流牙がどう歩むのかある程度の話の流れを考えることが出来ました。
たぶんアフターエピソード的な話もあると思いますので楽しみに待っています。
まあ、真恋姫無双のファンディスクの炎上的な二の舞にはならないと思いますが(本当に何で愛紗ちゃんのルートを作らなかったのか今でも謎過ぎる)。
次回は私の大好きな一葉ちゃんを出します!!
久遠と堺に向かって出発して数十分……ようやく馬の走るペースを落とした久遠に流牙は尋ねた。
「なぁ、久遠。一ついいか?」
「なんだ?」
「これからの行動は決まってるのか?」
「そうだな。……まずは美濃を統治し、その後、多方面を同時に攻略する事になるだろう」
「多方面、というと?」
「尾張、美濃両国を押さえた我の当面の敵は、伊勢の坊主と一揆衆。……それに江南の六角、越前の朝倉、その三勢力だ」
「まだまだ戦は続くのか……」
「ちなみに北の浅井には我の妹が輿入れしておる。まず敵に回ることはなかろう」
「え?久遠、妹がいたんだ。それで、その妹さんの嫁いだ浅井って奴は信用できるのか?」
「出来る。小心者のきらいもあるが、まっすぐで、純粋で根はとてもいい奴だ」
「そうか。一度会ってみたいな」
まだ見ぬ久遠の妹夫婦に流牙は会ってみたいなと思うのだった。
それから少しして詩乃たちと合流し、船などに乗って数日後、堺に到着した。
大津に到着したがひよ子が船によってしまい、一休みするために転子がオススメの茶屋を提案してそこに向かった。
茶屋で休んでいると流牙は周囲にいる多種多様な人々を見て呟いた。
「戦乱が続いているけど、少しは平和なのかな?」
「プッ……なかなか楽天的な人だね、君は」
流牙の呟きに噴き出したのはすぐ側にいた浪人風の少女だった。
「やっぱりそんなことは無いのか」
「当然と言えば当然だろう?地方でさえ、すでに下剋上の世になっているよ。まぁそういう世だからこそ、私のような素浪人にとつては有り難いんだけどね」
流牙は浪人の少女から色々な話を聞き、お代は団子の支払い持ちとなった。
あまりこの世界の情勢などを知らない流牙にとっては有意義な話だった。
「さて、私はそろそろ行くよ。団子、ごちそうさま」
「ああ。お題は俺が払っておく。旅を気をつけてね、あと士官成功も祈っているよ」
「ははっ、そちらこそ旅の安全を祈ってる。じゃあね、お兄さん」
屈託の無い笑顔を浮かべながら少女は茶屋を後にし、最後にちらっと流牙の姿を見ながら呟いた。
「不思議な黒衣に左手中指に銀の指輪……なるほど、あれが噂の天人か。ふふっ、これからの行く末が楽しみだな〜」
少女は流牙の正体を知っており、これからの流牙の行動を楽しみにしていた。
そして、流牙達はしばし旅の疲れを癒し、小腹を満たした上で堺に向けて出発した。
堺に到着して早速中に入って大通りを歩いているのだが、通りの両端には比較的大きな商店が数多くあり、人足や町娘、商人たちがごった返していた。
「へぇー。凄いな、かなり賑わってるじゃないか」
「反物や木材、鎧刀鉄砲、食料も豊富で、ホント、なんでもござれですね、この町は」
「ああ!あの髪飾り可愛い!あんな意匠の、清洲ではみたことない!」
「あ、ホントだ。でもちょっと高い。……あ!でもあっちのも可愛くない?」
「うわー!すっごく可愛い!欲しいなぁ……」
「うーん、これは一日でお金が無くなっちゃいそうね」
「おいおい、夢中になりすぎだろ。言っとくけど、今回は久遠の護衛だからな」
「良い。この町では、どのような理由があったとしても武士同士の争いはご法度だ。堺に入ってしまえば比較的安全と言える」
「この町で喧嘩をすれば、会合衆を敵に回しますからね。会合衆が物を売らない、と決定すれば、小名ならばすぐに干上がってしまうでしょう」
「会合衆の力……というよりも、銭の力を怖がって、皆、堺では規則を守って大人しいのですよ」
「そっか。銭の力か……。喧嘩とかのトラブルには巻き込まれないようにしないとな」
「とらぶ……?まあそういうことだ。二人の手綱を放すなよ?」
「何かあったらすぐに俺が動くよ。それでこの後どう動く?」
「まずは店々を回った後で湊に向かいたい」
「堺津は西国海運の中心、それに大陸や南蛮との貿易によって昨今は特に繁栄していると聞きます。狙いはやはり南蛮ですか」
「うむ。南蛮商人と繋がりを持ち、鉄砲の調達量を増やしたい。それに玉薬は国内では安定供給が出来んからな。だが、南蛮の知り合いはおらん。流牙、何とかならんか」
「俺に振るの!?うーん……あ、宣教師っている?」
以前海を越えた国から南蛮人という人間が貿易のために来ていると聞いたことがあるのを思い出した。
そして、南蛮人の宗教を広めており、天守教と呼ばれている。
「宣教師というと、天守教の宣教師ですか?確かに堺には天守教の宣教師が寺院ゆ構えていると聞いたことがありますね」
「ならばそこに南蛮商人を紹介してもらうか」
「ひとまずそれだな。おーい!ひよ、ころ、行くよー!」
「「はーい!」」
そして道行く人に教会が無いか尋ね、裏町を通って行くとお目当の教会を発見した。
流牙の想像した教会と違ってかなり質素なのだった。
神を信じていない流牙はその程度の興味しかなかったが、ひとまず教教会の中に入るとそこには金髪に不思議な身なりの少女……この世界の言葉に表すと南蛮人の少女がステンドグラスの前で跪いて祈りを捧げていた。
少女を見守っていた流牙たちに他の信者らしき人達を連れて別室に通された。
やがて幾ばくかの時間が過ぎ、祈りを終えた少女が俺たちを出迎えた。
「……こんにちは。皆様もお祈りですか?」
「あ、日本語……えっと、司祭に用事があるんだけど」
「こちらの礼拝所の司祭さまは、今、お出かけでございます。私も司祭の身でありますので御用は私がお聞き致しましょう。それにしても……ふふっ、私が日本語をしゃべっているのに驚かないのですね」
「いや、一応驚いているよ。でも上手だね」
「子供の頃から、母に教えているのです。なかなか上手なものでしょう?」
「ということはお母さんは日本人?君はハーフなのかな?」
「はい。父はポルトゥス・カレの武人。母は日本の名家出身と聞いております。我が名はルイス・エーリカ・フロイス。母が与えてくれた日本式名は、ジュウベエ・アケツと申します」
「あけつ……ふむ。なるほど、あなたのお母上は明智の方なのですね」
「アケチ?」
詩乃はエーリカの言葉から自身の持つ知識からそのルーツを読み取った。
「はい。アケツではなくあけち。明るいに智恵と書いて明智と読みます。清和源土岐氏の支流で明智の住人、美濃でも名流の家ですね」
「なるほど。母のファミリーネームは明智と言うのですか……ふふっ。なんだか自分のルーツがこのような形で判明するのは、とても嬉しいですね」
「ということは、君の名前は明智十兵衛ってことか……ところで、エーリカさんは何しに日本へ?」
「私はとあるお方にお会いするためにこの日の本を訪れたのです」
「とあるお方?」
「はい、母に聞いた日本のサムライのトップに立つアシカガショーグンに……」
「足利将軍に会いに来たのか。……ならば貴様、我一緒に来い。うむ。我は五日後に京に向かい、将軍に拝謁するつもりだ。我について来れば、将軍に拝謁することも可能かもしれんぞ」
足利将軍はこの日本を統べる総大将である。
「そうですね。南蛮人のあなたが将軍や畏きところに拝謁を賜うことはまず不可能でしょう。強いツテがあるのならば話は別ですが……」
「そういったものは残念ながら……しかし、出会ったばかりの方々にご迷惑を掛けるのも気が引けてしまいます……」
「ふむ?我は一向に構わんが」
久遠はエーリカを助けようとしたが、流石に突然過ぎてエーリカが断るのも無理も無かった。
「久遠……あって間も無いのにエーリカさんに信用出来ないだろう。エーリカさん、一つ提案があるけど良いか?」
「提案ですか……?」
「等価交換で俺たちと契約しないか?久遠は南蛮人と繋がりを持ちたい、だから堺にいる間の南蛮人の通訳を頼みたい。もちろん、宿代食事代など負担する。その通訳のお礼に足利将軍に拝謁させる……っていいのはどうかな?」
「……良いでしょう、その契約であれば私自身も納得ができます」
エーリカも納得し、流牙との契約が成立した。
「よし!なら契約成立だな。これからよろしくね」
「ええ。よろしくお願い致します。まさかこの国で契約の概念を知っておられる方と出会う事になるとは。あなたはこの日の本の方では無いのですか?」
「まあそうだな。俺にとって契約は身近なものにあるからね……」
流牙はちらっと左手のザルバを見ながら答える。
「とにかく、約束は守るから安心して」
「はい。あなたを信じましょう。では私が乗ってきた船の、フェルナン・デ・ソウサ船長をご紹介しましょう」
こうして久遠は会合衆と呼ばれる大商人たちとも面を通し、エーリカの知人の南蛮商人とも関係が持てた。
武器・弾薬などの供給元を確保が出来た事に久遠は喜んでいたが、流牙には個人的にはそれ以上の収穫があった。
それはこの日本には無く、ヨーロッパにある果物や家畜なんかを手に入るように交渉が出来た。
病原菌なんかの対策もしないと駄目だが、それは詩乃たちに手伝ってもらいながら様々な手を打つつもりである。
ちなみに魔戒騎士である流牙は毒の耐性があるので特に問題無く食べる事が出来て大満足だった。
☆
堺に滞在しているある日、流牙は久遠と一緒に堺の町を出掛けることとなった。
目的は結菜への土産を買うためだ。
「何も買ってこなかったと言ったらどうなるかくらい、想像も付こう」
「雷が落ちるね」
「おや、気づいていたか?」
「まあね。よし、結菜に何を買おうかな?」
流牙と久遠は小物や飾り物が多く並んでいる小物屋に向かった。
アクセサリーなどを普段から身につけている流牙は慣れた感じで見ていくと目を惹かれるものがあった。
「おっ?これは……」
流牙が見つけたのは蝶の飾りがついたかんざしだった。
結菜は帰蝶という名があり、本人も蝶の髪飾りなどを持っていたので流牙は直感でこれが良いと思った。
その隣に対となったデザインの色鮮やかな蝶のかんざしがあり、思い立ったが吉日と言わんばかりにその二つのかんざしを持った。
「すいません、これをください」
「流牙!?そんなあっさりと結菜への土産を決めたのか!?」
「こういうのは直感だよ。あまり悩みすぎるといけないからね」
かんざしの路銀を払い、木の箱に入れてもらって店主からかんざしを受け取る。
「本当にそれで良いのか?」
「良いんだよ。仮に結菜が気に入らなかったらその分何かで埋め合わせをするからさ」
「そうか……」
「それから、はいこれ」
「えっ?流牙、お前……」
「久遠に似合うと思ったからね。思い切って買ったんだ。お土産というより贈り物だね」
「……まったくもう。お前という奴は」
「気に入らなかった?」
「この度の土産だからな。美濃に戻ってから、結菜と一緒につけてもらうことにする。……良いか?」
「ああ」
「だが、先にお前につけてもらうのは正室の我だからな!忘れるなよ!」
「俺で良ければ喜んで」
「うむ。約束、忘れるでないぞ」
久遠はよほど嬉しかったのかその後は上機嫌で買い物を続けた。
そして、流牙はこっそりともう一つ土産を買っていた。
それは桜の模様が描かれた櫛で遠く離れている大切な人……莉杏への贈り物だった。
心配をかけた莉杏へのお詫びと日頃の感謝の気持ちを込めての贈り物だ。
ちなみに男性から女性に櫛を贈るのはプロポーズと同じことなのだが……外界から隔離された無人島で十年も過ごしていて流牙がそのことを知るはずもない。
その後、色々な店を回っていると流牙の目にあるものが映った。
「え?これは……」
「見たことないものだな。琵琶に似ているが……楽器なのか?」
「ギターって言って多分南蛮の楽器だよ。驚いたな、ギターも売ってるなんて」
それは琵琶に似た絃楽器、いわゆるクラシックギターと呼ぶものだった。
「流牙よ、このぎたぁを弾けるのか?」
「うん、まあね。結構うまいよ?」
「そうなのか。よし、店主よ。このぎたぁを買わせてもらう」
「えっ!?久遠!?」
「さっきのかんざしの礼だ。それにお前の演奏を聞いてみたいからな」
久遠は悪戯っ子のような笑みを浮かべながらギターを専用のケースに入れられ、路銀で支払うとそのまま流牙に渡された。
「えっと、ありがとう、久遠」
「気にするな、その代わり良い演奏を期待しているぞ」
「あはは……久しぶりだからちゃんと練習しておくよ」
ギターを魔法衣の中にしまい、残りの時間を久遠と二人でゆっくり過ごすのだった。
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かつて繁栄を極め、今は廃れし西の都。
その中で自由を求め、争うきっかけを待つ者がいた。
共に歩むため、その者はあるものを求める。
次回『舞 〜Dance〜』
煌めくのは金色の光と黒き刃。
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