スーパーロボット大戦3F ~マクロス・コンサート~   作:デスフロイ

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第10話 守護者たち

 サンクキングダムの政庁を兼ねた屋敷を、二機のガンダムが守っていた。

 

「……来る! 何だ、あのロボットは」

「ボアザン星人の、守護神ゴードルだ。おそらくは、ハイネル司令官自身が操っている」

 

 ガンダムヘビーアームズの中で、トロワ=バートンは平静な声で答えた。

 

「そのすぐ側に、モビルスーツ三機。うち二機はガンダムタイプ。ザフト軍のものなら、お前は知っているのではないか? キラ=ヤマト」

「知っている……」

 

 キラは、フリーダムの中で、その姿を確認していた。

 

「クルーゼのシグーに、アスランのイージスガンダム。それと……インパルス! シン=アスカも加わっているのか」

「手強いか?」

「誰一人とっても、簡単には勝てない。ヒイロが加わればともかく……」

「いない人間の話など意味がない。奴には、別の役割がある。分かっているはずだ」

「……そうだな、すまない。僕たち二人で、ここを守り抜かなければ!」

 

 キラは、迫り来る守護神ゴードルらを、じっと見据えていた。

 その二機の姿を見たアスランが、顔色を変えた。

 

「あれは……フリーダム! キラだ! サンクキングダムに来ていたとは」

「フリーダムを奪っていった奴が、よくも俺たちの前に出られたもんだな!」

 

 二人の言葉を耳にしながら、クルーゼは薄く笑った。

 

「隣にいるのは、例のコロニー共和連合のガンダムだな。どうやらキラ=ヤマトは、奴らと気脈を通じているようだ。だが、いくらキラ=ヤマトといえども、我々三人を同時に相手取って勝てるかな?」

 

 そしてクルーゼは、ゴードルを見やった。

 

「ハイネル司令官! 我々があのガンダムを殲滅しましょう。リリーナはあなたにお任せします」

「うむ。忌々しいガンダムどもを、いちいち相手になどしてはおれん。政庁ごと、そやつを紅蓮の炎で焼き尽くしてくれるわ」

 

 両者の間合いが、詰まっていく。

 そして、双方が相手を射程に入れた。

 次の瞬間、4機のガンダムが、激しくビームを撃ち始めた。

 流れ弾が政庁に当たらないよう、フリーダムはシールドで極力受け止める。

 

「涙ぐましいな、キラ=ヤマト!」

 

 クルーゼは銃撃戦に加わらず、空中に飛翔した。

 眼下に、政庁がある。クルーゼは照準をそこに合わせた。

 それに気づいたトロワが、砲火をそちらに集中させた。クルーゼはあっさり断念して位置を変える。火線の薄くなった分、アスランとシンの攻撃は苛烈さを増す。

 ヘビーアームズが被弾し、ぐらついた。それでも、トロワはシグーへの砲撃をやめない。

 そして、ゴードルがついに政庁に接近した。

 

「焼かれて落ちるがよい!」

 

 炎が、守護神ゴードルの口から放たれた。

 

「させない!!」

 

 フリーダムが、炎の前に飛び込んだ。

 猛烈な熱気が、フリーダムを炙る。キラの眼前のモニターに、警告表示が次々と並んだ。

 

「ほう、そこまでするか。敵ながら天晴れ! だが、次の炎は耐えられまい。それとも後ろを見捨てて逃げ出すか! 好きな方を選ぶがよい!」

「……逃げない!! 最後まで守り抜く! 僕はそう決めたんだ!!」

 

 キラが、フリーダムを仁王立ちさせる。

 クスィフィアスレール砲が、すぐ目の前のゴードルに狙いをつけた。これで確実に倒せるとは、キラも思っていない。ただ、戦いを放棄するつもりはなかった。

 

「惜しい。貴様のような奴が、味方であれば。しかしこれまでだ!」

 

 ゴードルが、炎を吐こうとしているのを、キラはトリガーに手をかけたまま見据えていた。

 突然、ゴードルの背中に爆発が起こった。

 大きくよろめくゴードルに、フリーダムの砲撃が浴びせられる。キラの予想通り、それでもゴードルは持ちこたえた。

 

「!?」

 

 ハイネルは、背後でその腕を砲身として構えているボルテスVを見た。

 

「現れおったか! おのれ、ことごとく邪魔を!」

「それ以上はやらせない! そこのガンダム、加勢する!」

 

 それを見てとったクルーゼは、方向を変えてボルテスVに向かった。

 

「死に体のそこの二機は、シンだけでいいだろう。アスラン、ボルテスVは我々でやるぞ」

「了解!」

 

 正直、キラをなぶり殺すことに嫌悪感を覚えていたアスランは、内心ほっとして向きを変えた。

 シグーの砲撃に足が止まったボルテスVだが、

 

「ボルテスバズーカ!」

 

 反撃を試みるが、シグーは楽々と回避する。

 続いて、モビルアーマー形態となったイージスガンダムが、四本の爪からのビームサーベルでボルテスVを斬りつけた。

 さらに、ゴードルの炎がボルテスVに叩きつけられる。

 

「どうやら助太刀にもならなかったようだな。 ……む!?」

 

 クルーゼは、レーダーに反応を見つけた。

 VF-01Jを先頭に、F91とD-1が続いて、接近しようとしていた。

 

「また貴様か! ここまでの因縁になるとは思わなかったよ」

「それはこっちの台詞だ!」

 

 輝が、砲撃をシグー目がけて放った。

 

「それじゃ、俺はそっちの赤い奴だ! おい、俺のこと忘れてないだろうな!?」

「できれば忘れていたかったくらいだ!」

 

 イージスガンダムがモビルスーツ形態に変形し、D-1に標的を変更した。

 政庁を背にしないよう、回り込みながら放たれるD-1のレールガン。それを避けつつ、ビームライフルでの応戦を始める。

 

「くそっ! 新手か!」

 

 一方、インパルスのシンは、迫り来るF91にビームライフルを放った。

 が、F91はそれをあっさりと回避する。

 さらに撃ち出されるビームも、かすりもしない。

 

「この! この! 落ちろよ!!」

 

 シンは、回避の方向を先読みしながらビームを乱射した。

 そのうちの一発が、F91を撃ち抜いた。

 が、次の瞬間、そのF91の姿が消え失せたのだ。その時には、F91は別の位置にいた。

 

「これは! 質量を持つ、残像だっていうのか!?」

 

 目まぐるしく動くF91は、その姿を次々と空中に現しては、陽炎のように消していく。必死の形相のシンがそれを撃ち抜くが、残像しか命中を許さない。

 キラは、援護に行こうとした出足が一瞬止まり、その姿を驚きを持って見つめていた。

 

「あのシンが! 全く当てられない!? あのパイロットは何者なんだ!?」

「なんとぉーっ!!」

 

 シーブックが、吠えた。

 間合いを詰めたF91のビームサーベルが、インパルスを斬りつけた。

 ビームライフルを持った腕が、地面に落ちる。

 シンは、愕然としていた。

 

「な……何だと!? こいつ……!」

「聞くんだ」

 

 シーブックは、我知らずシンに語りかけていた。

 

「ガンダムは、人をなぶり殺す道具じゃないはずだ! そんな方法でなければ、理想の世界を築けないのか?」

「だ……黙れ!! 俺の何が分かるっていうんだ! 戦場にも出ないで、人を守れるとか思い上がってるやつらに、思い知らせてやるんだ!」

「戦場に出るだけが、戦いじゃない」

「何……!?」

 

 一方、D-1とイージスガンダムは、なおも激しく戦っていた。互いの砲撃をかいくぐり、肉薄して斬り合いを始める。

 そこに、我に返ったキラが、フリーダムで割って入ってこうとする。

 

「何だお前!? 機体が傷んでるくせに、横入りするんじゃねえ!」

「僕がやります! このアスランとは、僕がケジメをつけなければならない」

 

 キラの言葉に、ケーンは一瞬黙った。

 

「そういうことか。仕方ねえ、譲ってやる! 決着つけな」

「すみません!」

 

 D-1が下がり、フリーダムが入れ替わる。

 

「アスラン、君はプラントが今のままでいいと本当に思うのか!?」

「!」

「コロニー落としに核攻撃、無関係の人を大勢巻き込むジオンについていくのが、プラントのためだと本気で思ってるのか!?」

「それでは俺たちコーディネーターは、いつまでも日陰者なのか! 世界を変革する必要があるんだ! お前もコーディネーターなら理解してくれるはずだ」

「ジオン主導の変革など、世界を歪めるだけだ! コーディネーターが生きる道は、他にもあるはず! ラクスはそう言っている!」

 

 ラクスの名前がキラの口から出た時、アスランは一瞬絶句した。

 

「やはり、ラクスはお前が連れだしたのか! 俺の元からラクスを奪っていくのか!」

「今の僕には、これしかできないんだ。許してくれとは言わない。僕とラクスは自分の信じる道を行く!」

 

 その時。

 大きな鈍い音が、政庁から響いた。

 

「しまった!」

 

 健一が青ざめていた。

 揉み合っているうちに、ゴードルを政庁に押し倒してしまったのだ。

 

「ぐう……」

 

 呻くハイネルの視界に、ヒイロに庇われたリリーナが見えた。倒れ込んだ衝撃で政庁の一部が崩れ、壁が壊れて中が見えたのだ。

 

「そこにいたか! かくなる上は!」

 

 ハイネルは、肌身離さず持ち歩いている短剣を手にすると、ゴードルから出た。

 その様子を見た健一は、

 

「ボルテスで止めれば、中の人間を巻き込む! みんな、いったんボルトオフだ! 俺が行く」

 

 そっと、腰の銃を確認した。

 ハイネルは、傾きかけて開きにくくなった扉を、何度も蹴りつけた。

 

「この! この! 開け!」

 

 執拗に蹴りつけていた扉が、根負けしたように、勢いよく開かれた。

 その部屋の奥で、ヒイロが二人の少女を守って立ち塞がっていた。

 

「そこをどけ! ……と言っても、聞くとは思えんな。今日は、骨のある敵が多い」

 

 ヒイロは、無言でその言葉を受け止める。

 ハイネルは、気合いと共に、ヒイロに斬りかかった。

 ガチィッ!

 ヒイロが手にしたガラス製の灰皿が、短剣を受け止めた。灰皿が割れ、ヒイロの手が切れて血が流れる。

 そのまま、ガラスの破片をヒイロはハイネルに投げつけた。一緒に飛んだ血が、顔をかばったハイネルの服を汚す。

 すかさず踏み込み、ヒイロは蹴りをハイネルに放った。狙いは短剣を持った腕。

 短剣が跳ね飛ばされ、床に転がった。

 

「お、おのれ!」

 

 ハイネルが、短剣の方へと駆け寄る。

 健一が、銃を片手に部屋に飛び込んできたのは、その時だった。

 

「動くな! 撃つぞ!」

 

 健一はハイネルを牽制しながら、短剣を拾い上げた。

 その短剣をふと見た健一は、声をあげた。

 

「この紋章! この短剣、俺が父さんから渡されていたものと、全く同じ……」

「何!?」

「刻まれてる文字の形まで、全く同じだ! どうしてお前がこれを」

 

 健一がそう言いかけた時、政庁に流れ弾が当たり、大きく揺らいだ。

 ハイネルは身を翻すと、開け放たれた扉から逃げ出していった。

 

「ま、待て!」

 

 健一は銃を構えたが、なぜか撃てなかった。

 ハイネルはゴードルに乗り込むと、政庁から立ち上がらせ、その場から飛び上がった。そのまま、政庁から一目散に離れていく。

 

「逃げ出した!? 何をやって」

 

 言いかけたクルーゼのシグーに、輝の放ったミサイルが直撃した。

 大破こそしなかったが、少なくないダメージを負う。

 

「くっ、もはやこれまでか! アスラン、シン、離脱するぞ!」

 

 二人とも、苦いものを堪えながら眼前の敵をどうにか振り切り、クルーゼの後を追っていった。

 

「どうやら、持ちこたえたようだな」

「大丈夫か、お前? ずいぶんくらってたようだけどよ」

 

 トロワに、ケーンが声をかけた。

 

「問題ない。俺のことより、政庁の中を心配しろ。リリーナ=ピースクラフトと、ラクス=クラインがいる」

「ラクス……って! プラントの歌姫とかいうあれか!」

「今、その二人を死なせるわけにはいかない。二人をマクロスまで送り届けてくれ。本来、そういう計画だった」

 

 その場に、フリーダムとF91、それにVF-01Jが次々と降り立ってきた。

 

「よう! 大丈夫かお前? えーと何て名前だったっけ」

 

 コックピットを開けたケーンが、フリーダムに声をかけた。

 他の面々も、乗機を降りていく。

 

「僕はキラ=ヤマト。さっきはありがとう」

「いいってことよ。ところで、お前はコロニー共和連合のパイロットなのか?」

「いや。こっちのトロワはそうだけど、僕は違う。元は、連邦宇宙軍の兵士だった」

「元は?」

「説明が、必要ですわね」

 

 その声に、ケーンはそちらを振り向いた。

 政庁の外に、ヒイロとリリーナ、健一、それに声の主らしき、ピンク色の髪をした少女がいた。

 その姿は、さすがにケーンも見覚えがあった。

 

「ラクス=クライン! お前がそうなのか」

「はい。わたくしは、プラントを出奔いたしました。キラは捕虜になっていたのですが、わたくしは彼に、ザフトの新型モビルスーツであるフリーダムを与え、共に脱出したのです。その後は、こちらのリリーナ代表に匿っていただきました」

 

 リリーナが、後ろで頷いた。

 

「誤解のないように言っておきます。ラクスさんは、単なる気まぐれや思いつきで出奔したわけではありません。彼女は、プラントの未来を思い、そのために行動したのです。皆さんに、お願いしたいことがあります」

 

 全員が、リリーナの次の台詞を待った。

 

「ラクスさんとわたくしを、マクロスまで連れて行っていただきたいのです。当初からその予定でした。いささか時期が早まりましたが、これも巡り合わせでしょう」

「ラクス=クラインが、マクロスに……!」

 

 輝が、生唾を飲み込んだ。

 

「それと、ヒイロもわたくしと同行します。彼はわたくしを守らなければなりませんから。ええ、先ほどのように!」

「分かっている。俺はボディガードだ。だから、がっしりと腕を掴むのはやめてくれ」

「では、柔らかく腕を絡めますわ」

 

 その場の一同全員、リリーナがヒイロに対してどういう感情を抱いているか、嫌でも理解できた。ラクスが、ちらちらとキラを見ている。

 

「ウイングガンダムゼロで、俺もロンド・ベルに加わる。このトロワも同じだ」

「そうか。仲間が増えるのは結構なことだな。ところでキラ、お前も来るのか? なかなかの腕みたいだしな。まさか、シーブックみたいにニュータイプとか言わないだろうな?」

 

 ケーンの言葉に、キラはすぐ側にいたシーブックを見つめた。

 

「ニュータイプ! 君がそうなのか……。なら、あの動きも納得できる。僕はニュータイプにはなれそうにない。僕は、コーディネーターだから」

「コーディネーター!?」

 

 その言葉に、今度はシーブックがキラを見つめる。

 

「聞いたことがある。プラントで生み出されたかいう」

「遺伝子操作で生み出された、優勢人種。そんなふうに、取りざたされた時期もありましたわ。わたくしも、コーディネーターの一人ですけど」

 

 ラクスが、やや自嘲じみた声音で言った。

 

「残念ながら、過去の技術になりつつありますわ。人類の革新としては、ニュータイプ進化論の方が現在では優勢ですから」

「平均して高い能力を持つけど、飛びぬけた天才が出ないというのが定説だよ。コーディネーターがニュータイプに覚醒した例は一つもない」

「そんなこと、どうでもいいじゃないか! 守りたい人を守り抜ければ、それでいい。違うか?」

 

 アルトは、フォッカーがシーブックにかけた言葉を思い出していた。

 

「そのラクスを、最後まで守りたいんだろう? 俺にも、そんな奴がいるんだ。お前もロンド・ベルに来いよ」

「……! 実は、こちらからお願いしようと思っていたんだ。つくづく思うんだ。戦争を止めたい、平和な未来を作りたいと。だけど、どうすればいいのか分からなくて。ロンド・ベルの活動を見て、賭けてみたいと思った」

「なら話は早い。未来とやらを、一緒に作ろうぜ! 俺はアルト。早乙女アルトだ」

「ありがとう、アルト……!」

 

 キラは、アルトの差し出してきた手を握った。

 

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