聞きたい」
「なんでしょう?」
「君のコミュニティに死者の復活を可能な恩恵はあるか?」
それは黒ウサギにも聞いた質問だった。
「……申し訳御座いません。ミスターが所望している恩恵は私どもの手にはございませんが、貴方が我々のコミュニティに入っていただければ、それも夢ではないでしょう」
ガルドはこれは手玉だと感じ、秋世を引きこもうとする。
「……そうか……ないのか」
然し、彼を勧誘しようとするには、あまりにも無謀すぎた。
「……ならガルド、路傍の石風情が俺に話しかけるな。あまりにも自信満々に自慢していた癖にとんだ塵だな。疾く死ね」
無口な彼から想像もしなかった罵詈雑言が飛んできた。
「な!?ミスター、それは聞き捨てなりま──」
「言ったことが理解できんのか?やはり塵だな。虎の威を借る狐、というより獣の威を借る塵なのだな。塵が弱者を喰らって強くなった所で塵は塵だぞ?」
ここでガルドは心臓を掴まれた気分になった。
彼の言葉に思う所があったのだろう。
然し、それを差し引いても収まりきらない激情がガルドの体を動かした。
「貴様ァァァァッ!!」
ガルドの体が変化する。
タキシードは引き千切れ、人間の皮膚は虎のそれに変わる。
彼は謂わばワータイガー、人、悪魔、虎の霊格で成り立つ獣なのだ。
あまりの場の変化に飛鳥達三人は動けなかった。
そして、ガルドは常人を簡単に屠る一撃を秋世に浴びせようとするが……
「何やってんの、お前」
ガルドの一撃は、秋世の足元から出現している黒に防がれた。
それは召喚されたおり、黒ウサギを狙った黒の閃刃だった。
「クソガァァァッ!!」
然し形状が変わっており、現在は変幻自在に蠢きガルドの攻撃を防いでいた。
剛腕による打撃は百、千にまで叩き込まれるが秋世には一つも届いていない。
秋世は尚も紅茶を嗜む。
対するガルドは身体的な疲労と精神的な疲労が積み重なっていた。
拳は、皮膚はズタズタになり血が流れ出る。
「……そろそろ、飽きるな」
秋世が腕をタクトの様に振るうと黒は形を変え、閃刃に変わりガルドへ向かっていく。
だが、これを見過ごすほど罪深き少女は落ちぶれてはいない。
「アクセス──我が
その言葉と共に夏海は彼らの間に割って入り、手に灯る炎で黒の閃刃を破壊する。
「双方そこまでです。これ以上の流血に意味はありません。それに──飛鳥さんはガルドさんに聞きたいことがあるのでは?」
「ええ、だから秋世君。少し下がってくれるかしら?」
秋世は尚もガルドを見ているが、飛鳥の疑問を察したのか黒の閃刃を納める。
そして、一言。
「……好きにしろ、今のコイツに用はない」
と、そう告げた。
飛鳥は罵詈雑言が飛んでくるのかと思っていたのだが、きたのは肯定の言葉だったのに、ホッと息を吐く。
「それじゃあガルドさん、貴方が何を隠しているのか……
そして、彼は語る。
自らのハリボテの栄光の真実を。
その内容に飛鳥と耀はガルドに多大な嫌悪を抱き、夏海は悲憤を抱く。
「素晴らしいわ。流石は人外魔境の箱庭といったところかしら……ここまでの外道にはそうそう出会えなくてよ。ねえジン君」
「彼のような悪党は箱庭でもそうそういません」
「そう?それはそれで残念。──ところで、今の証言でこの外道を裁くことはできるかしら?」
「厳しいです。吸収したコミュニティから人質をとったり、身内の仲間を殺すのは勿論違法ですが……裁かれるまでに彼がが箱庭の外に逃げ出してしまえば、それまで……」
ジンがここで言葉をきったのは理由があった。
原因は夏海にあった。
彼女は泣いていたのだ。
ガルドに対して、死んだ子供達に対して、そしてそれを止めることの出来なかった自分に対して。
もっと早く箱庭に来ていれば救えていただろう子供達、正道に戻すことができたであろうガルド。
それができぬ己に憤り、悲しみ、そして怨む。
「飛鳥さん、貴女の言わんしていることを言わせてもらいます」
故に彼女は
「ガルドさん、貴方に
夏海はガルドに一歩、歩み寄る。
「貴方の行いは当事者からは恨まれ、憎まれることでしょう」
傍から見れば高潔な聖人だが、何処か狂気的な何かを思わせるだろう。
「ですが、私は貴方に救われて欲しい」
貴方は私よりマシだ。それより私は罪深い。
幸せになってくれ、と彼女は歩み寄る。
ガルドはそんな夏海に恐怖する。
森に虎として住っていた時とは、比べものならない底知れぬ何かを感じていた。
この時、ガルドの運命は確定した。
そんな夏海を見る秋世の目は底冷えて、荒みきっていた。
幻想による問題児の座談会!
第二回
今回のゲストは今作のムードメーカー担当、竜童龍悠と今の所目立った活躍のない春日部耀です!
「よろしく!」
「……活躍が少ないは余計」
そうは言っても今のところ出番あんまりないじゃないですか〜
「……それは主が私に活躍の場を用意しないのが悪い」
「そんなことより俺の出番をもっと!」
二人共出番のことしか言ってない!
「「それだけ出番が欲しい(んだよ)」」
まあ、火龍生誕祭くらいは出番あるんで善処しますよ。
「「長い!!」」
では第二回座談会を終わらせましょうか。
「「次回もよろしく」」