オーバーロード 粘体の軍師   作:戯画

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今回のオマケ。時系列はカルネ村から帰って来た後です。


番外編その1 三者面談 ナーベラル・ガンマの場合

 ここはアインズの執務室。普段とは少し様子が違っていた。

 本来は机はアインズが使用する執務机のみだが、部屋の中央辺りに長机が一つと椅子が二つ。机を挟んで部屋の入り口に近い方には椅子だけが一脚ポツンと配置してある。

 始まりはぶくぶく茶釜の提案だった。

 

「アインズさん、三者面談しましょう」

「え? 何ですかいきなり」

 

 いつも通り堅苦しいロールプレイを終えてアインズの私室でだらだらしていたときに、それは投げかけられた。

 

「いやね、これからアインズさんは人間の世界に潜入するわけじゃないですかー。そのお供選定のためにも、もっとNPCたちのこと掘り下げといた方がいいですよ」

「ああ……NPCの話ですか。三者面談なんか小学生のとき以来に聞いたからピンと来ませんでしたよ。確かに、それはやっといた方が良さそうですね」

 

 肯定の意を受けてぶくぶく茶釜が小躍りする。

 

「実はそう言ってくれると思ってメイドに指示をしてアインズさんの執務室に準備を整えてあります」

「手回しが良過ぎる!」

 

 そんな訳で第一回ナザリックNPC意識調査三者面談が行われる運びとなった。

 執務室にはアインズとぶくぶく茶釜、部屋の入り口には一般メイドが一人。呼ばれる者は玉座の間にいるアルベドに≪メッセージ/伝言≫を飛ばして伝達させる。ちなみにこの呼び出しの真意をNPCたちには全く伝えていない。本心を知りたい以上それは当然の措置だ。

 

「では始めましょうか」

「ですね。記念すべき一人目は、ででででー。プレアデス所属、ナーベラル・ガンマちゃんでーす」

 

 

 

 第九階層円卓の間のエントランスで待機していたナーベラル・ガンマは守護者統括アルベドからの連絡を受け、顔面を蒼白にさせて執務室へ走る。だが決して見苦しくバタバタとすることは無い。至高の御方々が創造したナザリック地下大墳墓で、そのような醜態を晒すのは耐え難い不敬である。

 執務室前に到着すると震える口元から深く息を吸い込み、重厚な造りの扉をノックする。入れ、と地獄の底から溢れた声が静寂な空間を扉越しに支配し、操られるような感覚を覚えながら釜の蓋のごとき扉を開いた。室内にいた一般メイドがなにやら青い顔をしていたが、それを気に掛ける余裕は今のナーベラルには無い。

 

「失礼致します」

 

 正面には死の支配者たるモモンガ改めアインズ、その隣には帰還せし創造者たるぶくぶく茶釜。ナザリック地下大墳墓の2トップが悠々と待ち構えていた。

 ああ、間違い無い。自分は何か重大なミスを犯したんだ。そうでなければこのお二方が自分をわざわざお呼びになる訳が無い。絶対の忠誠を誓った身、死ねと言われれば喜んでそれを受け入れる。だが、真の絶望とは、呆れられ、失望され、見捨てられることだ。それだけは絶対に嫌だ。

 

「よし、ではそこの椅子に……って、ど、どうしたナーベラル、涙なんか流して」

「はっ! こ、これはその、ち、違……至高の御方々の御前でお見苦しいものを! いますぐに自害してお詫び申し上げます!」

 

 ナーベラルは素早く早着替えで短刀を持った装備に換装し、己の首筋に刃を押し当てる。大慌てでそれを止めた支配者二人に説得され踏み止まった。

 

「お、落ち着いたようだな。ではまず今回のルールを説明する。我らの問いに己の本心に従った返答をすること、面談の内容を他の者へ言わないこと。この二つだ。簡単だろう?」

「はっ。元より至高の御方々へ偽りを申し上げる者などはこのナザリックにおりません」

「よし、では改めて始めよう。茶釜さん、お願いします」

「はーい」

 

 気を取り直して進行をぶくぶく茶釜にパスすると、俄然元気に舌が回る。

 

「第一問! あなたにとって人間とは何ですか?」

下等生物(ダニ)です」

 

「第二問! 人間が喧嘩を売ってきたらどうする?」

最強化(マキシマイズ)した≪チェイン・ドラゴン・ライトニング/連鎖する龍雷≫で焼き尽くして身の程を知らせます」

 

「第3問! アインズさんが身分を偽っている場合、対等のパートナーとして相応しい対応を取って下さい」

 

 ≪クリエイト・グレーター・アイテム/上位道具作成≫で鎧の戦士に一瞬で姿を変えたアインズがおもむろに立ち上がり、ぶくぶく茶釜との事前の打ち合わせ通りに質問を投げかける。

 

「私のことはモモンと呼ぶように」

「かしこまりましたアインズ様!」

「……モモンだ。そして敬語はいらん」

「モモンさ──、ん。しかし畏れながら敬語を使わないなどと不敬な真似は……」

「はいそこまで。しゅーりょー」

 

 ぶくぶく茶釜がクイズ番組の司会よろしく場を仕切る。席に戻ったアインズは戦士化を解いて本来の死の支配者(オーバーロード)の姿へ戻り、立ち尽くしていたところに着席を促されたナーベラルが大人しく従う。

 いつの間にか用意していたチェックシートを突き合わせるアインズとぶくぶく茶釜。代表としてアインズがナーベラルへ労いの言葉と、面談の総評を伝える。

 鈍く光を反射する黒目はその内容を正しく理解しているのか些か疑問ではあるが、話の括りにアインズが掛けた「頼りにしているぞ」の一言には喜色満面で返した。

 

 ナーベラルが退室する際に一般メイドが目にした天使のような笑顔は食堂にて話題の的になるのだが、普段のナーベラルからは想像できないことと他の目撃者がいなかったため、話題は変わり七十五日と経たぬ内に埋もれることになる。

 

 

 

 

「アインズさん、ナーベラルちゃんどうですか」

「正直、あそこまで人間に対する考え方が偏っているとは思っていませんでした」

 

 ナーベラルが退室し、面談の感想を含めて意見のすり合わせを行う二人。アインズはどうするか困惑しているらしく、ぶくぶく茶釜の問いに答えながら頭を抱えていた。

 

「あと融通も利かなさそうですね。不器用かわいい……」

「正直なのはいいんですが、演技が出来ないのはちょっとマズいですね」

 

 基本方針として、敵を作らないこと。それには付き合いの浅い相手にもつつがない対応が求められる。いわゆる礼儀をわきまえた社交辞令などもできなければ困るのだ。

 異形種ばかりで構成されたナザリックにおいて、外見の問題はクリアしているだけに惜しいものを感じながらアインズはチェックシートの最後に三角を付け、その下に書き足した。今後の成長に期待、と。

 

 

 

 

「頼りにしている……頼りにしている……アインズ様……」

 

 自分の評価など露知らず、ほのかに頬を染めうわごとのように呟く黒髪の戦闘メイド(プレアデス)はフラつく足取りで自分の待機場所へと戻っていった。




 ある種ナザリック至上主義を最も体現してる1人だと思います。身内以外が相手だと後先考えずに無茶苦茶しそうで怖い。

2018.11.3 行間を調整しました。
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