スーパーロボット大戦3F ~マクロス・コンサート~   作:デスフロイ

3 / 14




第3話 テキサスの砂嵐

 テキサスコロニー。月の軌道近くに建設された、旧式のコロニーである。

 元は、アメリカのテキサス州を模した観光コロニーだが、十三ヶ月戦争の頃には戦略価値の低さゆえに、統合軍・ジオン軍双方から見捨てられていた。太陽光をコロニー内部に送り届けるはずのミラーは既に機能を失い、コロニーは砂嵐が常に吹き荒れる状態となっていた。

 ゴーストタウンと化した建物の一つから輝が、続いて未沙が出てきた。

 

「髪、ボサボサになっちゃった。あなたのせいだからね」

「またそんなこと言って」

 

 どこか馴れた口調になってしまっているのを、未沙は自分で感じ取っていた。

 

(でも、やっぱり後ろめたいな……私たち二人は、ミンメイさんを裏切ってしまった)

 

 輝は、そのことをどう思っているのか?

 知りたくて仕方がないが、とても聞けない。

 二人の乗ったバルキリーが宇宙を漂流し、ようやくこの荒れ果てたコロニーに避難してから、すでに二十日以上が過ぎていた。

 かろうじて機能が生きていた浄水設備を再起動し、コロニー内で生息していたネズミなどを口にしながら、二人でどうにか命をつないでいた。

 挫けそうになるのを輝に励まされているうちに、互いを必要とする心が生まれていき、ついに踏み越えてしまった。

 未沙は歩みながら、輝の背中をじっと見つめていた。

 急に、その背中が止まった。

 

「……未沙! 何かコロニーの中にいるぞ。見てくれ!」

「え!?」

 

 砂嵐の中へと、未沙は目を凝らす。四つの、大きな姿が見える。

 

「……何あれ? 巨大な獣? まさかそんなはずが」

「いや……あれは、生物じゃない。動物の姿をしたメカだ」

「メカ!? じゃ、あれに人が乗ってるということ?」

「おそらくはね。見たことがな機体だ。ゼントラーディのものでもなさそうだし」

「どうする? 敵か味方か、分からないけど」

「……助けを請う! 最悪捕虜になっても、ここで朽ち果てるよりはマシだ」

 

 未沙も頷いた。この機会を逃せば、救助される可能性はもうないかもしれなかった。

 輝は駆け出しながら、大声でそのメカに呼びかけた。

 

「そこの人たち! 誰か知らないが助けてくれ! 俺たちは漂流してここに流れてきたんだ!」

 

 人型らしきメカのコクピットが開いた。顔を出してきたのは、目つきの鋭い青年だった。

 

「その前に、どこの誰なんだてめえは? まずそっちから名乗りな」

「私たちは、マクロスを母艦にする独立部隊ロンド・ベルのメンバーです。これはマクロスで開発されたバルキリーです」

 

 未沙の言葉に、他の三機のメカもコクピットを開けた。なぜか、誰も外部スピーカーを使わない。

 

「マクロス!? ずいぶん遠くまで飛ばされたんだね。よくコロニーに引っかかったなあ」

「マクロスが独自に動き始めたとは聞いていたが、お前たちがそうなのか」

「あたしたちは獣戦機隊さ。……どうする、忍? さすがに放ったらかしにするわけにもいかないだろ」

 

 童顔の青年、バンダナの青年、赤毛の少女が口々に言った。

 忍、と呼ばれた、最初の青年は舌打ちした。

 

「ち、仕方ねえな。今、俺たちは探索中なんだ。それがすんだら、俺たちの船で送ってやる」

「ありがとう! ……差し支えなければ、何を探索してるのか聞いていい?」

 

 バンダナの青年が、少し考えて答えた。

 

「マクロスはジオンとは関わりないからいいか。お前たち【星の屑】って知ってるか?」

「星の屑? えーと、宇宙に光るちっちゃい星の集まりのこと、でいいのかな?」

 

 輝の返答に、少女が露骨にうんざりした表情を見せた。

 

「こりゃ何も知らないね。とにかくジオンが、このコロニーに用があるっていう話なの!」

「ジオンが!? こんな無人の廃コロニーに?」

「……何か来やがる、隠れろ! そこのお前らもだ!」

 

 忍の呼びかけに、他の三人は急いでコクピットを閉めると、建物の陰に隠れた。輝と未沙も、手近の物陰に身を潜める。

 遠くの空中に、十機の機影が見えた。小さかったものが、どんどん大きくなり、機体の色や姿まで何とか分かるようになってきた。

 

「あれは……モビルスーツね」

「だけど、ジオンにあんな機体があったかな?」

「私にも分からないわ。もう少しはっきり見えれば……」

 

 やがて、いかにも指揮官のものらしきモビルスーツが着陸した。背中から伸びたシャープな印象の翼がある、紫の機体だ。その周囲に、他の機体も降り立っていく。

 未沙が注目したのは、指揮官機ではなく、その周囲の量産機らしきモビルスーツの方だった。

 

「あれは、ザフト軍のジン!?」

「ザフト? ……確か、プラントの義勇軍だよな」

「プラントは、前からジオンとの癒着が噂されてたわ。ジオンが関わりを持つコロニーに、プラントのモビルスーツが現れた」

 

 不穏な予感に、未沙は身を震わせた。

 やや遅れて、最後のジンが着陸を試みる。

 が、その時、一層強い風がそのジンを襲った。空中でバランスを崩し、地面に横倒しで墜落した。そのまま数回転んだ先は、輝たちの隠れている場所だった。

 

「あっ!」

 

 激しい砂煙に、思わず逃げかけてしまう未沙。

 ジンのモノアイが、その姿を捉えていた。

 

「クルーゼ隊長! 人影があります。連邦軍の制服です!」

「何!? 逃がすなディアッカ!」

 

 ディアッカ、と呼ばれたパイロットは、言われるより早く、未沙へとジンの腕を伸ばしだしていた。

 輝は飛び出すと、未沙を抱え込むように逃げ出す。

 なおも追おうとするジンに、砲撃が飛んだ。輝たちを巻き込まないよう、あえて大きく上に外している。

 

「ちぃっ! あの下手くそのおかげで、見つかっちまった。やるぞ、沙羅、亮、雅人!」

「仕方ないね!」

 

 獣戦機隊が建物の陰から飛び出した。

 ザフト軍のクルーゼも、間髪入れずに反撃を指示。自らも砲撃を開始し、激しい銃撃戦が始まった。

 最初こそ、先手を打った獣戦機隊が優勢だったが、数に勝る上に精密な攻撃のザフト軍に巻き返されていく。

 

「時間の問題だな。しかし、どうしてここに連邦の……むっ!?」

 

 クルーゼの乗り込むシグーに、不意に上空からミサイルが打ち込まれた。命中こそしなかったが、周囲の地面に砂埃をいくつも立てる。

 

「俺も戦う! 助けられた返礼をしたい!」

「やれるのか!? 頼むぜ!」

 

 輝の呼びかけに、忍は大声で答える。

 

「ふっ。旧式の戦闘機で、このシグーの相手になると思うのか」

 

 クルーゼは、仮面の下の目を光らせ、バルキリーの飛行の軌跡に合わせて砲撃を放った。

 が、輝はガウォークに変形し、AMBACの効果も借りて、それをスレスレで回避する。

 

「!? 戦闘機に手足が」

 

 意表を突かれたクルーゼのシグーへと間合いを詰めながら、さらに輝はバトロイドに機体を変形させた。戦闘機ではありえない動きで、シグーの攻撃を避けながら、逆にガンポッドを乱射する。

 

「変形機構!? 速い! パイロットの技量も高い」

 

 辛くも回避するクルーゼの口元に、喜悦の笑みが浮かんだ。

 

「つまらぬ任務と思っていたが、こんな楽しみが味わえるとは!」

 

 シグーも空中に舞い上がった。

 変形を繰り返し、複雑な動きを見せるバルキリーを、執拗に狙う。バルキリーからの反撃を、鋭い方向転換で回避してみせる。

 

「並のパイロットじゃない! 簡単には倒せない」

「輝……!」

 

 バルキリーの弾薬が尽きるまでに、勝負をつけられるか。輝だけでなく、後部座席の未沙も冷や汗をかいていた。

 

「あいつ、なかなかやるじゃねえか!」

 

 ちらりとバルキリーを見た忍が感嘆の声をあげた時。

 通信機から声が飛び出した。

 

『獣戦機隊! 戦闘中か』

「アキトか! 数が多い。ちっと厄介だ」

『俺たちもすぐ行く。それまで頑張ってくれ!』

『獣戦機隊! 合体するんだ。俺たちがついてる!』

「今は数が多い方が有利なんだよ!」

『ヤマダ、今は黙ってろよ! 趣味に走るなって!』

『戸籍上の名で呼ぶな! 俺の魂の名は、ダイゴウジ=ガイだー!!』

 

 それからほどなくして。

 戦場に、2機の人型兵器が飛来してきた。バルキリーよりもさらに小さい。

 一斉砲撃が、ジンに浴びせられる。うち一機が、直撃を受けて爆発した。

 

「新手か」

「どうします、クルーゼ隊長!」

「どうやら、こちらも来たようだ。やつらが来たら敵は任せよう」

 

 残念だがな、という台詞はクルーゼは飲み込んだ。

 突然、コロニーの壁が外側から破壊された。できた穴から、巨大な円盤が次々飛び込んでくる。

 

「来たか。出足が遅いな」

『何か言ったか!? ラウ=ル=クルーゼ!』

「いや何も。救援を感謝する、ガンダル司令」

『このコロニーは、もう作戦には使えんな!? とんだ失態だな!』

「候補のコロニーはこれだけではない。他の部隊も動いている」

『ザフトもだらしないものよ。ジオンも、最初から我々に任せておけばいいものを!』

「そうかもしれんな。なかなか手強いぞ、気をつけることだ」

 

(まあ、円盤獣ごときでは、歯が立たないだろうがな。せいぜい足止めをしてもらう)

 

 円盤獣の出現に、一瞬攻撃が止まったバルキリーに、クルーゼは乱射を加えた。命中を確認もせず、シグーを翻して、コロニーの奥へと向かう。同行していたジンの残りも、追随していった。

 

「逃げた!?」

 

 バルキリーも残弾が心許ない。輝は追撃を断念した。

 円盤は地面に降りると、次々と四足歩行の怪物型のメカに変形する。

 それを目の当たりにしたガイが、歓声をあげる。

 

「円盤獣が出てきたぞ! 今こそ、今こそだなー!」

「あーやかましい! 合体すりゃいいんだろうが、まったく」

「こんなしぶしぶ合体する忍、初めて見るよ」

 

 沙羅が肩をすくめて、合体のフォーメーションに向かった。

 沙羅のランドクーガー、雅人のランドライガーが足に。亮のビッグモスが胴体に。そして、忍のイーグルファイターが頭部に変形し、それらが一つになる。

 

「見たか! これぞ、超獣機神ダンクーガ!!」

「お前が名乗りをあげるんじゃねぇーっ!!」

 

 忍が、今日一番の怒鳴り声を、愉悦の表情のガイ操るエステバリスに叩きつけた。

 

「信じられない! 獣のメカが合体して、巨大ロボットになるなんて」

「……あのね、ブライガーとかダイターン3とか、無茶な変形は見慣れてるでしょ?」

「あんたの機体の変形も、あたしたちから見るとほとんど魔法だよ。速すぎて」

 

 輝に対して、未沙と沙羅がツッコミを入れた。

 

「行くぜ! 断・空・剣!」

 

 ダンクーガが、抜き出した巨大な剣を、円盤獣ギルギルに叩きつけた。大きく装甲が切り裂かれ、ギルギルが地面に転がる。

 

「なんてパワーだ!」

「こっちも行くぞ! そこのえーと変形戦闘機、まだやれるか!? こちらは戦艦ナデシコ所属のエステバリス、テンカワ=アキトだ!」

「戦艦マクロス所属、バルキリーの一条輝だ! 機体は問題ないが、残弾が少ない」

「マクロス!? 話は後で聞く。無理はせずに俺たちに任せろ!」

「すまない。可能な限り援護する!」

 

 次々と、円盤獣が撃ち抜かれ、切り裂かれていく。

 

「お……おのれ! あんなやつらに」

 

 ガンダルが、ベガ獣グラグラの中で呻いていると。

 外壁の穴から、別の円盤が飛び込んできた。明らかに円盤獣とは異なる、黒と白を基調とした機体だ。

 

「ガンダル司令! 今度は何を企んでいる」

「グレンダイザー! いつも逃げ回っている腰抜けが、今日はそちらから来おったか!」

 

 ガンダルは、交戦中の味方を放り出して、スペイザーから飛び出したグレンダイザーへと向かっていった。

 ベガトロンビームがグレンダイザーに叩きつけられた。これを、グレンダイザーの宇宙合金グレン製の装甲は堪え忍ぶ。

 その時。おびただしい砲撃が一斉に、背後からグラグラを直撃した。

 

「断空砲の味はどうだ!? 俺たちを無視してるんじゃねえ!」

「こ、この!」

 

 深刻なダメージを受けたグラグラの中でガンダルが唸っている。

 

「ダブルハーケン!」

 

 グレンダイザーの肩から飛び出した白刃が、柄で連結される。それによる斬撃が、正面からグラグラの装甲を裂いた。

 さらに、間合いを取ったグレンダイザーの頭部の角から、雷撃が放たれた。

 

「スペースサンダー!!」

 

 必殺の一撃が、グラグラを直撃した。

 

「おっ……おのれおのれ! 今日は邪魔が入ったが、次はこうはいかぬぞ!」

 

 グラグラはどうにか空中に浮かぶと、急速度で外壁の穴から逃げ出していった。

 忍は、もはや円盤獣の残骸だらけとなったコロニー内を見回した。

 

「どうやら終わったみたいだな。ところでそっちの白黒のやつ、何モンだ?」

「助太刀するつもりが、逆に助けられてしまったようだ。僕はデューク=フリード。これはグレンダイザーだ」

「グレンダイザー!!」

 

 ガイが大声をあげた。

 

「マジンガーZ、グレートマジンガーの仲間じゃないか! ということは、あの二体も! どこだどこだ!」

「いや、彼らはおそらく地球上だ。僕は一人で動いている」

「なーんだ……いやいや! グレンダイザーだけでも十分! 俺の名はダ……」

「一人って、お前はどっかの部隊に所属してねえのか? 俺は獣戦機隊の藤原忍。こいつは超獣機神ダンクーガだ。戦艦ナデシコ所属だ」

 

 忍が、ガイの台詞を遮るように尋ねた。

 

「そうか。僕は、どこにも所属はできないんだ。僕がいると、あのベガ星人が押し寄せてくる。ベガ星人の大王の娘は、僕を庇って亡くなった。それを恨んで、ベガ星人は僕とグレンダイザーを一番の標的にしているんだ。関係のない地球人を巻き込みたくない」

「そういえば、あんたはフリード星の王子だったな」

 

 亮も、グレンダイザーの勇名は知っていた。

 

「僕は、地球を第二の故郷だと思っている。本当は、ベガ星人を地球から引きはがすために、地球から去るべきなのかもしれない。だが、ベガ星人はミケーネ連合に参加して、地球侵略の片棒を担ごうとしている。しかも、ミケーネ連合はジオンと同盟を結んだという話も聞く」

「何だそれ!? 侵略軍が一つにまとまってるってことか!」

『そういうことだね~』

 

 アキトの通信機から、突然、呑気そうな声が響いた。

 

『ザフト、というよりプラントもそれに加わってる可能性が高いな。【星の屑】は、ジオンの作戦のコードネームだ。ジオンの作戦行動にザフトが絡み、ベガ星人が救援に駆けつけた。これは、全てが一体となってると見た方がいいよ。いや~まいったまいった』

「まいったじゃありませんよ! タイラー大佐!」

「タイラー大佐!?」

 

 未沙が、驚きの声をあげた。

 

「もしかして、ジャスティ=ヒトシ=ウエキ=タイラー大佐ですか!? 【無責任参謀】の!? あ、いえ、あの」

『いいよいいよ。実際僕って無責任だからさ。それよっか早瀬大尉。僕は今、戦艦ナデシコに同乗して、ロンド・ベルに合流するところなんだ。君と一条中尉をマクロスに送り届けることができる』

「ありがとうございます!」

 

 礼を言ってから、自分たちの素性が知られていることに、未沙は驚愕した。

 

(さすがに、かつては統合軍随一の切れ者と呼ばれた人……)

 

「ちょっと待ってください!」

 

 アキトが、話に割り込んできた。

 

「俺たちって、ロンド・ベルに参加するんですか!?」

『あれ、言ってなかったっけ?』

「初耳ですよ!」

『ごめんごめん、言うの忘れてた。まぁそういうことだから』

 

(さすがに、かつては統合軍随一の無責任男と呼ばれた人……)

 

 いささか脱力感を覚える未沙であった。

 

『アキト大丈夫!? 怪我とかしてない!? ああもう、全速力でそっちに向かうから!』

「落ち着けよユリカ! 別に何ともないから! 普通にやってきてくれよ」

「え? 今のは?」

 

 輝が尋ねるとアキトは、

 

「……戦艦ナデシコの艦長の、ミスマル=ユリカ……俺の幼なじみで、あのー」

「アキトにベタ惚れなんだよねー」

「雅人! 黙ってろよまったく!」

「どうせすぐにばれちゃうだろ?」

 

 その名前で、未沙も思い出した。

 地球連邦大学における、戦略シミュレーション無敗の才女。実は、オンラインで一度だけ未沙も対戦したことがあるが、上位にランクインしていた彼女でも、到底歯が立たなかった。

 

「こういう人だったなんて、さすがに思わなかったわ……」

「え? 何が?」

「な、何でもないわ」

 

 輝の問いに、未沙は慌てて手を振った。

 

「どうやら、迎えが来るようだな。それでは、僕はこれで失礼する」

「え!? グレンダイザー、どこに行くつもりだ」

「どこでもいい。ベガ星人と戦っても、他の地球人を巻き込むことのない所なら」

「待て!!」

 

 ガイが大声をあげた。

 

「お前一人で行かせはしない。俺も一緒に行く!」

「え!?」

 さすがのデュークも、面食らっていた。

 

「気持ちはありがたいが、君の機体は、おそらく戦艦の補給なしでは稼動できないだろう? 無理な話だ」

「残念ながらその通りだ。ならば、戦艦も一緒に連れて行く。それなら文句はないだろう!?」

「ちょっと待て! ヤマダ、戦艦ってどれの話だ」

「寝ぼけてるのか、アキト! 戦艦ナデシコに決まっている!」

「はぁ!? あ、あのな……ナデシコはお前の付属品じゃないんだよ!」

『そうよそうよ! 私はアキトの側から離れないんだから!』

「とにかく、俺は絶対にグレンダイザーと行くからな! 従って、ナデシコも同行する!」

「人の話を聞いてるのかお前は!!」

 

 もはや、言葉を差し挟むこともできないデュークと、他のパイロットたち。

 そこに、タイラーが語りかけた。

 

『すまないねデューク君。言い出したら聞かないもんで』

「あ、いえ……」

『もう仕方ないから、ヤマダ君を連れて行ってくれないかな? もちろん、戦艦ナデシコも一緒だ』

「え!? しかし、そちらにはそちらの使命が」

『そうなんだ。だから、こっちの仕事も手伝ってくれないかな?』

「……それは、つまり」

『ナデシコと共に、ロンド・ベルに参加しなさいってことさ』

「ですが、先ほど申し上げた通り」

『ついさっき、コロニーから出てきたベガ獣と、ナデシコはすれ違ったんだ。おそらく、ナデシコはグレンダイザーの母艦だと思われてるよ。となれば、実際に君がいようといまいと、ベガ星人はナデシコを攻撃目標にしてくる。それなら、本当にグレンダイザーがいた方がいいに決まっている』

「……」

 

 デュークが沈黙した。

 

「おい!」

 

 忍が、口を挟んだ。

 

「男なら、グズグズ言ってんじゃねえよ! いいから俺たちと来い! ベガ星人だか何だか知らねえが、さっきみたいに、一緒にぶっ飛ばしてやろうぜ」

「……迷惑をかけるかもしれないが、その言葉に甘えよう。忍君、よろしく頼む」

「俺もだ! 俺を忘れてもらっちゃ困るぞ!」

「もちろんだ。君の男気のおかげだ。えー……ヤマダ君」

「だからそれは戸籍上の名前! 魂の名はダイゴウジ=ガイだー!!」

 

 そんな様子に、輝が笑みを浮かべていると。

 

『ん? どうしたのルリちゃん。……え!? そんな……』

 

 通信機のユリカの声が、切迫していた。

 

『みんな、ナデシコが到着したら、急いで帰艦して!』

「どうしたユリカ。敵襲か!?」

『ナデシコじゃないの。連邦軍の観覧式があったのは知ってるでしょ? そこにガンダムが出現して……核バズーカを撃ち込まれて、甚大な被害が出たって』

「核攻撃!? ガンダムが!? どういうことだ!?」

『北米でジオンに奪取された、稼動試験中のガンダムが使われたみたい。詳しいことはまだ分からないわ』

 

 先ほどの和やかな雰囲気は吹き飛び、一同の間に緊迫感が立ち込めていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。