オーバーロード 粘体の軍師   作:戯画

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劇場版オーバーロード前編後編の主題歌が発表されましたがどっちもかっこよかったです。


第5章 勢力拡大
第35話 カルネ村の新たな住人


 トブの大森林のほど近く、小さな農村を遠目の視界に収めた茂みに潜む人影がいた。その数は十人にも満たないが、それぞれ(たずさ)えた得物は彼らが戦闘集団であることを教えてくれる。

 

 射干玉(ぬばたま)の長髪、両手槍を持った男が村の様子を観察している。その整った顔は驚愕に目を見開き、苦々しい表情を作る。この地を訪れたのは古くに封印された破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)が復活するという予言があり、対象を滅するために。それが不可能ならば再封印をするためだった。

 ここは他国の領地だが特殊部隊であるその一団が正式に入国している訳も無く、また彼ら自身も不法入国について何ら思うところは無かった。人類の危機を未然に防ぐこと以上に優先するべき法などありはせず、それが思想も政治形態も違う他国のものとなれば尚更である。

 

 数日前森の中に十人で気絶している女の冒険者を発見し、予言との繋がりを疑った。辺りに危険は無さそうだったので帝国のワーカーを装って事情を聞き出したところ、野盗討伐のために近隣都市からここへ来たら突如吸血鬼(ヴァンパイア)の襲撃を受けたらしい。

 

 ワーカーとは冒険者のように組合を持たない何でも屋みたいなもので、組合に所属することで受ける制約などを嫌った者たちの集まりを差す。揉め事の末に組合から除名処分を受けた者なども大抵ここに収まるので、傾向としては荒っぽい連中が多いのも要因となって依頼遂行に対する信頼度は高いとは言えない。雇うなら自己責任でどうぞというやつだ。

 つまり使う側も使われる側も多種多様なため武装集団の隠れ蓑には都合がいい。面倒に巻き込まれたくない相手は向こうから距離を取ってくれる。

 

 話を聞く限りでは見たことも無い魔法を使用する、ただの吸血鬼(ヴァンパイア)として片付けるには無理のある相手だった。だが周囲にその存在が確認できない以上、出合い頭の遭遇を警戒しつつ探索を続けるしかない。古い竜にはいまでは失われた始原の魔法(ワイルド・マジック)を使う者がいると聞く。中には姿を偽る魔法があってもおかしくない。

 

 大きな怪我の無かったその女は夜明けを待って拠点の都市へ帰っていった。街道まで出れば往復馬車もつかまるだろうし、魔獣に襲われる心配もグンと減る。

 その一夜は魔法の仮面で顔を壮年に変化させた隊長がそのまま対応し、他の者は女に気取られない程度の位置で夜を明かした。去るときにも「おじさん、ありがとー!」と手を振っていたので、見破られてはいまい。見た目にも魔法詠唱者(マジックキャスター)らしくはなかった上に、魔法効果看破の道具は非常に高価だ。急造チームで野盗の討伐依頼を受けているような者がおいそれと手にできる代物ではない。

 

 そうして細い糸ながらも破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)に繋がりそうな異常を発見し、捜索範囲を拡大していく中で1つの農村を見付けた。不特定多数との接触は後々の面倒が増える。単なるいち冒険者であれば仕事柄余計なことも話すまい。

 

 村が何者かの襲撃を受けて全滅しているとかなら話は違うが、丸太で作った防壁まで組んだ、辺境の農村には珍しくまともな防衛策が取られている村は火の手が上がったり死体が散乱している様子は見られなかった。その代わりに見付けた異常のために、慎重に観察をする羽目になっている。

 

 数日観察した結論は、あの村は至って平和であるということ。だがその事実は人類の守り手たる自分たちにとっては受け入れ難い光景であった。今回の出撃も急遽決まったことであったし、もしかすると自分達は何か思い違いをしていて、『破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)の復活』とはもっと概念的なことなのではないかという意見が出始めた。本国ではまた新たな情報が入っているのではないかと。

 

 ここばかりは特殊部隊の痛いところで、一旦作戦行動に入るとよっぽどの緊急状況でもなければ本国との連絡は取れない。それ故に現場の高い判断能力が求められるのだが、本国の存亡にも関わる間違い無く最重要レベルの予言については誰であろうと慎重にならざるを得ない。

 何にしてもこの地において異常な事態が発生していることは疑いようが無かった。

 

 さらに数日後にはその集団は影も形も無く立ち去ったが、村に住む者でそれに気の付いた者は一人もいなかった。

 

 

 

「エンリの(あね)さん、ここへ置きますぜ」

「ありがとう、ジュゲムさん。今日のゴハンは豪華になりそうね」

「ハハハ、そりゃあ張り切り甲斐があるってもんです」

 

 小柄な身体に緑の肌を持つ亜人種である小鬼(ゴブリン)。彼が運び込んだのは自身よりも大きな鹿である。狩り担当の仲間が仕留めたものを運んできたのだ。

 

 現在カルネ村には十九名のゴブリン部隊が住み着いている。と言っても一方的に押し掛けてきた訳ではない。当初彼らは村の外、なんなら森の近くへ拠点を作ろうとしていたのだが、それをエンリが引き留めたのだ。現在はエモット家の側の空き家に居を構えている。

 彼らは通りすがりの偉大な魔法詠唱者(マジックキャスター)アインズ・ウール・ゴウンから貰ったマジックアイテムによって召喚された者たちだ。

 

 異形の隣人をぼんやりと眺めつつ、エンリは彼らが現れた日のことを思い出す。

 

 先日襲撃を受けた際に、村人が何人も命を奪われた。人手が無くなればこんな小さな村の生活はあっという間に立ち行かなくなる。

 

 より多くを稼がなければというエンリの思いは日増しに大きくなっていった。両親を亡くし、残された唯一の家族である妹のネムを守ることに必死だった。

 

 貴重な現金を得る手段である薬草採りに出ていたある日、多くを集めようとしたためについ森の奥へ踏み入ってしまった。陽の落ちかけた森を家路についたエンリの前に、猪が現れた。

 なんだ猪くらいと笑うのは、実際に野生の猪に対面したことが無い者のセリフだろう。

 猪の代名詞とも言える突進力、加えて荒々しく飛び出た牙は決して見掛け倒しではない。ただの人間が受ければ粉砕骨折、腹に触れれば皮膚を切り裂き内臓をこぼすことになる。

 

 猪の恐ろしさを知っているエンリは、自分の粗忽さを心中罵りつつ、冷や汗をかいていた。胸の動悸を抑えるように手を伸ばす。すると、コツッと硬い感触が返ってきた。

 

 笛。窮地を救われた魔法詠唱者(マジックキャスター)に与えられた物だが、あの場では使わなかった。そのままお守り代わりに首に提げていたのだ。

 野生動物は未知を恐れると聞いたことがある。姿を晒しているなら逆効果かも知れないが、もし笛の音に驚いて逃げてくれればもうけものだ。目一杯息を吸い込んで、エンリは笛を吹いた。

 

 森の中に法螺貝のような音が響く。幸い猪は警戒しているのかすぐに襲い掛かってはこなかった。

 

 残響が鳴り止んだ頃、目の前の人間を攻撃することに決めたらしい。力を溜めるように後ろ脚を擦り上げている。あふれる殺気はいまにも突進してきそうなプレッシャーを感じさせた。

 

 人一倍土壇場の度胸はあるエンリだが所詮ただの村娘。猪を仕留める武器も技量も持ち合わせてはいない。

 いけないと分かってはいても、恐怖から目を閉じることを我慢できなかった。

 

 それが合図とばかりに猪が突進する。暴れる四肢が地を揺らし、地鳴りのように迫ってきた。

 (いなな)きが聞こえる。しかしそれは何かがおかしかった。長く、荒い乱れた息遣いも聞こえる。恐る恐る目を開けた先に見えたものは、左目に矢が刺さり、痛みに身悶えさせる猪だった。

 

(あね)さん! 下がって!」

 

 猪とエンリの間に小柄な緑の何かが割り込む。視界の奥では猪に次々と矢が刺さり、同じような連中が鉈状の武器を使って徐々に体力を削り、ついには力尽きた猪が崩れ落ちた。

 

「怪我は()えですかい?」

「あ、ありがとう。あなた達は……」

 

 ペシッと毛の生えていない頭を叩くと、他の者もうじゃうじゃと集まってきた。ちょっと引いたエンリだったが、助けてくれた相手を無下にもできない。辛うじて踏みとどまった。

 集まった数は十九名。全員集合したのを確認すると、先頭に立っていた者が代表して口を開いた。

 

「俺たちは小鬼(ゴブリン)軍団! (あね)さんをお助けするために来やした!」

(あね)さん……? ごめんなさい、折角助けてくれて悪いけど、同じような小鬼(ゴブリン)は見てないわ」

 

 キョトンとした表情で互いに顔を見合わせる小鬼(ゴブリン)軍団。いきなり爆竹でも爆発したみたいな大爆笑が薄暗くなった森に響いた。訳の分からないエンリはただ困惑するのみだ。

 

(あね)さん、とぼけちゃいけねえや。角笛、吹いただろ?」

「え、角笛……って、これ? え、じゃあ『(あね)さん』って、もしかして」

 

 一斉に十九本の指がこちらを向く。危険は去ったようだが心の平穏はまだお預けにされるのであった。

 

 結局、小鬼(ゴブリン)軍団については無視する訳にもいかず、村長に相談した上で村人へ紹介することになった。先日の一件で人外に対する精神的な障壁が緩和されていたため、概ね村人たちの反応は好意的だった。念のために呼び出された経緯も説明したが、そうするとどうしても小鬼(ゴブリン)たちはエンリのための存在という話になり、当の小鬼(ゴブリン)たちもそう言って(はばか)らないため村の中ではすっかり『エモット家の小鬼(ゴブリン)たち』の認識が広まっていった。完全に間違っている訳ではないからエンリも否定し辛く、結局エンリのために結果的に村のことも助けてくれると言うので細かいことに口うるさくするのは控えておいた。

 

 人手を得たカルネ村の復興スピードは目を見張るものがあった。廃屋などの整理、村の防備のための外壁設置、食料の確保に薬草採取の際の護衛などだ。

 せめてもの恩返しと思って、小鬼(ゴブリン)たちの食事はエンリが作っている。最近小鬼(ゴブリン)たちだけではなく、カルネ村に新しい顔が増えた。実はその人物もエモット家に逗留しているのだ。

 

 食事の用意が出来た。小鬼(ゴブリン)たちはジュゲムが声を掛けてくれるだろうから、床に座って一心不乱に薬研(やげん)を前後させていたネムに客人を呼びにいくよう伝える。元気な返事と共に寝室の方へ走っていった。

 

 程なくしてネムに手を引かれて姿を現したゲスト。無表情に切れ長の目は見る者にぞくぞくとした冷たさを感じさせる印象だが、最近の付き合いでエンリは悪い印象を持ってはいなかった。ネムはとても気に入ったようで、エンリが村のことで小鬼(ゴブリン)たちと話しているときなど、いつも暇さえあれば彼女にくっつき回っている。

 はしゃぎ疲れて膝の上で眠ってしまったときには流石に失礼なので起こそうとしたが、口元に指を立ててエンリを制した。口数も少ないために正直もやもやした不安を拭えないでいたが、その件以来エンリの彼女への見方が変わった。彼女の行動が変わった訳ではないので、いままで気付いていなかったことに気付いたと言うのが正しいか。

 

「食事ができましたよ。ナーベさん」

「そう」

 

 長く美しい黒髪をポニーテールにまとめた妙齢の魔法詠唱者(マジックキャスター)、ナーベだ。なんでも、かのアインズ・ウール・ゴウンの弟子であり、師の命を受けてカルネ村の防衛のためにやってきたとか。

 この村に起きた悲劇の顛末を言ってみせたので、その言を疑う者はいなかった。遠方の様子を見るような魔法もあるのだが、ただの村人にそこまでの知識は無い。

 

 最初は寝食を共にすることがカルネ村にとっての負担になると言って村の近くに野宿しようとしたところを、流石に見過ごせないエンリがやや強引に引き留めた。アインズに与えられた角笛で召喚された小鬼(ゴブリン)が動物を狩ってきてくれているから、ナーベの食い扶持は問題にならないと。

 彼女に野宿をさせないため思い付いたとっさの理屈だったが、あとで思えば全くもってその通りだった。

 仏頂面でやや不満そうにしていたナーベだが、エンリの申し出を断ることは師匠であるアインズの庇護を断るも同じことだと言うと一転して顔を青ざめさせ、借りてきた猫のように大人しくなってエンリの言い分を受け入れた。よっぽど師匠が怖いのだろうか。

 

 エンリから、というより村人から見たナーベは不思議な人だった。防衛のために来たという割に村の外壁などの設置には素知らぬ顔をしているし、小鬼(ゴブリン)たちと協力して周辺の警戒に当たるでもない。たまにフラリといなくなるときがあるが、日を跨ぐ場合は必ず前もってエンリに伝えていつの間にか戻ってきている。

 どんなモンスターが出没するのかを村人に聞いて回っていたようだが、トブの大森林から漏れ出てくることなどは滅多に無い。基本的に平和な村なのだ。

 

 彼女のミステリアスさに拍車を掛けている要素がもう一つあった。それは滞在期間である。明確な脅威がある訳でも無い現在、どの時点を以ってカルネ村の安全が確保されたと判断するのかが不明だった。脅威を排除するという観点で見ればそもそもナーベが来る前に終わっている。

 先に言っていたように、ナーベの存在が迷惑ということはない。むしろエンリにとってはネムが懐いているため助かっている。薬草採取に出るときなど、どうしてもネムと離れなければならない。世話を頼んでいた隣人は笑って引き受けてくれていたが、数が重なると申し訳無くなってくるものだ。

 

 追い出そうとしているなどと勘違いされないよう、それとなしに一度聞いてみた。

 

「アインズさ──師匠が良いと仰るまで」

 

 つまり、結局いつまでなのかはナーベ自身にも知らされていないのだ。

 

 それにしても、エモット姉妹とナーベ、小鬼(ゴブリン)軍団で囲む食卓は慣れていない者にとっては異様としか表現できないが、エンリにとっては両親のいない寂しさを忘れさせてくれる、掛け替えの無いものになりつつあった。

 小鬼(ゴブリン)たちがガヤガヤと騒がしいのはいつものことで、ナーベに対してやや距離を取っているのもいつも通りである。

 仲が険悪というよりも、触らぬ神に祟り無しという感じだ。口数が少なく冷徹な雰囲気を纏うナーベに近寄り難いと思うのはエンリも分からないではないというか最初は自分もそうだったので他人(ひと)のことは言えないのだが、自分の作った食卓が距離を縮める一助になればいいなと思う。

 

 夕方になり、平野が茜色に染まる頃。見張りの小鬼(ゴブリン)から馬車がこちらに向かってきていると報告があった。ピンと来たエンリが迎えに出ると、ナーベもそれに続いた。

 

 二頭立ての幌馬車が見える。御者台で手綱を握っているのは、幼馴染の薬師兼錬金術師であるンフィーレアだ。こちらに気が付いたらしく腕を振っている。

 

「や、やあ、エンリ」

「いらっしゃいンフィー。あれ、この場合はいらっしゃいでいいのかな」

 

 なんだかお互いに微妙に噛み合っていない挨拶を交わす二人を、底意の窺えない目で見ていたナーベが口を開く。

 

「この下等生物(アブ)は?」

 

 ややエンリとのあいだを割るように入ってきたナーベに、ンフィーレアは嫌な顔ひとつせず挨拶をする。こういうのは客商売を生業としている者の強いところだ。

 

「僕はンフィーレア・バレアレといいます。最近までエ・ランテルにいたんですけど、色々あってカルネ村へ引っ越してきました」

 

 私の幼馴染なんです。と後ろからエンリが付け足す。その様子をじっと観察していたナーベは、そう、とだけ返すとンフィーレアへ向き直った。

 

「私はナーベ」

 

 名前だけを言うとスタスタと村の中へ戻っていく。残されたンフィーレアは会話の体を成していないと言っても過言では無い過去最短の自己紹介を受けて固まっていた。エンリはある程度予想通りだったので苦笑いを浮かべている。

 

「な、何か気に障ることでもしちゃったかな?」

「気にしないで。ナーベさん誰にでもああなの。張り付いて警戒しないってことは一応信用してくれたってことよ。こないだなんて大変だったんだから」

 

 この前行商人が村に回ってきたときはひどかった。

 

 行商人が来たときは家々を一つずつ訪ねていくか、村長に許可を取って広場で即席の店を開くかのどちらかだ。この行商人は後者を選んだ。

 

 まず小鬼(ゴブリン)からの報告を受けた時点で、年に一度くらいの周期で来る行商人であることは分かっていた。挨拶に出るところへ付いてきたナーベが、いきなり短剣を突き付けたのだ。

 顔も知っているから大丈夫だと言っても、偽装する魔法もある、万一があっては師に顔向けができないの一点張りで取り付く島も無かった。

 絵面だけ見たら行商人が強盗に襲われているみたいになっていたが、話が進まないので彼が滞在しているあいだはナーベが監視に付くということでやっと刃物を引っ込めた。

 行商人には先日村を襲った不幸の説明をして、やや同情混じりに納得してもらった。ナーベには刃物で脅したりしないよう注意をしておいたが、(こた)えた様子は無く相変わらず冷ややかな顔をしていた。

 

 広場で販売をすると先に聞いていたエンリは他の手の空いていた村人と一緒に、簡易店舗設置の手伝いをしていた。各家に行商人が来ていることを伝えて、シートを敷いたり荷下しをする。身内ではないがこの辺りはお互い様で、いつも協力しているのだ。村長の許可が降りないということもまずあり得ない。それを行商人も知っているから、準備はある程度村人に任せて、手伝ってくれた人には少し値引きをしてくれていた。

 

 村長の家に許可を取りにいっていた二人が戻ってきたが、声を掛けるのを躊躇するくらい行商人は顔色が悪かった。もしかして許可がもらえなかったのかと聞くと、快諾されたと言う。後ろでナーベは平然としている。

 あとで村長に聞いた話だが、行商の中で見聞きした話や今日の商品の話をしている間中、ナーベは入口(そば)の壁に背を預けていた。ただ、行商人の背中を穴が開くほど見ていたらしい。それは視線を向けられていない村長さえも寒気を覚える程で、あまりのプレッシャーにナーベの方を見ることができなかったそうだ。

 

 とにかく始まった青空商店だが、問題はなおも続いた。売り口上を述べる行商人の真後ろにまたもナーベが張り付いているのだ。表情は全く変わらないが、行商人が恐怖のあまり全身を硬直させたのが分かった。

 

 販売が終わり、荷物を素早く片付けた行商人は脱兎の如くというのが相応しい勢いでカルネ村を後にした。もし彼が来年に来てくれなかったら間違い無くナーベのせいである。

 念のためにちゃんと話をしておこうかと思ったが、翌朝、目の下にものすごいクマを作り苦虫を噛み潰したような表情でどうすれば良かったのかを(たず)ねてきたナーベを見て拍子抜けした。心なしかそれ以降他人に対する彼女の態度が少し軟化したように思う。

 

「どうしたの? エンリ」

「はっ! あ、ええ、なんでもないの。あはは。それよりンフィー、ここで立ち話もなんだし、行きましょう」

「そうだね。村長さんに挨拶にいって、出来れば荷物の運び込みまでやってしまいたいなあ」

 

 エンリと並んで歩くンフィーレア。なんだか頬を撫でる僅かに冷やりとした風や、夕焼けに染まる畑がひどく懐かしい光景のように思えた。すごく昔に同じことがあったような、つい昨日にも同じ光景を見たような。過去と現在が入り混じった黄昏時に、世界は染まっていく。

 

 夜の食卓はエモット家に世話になった。騒がしい小鬼(ゴブリン)たちも同じだ。前に薬草収集のためにカルネ村へ来たときに顔合わせはしたものの、日常の中に小鬼(ゴブリン)がいるのは流石に慣れない。

 

 宴会のような食事が終わったあと、リビングにはエンリとンフィーレアの2人がいた。ナーベは食事が終わるとネムに連れられて寝室へ行ったので、恐らくネムにまとわり付かれているのだろう。

 

「はい、お水。それにしてもンフィー、引っ越しなんてまたえらくいきなりよね。私が言うのもなんだけど、ここ何も無いしエ・ランテルに比べたら不便じゃない?」

「ありがとう。はは、確かにそうかもね。でもお婆ちゃんも賛成してくれてるし、僕もやりたいことがあって決めた話だから」

「そうなんだ。やりたいこと……か」

 

 珍しく、エンリの表情に影が差す。悲しさと自嘲が入り混じった儚い笑みは、酷く寂しそうに見えた。

 

「ど、どうしたの」

「ああ、ううん。ごめんなさい。ンフィーはすごいね。お店を構えて、やりたいこともあって。私はそういうの何も無いなあってちょっと思っただけ」

 

 小さな村は生きるために必要なことに忙殺される。人手が減ったカルネ村ならなおさらだ。小鬼(ゴブリン)たちのお陰で多少マシになったが、街で趣味を探したり、それにかまける時間が無いことに変わりは無い。

 別にそれが不満という訳ではない。自分はカルネ村で生まれてカルネ村で死ぬとずっと思っていた。だがそれは閉鎖的な一生でもある。自分より外の世界を知っているンフィーレアが殊更に眩しく見えた。

 そんなエンリの心境を知ってか知らずか、少し考える素振りを見せたンフィーレアは意を決したように口を開いた。

 

「エンリ、君に、大事な話があるんだ」

「私に?」

「僕が────」

 

 

 

 

 

 

 遡ること約二週間。ある事件の解決によってエ・ランテル唯一のアダマンタイト級冒険者チームへと異例の昇級を成した男がいた。名をモモン。チーム、通称『漆黒』において、『太陽』の二つ名を持つレジーナ嬢と共に異常なまでの早さで次々と依頼を完遂していた。

 ちなみにチーム名は、モモンが装備している全身鎧(フルプレートアーマー)に由来する。エ・ランテルには『漆黒の剣』というチームもいるので、名指しの依頼をする際には混同しないよう注意が必要だ。

 レジーナ嬢の『太陽』については、優れた魔法詠唱者(マジックキャスター)である彼女の切り札、≪ファイヤーボール/火球≫が他を圧倒する威力であり、地上に現れた太陽のようであること。そして分け隔て無く向ける笑顔が人々に希望をもたらす太陽であると誰ともなく言われ出したことが広まった結果だ。

 

 そんな二人が真夜中の大通りを行く。日中は雑多な賑わいを見せる大通りも、街全体が眠りについているこの時間ではおよそ人の気配というものは感じられない。

 金属の擦れる音が止む。大通りから少し外れた路地にある建物。視線を上げるとバレアレ商店の看板が目に入る。当然ではあるが、表には本日閉店を示す札が掛けられている。それを確認すると、モモンたちは店の裏手へ回り込む。仕入れなどに使っている裏口があるのを知っているからだ。

 

 扉を軽くノックすると、待っていたのだろう、すぐに扉が内から開けられた。

 

「どもっす」

「無理を言って済まないな」

「気にしないで下さい。中へどうぞ」

 

 迎えに出たのは前髪に目が隠れたエプロン姿の青年、この街では有名な薬師兼錬金術師のンフィーレア・バレアレだ。 周囲の音や気配を探っていたレジーナから見聞きしている者が誰もいない旨の耳打ちを受けてから戸をくぐる。エ・ランテルの街を静寂が包んだ。

 

 裏口から入ってすぐの部屋は、ひと月程前にも入った在庫置き場兼用の作業室だ。設置された椅子へ腰掛ける。もちろん、ンフィーレアに勧められてからだ。この辺りのマナーは無用なトラブルを避けるためにも注意していた。モモンが座るのに合わせてレジーナも腰を下ろす。

 

(ンフィーレアはそういうの気にしなさそうだけど……いや、ダメだダメだ。一度タガが外れると癖になるもんな)

 

 ギシ、と椅子が軋み、少し慎重に体重を預けたが問題は無いようだ。

 

「何か飲みますか?」

「ありがとう。しかし遠慮しておくよ。本題に入ろう」

 

 ンフィーレアが対面に座るのを待ち、その前に、と最後の確認をする。

 

「いまからする話を聞いたらもう後戻りはできない。それは君自身はもちろん、祖母を確実に巻き込むだろう。君に近しい人間もな。その覚悟が君にあるか?」

「……あります。お婆ちゃんはむしろ僕が止めても話を聞きたがるでしょうし、僕の家族はお婆ちゃんしかいません。何より僕自身、あの高みを知ってしまいました」

「フッ、その言葉を信じよう」

 

 そう言うとモモンは(ふとこ)ろから5本の巻物(スクロール)を取り出し、机の上に重ね置いた。

 

「少し待ってもらえるか」

「え、ええ」

 

 ンフィーレアの同意をもらうと、巻物(スクロール)の前にレジーナが立つ。

 

「よろしいのですね?」

「構わん、やれ」

 

 一つを手に取ると神妙な面持ちで意思確認をする。前に依頼を受けてもらったときとはまるで違った雰囲気を纏っており、彼女の二つ名はなんだったかと自分でも呆れるほど場違いで暢気(のんき)な疑問を頭の中で払う。

 

 首肯すると巻物(スクロール)を次々に使用していく。最後の一本が燃え尽きたあと、モモンは椅子から立ち上がった。

 

 おもむろに手で顔を隠すと、モモンの全身を一瞬の旋風(つむじかぜ)が走った。

 瞬きをした直後、そこにいたのは無骨な金属の籠手を着け、泣いているような笑っているような奇妙な仮面を被ったローブ姿の人物だった。特に目を引いたのは大きな肩当のついたローブで、何の素材でできているのか全く見当も付かない。装備品は専門外だが、異常な逸品であることは感覚的に分かる。

 

「待たせたな。これが私の本当の、アインズ・ウール・ゴウンとしての姿だ」

「い、いま、目の前で見ても信じられないくらいです。アダマンタイト級の強さを誇る戦士モモンさんが実は魔法詠唱者(マジックキャスター)だったなんて! あっ、す、すみません声が大きかったですね」

「さっきレジーナに≪サイレンス/静寂≫の巻物(スクロール)を使用させている。この部屋の外へ音は漏れないから安心するがいい」

 

 エ・ランテルでのアンデッド大量発生事件以来、貴重な生まれながらの異能(タレント)を保有するンフィーレアを取り込むチャンスを(うかが)っていた。ヴァンパイア討伐の件で冒険者最上位であるアダマンタイト級に登り詰めてエ・ランテルでのやるべきことに目処が付いたため、最後の仕上げに掛かったのだ。アインズがやろうとしているのは、平たく言ってしまえばヘッドハンティングだ。

 

 モモンとして表立った接触をすると、冒険者組合やら魔術師組合やらから恨みを買う可能性が高い。人材の流出は上に立つ者として許容できるものではないだろう。

 だが社会のシステムと何のしがらみも無い人物からの接触ならどうか。しかもンフィーレア本人が納得して望んだことであれば。

 言い方は悪いが単なるいち商人の転居をさせない程の拘束力は組合には無いはずだ。

 そして店にはリイジーを残すつもりなので、ポーションの供給は少なくとも表面上今までと何ら変わらない。ケチの付け所が無ければおいそれと手出しもできないだろう。

 

 今夜ンフィーレアに提案するのは、より高位のポーションを作成するための道具や素材を含んだ環境の提供だ。その条件の一部として、カルネ村への移住と研究成果の全ての管理権はこちらが保有すること。細かい話は追い追いになるが、概要としてはこんなところだ。正体をばらしたのはポーションの出所についての信憑性を高めることと、仮にも取引をするのならある程度の情報は開示するのがフェアだと思ったからだ。もっともカルネ村で看破されていたためンフィーレアにはアインズが魔法詠唱者(マジックキャスター)であることは既に知られている。

 知識を高めることを是とする錬金術師にとってはメリットしかないと思うのだが、これを聞いたンフィーレアの反応はやや鈍かった。

 

「カ、カルネ村、ですか……?」

「ああ、そうだ。実は私の部下を弟子と名乗らせて、村の警護を任せている」

「さっき、近しい人も巻き込むと……」

 

 そういうことか。確か正体がバレたとき、もとい、漆黒の剣とカルネ村に行ったときに大切な人だと言っていた。だがそれはンフィーレアの個人的な事情だ。元々カルネ村自体をナザリックプロデュースの支配地域モデルケースにするつもりだったため、ナーベラル・ガンマにも防衛対象は村人たちを含むカルネ村全体だと伝えてある。それとは別にして、恩を着せられるところは着せておくことにする。

 大したことではないかのように、恩着せがましく見えないように。ナザリックの全容を知った時、その種は一気に芽吹いてンフィーレアの心を縛るだろう。タダより高い物は無いと言った過去の人は賢人だ。

 

「そうそう、言い忘れていたが、私のために働く者は財産だ。それを守るための労力を惜しむつもりは無い。そのためにわざわざカルネ村に部下を送り込んでいる訳だしな」

「それは……」

 

 村の人も守ってくれるということですか。出そうになった言葉をンフィーレアは飲み込んだ。どこまで人任せにする気だ。それに自分が言い淀んだタイミングでこれを言ってくるということは、言外にエンリたちも守ってくれると言っているに等しい。

 前回は自分の目も手も届かないところでエンリたちが死に掛けた。思い出してもゾッとする。でもこれからは違う。目も、手も届く。ついでに心も届けばいいなぁと肝心なところでヘタれたが、何にしても今よりはずっといい。

 

「いえ、何でもありません。モモンさん、いえ、アインズさん。これからよろしくお願いします」

「契約成立だな。カルネ村に向かう日が決まったら教えてくれ。そうだな……私はモモンとして黄金の輝き亭に滞在しているから、ポーションを一瓶届けてくれ。その日の内にメッセンジャーを寄越す。これはその前払いだ」

 

 金属音を鳴らしながら三枚の金貨が机に置かれる。ポーション一瓶にしては相場の倍以上の額だ。

 

「も、もらえませんよ!」

「私が君のスポンサーになることと、ポーションの対価を払うのとは全く別のことだ。これは準備金も含むと思ってくれればいいさ。受け取ってくれ。私を不義理な男にさせる気か?」

 

 そうまで言われては否やも無い。強大な力を持ちつつも人格者と評されるモモンの不思議な魅力を、ンフィーレアは改めて実感した。身分の違いを理由にポーションを安く買い叩こうとする貴族などとは根本的に違う。作り手への敬意を感じさせた。

 

「……そうまで仰るなら、分かりました。お代は確かに」

「うむ、こういうのはキチッとしなくてはな」

 

 バレアレ商店を出た二人は人の気配が全く無い路地を歩き、黄金の輝き亭に戻ってきた。最高級の宿屋は貴族の急な利用や出入りの時間が不規則な高位冒険者の利用を想定しているため、深夜に出歩くことを咎める者もいなければ、何をしていたか深く問う者もいない。そしてこれが何より重要なのだが、そういった情報を外部に漏らすことも無い。

 個人情報の扱いが極めて慎重な高度情報化社会ならまだしも、チップ程度の支払いで泊まり客の情報を売るのは一般的な宿屋において悪ではない。それが普通なのだ。社会的な文化と言ってもいい。

 そのため、従業員の口が堅く機密性の高い宿屋は情報の価値を重視する客に重宝されるという訳だ。仮にここで話した内容が当事者以外から外へ漏れることがあれば、一ヶ月を待たずして最高級の看板は地に落ちるだろう。

 

「ふいー、慣れない魔法を使うのはキンチョーするっす」

 

 二人で泊まるには広過ぎるくらいの部屋のベッドにレジーナが身を投げる。モモンが戦士の変装を解かない様子を見ると冒険者パートナーとして礼を尽くす必要無しと判断したのだ。枕に顎を乗せてブーツを履いたままの足をパタパタとさせている。

 モモンはそれを横目に流しつつ、奥の別室へと足を進める。

 

「もう寝ていていいぞ。私はまだ少しやることがある」

「そっすか。了解っす。ふあぁ〜」

 

 大口に手を広げてあわあわと欠伸をする。もし従業員が部屋に来た時のために、モモンは奥の部屋、レジーナは入口側の部屋と基本の場所を決めている。そしてレジーナには不自然ではないように寝るときは普通に着替えをせよと指示を出している。

 最初、備え付けのクローゼットから引っ張り出してきたのがベビードール調でスケスケのネグリジェという男の劣情を多分に煽るものだったので慌てて止めた。アンデッドの自分にそういった衝動は残滓程度のものだが、そんな物を着せていたとあとでぶくぶく茶釜にてもバレたらメンタルが死ぬまでいじられるに違いない。

 

 制止を受けたレジーナは口を尖らせて「えー? いちばん涼しそうだったんすけどねー」と少し不満そうにしていた。単に暑そうな服が嫌だっただけらしい。幸いにもその時はまだ真夜中ではなかったため、フロントに注文を付けるとすぐに替えの寝間着を持ってきてくれた。五種四色と急な無茶振りにも選択の余地を添えてきたのは流石一流宿屋というべきだろうか。

 その中の1つ、セパレートタイプのゆったりした物で、淡い緑の水玉模様、所々にフリルがあしらわれていてセクシーというよりかわいらしい。最も無難な感じだったのでそれを選んでレジーナに渡した。着心地も悪くはないようで、数日でその寝間着はすっかりレジーナのお気に入りとなった。嫌なら他のに変えてもいいとは言ったが、毎夜同じデザインの物を着ているのはそういうことなのだろう。

 

 寝つきはとても良く、着替えが終わって布団を被った5分後にはもうゴソゴソと動く音は聞こえなくなった。

 

 目には見えないが、頭の奥が何かと繋がる感覚。≪メッセージ/伝言≫を自分に飛ばしてきている者がいる。レジーナの眠りを妨げないように部屋の奥側に寄り、少し声のトーンを抑えて着信を受ける。相手はカルネ村に送り込んでいるナーベラル・ガンマだった。

 

「──ナーベラルか。いや、いまはナーベだったな。何か変わったことはあったか? ほう、行商人──」

 

 ナーベラルからの報告を聞いたモモンは思わず鎧面に手を当てていた。トラブルを防ぐために送り込んだはずなのに、かえって揉めごと──正確には揉めていないが、今後その行商人の足が遠退くことがあれば原因は明らかだ。

 ≪メッセージ/伝言≫の向こうでは息を呑む気配を感じる。長めの沈黙を怪訝に思っているのか。ため息混じりにアインズは口を開いた。

 

「……ナーベ、何をやっているんだ」

『はっ?』

 

 

 

 魔法で通じた先から聞こえる主人の落胆した声にナーベラル・ガンマ──いまはナーベ、は素っ頓狂な声を上げた。聞き間違いかと思ったからだ。今日の自分は外部からの訪問者に一分の隙も与えず、村を守る役目を完璧にこなしたはず。一日の報告もお褒めの言葉をいただけるかもと僭越ながらもウキウキした気持ちで行ったというのに。

 満足していただけなかったとなると、採用しなかったもう一つの対応方法が正解か。

 

「申し訳ございません、やはり部外者は即座に殺しておくべき──『違う……そうじゃない』

 

 全身が一瞬で凍りつく。至高の御方の考えに理解が及ばないのはまだいい。だがそれであっても真意に背く行動を取ることは絶対に許されない。明確に口にされた否定の言葉は、失望される恐怖を伴ってナーベの胸に突き刺さった。

 

 ≪伝言(メッセージ)≫の先では反応を見ているのか、こちらに向く意識を感じる。弁解すら一言も発することがでにず、静寂を破ったのは向こうだった。

 

『……これは、デミウルゴスにもした話なのだが』

「デミウルゴス、様……」

 

 回らない思考は覚えのある名をオウム返しすることしかできない。アインズは構わず先を続けた。

 

『そうだ。力と恐怖による支配は容易(たやす)くとも、歪みをもたらす。それは真の支配ではない』

「申し訳ございません。恐れながら具体的にどうすればよかったのか、愚かなる私にお教えいただけないでしょうか」

『具体的……。じ、自分でも考えないとダメだぞ。それでも分からなければ、だな、えー、そう、エンリだ。エンリ・エモット』

「エンリ……とは、小鬼(ゴブリン)を束ねるあの者ですか」

『そうだ。どうすれば良かったのか彼女に聞いてみるといい』

「そっ、それは……いえ、かしこまり、ました」

『あ、と、とにかく、ナーベの役目はカルネ村の自主性に干渉せず、外からの脅威を取り除くことだ。分かったな。じゃあ、切るぞ』

「……はっ」

 

 翌朝ネムが部屋に来るまで、椅子に腰掛けたナーベは微動だにしなかった。

 

 

 

 静かな夜には僅かな話し声も耳に障るものだ。ナーベとの≪メッセージ/伝言≫が届いたのか、向こうの部屋で寝息を立てていたはずのレジーナがもぞもぞと動いて寝惚けた(まなこ)を擦っている。

 

「んんぅ……さっきからごにょごにょと、何すかー……?」

 

 意識はまだ微睡みの中にいるらしい。これ以上騒がしくするのは安眠妨害だろう。

 

「すまん、起こしてしまったか。もう終わったから安心して寝るといい」

「むにゃ……そっすかー……ぐぅ……」

 

 寝付きが良いのは、良過ぎる聴覚のせいで眠りを妨げないためにすぐ深い眠りに沈めるようになっているのかも知れない。少しナーベをフォローしておきたいところだが、今夜はここらが限界だ。本人も反省するだろうし、明日の依頼をこなす途中、昼頃にこちらから≪メッセージ/伝言≫を入れておくことにする。

 

 ベッドに腰掛けたモモンは、逃げた行商人の代わりにカルネ村へ何かを持っていくべきかを軽く検討することにした。日の出はまだ遠く、考える時間は十分にある。




実際ゴブリン軍団のカルネ村に対する貢献度ってめちゃくちゃ高いと思う。
周辺の村も陽光聖典にやられてたりするから合併も容易ではない気がするし、あいつらいなかったら割と本気で悲惨な未来しか見えない。

2018/11/6 行間を調整しました。
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