スーパーロボット大戦3F ~マクロス・コンサート~   作:デスフロイ

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第9話 戦場に咲く毒華

「キシリア殿! いつまでロンド・ベルを捨て置くおつもりか」

 

 テーブルを叩きかねないハイネルの焦れた物言いに、キシリアは沈黙を守っていた。

 

「星の屑作戦の失敗以来、ロンド・ベルの増長ぶりは甚だしい! この前も、クロスボーンが作戦行動を妨害されたというではありませんか」

「我々ジオンは、クロスボーンとは何の関係もありません。あの者達が壊滅しようが、どうでもよいことです。所詮はコロニー一基の反乱組織に過ぎませんし」

「とはいえ、地球連邦の敵対勢力であるのは同じ。真綿で首を締められているようなものだ」

「それではどうしろと? たかが一部隊に、ジオンの総力を叩きつけろとでも? それこそ物笑いの種になる」

「知らないわけでもないでしょう? ロンド・ベルは、コロニー共和連合と手を組んだ」

「それで?」

「コロニー共和連合を叩き潰してしまえばいいのです。ロンド・ベルとティターンズは、お互いを無視している。奴らは宇宙で孤立する」

「コロニー共和連合については、ザフトに任せてあります。そこまでおっしゃるなら、ザフトに助力されてはいかが?」

「……仲介していただけるなら」

 

(勝手にしろと言わんばかりか。我らボアザンを侮っているのか)

 

 ハイネルは、内心の憤りをどうにか飲み込んだ。

 

「こちらからも応援部隊を出しましょう。それでよろしいか?」

「お気遣い感謝する」

 

(どうせ申し訳程度だろう。手柄の独り占めはさせないということか。女狐め!)

 

 ハイネルが部屋から立ち去っていき、キシリアが一息つくと、手元の通信機から呼び出し音が鳴った。

 

『ドズル様より通信です。おつなぎしますか?』

 

 部下からの問いかけに、キシリアはわずかに眉根を寄せたものの、通信を命じた。

 

『姉貴! ハイネルめが押しかけてきたそうだな? 何と言ってきたんだ?』

「ロンド・ベルを叩き潰さないのかと、うるさく言ってきたよ。さんざん煮え湯を飲まされたボルテスⅤがいるからこだわるのだろうがな」

『それで? 何と返事を?』

「コロニー共和連合を叩いて奴らを孤立させたいというので、ザフトに仲介することにした。勝手にやらせるさ」

『この際、ロンド・ベルもコロニー共和連合も、一気に叩き潰した方がよくはないか? デラーズの無念を晴らしてやりたい』

「ドズル、お前までそんなことを言うのか?」

 

 キシリアは、教え諭すように言った。

 

「たかが独立部隊のロンド・ベルなど、どうでもいいのだよ。我らの最大の敵は何だ?」

『分かっている。ティターンズだ』

「そういうことだ。ティターンズは今や、事実上連邦軍を支配している。奴らが宇宙で本拠としているア=バオア=クーの奪回。我らはそこにこそ力を注ぐべき。サイド3に近いあそこをティターンズごときがいつまでも占拠していては、我らの面子に関わる」

 

 ドズルは少し黙り込むと、意を決したように尋ねた。

 

『……姉貴。いつまで隠しておく気だ?』

「今はとても無理だな。ヨーロッパを維持した上で、ジオンが制宙権を確固たるものにしなければ」

『DCが極東からヨーロッパに手を伸ばそうとしているし、北米戦線ではメタトロンが障壁になりつつある。時間がかかりそうだぞ』

「分かっている。地上はハマーンに一任してある。あやつは地球に執心しているし、己のためにも簡単には引き下がらんだろうさ」

『む、あれの能力は認めるが……とにかく、噂だけでも疑心暗鬼を生んで、致命傷になりかねん。前にも言ったが、穏当な形で発表するべきじゃないか?』

「例の機密に関しては、知っているのは私とお前、そして死んだデラーズとあの男だけ。そうやすやすとは漏れないはず」

『そろそろ、兄貴に演説でもしてもらうか? ずっと沈黙しているのもどうかと思うが』

「それもそうか。草案はこちらでまとめておくとしよう」

 

 通信が切れると、キシリアは目を光らせた。

 

(ドズルの言うことももっともだ……秘密が漏れる前に、同盟軍をまとめてティターンズを叩き潰さないとな)

 

 

 

 

 

 

 シン=アスカは、クルーゼに詰め寄っていた。

 

「隊長! 何ですかあの連中は! ジオンの援軍はともかく、ミケーネ連合だのクロスボーンだの!」

「不服かね?」

「俺たちザフトだけでも、サンクキングダムくらい落とせます! 非武装のコロニーなんて、攻め潰してくれって言ってるようなもんだ」

「君は、サンクキングダムに恨みでもあるのか?」

 

 側にいたアスランは、クルーゼはむしろシンの言い草を楽しんでいるかのように感じていた。

 

「俺の生まれ故郷のオーブは、十三ヶ月戦争の時に中立を標榜してました。結局は戦争に巻き込まれて、俺の家族は全滅したんだ……! 戦うべき時に戦わない、そんな奴らに何が守れるんですか。そんなに戦いが嫌なら、せめて俺たちプラントの邪魔をするなと言いたいんですよ!」

「それは君の言うことが正しいと私は思うね。だが、忘れてはいけないことがある。サンクキングダム自体は確かに非武装のコロニーだが、今ではコロニー共和連合の盟主であるということだ」

「……」

「コロニー共和連合の所有しているガンダムに、我々ザフトは何度か煮え湯を飲まされている。その上、ロンド・ベルも後ろ盾につこうとしているのだからな」

「ですが隊長」

 

 アスランが割って入った。

 

「サンクキングダムは、あくまでも盟主にすぎないでしょう? あそこを叩いても、別のコロニーが代わるだけかと」

「いや。あそこを統括するリリーナ=ピースクラフト、その父親はコロニー共和連合の生みの親なのだよ。本人もまだ未成年だが、政治家としての才能があるらしく、声望を集めている」

「……そのリリーナを拿捕するなり、何なりすれば、コロニー共和連合の動きを封じられると?」

「さすがに君は分かっているようだな。アスラン」

「ですが」

 

 アスランは、最も気になっている部分を掘り下げにかかった。

 

「ジオンがそれほど、今回の一件に力を入れているようには思えません。援軍は戦艦一隻だけとは」

「その代わり、他の組織の軍勢にも声をかけてくれている」

「ミケーネ連合はジオンの同盟相手ですから分かりますが、クロスボーンはプラントと、これまで関わりがなかったと思いますが」

「これから関わりを作っていくという考えもある。ただ、今回はボアザンのハイネル司令官が発起人らしくてな。彼の人脈でクロスボーンを引っ張ってきたらしい」

「それでは、我々は今回は、そのハイネル司令官の指示の下で動けと?」

「形の上ではそうだ。ミケーネ連合はジオンと同等の同盟者だからな。我らとは立場が違うということだ。まあ、実際の戦闘になれば、臨機応変に行動することになるだろうさ」

 

(つまりは、寄せ集めの軍団に過ぎないということか……。ジオンは、結局己の利益のためにプラントを使い倒すことしか頭にない。プラントは、このままジオンを頼っていてもいいのか?)

 

 

 

 

 

 

 ボアザン軍の旗艦スカールークは、進行していくサンクキングダム侵攻軍の中心にいた。

 

「ハイネル様。間もなく到着いたします」

 

 腹心のカザリーンはそう報告した。

 ハイネルは返事もせず、モニター上の遊軍の様子を眺めていた。

 

(ジオンやプラントはともかく、気になるのはあのクロスボーンとやらだ。ベガ星人め、ミケーネ連合に内緒で、あのような奴らと気脈を通じていたとは。大体ベガ星人は、独断専行があまりにも多すぎる。次の会議で、問題にしてくれるわ)

 

「あと3分で、攻撃可能空域に入りま……」

 

 カザリーンが言いかけた時。

 モニターの一角に映っていた、ジオンの戦艦が突然、爆煙をあげた。

 

「何が起こった!?」

「敵襲です! 左舷方向より、ジオン戦艦に対する砲撃が」

 

 報告が終わらないうちに、モニター上の戦艦が大きく爆発を起こし、大破した。

 その爆発が消えるその時、ハイネルは目を見張った。

 

「ボルテスV! 出てきたか」

「リリーナ代表に手は出させないぞ、ハイネル!」

 

 健一が見得を切った。その周囲には、グレンダイザーやダイターン3、他の機体もいる。

 ロンド・ベルの襲来に、他の軍団も驚いていた。

 

「父上! これはどういうことでしょうか。待ち伏せされていたとしか思えません!」

『私にも分からん。応戦するしかあるまい』

 

 同じ戦艦にいるはずなのに、声だけで姿を見せない父親に、ドレルは微かに苛立ちを覚えた。

 

「ザビーネ! 迎撃だ。私も出る!」

「は!」

 

 ドレルのベルガ・ダラス、ザビーネのベルガ・ギロスを中心として、クロスボーンのモビルスーツが飛び出した。他の軍団も、次々と迎撃部隊を吐き出している。

 前衛に位置する、ボルテスVらスーパーロボットに、クロスボーン各機からビームライフルが放たれた。次々と、狙い違わず命中していく。

 

「他愛のない……む!?」

 

 ドレルは目を見開いた。

 少なからず被弾を受けたスーパーロボットたちは、ただの一体も落ちていない。

 

「ブライカノン! シュートッ!」

「超電磁、ゴマァッ!」

「反重力ストーム!」

「ダンターン、ザンバー!」

「断・空・剣!」

 

 繰り出される反撃は、機動性に欠けるため命中率は悪いものの、当たればよくて半壊、一撃で大破するものも出る破壊力だ。各軍団の迎撃部隊の足が、そこで止まった。

 

「一斉射撃、行くぞ! しっかり狙え! 前衛の仲間を見殺しにするな!」

 

 フォッカーの合図と共に、モビルスーツやバルキリーなどの後衛が次々と砲撃を繰り出す。敵の数が、みるみる減じられていった。

 

「!? 待て、一機でどうする気だ!」

 

 シーブックが、自分の隣にいたダギ・イルスが飛び出すのに気づいて叫んだ。

 しかし、ダギ・イルスはそのまま敵中に突撃する。狙いは、ザビーネのベルガ・ギロスだった。

 

「お前だけは! あたしの手でやるんだっ!」

「アンナマリーか。そうか、貴様が奴らを手引きしたというわけか」

 

 冷徹極まる声音で、ザビーネは応じた。

 

「そんなことをして何になる? 事が済めば、用済み扱いされるだけだ」

「それはお前も同じだろう!? ベラを手づるにロナ家に取り入ろうとして、あたしをコケにした男が!」

「そういうことか。くだらんな」

「一緒に死ねぇっ!!」

 

 ダギ・イルスの突撃を軽くかわし、素早く身を翻したベルガ・ギロスの砲撃は、装甲ごとアンナマリーを撃ち抜いていた。

 ザビーネは、何の感慨も持たず、次の敵を探し始めた。

 一方、ドレルはどうにかスーパーロボットの攻撃をくぐり抜け、後衛への攻撃を伺っていた。

 

「援護の奴らをどうにか黙らせれば、スーパーロボットどもは時間さえかければ倒せる」

 

 そのベルガ・ダラスを狙うバルキリーが一機。

 

「フロンティアⅣでは、好き勝手やってくれたな! お前だけは許さない!」

「あの時のバルキリーとやらか。変形戦闘機で、私を倒せると思うのか」

「思うとも! やってみせる!」

 

 アルトが、ベルガ・ダラスを照準に入れた、その時だった。

 その照準のすぐ前に、回り込んできた赤いバルキリーがいた。

 

「何だ!? 誰だ!? 邪魔するな!」

「悪いな。こいつは俺と、ファイヤーバルキリーの初陣の獲物と決めたんだ」

「え? まさかその声……熱気バサラか!?」

 

 アルトが意表を突かれて攻撃の手を止めている間にも、バサラはバルキリーをベルガ・ダラスに接近させた。

 

「おいド腐れ野郎! こないだは、シェリルが世話になったらしいな。この熱気バサラが、一発お見舞いしてやるぜ!」

「あの下劣な女の仲間か。汚らわしい、消えろ」

 

 ドレルは、無造作にヘビーマシンガンを連射した。

 が。

 絶妙な機体コントロールで、その攻撃を全くかすらせもしない。

 

「素人の動きじゃない! あいつ、あんな操縦ができたのか!」

 

 アルトも驚いている。

 華麗ともいえる動きで、バサラのファイヤーバルキリーがベルガ・ダラスに迫る。

 

「捉えたぜ。これが俺の戦い方だ。貴族野郎、俺の歌を聴けぇ!!」

 

 ファイヤーバルキリーは、ドレルに回避を許さず、攻撃を命中させた。

 が、爆発も何も起こらない。何が起きたか分からないドレルが、一瞬戸惑った。

 バサラは、コックピットで操縦桿も握らずに抱えていたギターを激しく掻き鳴らし、高らかに歌い始めた。

 その演奏は、ベルガ・ダラスに撃ち込まれたスピーカーポッドを通し、コックピットのドレルの鼓膜を直撃した。

 

「な、何だ!? 歌!?」

 

 全くの予想外の事態と、普段あまり聞き慣れないロックミュージックに、ドレルは混乱するだけだった。

 

「脳が……掻き回される……」

「へへん。まずはワンコーラスだ。どうだ俺の歌のすばらしさが分かったか?」

「だ……黙れ、こんなものに、誰が……」

 

 言葉とは裏腹に、ドレルは目を白黒させている。

 

「ほう、なかなかしぶといな? なら2番を楽しみやがれ!」

「もうたくさんだ! やめてくれー!」

 

 ドレルは戦意喪失して、戦線から逃げ出していった。

 ファイヤーバルキリーは機首を返し、ナデシコに近づいていった。

 

『シェリル!』

 

 ナデシコのブリッジのモニターに、バサラの得意満面の顔が映し出された。

 

「無理矢理、ここにいろとか言うから何かと思えば! こういうことだったわけ?」

『そっちにも音声流してたから聴いてただろ? お前の仇はとってやったぜ!』

「……あんた、ほんっとにバカでしょ。でも、ありがとう。少し胸がすっとしたわ」

 

 少し、シェリルの目が潤んでいた。

 

『まぁ、これで歌のすばらしさが分かっただろうぜ。俺の歌で歓声上げてたからな』

「あれって悲鳴じゃない? ミュンさんに何をねだってるかと思ったら、そんなバルキリー特注させて!」

『ファイヤーボンバー全員の機体も、直にロールアウトするぜ。それじゃ俺は、もうひと演奏やってくるぜ!』

 

 また戦線に戻っていくファイヤーバルキリーを、シェリルは微笑みを浮かべて眺めていた。

 その間にも、ロンド・ベルは敵機を次々と落としていく。

 

「ええい、守護神ゴードルで私が出る!」

 

 カザリーンが止めるのも聞かず、ハイネルはブリッジから出ていった。

 

「クルーゼ隊長! ハイネル司令官が出撃するそうです」

「……面倒なことを。司令官を守ることまで、考えねばならないとはな」

「え? 隊長! 今度は、クロスボーンの戦艦から……正体不明の機体が出てきました!」

「正体不明?」

 

 そちらにモニターを切り替えたクルーゼは、なぜアスランがそんな表現をするのか、理解できた。

 現れてきたのは、禍々しい印象を受ける、巨大な花のような機体だった。

 

「モビルアーマーか! それなら俺が!」

 

 コウが、GP-03デンドロビウムのメガ粒子砲を放った。

 が、その機体に当たるかと見えた時、ビームが拡散されてしまう。ダメージを与えた様子がない。

 

「Iフィールド! デンドロビウムと同じか」

「ふはは……! ラフレシアにビームは通用せん」

 

 哄笑したその声に、セシリーが反応した。

 

「お父様!? いえ、カロッゾ=ロナ!」

「そこにいたか。父の意志に逆らう悪い子だ! なぜ私を受け入れない?」

「機械を分かる必要はない!!」

 

 ビギナ・ギナが、ビームサーベルを抜くと、ラフレシアに接近していった。

 が。

 ラフレシアの花弁の下から、触手のようなものが数多く伸びていくと、ビギナ・ギナを捉えようとする。

 何とか避けようとするセシリーだったが、その足に触手が巻き付いた。

 振りほどこうとするビギナ・ギナに、さらに何本もの触手が伸びる。

 その時、触手が巨大なビームサーベルに、まとめて斬り飛ばされた。ビギナ・ギナがその場を離脱する。

 

「大丈夫か、セシリー!」

「コウさん! 助かりました」

 

 ラフレシアが、その全身に備え付けられたメガ粒子砲を乱射し始めた。旋回するGP-03にも流れ弾が当たるが、Iフィールドで無効化される。

 その様子は、守護神ゴードルで出たばかりのハイネルにも見て取れた。

 

「クロスボーンめ、切り札を出してきたか! でかしたぞ!」

 

 ゴードルは、戦場を無視してサンクキングダムに向かっていった。ロンド・ベルの注目がラフレシアに集まっている隙をつけると考えたのだ。

 だが、その場の全員が、ラフレシアだけを見ていたわけではなかった。

 

「ハイネル! そうはさせん!」

 

 健一が、その後を追いかけ始めた。

 

「これは僥倖! 我々も行くぞ」

「了解! ボルテスVも動いているようですし」

「速攻でサンクキングダムを落とせば、こちらの勝ちだ!」

 

 クルーゼのシグーに、アスランのイージスガンダム、シンのインパルスが続いた。

 

「健一君、無茶だ!」

 

 デュークが叫ぶが、その眼前にベガ獣グラグラが回り込んでくる。

 

「おっと、お前の相手はこっちだ! 行かせんぞ、グレンダイザー!」

「く……!」

 

 他の機体も、残存している敵に足を止められたり、ラフレシアと交戦を始めていたりで、それ以上サンクキングダムに向かえない。

 ドラグナーやバルキリーが、Iフィールドでも通用する実弾を撃ち込むが、触手に阻まれて本体まで届かない。

 

「触手の数が多すぎるんだよ! くそったれが!」

 

 ケーンが悪態をつく。

 

「だったらよ、ちっと趣向を変えてやるか!」

 

 バサラが、味方全機へと通信チャンネルを切り替えると、演奏を始めた。

 今度は、聞く者の心を高揚させる熱い曲。

 それを聞きながら、コウはふと、星の屑作戦の時のことを思い出していた。ガトーとの出会いと悔しさ。観覧式直後の相打ちとなった戦い。コロニー落としの時の激闘。

 そして、ニナとの一連の出来事。

 ようやっと、ニナはコウの前で、以前の笑顔を取り戻すようになってきていた。

 

「あの時の経験を、無駄にするつもりはない! 突貫する!!」

 

 コウが、捨て身でデンドロビウムを加速させた。

 ビームの雨霰をことごとく弾きながら、ラフレシアに一直線。

 巨大なメガ粒子砲の砲身が、ラフレシアに突き込まれた。

 そのままゼロ距離射撃。

 さすがのラフレシアが、大きく揺らいだ。

 

「まだだ! うおぉぉぉーっ!!」

 

 コウがすかさず、スラスターを最大まで出力をあげた。

 まるで巨体の肩口をぶつけるように、ラフレシアの4倍はあろうかというデンドロビウムが体当たりした。

 猛烈な勢いで、デンドロビウムはラフレシアを押し込んでいく。

 その先にいたのは、クロスボーンの戦艦。

 ラフレシアが、戦艦の側面に激しく叩きつけられた。その花弁が、戦艦に深く突き刺さる。コウも、カロッゾも、その衝撃にかろうじて耐えた。

 

「な……何だ貴様!? デタラメなことを」

「伊達にガトーと渡り合ったわけじゃない! なめるな!!」

「だ、だが、ラフレシアはまだ動ける!」

 

 触手が、ラフレシアに密着したままのデンドロビウムにまとわりつく。そのうちの数本が、デンドロビウムの中央にあるガンダムの頭部にも伸びようとする。

 コウは、咄嗟にデンドロビウムからステイメンを抜け出させた。ビームサーベルを

抜き出し、触手を切り払うと、身を翻して脱出を図る。

 なおも、触手がステイメンを追いかける。

 そこに割って入ったのは、F91だった。ビームサーベルが、伸びる触手を次々と切り落とす。

 

「すまない、シーブック!」

「セシリーを救ってくれた返礼をします! 後は任せてください」

 

 F91が、戦艦に突き刺さったままのラフレシアへと間合いを詰めた。ラフレシアは、戦艦が爆発すれば巻き込まれるため、放射するビームの数は激減していた。

 

「援護する!」

 

 グレンダイザーが、グラグラの隙をついて、ショルダーブーメランをラフレシア目がけて放った。F91に伸びかけた触手が切り落とされる。

 F91が、ついにラフレシアに肉薄した。至近距離から、ヴェスバーが撃ち込まれる。Iフィールドすら貫き、強力なビームがラフレシアを穿った。

 カロッゾが怯んだ。触手の動きが鈍り、ビームも一瞬全て消えた。

 ビギナ・ギナが、再びビームサーベルを構えた。

 

「やめろ!」

 

 ダンクーガが、その行く手を遮った。

 

「なぜ! ロナ家は、私の手で」

「お前が親殺しになることはねえ。俺がやる。きっちり引導渡してやる……!」

 

 忍のいつになく静かな声音に、セシリーは素直に退いていた。

 

「愛の力にて、悪しき空間を断つ……! 名付けて、断空光牙剣!!」

 

 ダンクーガは、断空剣を構えた。その切っ先から、光線が放たれる。

 

「やぁって、やるぜぇぇぇっ!!」

 

 忍の裂帛と共に、ダンクーガが断空剣を振り下ろす。光線が刃と化して、ラフレシアを戦艦ごと両断した。

 ラフレシアから、爆発が巻き起こった。戦艦もそれに巻き込まれて、ラフレシアのいた所からへし折られるように、大破していった。

 

「悪かったな。憎んでくれてもいいんだぜ……」

「いいえ。きっと、父の悪念ごと斬ってくれたんだと思います。ありがとう……」

 

 セシリーは、涙を堪えながら微笑んだ。

 かろうじて脱出したベルガ・ダラスの中で、ドレルは身を震わせていた。

 

「な、何ということを……ベラ、貴様ぁーっ!!」

 

 ドレルは怒号をあげ、ビギナ・ギナに突撃しようとした。

 が、それをアルトは見逃していなかった。

 

「もうお前の出る幕じゃない! 失せろ!!」

 

 VS-25Fから撃ち出されたビーム機関砲が、ベルガ・ダラスを的確に撃ち抜いていく。

 ベルガ・ダラスは、側を通り過ぎていったVS-25Fの後方で、弾けるように砕けていった。

 

「手の空いた者は、サンクキングダムに向かえ! リリーナ代表を守れ!」

 

 フォッカーが叫んだ。彼自身は、この場で残った敵部隊をくい止めるつもりだった。

 

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