オーバーロード 粘体の軍師   作:戯画

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第25話 ブレイン対スケルトン?

 第六階層、円形劇場(アンフィテアトルム)の貴賓席。至高の四十一人のための場所に四つの影があった。

 

『ふんふん、おっけー。アインズさんが合図出すまでそのまま待機しといてー』

「アインズさん、マーレたち準備完了。いつでもいいって」

「分かりました。始めましょう」

 

 軽快な雰囲気で段取りを進めるのは至高の御方々の二人、ぶくぶく茶釜とアインズである。

 

 今回の実験の見学をシャルティアたちへのご褒美にしようとぶくぶく茶釜が言い出したときはそれのどこが褒美になるんだと思ったが、アルベドにこっそり聞いてみると全く問題無かったどころかむしろこの上無いくらいありがたがられたと言うのだから、改めてナザリックに所属する者たちの忠誠心侮るべからずと深く心に刻んだ。

 

(やっぱりもっとNPCたちのことを知らないといけないな。あぁ、でもあまりプライベートに踏み込み過ぎるのも考えものか?)

 

 そういう点でもぶくぶく茶釜の存在は救いだった。自分がナザリックの女性陣にあれこれ踏み入った質問をしては、下手をすればセクハラになってしまいかねない。

 

(彼女たちも色々考えているんだ。個々の人格があるんだもんな)

 

 考え事の切っ掛けは、円形劇場(アンフィテアトルム)に来たときのやりとりだ。ボロボロ崩れていく塔を眺めながら、ついさっきの出来事を思い出す。

 

 

 

 

 

 

「……デハ、仕上ゲハコノヨウニ」

「うむ、頼んだぞ。ん、もうこんな時間か。そろそろシャルティアとユリも第6階層に着いた頃だろう。あまり待たせるのも悪い。≪ゲート/転移門≫で行くとしよう」

「畏マリマシタ」

「はーい」

 

 玉座の間からソロモンの小さな鍵(レメゲトン)へ移動し、転移門(ゲート)を交えつつ着いた先は第六階層の控え通路。後から思えばであるが第六階層のどこと細かく集合場所を指定しなかったのは失敗だった。

 

 通路を抜けて中央部へ出ると、以前来た時には無かったいくつものシルエットが目に付いた。一同の中では最も背の高いコキュートスの頭を優に超える三メートル程の土柱が闘技場の外壁に沿う形で所狭しと建ち並び、その中心にあるものを見てしばしアインズが固まる。

 

「何だ、あれは……」

 

 疑問の答えを考える前に、こちらへ向かって走ってくる存在に気が付いた。例によって双子の快活な方である。

 

「ぶくぶく茶釜様、アインズ様、ようこそいらっしゃいました!」

「うむ。アウラ、マーレはどうした? この造成はあの子がやったのだろう?」

「はい。確かその辺りに……マーレ! アインズ様がお呼びだよ!」

 

 アウラの呼び掛けに呼応するように、乱立した土柱がスライドパズルよろしく目まぐるしく交差する。その一つが左右に割れて自信無さ気に長い耳を垂らした闇妖精(ダークエルフ)の双子の片割れが姿を現した。

 

「あの、アインズ様、ぶくぶく茶釜様、い、いらっしゃいませ」

「あんたねぇ……あたしより近くにいるんだからさっさと出てきて挨拶しなさいよ」

「ご、ごめんなさい、お姉ちゃん」

「謝る相手が違ーう!」

「ひぇっ、し、失礼しました」

 

 ただでさえ小柄な身をさらに縮こまらせつつ、深々と頭を下げるマーレ。切り揃えられた金色(こんじき)の髪が、ウィンドチャイムの如く波を打った。

 そこまでかしこまる必要は無いのだが、デミウルゴスやアルベドならまだしも、外見も中身も子供と認識している彼らがこのように振る舞うとどうにも過剰に堅苦しく感じてしまう。

 しかしながら無下(むげ)に扱うなんて事は絶対にしない。アウラとマーレに限らず、ナザリックのNPCはアインズにとって(まさ)しく我が子とも言うべき愛しさを感じる存在なのだから。特にこの双子は制作者であるぶくぶく茶釜にとってはなおさら思い入れが強いのではないだろうか。

 

(こう言っちゃなんだけど茶釜さんの趣味嗜好が全力で形になってるもんなぁ……うおっ)

 

 なんとなしにぶくぶく茶釜へ目をやると、もにゅもにゅ蠕動しながら触手が表面を這い回っている。この前と違って何やら喜色が垣間見えるが。

 

「はあ〜、そう、これですよこれ。世の弟が姉に従順であれば戦争なんて起こらないんだよ……」

 

 どうやらご満悦らしい。下手に邪魔をするとあの触手で何をされるか分かったものではないので、無視して話を進める。

 

「あー、そう(かしこま)る必要は無いぞ。ところで、あれは何だ。どう見てもゴーレムが組体操しているようにしか見えないのだが」

 

 アインズとしてではない、人間、鈴木悟が小学生だった頃の記憶の片隅にあるものとそれは酷似していた。

 組体操の人間円塔。ゴーレムがやっているのだからこの場合はゴーレム円塔と言うべきか。自分の知っているものと違って十五メートルを超えるほどのバカでかい規模だ。

 

「は、はい。くみたいそう? と仰るのはわ、分かりませんけど、例の捕まえた人間の周りを土のドームで覆って、その外側をお姉ちゃんが指示を出したゴーレムさんにさらに二重に囲ってもらいました」

 

 つまり内側からだと人間、空間、土壁、ゴーレム、ゴーレムの並びということか。よく分かった。構造だけは。

 

「そうか、頑張ったん、だな?」

「は、ハイ! 頑張りました!」

「う、うむ。それでだな、えー……」

 

 気張り過ぎて語尾がひっくり返った声になっている。なんだか純真過ぎて不用意なことを言うと傷付けてしまいそうだ。言い淀みつつ自分の知りたいことと、それをどう伝えるかを整理する。

 

「シャルティアからの預かりを受けて、こうなった訳だな? うん」

「えっ、その、申し訳ありません……」

「待て、勘違いするな。マーレよ。一口に拘束と言っても色々なやり方があるだろう? お前達がどう考え、何故この方法にしたのかを聞きたいのだ。私と茶釜さんに教えてはくれないか」

 

 語調を意識的に柔らかく、怒ってるんじゃないぞと言外に乗せて説明を促す。努力の甲斐あってか、マーレの表情がぱあっと明るくなった。

 

「は、はい! ご説明させていただきます」

 

 シャルティアから人間の身柄を受け取ったアウラはまずマーレを連れてきた。当初はゴーレムで全身を押さえつける方法を考えたが、問題に気付いたのだ。

 まず単純に力でゴーレムが負けた場合、拘束から逃れてしまう可能性がある。そしてよしんばゴーレムを振り払う力が無かったとしても、暴れた時に傷付けてしまうかも知れない。

 至高の御方々の命で階層守護者シャルティアと戦闘メイド(プレアデス)副リーダーのユリがわざわざ捕らえてきた貴重なサンプル。至高の御方が守護者最強のシャルティアを指名したのなら、簡単な任務ではなかったことは想像に難くない。うっかり死なせちゃいましたでは済まないのだ。

 

 要は人間の強さが分からないから扱いに困るのだ。固いか柔いか分からない豆腐を箸で掴むようなものである。

 

 ここでマーレが閃く。こちらが触れて壊れる危険があるなら、触れなければいい。

 

 つまりマーレの能力を使って人間を囲うように隔離してしまえばいい。酸欠を防ぐために土の中に何体かゴーレムを混ぜ込んで、空気の流れを確保すれば問題は無い。

 早速土塊(つちくれ)のドームで人間を覆った。既にロープは解いてある。ゴーレムを中に埋め込んだせいで、やや縦長の形になった。

 

 そこでマーレは満足していたのだが、アウラはまだ甘いと思ったらしい。ゴーレムを外から囲うように配置し、隙間を無くすために半身ずらしてもう一周。万が一ドームを内側から突き破ってきた時のためにゴーレムを積んで上の方まで埋めていき、結局止め時が分からず最上段まで積み切ってしまった。

 

 マーレによるとその時のアウラは何かをやり遂げたイイ顔をしていたそうだ。

 

 顛末を聞いたアインズはしばし黙考していた。と言うのも、それが正解かどうかはさておき彼らなりによく考えているということだ。後半は悪ノリと言ってしまえばそれまでだが、アウラの心境も分からんでもなかった。

 

(あるよなー、そういうこと。中途半端にやるとどこで終わらせていいか分からなくなって、結局行くとこまで行っちゃうんだよな)

 

 とにかく結果としてサンプルを逃さないという点は充分に達成できている。こうして見れば、創意工夫に富んだ見事なものだ。

 

「なるほど。よく分かった。二人で協力して対処したのだな。偉いぞ」

 

 言ってからまるきり小さな子を褒めるような言い方になってしまっていたことに気付いた。アウラとマーレは外見は人間で言うとおよそ10歳程度といったところだ。闇妖精(ダークエルフ)は寿命が人間の数倍以上の設定だったはずだが、精神の成長も見た目に比例するとしたら非常にムズカシイお歳頃なのではないだろうか。()ねたりしないかと支配者らしからぬ心配をする。

 しかし当の双子は褒められたことを誇らしそうにほんのり頬を赤らめて屈託の無い笑顔を浮かべている。どうやら杞憂だったらしい。

 

「アインズ様、ぶくぶく茶釜様。こちらにいらっしゃいましたか」

 

 声に振り向くと、玉座の間で見るのと変わらず立ち姿の美しいアルベドと、それに伴う形でシャルティアとユリもいた。

 

「お待たせしてしまい、申し訳ございません」

「いや、詳細に場所を決めなかったのは私のミスだ。許せ」

「至高の御方がシモベである私どもに謝罪など不要ですわ。改めて、此度の褒賞を賜る二名を連れて参りました」

「ご苦労。ではコキュートスは配置に付け」

「畏マリマシタ」

「あ、コキュートスちょい待ち。ねーねーアインズさん、折角だしこうしません?」

 

 ごにょごにょと耳打ちをぶくぶく茶釜から受ける。悪くない提案だった。ユグドラシルのときも様々なお遊びをしていたが、演出面では妄想が膨らむようにあれこれと凝ったものだ。

 ぶくぶく茶釜の提案に一も二もなく乗ったアインズはコキュートスとマーレを手招きして、手筈を伝えるため小さな円陣を組む。

 

「──って感じで。おーけー?」

「は、はい。それなら───大丈夫です」

「オ望ミトアラバ」

 

 小さく顔を突き合わせたひそひそ声の打ち合わせが終わる。

 

「待たせたな。それではシャルティアとユリは私たちと共に移動するとしよう。≪ゲート/転移門≫」

 

 転移した先はさっき視界の上方(じょうほう)に見えていた貴賓席だ。突出した造りは闘技場の隅々まで見渡せるようになっていた。

 闘技場側には今回の実験観覧のための豪奢な長いソファーが配置されている。ずっと立ちながらもどうかということで急遽用意したのだ。

 

「では改めて。シャルティア、ユリ、此度の働きご苦労だった。気を楽にしてくれ。今回の実験は余興としての側面も強いものと判断し、同席見物の許可を与える」

「まことにありがとうございんす。身に余る光栄でありんす」

「畏れ多くも至高の御方々より褒賞を賜り、一層お役に立てるよう尽力致します」

 

 堅苦しくしなくていいと言っているのに(ひざまず)く二人に少々諦観を含んだ視線を向けていたが、折角の場に水を差すのもどうかと思いとりあえずスルーする事にする。

 

 マーレからの報告を受けたぶくぶく茶釜から声が掛かる。間近で反応を見れないのは多少残念にも思うが、後でぶくぶく茶釜に聞くことにしよう。

 

「準備も整ったようだ。実験を開始する。今回の主な目的は、この世界特有の能力である武技についての調査だ。それと……ああ、まああとは観てのお楽しみというやつだな。茶釜さん、二人をよろしくお願いします」

「いってらー」

 

 再び転移門(ゲート)で貴賓席から姿を消したアインズ。具体的にいまから何が始まるのかが掴めず、所在無さげな視線はもう1人の至高の御方へと集まる。

 

「まあまあ、見てれば分かるよ。ほら、始まった」

 

 触手に促されて闘技場を見ると、二重になっていたゴーレムは既に引き上げた中央の塔がボロボロと崩れていき、中から例の人間が出てきた。近くにいた骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)を一撃で斃し、辺りの様子を見回している。

 シャルティアたちのいる貴賓席には認識阻害の魔法が掛けられているため、闘技場と観客席のあいだに張られた物理・魔法障壁を突破するか闘技者入退場口の門を解錠するなどして抜けて来なければ辿り着くことはできない。

 もっとも防衛機能が働いていなくとも、最強の守護者たるシャルティアがいるいまこの場においては何人(なんぴと)たりとも至高の御方に手出しをすることは敵わないが。

 

 

 シャルティアには使ったかどうかも分からないような武技なるもの。さっき人間が斃したのは本当にただの骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)だ。流石にこれで終わりのはずが無い。

 予想されるのはさっきいたコキュートスに見極めさせることだが、ユリのワンツーで昏倒する程度の弱者など、その気になれば指一本触れること無く仕留めることも彼にとっては容易だろう。

 

(となると、やはり最後は殺すんでありんしょうから、コキュートスがどんな殺し方をするのかを楽しめといわすのでありんしょうか)

 

 しかしコキュートスの性格からすれば一刀で首を()ねるといった、嗜虐趣味のシャルティアからは物足りないトドメを刺しそうな気がしてならない。至高の御方からなるべく甚振(いたぶ)れなどの指示が出ているなら別だが、コキュートスが望んでやりそうにないことを至高の御方々が無理強いするとはどうしてもシャルティアには思えなかった。

 

 

 円形劇場(アンフィテアトルム)の控え通路へ転移したアインズは闘技場の状況を把握しているアウラと≪メッセージ/伝言≫を繋ぎ待機していた。

 

『アインズ様、骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)がやられました』

『よし、では行くとしよう』

 

 

 シャルティアの予想は概ね間違っていなかったが、眼下には完全に想像の埒外の展開が待っていた。

 

「なっ……! ああああれは、あのお姿は!」

 

 貴賓席から身を乗り出すシャルティア。釣られてユリも寄ると、驚きの余り口元を手で小さく覆う。その表情には驚き以外にも喜びが含まれている。打てば響く反応にぶくぶく茶釜は内心ほくそ笑む。

 掴みは上々。あとは自分共々楽しませてもらおう。

 

 

 

 

 

 

 一刀のもとに首を()ねられた骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)の骨がその場にカラカラと崩れ落ちた。負のエネルギーが溜まりやすい墓場などならこの程度のアンデッドが次々と発生してもおかしくはないが、他に骨の山がある訳でもない。まず復活はしないだろうが、念のために骨を蹴飛ばして散らしておく。

 何かあればすぐに攻撃を()めて飛び退くことが可能な程度に加減した斬撃だったが、ガゼフに匹敵する程の熟練した剣士であるブレインのそれは並の剣士の全力以上。剣と盾を持ったとて、骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)ごときに防ぎ()るものではない。

 

 鋭敏な感覚はまだ警戒を緩めてはならないと言っている。油断が死に繋がる状況はいつものことだが、危険度の判断材料が手元に無い場合はとにかく最大限の注意を払うより他無い。

 

「……また骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)かよ」

 

 闘技場の壁沿いにある通路。ブレインに最も近い場所からもう一体のアンデッドが姿を現した。さっきの個体とは違って、ズボンと脚甲、黒色の片刃剣と円形の盾(ラウンドシールド)を着けている。鳩尾のあたりには見慣れない赤黒い球体があった。

 ゆっくりと確実にブレインを見据えて接近してくる。装備が多少豪華でも、骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)に変わりは無い。ブレインは再び納刀した神刀に手を()り、抜刀の構えを取った。

 

 ここで先の骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)とは違う行動に気が付いた。彼我の距離おおよそ四メートルの点で、歩みを止めたのだ。体の左側をブレインに向け、剣を持つ右腕を引いている。じりじりとすり足で間合いを詰める動きは、知能の低いアンデッドの行動ではない。

 

(こいつ……!? ちっ、操ってるヤツがいるってんなら厄介だな)

 

 遠隔で操作している者がいるとするなら、そいつを叩かないことには消耗戦を延々と強いられる。脱出の経路が確保できていないいま、それは想定しておくべきリスクだ。

 こちらを襲うのが目的なら、何故単騎で散発的に掛かってくるのか解せないが、あるいはそれが操り手の限界なのか。

 

 考えている内にも確実に二人の距離は近付いていた。ブレインの間合いの三歩外で動きを止めたアンデッド。赤い光が揺れる眼窩は、間違い無くブレインを見据えている。

 身を軽く(かが)めたと思うと、飛び込みからの上段振り下ろしがブレインの領域を突破して襲い掛かる。狙いは右の肩口か。

 

 外側へ回り込むように身を振って回避し、抜き放った剣閃は骨の首を目掛けて飛んでいく。だがさっきと同じ結末にはならなかった。

 恐るべき反応速度で身を捻った骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)。突き出した円形の盾(ラウンドシールド)がブレインの神刀とぶつかり、反動で地を滑るように少し距離が離れる。すかさず正面に盾を構え、低い体勢のまま再び突進してきた。

 

(シールドバッシュか? いや、違うな)

 

 後ろが壁などで追い詰められる状況や、相手の体勢を大きく崩せるタイミングでなければ1対1でのシールドバッシュは効果が薄い。後の先を取る形になったブレインの重心は安定している。そして二者の衝突位置は闘技場のほぼ中央のため邪魔になる壁も無い。

 予想通り、盾の前に構えた黒剣を横に一閃。

 

(やはりな。……だが)

 

 間合いを見切ったブレインは僅かに身を引いて躱した。そして同時にある確信を得る。

 

(確かに身体能力は何かの間違いかと思うほど高い。だが体捌きや剣筋は素人のそれだ。となりゃあ、こいつを操っている奴がいるっていう予想が大当たりかも知れんな)

 

 シールドバッシュをする場面ではない事に理解を示しつつも、さっきこの骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)は攻撃を読まれまいとして盾を前に出した。バレバレでお粗末な動きだったが、少なくとも攻防の重要性を意識していなければやらない行動だ。そして知能の低いアンデッドは通常そんなことは考えない。単純で意思の(こも)らない虚ろな攻撃をしてくるものだ。一体目の骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)のように。

 そうではないということは、別の何者かの介在がある可能性が高いという訳で、つまりそいつをどうにかしなければ冗談抜きで死ぬまで骨と延々円舞曲(ワルツ)を踊らされる羽目になる。

 

「なあおい! どこの誰だか知らんが、見ているんだろう? 言いたいことがあるなら人形遊びをしていないで、直接言ったらどうだ!」

 

 カマ掛けであった。遠隔操作しているにしても、こちらのアクションに対して反応が早過ぎる。正確過ぎる。

 魔法についての造詣が深い訳ではないが、何らかの形で監視をしているであろう予想は容易(たやす)い。挑発混じりの発言にノコノコ出てくるなら大ラッキーだ。そして目の前で棒立ちになっている骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)が、自分の言葉が姿の見えない相手へ確実に届いているであろうことを証明していた。

 しばし静寂が流れたあと、さあ襲い掛かるぞと言っているかのようにアンデッドは剣と盾を構え直す。

 

(……まあそうだろうな。ならさっさと片付けてもう一度だ)

 

 一応耳は傾けたものの、こちらに姿を現す気はさらさら無いらしい。否応無く出て来ざるを得ない状況を作るため、ブレインは再び居合いの構えを作る。今度は≪領域≫を発動させ、一瞬で相手の首を切り飛ばす剣撃、ブレインの(つちか)った全ての技量を結実させ昇華させた秘剣『虎落笛(もがりぶえ)』を狙う。刹那に研ぎ澄まされた感覚が、さっきの骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)の反応速度では間に合わないと教えてくれる。相手はこちらの手の内を知らない。よしんば理解したとしてもこの超高速の抜刀斬りを回避することは不可能だ。

 

 いままでで最も速いと思われる驚異的な速度で迫る黒剣。半径三メートルの中で止まったように感じられる骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)の首を目掛けて神刀が振り抜かれた。




今回の独自要素
・闘技場の認識阻害と物理および魔法障壁
コストが掛かるので常時起動はしていません。
が、今回ついでにちゃんと機能するかのテストも兼ねて使ってみたと言う所です。
強度は単発の第十位階魔法なら防げる程度、複数を重ねたり短時間に連射されたり超位魔法を使われたりすると割れます。
物理強度は結構弱い。シャルティアが6割くらいの力で突いたら穴が開き、8割の力で突いたら割れるくらい。

多分今後この設定が活かされる場面は無いです(笑)

11/22 誤字指摘を一部適用、表現を一部修正しました。
2018/11/4 行間を調整しました。
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