理想を求める者達も異世界から来るそうですよ?   作:幻想のtidus

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白夜の地平──理想への壁

 日が暮れた噴水広場で合流し、話を聞いた黒ウサギはウサ耳を逆立て怒っていた。

 あまりにも無謀なのだ。ゲームの日取りは明日。

 準備をする金も時間もなければ、テリトリーは相手の領地だ。

 これは圧倒的なまでに不利だ。

 

 それなのにジンや三人は──

 

「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しています」」」

 

「勝負ではありません。救済です」

 

「黙らっしゃい!!!」

 

 三人は口裏を合わせたような言い訳をするわ、夏海に至ってはガルドを救済しようなどと言っている。

 

「別にいいじゃねえか。見境なく喧嘩売ったわけじゃないんだから許してやれよ」

 

「い、十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんけど、このゲームで得られるものは自己満足だけなんですよ?この契約書類を見てください」

 

 黒ウサギが出した契約書類の賞品の内容はガルドの罪の精算か罪の隠匿だった。

 

 こんなことをしなくとも、時間をかければガルドは裁かれる。

 然し、そんな結末は飛鳥や耀、ジン、そして夏海は許さない。

 

 この外道を野放しに出来ない(救済したい)と。

 

「はあ〜仕方ありません。彼ら程度なら十六夜さんや龍悠さん、秋世さんで十分でしょう」

 

 だが、彼らは最強の問題児集団だ。

 

「何言ってんだ。俺は参加しねえよ?お嬢様達売ったの喧嘩だからな」

 

「……興味ない」

 

「俺は出──」

 

「お前も出ねえんだよ」

 

 十六夜と秋世は参加しないと言い、龍悠は十六夜に止められる。

 

「あら、分かってるじゃない」

 

「駄目ですよ!御二人は仲間なんですからちゃんと協力──」

 

「だからな、俺達が手を出すのは無粋だから出ねえよ」

 

「……今の奴は塵だ、故に興味はない」

 

 十六夜と秋世は断固として拒否し、黒ウサギに言い返す気力はもうない。

 彼女は肩を落として、もうどうにでもなれと呟くのだった。

 

 

 

 ☆★☆★☆

 

 ペリベット通りを歩く、七人と一匹は、コミュニティ“サウザンドアイズ”にギフトの鑑定をしてもらう為に向かっていた。

 

 脇を埋める街路樹は桃色の花を散らし、月と街灯ランプに照らされ幻想的な光景が広がっていた。

 

「桜の木………ではないわよね?花弁の形が違うし、真夏になっても咲き続けているはずがないもの」

 

「いや、まだ初夏になったばかりだろ?」

 

「……?今は秋だったと思うけど」

 

「いや春だろ?暑すぎず寒すぎずの丁度いい気候だったぜ」

 

「冬ではないでしょうか……?」

 

 ん?と五人の話は噛み合わないことに疑問を持った。

 ……余談だが、秋世がこの会話に参加しなかったのは、ずっと黒の中にいたので、そもそも季節の移り変わりがわからなかったからである。

 

「皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」

 

「……パラレルワールドというより立体交差並行世界論に近しいな」

 

「はい、立体交差並行世界論で合っていますよ」

 

 ここで黒ウサギは店に着いたのか、振り返る。商店の旗には互いが向かい合う二人の女神像が記されている。

 見れば割烹着の女性が看板を下げていた。

 

「まっ」

 

「待ったなしです御客様。うちは時間外営業はやっていません」

 

 押し入る客の拒み方に一切隙がない。

 

「なんて商売っ気の無い店なのかしら」

 

「ま、全くです!閉店時間の五分前に客を締め出すなんて!」

 

「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」

 

「出禁!?これだけで出禁とか御客様を……」

 

 ここまで言って黒ウサギは言葉を切った。

 濃密なまでの殺気を秋世は放っていた。

 

「……邪魔だ、退け」

 

 彼にとって大型のコミュニティとの接触は自らの理想を叶えるのに大切なプロセスなのだ。

 それを邪魔する者は一切容赦しないと。

 

「退くつもりはありません」

 

 店員は秋世の殺気をモノともせず泰然と向かい合う。

 サウザンドアイズの一員として無粋な者を通すつもりはないと。

 

「あ、あの秋世さん。今日の所は帰りましょう。また別の機会にでも……」

 

「……別の機会?そんなモノは何時来る?また来た所でお前達はノーネームだ。名無しお断り、と帰されるのがオチだ」

 

 秋世の言う通りだ。サウザンドアイズはノーネームお断りなのだ。

 力のある彼らは客を選ぶ故に、彼らはリスクを冒さない。

 だがそんな雰囲気を察してか───

 

「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギィィィ!」

 

 店内から爆走してきた和装の幼女によって雰囲気が変わった。

 濃密な殺気は霧散し、黒ウサギは街道の向こうにある水路に吹き飛んだ。

 

「……おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非」

 

「ありません」

 

「なんなら有料でも」

 

「やりません」

 

 真剣な顔でやり取りする十六夜と店員。

 だが、黒ウサギは抱きついてきた幼女を投げ飛ばした。

 飛鳥と耀はスリーし、龍悠が蹴り飛ばす。

 

「十六夜、パス」

 

「ゴバァ!」

 

「秋世、決めろよ!」

 

「ガハッ!」

 

 十六夜が更に蹴り飛ばす。

 そして秋世の足元に黒が展開する。

 そして、流れるように黒の拳打が華麗に十六連コンボを叩き込む。

 

 それを夏海がキャッチする。

 

「おんしら、飛んできた初対面の美少女を足で蹴ったばかりから連打を決めるとは何様だ!」

 

「十六夜様だぜ」

 

「龍悠様です」

 

「……秋世様です」

 

 十六夜と龍悠に促され、仕方なく流れに乗る秋世。

 

「貴方はこの店の人?」

 

「おお、そうだとも。このサウザンドアイズの幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼なら……そうじゃ、おんしじゃ」

 

 白夜叉は自分を今抱きかかえている夏海を見上げる。

 

「……私ですか?」

 

「そうじゃ、おんしの修道服に隠れた年齢のわりに発育のいい隠れ巨乳をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」

 

「オーナー。それでは売上が伸びません。ボスが怒ります」

 

 何処までも冷静な声で店員が釘を刺す。

 

「私の体で皆さんを入れてくれるならやってもいいですよ?」

 

 こんな罪深い私で良ければと夏海が言った途端、白夜叉は夏海を押し倒す。

 

「話がわかるではないか小娘!」

 

 そうして生揉みしようと手を伸ばした時。

 

「「てい」」

 

「ゴバァッ!!」

 

 耀と飛鳥が白夜叉を蹴り飛ばす。

 

「「私たちの友達に何してるの(よ)」」

 

「冗談じゃよ、冗談」

 

 白夜叉は何事もなかったかの様に店に招き入れる。

 その様子に店員は不機嫌そうに見ていた。

 そんな店員に夏海や龍悠は頭を下げて、店の中に入っていった。

 

 

 ☆★☆★☆

 

 

「さて、改めて自己紹介をしておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えているサウザンドアイズの幹部の白夜叉だ。黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」

 

「外門って何?」

 

 耀は疑問を率直に述べる。

 

「箱庭の階層を示す外壁にある門のことです。数字が若いほど都市の中心部に近く、同時に強大な力を持つ者達が住んでいるのです」

 

「……超巨大タマネギ?」

 

「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」

 

「バームクーヘンが近そうだな」

 

「やはりバームクーヘンでは……」

 

「バームクーヘンだろ!」

 

「……年輪」

 

 各々感想を言うがどうも秋世は少しずれていた。

 

「ふふ、うまいこと例える。説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたる。外門のすぐ外は世界の果てに向かい合う場所じゃな。世界の果てには強力な恩恵を持った者達が住んでおるぞ」

 

 例えばその水樹の持ち主だな、と黒ウサギの持った水樹に視線を向ける。

 

「して、一体誰が、どのようなゲームで勝ったのだ?知恵比べか?勇気を試したのか?」

 

「いえいえ。この水樹は十六夜さんと龍悠さんが蛇神様を素手で叩きのめしてきたのですよ」

 

 黒ウサギが自慢げに言うと、白夜叉は声を上げて驚いた。

 

「なんと!?クリアではなく直接倒したとな!?ではその童達は神格持ちの神童か?」

 

「いえ、黒ウサギはそう思いません。神格なら一目見れば分かるはずです。」

 

「なあ」

 

 ここで龍悠が白夜叉に声をかけた。

 凶暴な笑みを浮かべながら。

 

「アンタがあの蛇より強いんだよな?」

 

「当然だ。私は東側の階層支配者だぞ。この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者がいない、最強の主催者なのだからの」

 

 白夜叉の言葉に秋世と夏海以外の四人は瞳を輝かせた。

 

「そう……ふふ。では貴女のゲームをクリア出来れば、私達のコミュニティは東側最強のコミュニティという事になるのかしら?」

 

「無論、そうなるのう」

 

「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」

 

 剥き出しの闘争心を視線に込めて白夜叉を見る。

 

「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら、私にギフトゲームで挑むと?」

 

「え?ちょ、ちょっと皆さん!?」

 

 白夜叉の実力を知る黒ウサギは慌てて止めようとするが、白夜叉に右手で制す。

 

「よいよ黒ウサギ。私も遊び相手に常に飢えている」

 

「ノリがいいわね。そういうの好きよ」

 

「ふふ、そうか。───しかし、ゲームの前に一つ確認しておく事がある」

 

「なんだ?」

 

 途端、今まで無反応だった秋世と傍観していた夏海が臨戦態勢をとる。

 彼ら二人は目の前の存在の強大さを理解していた。

 人間とは比べ物にならないスケールの差。

 惑星より大きく、広大な宇宙(そら)に泰然と輝く星の運行を司り、かつて全ての宇宙観(コスモロジー)の頂点に君臨した王にして神。

 

 壮絶な笑みを浮かべながら、その主は一言。

 

 

「おんしらが望むのは挑戦か──────もしくは、決闘か?」

 

 

 存在が、世界が変化する。

 そこは決して沈まぬ太陽の領域。

 太陽は水平に廻り、湖畔は凍る。

 

 此の現象を引き起こした者の名は───

 

 

「今一度名乗り直し、問おうかの。私は”白き夜の魔王”――太陽と白夜の星霊・白夜叉。おんしらが望むのは、試練への”挑戦”か? それとも対等な”決闘”か?」

 

 人類最終試練(ラストエンブリオ)“天動説”と謳われ、箱庭席次第十席に座す魔王は生まれ持った魔王としての王威と神としての神威を放ち、そう告げた。

 

 

 

 

 

 




幻想による問題児の座談会!

第三回

今回のゲストは原摘夏海さんと久遠飛鳥さんです!

「よろしくお願いしますね」
「ええ、よろしく」

まあ、今作では御二人と春日部さんには色々と出番が用意されているのですが……

ところで、飛鳥さん

「何かしら?」

魔改造って言葉、ご存知ですか?

「え、ちょっ、飛鳥を魔改造するんですか!?」

うん、まあ少し先の話だけど、あれを魔改造と言えるのかどうかは疑問だけど………

「待ちなさい!私一体どうなるのよ!?」

それは某黄■の獣のような恩恵を付けるつもりではあるけど……
ダメ?

「いやいや!もう少しバランスをとりなさいよ!」

ていうか飛鳥さんが会得せざるをえなくなるんだよね。

「ちょっと待ってください。私はなんか、こう……強くなったりは──」

元が強いからそこまで強くならないかも。

「そんな!?」

てな訳で今回はこの辺で!

「「待ちなさい(待って下さい)!」」

次回もよろしくお願いします!

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