スーパーロボット大戦3F ~マクロス・コンサート~ 作:デスフロイ
テキサスコロニー。月の軌道近くに建設された、旧式のコロニーである。
元は、アメリカのテキサス州を模した観光コロニーだが、十三ヶ月戦争の頃には戦略価値の低さゆえに、統合軍・ジオン軍双方から見捨てられていた。太陽光をコロニー内部に送り届けるはずのミラーは既に機能を失い、コロニーは砂嵐が常に吹き荒れる状態となっていた。
ゴーストタウンと化した建物の一つから輝が、続いて未沙が出てきた。
「髪、ボサボサになっちゃった。あなたのせいだからね」
「またそんなこと言って」
どこか馴れた口調になってしまっているのを、未沙は自分で感じ取っていた。
(でも、やっぱり後ろめたいな……私たち二人は、ミンメイさんを裏切ってしまった)
輝は、そのことをどう思っているのか?
知りたくて仕方がないが、とても聞けない。
二人の乗ったバルキリーが宇宙を漂流し、ようやくこの荒れ果てたコロニーに避難してから、すでに二十日以上が過ぎていた。
かろうじて機能が生きていた浄水設備を再起動し、コロニー内で生息していたネズミなどを口にしながら、二人でどうにか命をつないでいた。
挫けそうになるのを輝に励まされているうちに、互いを必要とする心が生まれていき、ついに踏み越えてしまった。
未沙は歩みながら、輝の背中をじっと見つめていた。
急に、その背中が止まった。
「……未沙! 何かコロニーの中にいるぞ。見てくれ!」
「え!?」
砂嵐の中へと、未沙は目を凝らす。四つの、大きな姿が見える。
「……何あれ? 巨大な獣? まさかそんなはずが」
「いや……あれは、生物じゃない。動物の姿をしたメカだ」
「メカ!? じゃ、あれに人が乗ってるということ?」
「おそらくはね。見たことがな機体だ。ゼントラーディのものでもなさそうだし」
「どうする? 敵か味方か、分からないけど」
「……助けを請う! 最悪捕虜になっても、ここで朽ち果てるよりはマシだ」
未沙も頷いた。この機会を逃せば、救助される可能性はもうないかもしれなかった。
輝は駆け出しながら、大声でそのメカに呼びかけた。
「そこの人たち! 誰か知らないが助けてくれ! 俺たちは漂流してここに流れてきたんだ!」
人型らしきメカのコクピットが開いた。顔を出してきたのは、目つきの鋭い青年だった。
「その前に、どこの誰なんだてめえは? まずそっちから名乗りな」
「私たちは、マクロスを母艦にする独立部隊ロンド・ベルのメンバーです。これはマクロスで開発されたバルキリーです」
未沙の言葉に、他の三機のメカもコクピットを開けた。なぜか、誰も外部スピーカーを使わない。
「マクロス!? ずいぶん遠くまで飛ばされたんだね。よくコロニーに引っかかったなあ」
「マクロスが独自に動き始めたとは聞いていたが、お前たちがそうなのか」
「あたしたちは獣戦機隊さ。……どうする、忍? さすがに放ったらかしにするわけにもいかないだろ」
童顔の青年、バンダナの青年、赤毛の少女が口々に言った。
忍、と呼ばれた、最初の青年は舌打ちした。
「ち、仕方ねえな。今、俺たちは探索中なんだ。それがすんだら、俺たちの船で送ってやる」
「ありがとう! ……差し支えなければ、何を探索してるのか聞いていい?」
バンダナの青年が、少し考えて答えた。
「マクロスはジオンとは関わりないからいいか。お前たち【星の屑】って知ってるか?」
「星の屑? えーと、宇宙に光るちっちゃい星の集まりのこと、でいいのかな?」
輝の返答に、少女が露骨にうんざりした表情を見せた。
「こりゃ何も知らないね。とにかくジオンが、このコロニーに用があるっていう話なの!」
「ジオンが!? こんな無人の廃コロニーに?」
「……何か来やがる、隠れろ! そこのお前らもだ!」
忍の呼びかけに、他の三人は急いでコクピットを閉めると、建物の陰に隠れた。輝と未沙も、手近の物陰に身を潜める。
遠くの空中に、十機の機影が見えた。小さかったものが、どんどん大きくなり、機体の色や姿まで何とか分かるようになってきた。
「あれは……モビルスーツね」
「だけど、ジオンにあんな機体があったかな?」
「私にも分からないわ。もう少しはっきり見えれば……」
やがて、いかにも指揮官のものらしきモビルスーツが着陸した。背中から伸びたシャープな印象の翼がある、紫の機体だ。その周囲に、他の機体も降り立っていく。
未沙が注目したのは、指揮官機ではなく、その周囲の量産機らしきモビルスーツの方だった。
「あれは、ザフト軍のジン!?」
「ザフト? ……確か、プラントの義勇軍だよな」
「プラントは、前からジオンとの癒着が噂されてたわ。ジオンが関わりを持つコロニーに、プラントのモビルスーツが現れた」
不穏な予感に、未沙は身を震わせた。
やや遅れて、最後のジンが着陸を試みる。
が、その時、一層強い風がそのジンを襲った。空中でバランスを崩し、地面に横倒しで墜落した。そのまま数回転んだ先は、輝たちの隠れている場所だった。
「あっ!」
激しい砂煙に、思わず逃げかけてしまう未沙。
ジンのモノアイが、その姿を捉えていた。
「クルーゼ隊長! 人影があります。連邦軍の制服です!」
「何!? 逃がすなディアッカ!」
ディアッカ、と呼ばれたパイロットは、言われるより早く、未沙へとジンの腕を伸ばしだしていた。
輝は飛び出すと、未沙を抱え込むように逃げ出す。
なおも追おうとするジンに、砲撃が飛んだ。輝たちを巻き込まないよう、あえて大きく上に外している。
「ちぃっ! あの下手くそのおかげで、見つかっちまった。やるぞ、沙羅、亮、雅人!」
「仕方ないね!」
獣戦機隊が建物の陰から飛び出した。
ザフト軍のクルーゼも、間髪入れずに反撃を指示。自らも砲撃を開始し、激しい銃撃戦が始まった。
最初こそ、先手を打った獣戦機隊が優勢だったが、数に勝る上に精密な攻撃のザフト軍に巻き返されていく。
「時間の問題だな。しかし、どうしてここに連邦の……むっ!?」
クルーゼの乗り込むシグーに、不意に上空からミサイルが打ち込まれた。命中こそしなかったが、周囲の地面に砂埃をいくつも立てる。
「俺も戦う! 助けられた返礼をしたい!」
「やれるのか!? 頼むぜ!」
輝の呼びかけに、忍は大声で答える。
「ふっ。旧式の戦闘機で、このシグーの相手になると思うのか」
クルーゼは、仮面の下の目を光らせ、バルキリーの飛行の軌跡に合わせて砲撃を放った。
が、輝はガウォークに変形し、AMBACの効果も借りて、それをスレスレで回避する。
「!? 戦闘機に手足が」
意表を突かれたクルーゼのシグーへと間合いを詰めながら、さらに輝はバトロイドに機体を変形させた。戦闘機ではありえない動きで、シグーの攻撃を避けながら、逆にガンポッドを乱射する。
「変形機構!? 速い! パイロットの技量も高い」
辛くも回避するクルーゼの口元に、喜悦の笑みが浮かんだ。
「つまらぬ任務と思っていたが、こんな楽しみが味わえるとは!」
シグーも空中に舞い上がった。
変形を繰り返し、複雑な動きを見せるバルキリーを、執拗に狙う。バルキリーからの反撃を、鋭い方向転換で回避してみせる。
「並のパイロットじゃない! 簡単には倒せない」
「輝……!」
バルキリーの弾薬が尽きるまでに、勝負をつけられるか。輝だけでなく、後部座席の未沙も冷や汗をかいていた。
「あいつ、なかなかやるじゃねえか!」
ちらりとバルキリーを見た忍が感嘆の声をあげた時。
通信機から声が飛び出した。
『獣戦機隊! 戦闘中か』
「アキトか! 数が多い。ちっと厄介だ」
『俺たちもすぐ行く。それまで頑張ってくれ!』
『獣戦機隊! 合体するんだ。俺たちがついてる!』
「今は数が多い方が有利なんだよ!」
『ヤマダ、今は黙ってろよ! 趣味に走るなって!』
『戸籍上の名で呼ぶな! 俺の魂の名は、ダイゴウジ=ガイだー!!』
それからほどなくして。
戦場に、2機の人型兵器が飛来してきた。バルキリーよりもさらに小さい。
一斉砲撃が、ジンに浴びせられる。うち一機が、直撃を受けて爆発した。
「新手か」
「どうします、クルーゼ隊長!」
「どうやら、こちらも来たようだ。やつらが来たら敵は任せよう」
残念だがな、という台詞はクルーゼは飲み込んだ。
突然、コロニーの壁が外側から破壊された。できた穴から、巨大な円盤が次々飛び込んでくる。
「来たか。出足が遅いな」
『何か言ったか!? ラウ=ル=クルーゼ!』
「いや何も。救援を感謝する、ガンダル司令」
『このコロニーは、もう作戦には使えんな!? とんだ失態だな!』
「候補のコロニーはこれだけではない。他の部隊も動いている」
『ザフトもだらしないものよ。ジオンも、最初から我々に任せておけばいいものを!』
「そうかもしれんな。なかなか手強いぞ、気をつけることだ」
(まあ、円盤獣ごときでは、歯が立たないだろうがな。せいぜい足止めをしてもらう)
円盤獣の出現に、一瞬攻撃が止まったバルキリーに、クルーゼは乱射を加えた。命中を確認もせず、シグーを翻して、コロニーの奥へと向かう。同行していたジンの残りも、追随していった。
「逃げた!?」
バルキリーも残弾が心許ない。輝は追撃を断念した。
円盤は地面に降りると、次々と四足歩行の怪物型のメカに変形する。
それを目の当たりにしたガイが、歓声をあげる。
「円盤獣が出てきたぞ! 今こそ、今こそだなー!」
「あーやかましい! 合体すりゃいいんだろうが、まったく」
「こんなしぶしぶ合体する忍、初めて見るよ」
沙羅が肩をすくめて、合体のフォーメーションに向かった。
沙羅のランドクーガー、雅人のランドライガーが足に。亮のビッグモスが胴体に。そして、忍のイーグルファイターが頭部に変形し、それらが一つになる。
「見たか! これぞ、超獣機神ダンクーガ!!」
「お前が名乗りをあげるんじゃねぇーっ!!」
忍が、今日一番の怒鳴り声を、愉悦の表情のガイ操るエステバリスに叩きつけた。
「信じられない! 獣のメカが合体して、巨大ロボットになるなんて」
「……あのね、ブライガーとかダイターン3とか、無茶な変形は見慣れてるでしょ?」
「あんたの機体の変形も、あたしたちから見るとほとんど魔法だよ。速すぎて」
輝に対して、未沙と沙羅がツッコミを入れた。
「行くぜ! 断・空・剣!」
ダンクーガが、抜き出した巨大な剣を、円盤獣ギルギルに叩きつけた。大きく装甲が切り裂かれ、ギルギルが地面に転がる。
「なんてパワーだ!」
「こっちも行くぞ! そこのえーと変形戦闘機、まだやれるか!? こちらは戦艦ナデシコ所属のエステバリス、テンカワ=アキトだ!」
「戦艦マクロス所属、バルキリーの一条輝だ! 機体は問題ないが、残弾が少ない」
「マクロス!? 話は後で聞く。無理はせずに俺たちに任せろ!」
「すまない。可能な限り援護する!」
次々と、円盤獣が撃ち抜かれ、切り裂かれていく。
「お……おのれ! あんなやつらに」
ガンダルが、ベガ獣グラグラの中で呻いていると。
外壁の穴から、別の円盤が飛び込んできた。明らかに円盤獣とは異なる、黒と白を基調とした機体だ。
「ガンダル司令! 今度は何を企んでいる」
「グレンダイザー! いつも逃げ回っている腰抜けが、今日はそちらから来おったか!」
ガンダルは、交戦中の味方を放り出して、スペイザーから飛び出したグレンダイザーへと向かっていった。
ベガトロンビームがグレンダイザーに叩きつけられた。これを、グレンダイザーの宇宙合金グレン製の装甲は堪え忍ぶ。
その時。おびただしい砲撃が一斉に、背後からグラグラを直撃した。
「断空砲の味はどうだ!? 俺たちを無視してるんじゃねえ!」
「こ、この!」
深刻なダメージを受けたグラグラの中でガンダルが唸っている。
「ダブルハーケン!」
グレンダイザーの肩から飛び出した白刃が、柄で連結される。それによる斬撃が、正面からグラグラの装甲を裂いた。
さらに、間合いを取ったグレンダイザーの頭部の角から、雷撃が放たれた。
「スペースサンダー!!」
必殺の一撃が、グラグラを直撃した。
「おっ……おのれおのれ! 今日は邪魔が入ったが、次はこうはいかぬぞ!」
グラグラはどうにか空中に浮かぶと、急速度で外壁の穴から逃げ出していった。
忍は、もはや円盤獣の残骸だらけとなったコロニー内を見回した。
「どうやら終わったみたいだな。ところでそっちの白黒のやつ、何モンだ?」
「助太刀するつもりが、逆に助けられてしまったようだ。僕はデューク=フリード。これはグレンダイザーだ」
「グレンダイザー!!」
ガイが大声をあげた。
「マジンガーZ、グレートマジンガーの仲間じゃないか! ということは、あの二体も! どこだどこだ!」
「いや、彼らはおそらく地球上だ。僕は一人で動いている」
「なーんだ……いやいや! グレンダイザーだけでも十分! 俺の名はダ……」
「一人って、お前はどっかの部隊に所属してねえのか? 俺は獣戦機隊の藤原忍。こいつは超獣機神ダンクーガだ。戦艦ナデシコ所属だ」
忍が、ガイの台詞を遮るように尋ねた。
「そうか。僕は、どこにも所属はできないんだ。僕がいると、あのベガ星人が押し寄せてくる。ベガ星人の大王の娘は、僕を庇って亡くなった。それを恨んで、ベガ星人は僕とグレンダイザーを一番の標的にしているんだ。関係のない地球人を巻き込みたくない」
「そういえば、あんたはフリード星の王子だったな」
亮も、グレンダイザーの勇名は知っていた。
「僕は、地球を第二の故郷だと思っている。本当は、ベガ星人を地球から引きはがすために、地球から去るべきなのかもしれない。だが、ベガ星人はミケーネ連合に参加して、地球侵略の片棒を担ごうとしている。しかも、ミケーネ連合はジオンと同盟を結んだという話も聞く」
「何だそれ!? 侵略軍が一つにまとまってるってことか!」
『そういうことだね~』
アキトの通信機から、突然、呑気そうな声が響いた。
『ザフト、というよりプラントもそれに加わってる可能性が高いな。【星の屑】は、ジオンの作戦のコードネームだ。ジオンの作戦行動にザフトが絡み、ベガ星人が救援に駆けつけた。これは、全てが一体となってると見た方がいいよ。いや~まいったまいった』
「まいったじゃありませんよ! タイラー大佐!」
「タイラー大佐!?」
未沙が、驚きの声をあげた。
「もしかして、ジャスティ=ヒトシ=ウエキ=タイラー大佐ですか!? 【無責任参謀】の!? あ、いえ、あの」
『いいよいいよ。実際僕って無責任だからさ。それよっか早瀬大尉。僕は今、戦艦ナデシコに同乗して、ロンド・ベルに合流するところなんだ。君と一条中尉をマクロスに送り届けることができる』
「ありがとうございます!」
礼を言ってから、自分たちの素性が知られていることに、未沙は驚愕した。
(さすがに、かつては統合軍随一の切れ者と呼ばれた人……)
「ちょっと待ってください!」
アキトが、話に割り込んできた。
「俺たちって、ロンド・ベルに参加するんですか!?」
『あれ、言ってなかったっけ?』
「初耳ですよ!」
『ごめんごめん、言うの忘れてた。まぁそういうことだから』
(さすがに、かつては統合軍随一の無責任男と呼ばれた人……)
いささか脱力感を覚える未沙であった。
『アキト大丈夫!? 怪我とかしてない!? ああもう、全速力でそっちに向かうから!』
「落ち着けよユリカ! 別に何ともないから! 普通にやってきてくれよ」
「え? 今のは?」
輝が尋ねるとアキトは、
「……戦艦ナデシコの艦長の、ミスマル=ユリカ……俺の幼なじみで、あのー」
「アキトにベタ惚れなんだよねー」
「雅人! 黙ってろよまったく!」
「どうせすぐにばれちゃうだろ?」
その名前で、未沙も思い出した。
地球連邦大学における、戦略シミュレーション無敗の才女。実は、オンラインで一度だけ未沙も対戦したことがあるが、上位にランクインしていた彼女でも、到底歯が立たなかった。
「こういう人だったなんて、さすがに思わなかったわ……」
「え? 何が?」
「な、何でもないわ」
輝の問いに、未沙は慌てて手を振った。
「どうやら、迎えが来るようだな。それでは、僕はこれで失礼する」
「え!? グレンダイザー、どこに行くつもりだ」
「どこでもいい。ベガ星人と戦っても、他の地球人を巻き込むことのない所なら」
「待て!!」
ガイが大声をあげた。
「お前一人で行かせはしない。俺も一緒に行く!」
「え!?」
さすがのデュークも、面食らっていた。
「気持ちはありがたいが、君の機体は、おそらく戦艦の補給なしでは稼動できないだろう? 無理な話だ」
「残念ながらその通りだ。ならば、戦艦も一緒に連れて行く。それなら文句はないだろう!?」
「ちょっと待て! ヤマダ、戦艦ってどれの話だ」
「寝ぼけてるのか、アキト! 戦艦ナデシコに決まっている!」
「はぁ!? あ、あのな……ナデシコはお前の付属品じゃないんだよ!」
『そうよそうよ! 私はアキトの側から離れないんだから!』
「とにかく、俺は絶対にグレンダイザーと行くからな! 従って、ナデシコも同行する!」
「人の話を聞いてるのかお前は!!」
もはや、言葉を差し挟むこともできないデュークと、他のパイロットたち。
そこに、タイラーが語りかけた。
『すまないねデューク君。言い出したら聞かないもんで』
「あ、いえ……」
『もう仕方ないから、ヤマダ君を連れて行ってくれないかな? もちろん、戦艦ナデシコも一緒だ』
「え!? しかし、そちらにはそちらの使命が」
『そうなんだ。だから、こっちの仕事も手伝ってくれないかな?』
「……それは、つまり」
『ナデシコと共に、ロンド・ベルに参加しなさいってことさ』
「ですが、先ほど申し上げた通り」
『ついさっき、コロニーから出てきたベガ獣と、ナデシコはすれ違ったんだ。おそらく、ナデシコはグレンダイザーの母艦だと思われてるよ。となれば、実際に君がいようといまいと、ベガ星人はナデシコを攻撃目標にしてくる。それなら、本当にグレンダイザーがいた方がいいに決まっている』
「……」
デュークが沈黙した。
「おい!」
忍が、口を挟んだ。
「男なら、グズグズ言ってんじゃねえよ! いいから俺たちと来い! ベガ星人だか何だか知らねえが、さっきみたいに、一緒にぶっ飛ばしてやろうぜ」
「……迷惑をかけるかもしれないが、その言葉に甘えよう。忍君、よろしく頼む」
「俺もだ! 俺を忘れてもらっちゃ困るぞ!」
「もちろんだ。君の男気のおかげだ。えー……ヤマダ君」
「だからそれは戸籍上の名前! 魂の名はダイゴウジ=ガイだー!!」
そんな様子に、輝が笑みを浮かべていると。
『ん? どうしたのルリちゃん。……え!? そんな……』
通信機のユリカの声が、切迫していた。
『みんな、ナデシコが到着したら、急いで帰艦して!』
「どうしたユリカ。敵襲か!?」
『ナデシコじゃないの。連邦軍の観覧式があったのは知ってるでしょ? そこにガンダムが出現して……核バズーカを撃ち込まれて、甚大な被害が出たって』
「核攻撃!? ガンダムが!? どういうことだ!?」
『北米でジオンに奪取された、稼動試験中のガンダムが使われたみたい。詳しいことはまだ分からないわ』
先ほどの和やかな雰囲気は吹き飛び、一同の間に緊迫感が立ち込めていた。