スーパーロボット大戦3F ~マクロス・コンサート~ 作:デスフロイ
『黙っていないで、何とか言ったらどうなのだ! グローバル艦長!』
ゴーグルで目を隠した、黒を基調とした連邦軍の制服を着た男が、モニターで言い募っていた。
『もう一度言うぞ。我がティターンズに、プラントのラクス=クラインを引き渡せ』
「……おっしゃる意味が、よく分かりかねます。バスク大佐」
グローバルは、表情一つ変えずにそう言った。
「当艦マクロスには、そのような人物は入艦しておりません。そもそも、なぜ当艦にそのラクスという人物がいると断言されるのですか?」
『そ……そうした風評が、流れている!』
「噂にすぎないというわけですか。実のところ、私もプラントの歌姫の名前くらいは知っていますが、彼女がプラントを出たという話は聞いたことがありません」
グローバルの隣にいたマックスが、端末に目を落としながら補足した。
「今、調べてみましたが、彼女は先日からプラント内でコンサートをして回っているようですが?」
『それは、どうせ替え玉とかだろう!』
「確証がおありなのですか?」
『む……』
「分かりました! それでは我々も、本当にラクス嬢が当艦にいるか確認します。ただ、いたとしても偽物という可能性もあります。真偽を充分に精査してからご報告いたします。おかしな報告をしては、ティターンズ最高司令官たるジャミトフ閣下に申し訳が立ちませんから」
『……極力早く、調査結果を報告するように!』
一方的に、バスクは通信を切ってきた。
「……マクシミリアン。あんなことを確約していいのか?」
「ただの時間稼ぎですよ。【マクロス・コンサート】が開催されれば、ティターンズもそうそう彼女に手は出せません」
にっこりと、マックスは笑った。
「チケット? 何とか取れたわよ。と言っても、二枚だけだから、くじ引きしてね。入場できるのは、私とアンナの二人だけ」
リンダが、マクロスのブリーフィングルームで、一同を前にそう言った。
別に会議というわけではなく、手の空いている面々が集まって雑談をしている。
「ネット購入だけど、倍率が本当にすごかったの。今世紀最高のプラチナチケットだって、みんな言ってるわ」
アンナがその隣で、笑顔を見せている。
リンダとアンナは、マクロスの給仕スタッフとして働いていた。本来はブリーフィングルームまで入れる権限はないのだが、彼女たちについてはグローバルもマックスも、作戦会議中以外は黙認している。
「そりゃそうだろう。ミンメイとシェリルのジョイントってだけでもすごいのに、ラクス=クラインも加わるんだからな。ファイヤーボンバーとランカもだしな」
「ラクスの出演はシークレットってことになってるのに、噂がずいぶん流れてる。ティターンズが聞きつけて、ちょっかいをかけてるみたいだけど……」
「グローバル艦長がティターンズにそうそう屈するとは思えない。心配いらないさ」
シーブックとキラの会話を、イサムがにやにや笑いながら聞いていた。
「あと、もう一つ隠し球があるんだな。シャロン=アップルが復活する。それも素顔でな」
その台詞に、特に年齢の高い者が強く反応した。フォッカーもその一人だ。
「ということは! イサム、ガルド」
「ああ。ミュンがOKした」
「ミュンも、自分の過去を乗り越える覚悟をしたということだ」
「そうか……。本当に、伝説的なコンサートになるな、これは」
フォッカーは、感慨深そうだ。
「プラントからほとんど出ないラクスが、その豪華メンバーと競演すれば注目度はバツグンだ。そこでラクスはジオンの行動を批判する。そういう筋書きだろう? キラ」
「はい。プラントは親ジオンのザラ派の勢いが強いけど、世論を穏健派のクライン派の味方につけられれば、プラントの方針に影響を与えられるかもしれない。そこまでいかなくても、プラント一丸となってジオン支援とはいかなくなる可能性はある。親ジオンの急先鋒プラントがジオンから距離を置けば、他の親ジオンや中立派のコロニーも連鎖反応を起こすかもしれない。そういうことです」
「ドミノ理論というやつだな」
アイザックも頷いている。
「反連邦組織をつないでいるのは、やはりジオンだからな。ジオンが求心力を失えば、それらの連携は一気に弱くなり、分断されていく。それにグローバル艦長がいつも言ってる地球人類の融和、そして文化の大切さをアピールできる絶好の機会だ」
「そういうことだ。これがリリーナ=ピースクラフトの選んだ戦い方さ。彼女は、このコンサートを命がけで成功させるつもりなんだ」
万丈は、その場の全員を見回した。
「これは、単なる音楽コンサートじゃない。人類の未来がかかった、極めて重要な作戦だ。諸勢力からの妨害が予想されるが、それを撥ね除け、必ず成功させねばならない。やるぞ、みんな!」
おう! というかけ声が、申し合わせたわけでもないのに、全員からあがった。
リンダとアンナは、顔を見合わせて微笑み合った。
『みんな、ラクスは元気で~す! ザフトの皆さんも、今日も世界のために戦ってます。それじゃゴキケンに一曲いきますね~』
モニターに映し出されているラクスを、当のラクスが冷ややかに見据えていた。
「……わたくしの影武者がプラントに必要なのは分かります。わたくしの名前や顔を使いたいなら、好きになされば結構です。ですが!」
ラクスが、眉根を寄せた。
「これは、いくら何でもあんまりですわ。わたくし、こういうノリでステージに出たことなど、ただの一度もありません! キャラクターまでいじらなくても、よろしいではありませんか?」
「まあ……二次創作には、よくありがちだよね。創り手側の事情とかいろいろさ……」
「ミレーヌさん、歯切れが悪くありませんか? 誰を庇っていらっしゃるのですか?」
「その辺りは、こだわりすぎると話が進まないわよ。それより、ちょっとこいつの歌を聴いてやろうじゃない」
シェリルに促されて、ラクスは不承不承という風情でモニターに視線を戻した。
その横で、ミンメイがじっと、ラクスの影武者の歌を聴いていた。
「歌はうまいわ。振り付けもそっくり。だけど……これは違う。上っ面を真似てるだけだわ」
「あなたもそう思う?」
ミュンも同調した。
「何となく彼女を見聞きしてるだけの人は騙せるだろうけど、思い入れのあるファンや、私たちプロは騙せないわ」
「人の名前で人の歌を歌って、自分のハートを伝えられるもんかよ。自分の歌を歌いたいだろうな。可哀相にな」
バサラが、珍しくしみじみと言った。
「……わたくしも、ある意味で似たようなものでしたわ」
ラクスが、ぽつりと呟いた。
「わたくしは、プラントの利益に沿うような活動をしなければなりませんでした。わたくしも一人のシンガーです。本当は……自分の表現したいものを自由にやってみたかった。プラントのために、それを押し殺してきました」
「だけど今、プラントの方針はあなたの望む方向から外れている。そうね?」
ミュンの問いかけに、ラクスは小さく頷いた。
「もう、何のために歌っているのか、分からなくなってきていたのです。そんな折に、リリーナさんから言われました。『未来への希望のためにこそ、歌うべきです』と。だから……わたくしは、プラントを出ることを決めました。プラントの未来、そしてわたくし自身の未来を切り開くために」
そんなラクスの肩に、ミンメイが触れた。
「気持ちは分かるわ。私も、マクロスが冥王星に飛ばされた時に、乗ってた民間の人たちの不安をそらすために軍から活動を規制されたもの」
「……知っていますわ」
「だけど思ったの。マクロスにいる人たちは今、心の支えが必要なんだって。それに私がなれるならなろう、って。軍のために歌っているわけじゃない、歌を聴いてくれる人たちのために、心の平穏を届けたい、そう思ってた」
ラクスは、ミンメイをじっと見つめた。
「……やはりあなたは、わたくしが目標としてきたリン=ミンメイなのですね。わたくしは、あなたのようになりたかった」
ラクスは、一枚の紙を差し出した。
「これをさしあげます。プラントから、厭戦的と言われてボツにされた曲です。今のわたくしより、あなたが歌う方がふさわしいと思います」
「これは、歌詞……?」
「わたくしが書きました。わたくしからの、せめてものお礼と思っていただければ幸いです」
ミンメイは、軽く息をついた。
「お礼を言うのは、私の方みたい。あの頃を思い出したら、つかえてたものが取れたような気がするわ。これは使わせてもらうわ。ありがとう」
ぱん、と、シェリルが手を叩いた。
「どうやら振り切ったみたいね。よかったわ。あなたが迷ったままだと、ジョイントコンサートの張り合いがないものね」
ミンメイが微笑み、ラクスは不思議そうに二人を交互に見た。
「あ、特別番組に切り替わりやがった。ギレンの野郎かよ、骨の髄まで無粋だな全く」
バサラが、モニターを見やって舌打ちした。
演説台にいるギレン=ザビが、大きなアクションで語っている。
『我が国民よ!今、愚劣なる連邦は今や死に瀕している……』
「なんかこのおっさんも、オーラがなくなったわね。以前はもう少し迫力があったのに」
シェリルは辛辣に述べた。
「ジオンは地球でも旗色がよくないみたいだし、演説で勢いを盛り返したいんだろうけど」
「こいつも影武者なんじゃねえか? 本物はとっくに暗殺されてたりしてな」
「!?」
バサラの軽口に、ラクスは思わず振り返った。
「ん、何だ?」
「い、いえ。何でもありませんわ」
(……まさか。さすがにそれはありませんわね)
頭を振って、ラクスはその思いを振り払った。
ちょうどその頃。
ラクスたちのいる建物のエントランスに、一人の若い女性が立っていた。
「ここね。ラクスお姉ちゃんのいる所は」
女性はバッグからカードを取り出すと、入口のスリットに滑り込ませた。
その上にあった小型モニターに『ロザミア=バダム 入館承認』と表示された。
自動ドアが開き、女性は中に入っていく。
「きっとこっちね。感覚で分かるんだから」
女性は、エレベーターに乗り、迷うことなく目的の階のボタンを押した。
エレベーターから降りると、彼女は廊下を進んでいく。
その進む先にあった扉が、開かれた。
「ちょっと待て貴様。ここから先は、関係者以外立ち入り禁止だ」
クラン=クランが、その前に立ち塞がった。
「私は関係者よ。ラクスお姉ちゃんの妹のロザミィ。通してちょうだい」
「ここにはラクスなどという者はいない。帰ってもらおう」
「嘘つかないで、子供のくせに! お姉ちゃんと一緒に帰るの!」
クランを押しのけながら、ロザミアは先に進もうとした。
が。
その腕を、クランがしっかりと捕まえていた。
「私は子供じゃない! これでも十九歳だ。進むなって言ってるだろうが!」
ロザミアは、大きく腕を振って、クランを廊下の奥に投げ飛ばした。
突き当たりの壁に叩きつけられるクラン。
が、クランは瞬時に起きあがり、ロザミアに駆け寄った。
「ミリア小隊のクラン=クランをなめるなっ!!」
敏捷な動きの跳び蹴りが、ロザミアの脇腹に入った。
が、ロザミアも顔色も変えずにクランの足をつかみ、体ごと高く持ち上げると、床に叩きつける。
クランは頭をとっさにガードして守った。体を大きく捻り、ロザミアの腕を強引に引き剥がす。
両者が後ろに飛んで、間合いを取った。
「今の蹴りを耐えるとは。貴様もゼントラーディか?」
「……? 何言ってるのか、よく分からないな。とにかく邪魔しないで!」
じっと睨み合う二人。
「おい! 何があった!?」
そこに駆けつけてきたのは、バサラであった。
ロザミアが、その姿を見つけて、床を蹴った。
小柄なクランの肩を掴み、飛び越えるようにバサラに迫る。
「お前も、お姉ちゃんを隠してるのか!」
飛びかかるロザミアを、バサラは踊るようなターンで避けた。
「何だか分からねえが、俺の歌を聴きやがれ!」
肌身離さず持ち歩いているギターを構え、激しく演奏を始めた。
「バサラ! そんなことやってる場合じゃ」
クランが言いかけた時だった。
ロザミアが、頭を抱えて、苦しそうに呻き始めたのだ。
「あ……ああ……私は一体何を……」
なおも続くバサラの演奏。
呆然と見ているクランの前で、突然ロザミアは立ち上がると、側にあったガラス窓を叩き割った。そこから身を乗り出し、外に飛び出す。
クランが下を見下ろすと、ロザミアが着地して、逃げ出していくのが見えた。
「あの高さから、地球人でも飛び降りれるのだな……」
「いや、普通無理だぜ。お前みたいなゼントラーディなら、大丈夫かもしれねえけどよ」
バサラの台詞に、クランは思わず振り返った。
そこには、にやりと笑うバサラ。その背中には、ミリア市長の姿もあった。
「クラン=クラン? 久しぶりね。まだあなた、私を隊長だと思ってくれてるようね」
「え? え!? 一体……?」
「コンサートの打ち合わせに来てみたら、あなたが潜入役で入り込んでるなんてね。いろいろあって、ずいぶん歳も取ってしまったけど、私はブリタイ艦のミリア空士長よ」
「え!? 隊長!? あの、どうなってるのか、もう頭の中がゴチャゴチャで……」
「事情は奥で話します。だから、あなたもそちらの状況を説明しなさい。バサラ、あなたたちも同席しなさい。……ミレーヌ!」
「え!?」
「あなたの存在が、役に立つ時が来たわ。私とマックスの娘であるあなたの、ね」
ミリアの強い眼差しを受けて、ミレーヌは息を飲んだ。
それから一週間後。
マクロスのブリーフィングルームで、全員の注目を集めていたのは、クランとカムジン、二人のゼントラーディだった。もっとも、どちらも人間サイズとなっている。
副艦長のマックスが、全員に宣言した。
「このたび、ロンド・ベルとゼントラーディ軍は同盟が成立した。ゼントラーディのブリタイ艦隊は、コロニー共和連合を防衛することとなった」
ざわざわと、全員がざわめく。
同席していたミリアが、発言した。
「事情を、彼らの口から説明させるべきでしょうね。カムジン師団長、クラン大尉」
「は、はい! 隊長!」
「クラン? 今はあなたが隊長でしょう? いつまでも昔と同じつもりでいないように」
「申し訳ありません……」
しゅんとするクラン。
クランの正体が露見したのを契機に、マックスとミリアは自分たちの正体を明かしていた。グローバルの同意を得て、クランをパイプ役として、ロンド・ベル独自でゼントラーディと交渉に当たっていたのである。
今まで行方が知れなかったマックスが、実はマクロスの副艦長であったと知り、フォッカーはほっとするわ驚くわで、情緒不安定と見られがちであった。
「それじゃ、説明させてもらう。ゼントラーディ軍内では今、地球文化が静かなブームになってる。ゼントラーディの文化はあまりに殺伐として野暮ったい。そこで地球文化を取り入れることになったんだ」
「せっかく戦乱の時代になったことだし、俺たちの軍事力を売り込むことに決まったんだよ。文化の提供を受けることを条件にな」
「私もカムジン師団長も、文化研究生としてロンド・ベルに出向することになった。以降、よろしく頼む」
以前、カムジンとやりあった経験のあるイサムとガルドが、複雑な表情を浮かべた。
「……まあいいか。そっちのカムジンはいいけどよ、こんなおちびちゃんで大丈夫かよ?」
「たまにいる遺伝子異常よ。マイクローン化するとチビスケになって性格も幼児化する。巨人の時の写真がこれよ」
ミリアが渡した写真を覗き込んだ忍が、目を見開いた。
「げ!? すっげーダイナマイトバディ……」
「あたしはそこまで胸がなくて悪うございましたね!」
肘鉄を沙羅が叩き込み、忍を悶絶させた。
「俺とクランは巨人化して出撃する。その方が性に合うからな。マイクローン化装置も持ち込んでいる」
「なら、俺の曲を聴きながら出撃しろよ! 戦果があがるぜ?」
バサラがカムジンににじり寄った。
「もうとっくにそうしてるってんだよ。ファイヤーボンバーの曲くらいなら俺でも持ってる。歌ってる本人と一緒に出撃できるとは思ってなかったがな」
さらりと述べるカムジンに、一同は驚く。
もっとも、バサラは得意満面だ。
「へえ! ゼントラーディにも、俺の歌のすばらしさは分かるみたいだな。だけど、どうしてお前らが曲聞けるんだ?」
「ゼントラーディは、定期的に地球圏に潜入者を送り込んでるからな」
さらにどよめきが大きくなるが、カムジンはお構いなしだ。
「元々は、先祖を同じくする地球人の動向を探るためだったんだが、地球文化にはまる奴もいてな。中には、地球人の女と子供作る奴までいたんだよ。こいつを見てくれ」
カムジンはモニターの操作ボタンを押して、画像を出した。
現れたのは、マイクを持ったエキセドルだった。
何か、と訝しがる全員の見守る中、カリフラワー頭のエキセドルが歌い出した。それも、ミンメイのデビュー曲【私の彼はパイロット】。
その歌声が、ブリーフィングルームに阿鼻叫喚をもたらした。
「な、何これ!? 音痴なのを通り越しておかしいよ!」
「ゼントラーディの音波兵器か!?」
「脳が溶ける~! 耳が腐る~!」
「うぐっ! ……きぼぢわるい~」
ミリアも顔面蒼白になりながら、
「い、胃が……。どういうつもりだカムジン!! こんなものを流すとは!」
「悪い悪い。操作間違えた。だけどよ、ミリア、お前久しぶりだろ? 懐かしいだろ?」
「誰がだ! もう二度と聞かずにすむと思っていたのに!」
「俺たちブリタイ艦の乗員だけが聞かされるのは辛すぎるんでな。お前らにも聞かせようと思って用意してたやつだ。俺は【味方殺しのカムジン】様だぜ?」
「道連れにするな!!」
「ミリア、君、完全に素に戻ってるから。気持ちは分かるけど落ち着いて」
「やだ私ったらつい」
マックスにたしなめられて、ミリアはようやく席に着いた。
やがて、異様に警戒する一同を前に、カムジンは改めて画像を再生した。
現れたのは、ベッドに横たわるエルモと、その傍らに立つ、マイクローン化したブリタイであった。
『それは……私が彼女に送ったロケット!』
『あなたが渡した検体。私の父親が、あなたであることは、間違いないということです……』
『私は、彼女が子をなしたことすら知らなかった……。すまなかった。さぞや、私を恨んでいることだろうな』
『いいえ。母は、亡くなる時も、あなたの名を呼んでいました。母が愛した人を、恨むなんて私にはできません』
カムジンは、再生を止めた。
「ま、そういうこった。ブリタイ艦長も、昔は潜入やってた時期があるんだな。けっこういるんじゃねえか? ゼントラーディの血を引く奴ってのはよ」
「星系の垣根を超えた親子か……僕もそうだった」
エイジがそう言った時、健一の肩が震えた。
「兄ちゃん……」
「今のおいどんたちには、少々辛か話じゃ……」
健一の弟である、日吉と大次郎が、表情を曇らせた。
「お前らの親父がボアザン星人だったって、お袋さんから聞かされた一件か? 誰も気にしちゃいねえよ。今まで一緒に戦ってきた仲だろ?」
「だけど、親の故郷の人間と戦うのは悲しいことだよ。すまない、不用意なことを言って」
忍とエイジが、口々に言った。
「いいんだ……。どちらにしても、俺は地球を愛している。地球を守るためにボアザンと戦うさ」
会話を聞いていたカムジンが、肩を竦めた。
「地球人ってのはややこしいもん背負って戦うもんだな。俺は目の前に敵がいるから叩き潰すまでよ」
「お前はもう少し地球文化になじむべきだと思うがな。まあいい、その目の前の敵は何か?という話にしよう。我々も事態を把握しておきたい」
「そうだな。いったん状況を整理するか」
クランが促し、万丈が後を引き取った。
「クロスボーンは、その軍勢のほとんどを失った。ジオンの傘下に入ることで、どうにかティターンズへの降伏だけは避けたようだが」
「じゃ、次はジオンとやり合うことになるってことか?」とコウ。
「いや。ジオンはティターンズとの抗争で我々どころじゃないようだな。ア・バオア・クー奪回を目指しているんだろう」
「ギガノスはどうなってるんだ? 奴ら、月のほとんどを制圧したとかいうじゃねえか」
ケーンはやはり、そこが関心のあるところだ。
「今のところ、目立った動きはないな。ジオンと歩調を合わせるのは間違いないだろうが」
「あと、グラドスがいる。ル=カインは火星で足場を固めていたはずだけど、そろそろ動き出してもおかしくない」
「他の軍団と連携する可能性はないか? ボアザンやベガ星人がそのパターンだ」
アイザックがエイジに尋ねた。
「いや。ル=カインはプライドの高い男だ。他の助けなど借りずとも、地球を落とせると思ってるだろう」
「その方が助かる。敵がバラバラであった方が対処しやすい」
「今、ここに攻め込んでくる可能性が一番高いのは」
キラが、硬い表情で言い出した。
「やはりザフトだと思う。コンサート中継を妨害するためにね」
「させねえさ……! なあ?」
共に、歌姫とつながりのあるキラとアルトが、目を合わせて頷き合った。