牙狼 〈GARO〉 -戦国ノ希望-   作:鳳凰白蓮

35 / 57
今回は流牙が熱いです。
連載初期からずっと書きたかった話の一つをやっと書けて一安心です。
この調子でどんどん書いていきたいです。


『子 〜Children〜』

流牙は美空たちと相談し、春日山城奪還に向けてまずは情報を集める事となった。

 

潜入調査が得意な流牙が春日山城内部、忍の小波は春日山城下の様子を調べる事となり、その間に美空たち長尾衆は兵を集めて各地の豪族を再び味方に引き入れる……そう言う話になった。

 

その他の流牙隊は流牙たちと美空たちの繋ぎを担当する事となった。

 

流牙と共に行きたいと手を挙げる者がいたが、出来るだけ少人数で動く方がやりやすいので流牙の説得でみんなは納得した。

 

翌朝、流牙と小波は早速流牙隊と長尾衆と別れて春日山城へ向かった。

 

春日山城の城下町に到着すると、町の空気はピリピリと緊張感が漂い、城の異変が城下にも伝わっているようだった。

 

流牙と小波は拠点として寒梅という旅籠の一室を借り、そこで一息をつき、改めて状況を整理する。

 

「俺は春日山城に潜入して内部を調査する」

 

「はい。私は春日山城の城下町の様子と周辺の豪族を調査します」

 

「もし何かあったらすぐに知らせてくれ。もし城の奴らに目をつけられたら俺のことは構わずすぐに撤退してくれ。俺のことは大丈夫だから」

 

「は、はい……あの、ご主人様」

 

「何?」

 

「必ず、私達の元に帰って来てくださいね……」

 

「何当たり前な事を言ってるんだよ。必ずみんなの元に帰るって」

 

不安そうな表情を浮かべる小波に流牙は笑みを浮かべて頭を撫でた。

 

「は、はい!」

 

「ところで……一つお願いがあるんだけど」

 

流牙からの突然の願いに小波はきょとんと首をかしげた。

 

「お願い?何でしょうか?」

 

「城下町を調査する時の小波の姿、見せて?」

 

何の他愛もない願いだったが、それを聞いた瞬間、小波は顔を真っ赤にして首を激しく左右に振った。

 

「っ!!?い、いけません!!」

 

「何で!?小波の忍装束以外の服装を見てみたいんだけど!?」

 

「わ、私如きのそんな姿をご主人様に見せられません!」

 

「どうしてうちの隊の何人かは自分を過小評価するのかな!?少しは梅の自信を分けてあげたいよ!!」

 

「と、とにかくダメですー!!」

 

小波が全力で却下するので流牙は無理やりはいけないと思い、大人しく引き下がったがいつか絶対に小波の忍装束以外の服装を着た姿を是非とも見たいと思いを強くするのだった。

 

翌日、流牙は小波と別れて早速春日山城に侵入すると同時に魔法衣を足軽と同じ格好にして変装する。

 

魔法衣は他人に対して認識障害のような法術が掛けられており、問題なく周囲に溶け込めている。

 

魔法衣の変化と認識障害、これらの能力で流牙は数々の潜入調査を難なくクリアすることが出来た。

 

そして、春日山城を歩いて感じたことは……。

 

(これは酷いな……余りにも城の中が汚すぎる)

 

流牙が最初に感じた感想はそれだった。

 

春日山城は少なくとも何週間も掃除されてない状態で所々が汚れ、埃が溜まっていた。

 

そこにいるだけで咳き込みそうだった。

 

しかも足軽たちは城下町以上に苛立っていてピリピリとした張り詰めた空気が広がっていた。

 

幾ら美空達と戦う前とはいえ、ここまで城の内部が酷いのは美空の姉と母の性格が出ていると流牙は感じた。

 

城の雰囲気を調べた次は流牙は目を閉じて耳に全神経を集中させた。

 

城にいる多くの人達の声を聞き取り、その中で二つの女性の声が聞こえた。

 

その二人は春日山城で異質な佇まいで一人は灰色の長髪をした露出度が高い着物を身につけ兎の耳のようなリボンを頭に付けた少女。

 

もう一人は深緑色の髪に柘榴の鎧に似た装備をしたスタイルがとてもよく、そして何故か頭に狐の耳みたいな髪飾りを付けていた。

 

恐らくは長尾衆の位の高い人間だとすぐに察した流牙はその二人の後を追う。

 

二人の話し声は小さなものだったが、流牙の耳にはちゃんと聞こえており、その内容は空と愛菜を心配するものだった。

 

(あの二人……敵じゃないな。少なくとも人質を心配する訳ないもんな……)

 

そう思っていた次の瞬間だった。

 

「何者だ!?そこに隠れている者、出て来い!」

 

深緑色の髪の少女が刀の柄を持ちながらいつでも抜刀出来るようにしながら振り返り、流牙の隠れている方向に向けて叫んだ。

 

隠れていたのがバレてしまい流牙は傘で顔を出来るだけ隠しながら二人の前に出る。

 

「貴様……何故私たちの後を追って来た?」

 

「す、すみません……ここに入ったばかりで道に迷ってしまい、お二人の後をついていけばなんとかなると思って……」

 

出来るだけ流牙は演技をして答えた。

 

「この先にはお前が来るような場所ではないぞ。何せ『大事な人質』がいるのじゃからな。下手に近づいたら城の者に殺されるぞ。ほら、早くあっちに行くのじゃ」

 

うさ耳の少女が手を払い、流牙にあっちに行けと指示する。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

流牙はその場から逃げるように立ち去り、うさ耳の少女が言った言葉に違和感を感じた。

 

(今あの子、俺に空ちゃんと愛菜ちゃんの二人がいることを教えてくれた……?)

 

流牙はうさ耳の少女が何を考えているのか分からなかったがすぐにその場から立ち去って次は城内の備蓄について調べに入った。

 

流牙を見送った二人は周りに誰もいないことを確認してから口を開いた。

 

「ふむ……貞子よ、あやつをどう思う?」

 

「はい。顔は見れませんでしたが、彼の纏う気は並大抵のものではありませんでした。下手したら柘榴や私以上。何者でしょうか……?」

 

二人の少女は流牙の正体には気付かなかったが、流牙の抑えきれない力の気には気付いていた。

 

「もしかしたら囚われた二人の娘達を思う母の差し金かもしれんな」

 

「まさか美空様の……?」

 

「その可能性はあるの。しかし、あれほどの力を持った男……この越後にいたかのぉ?」

 

「私の知る限りそのような方はいません。もしいたとしたら、越後でも名のある武将になってるはずです」

 

「そうじゃな……ん?いや、もしかしたら……」

 

「宇佐美老?」

 

「まさかな……仮にいたとして、それほどの男がこんな事をするわけないの……」

 

うさ耳の少女はある可能性を思いついたが、『その男』が美空と協力するはずがないと勝手に判断してその可能性を捨てた。

 

 

その後流牙は春日山城での調査を終え、夜になると同時に城を抜け出して小波と合流した。

 

小波も十分な調査を終え、翌朝の早朝には城下町を出て流牙隊の合流地点へ戻った。

 

それから美空たちと合流した流牙たちはすぐに会議を始める。

 

「……そう。空と愛菜は無事なのね」

 

「ああ。なんか小さな兎みたいな子と狐の耳みたいなのを付けていた女の子が二人のことを心配して話していたよ」

 

「その二人はうちの宿老と武将よ。おそらく空と愛菜を出来るだけ守るために城にいたのよ」

 

「そっか……」

 

空と愛菜がひとまず無事で一安心する美空たち。

 

しかし、流牙と小波が春日山城と城下町の酷い状態を伝えるとその表情が険しくなった。

 

美空が国を治めている安定していた時よりも比べ物にならないほど国が荒れており、何より敵が五千も付いている事が厄介だった。

 

「空さまと愛菜をどうにかしないと、やっぱり動きが取れないっす!」

 

「どうする?御大将」

 

「……今、考えてる」

 

美空はじっと虚空をにらみつけて何かを考えている。

 

人質がいる限り美空たちは責めることはできない。

 

流牙は春日山城に侵入してからずっと考えていた事を話そうとした時、秋子は何かを決意したように口を開いた。

 

「……御大将」

 

秋子は普段優しそうな表情とは違う厳しい表情を浮かべていた。

 

「何?」

 

「空さま、そして愛菜を切り捨てることを提案します」

 

「な、なに言ってんすか、秋子さん!養子とはいえ、愛菜は秋子さんの娘じゃないっすか!」

 

「娘でも、越後のために……いいえ、御大将の為にならないのであれば、即座に切り捨てる。それが武士というものではありませんか」

 

「……言いたいことは分かる。だけど反対」

 

「反対は受け付けません。……初めから、そうするべきでした。それさえなければ……」

 

「秋ーー」

 

美空が秋子に言葉をかけようとしたその時だった。

 

ガタン!!

 

突然、椅子から流牙が立ち上がり、美空の言葉が遮られた。

 

一葉達は流牙の顔を見て言葉を失い、美空と柘榴と松葉は目を疑った。

 

何故なら……流牙の表情が怒りに満ちていたからだ。

 

「ふざけるな……」

 

静かに呟いた流牙は秋子の前に立ち、激しく強い怒りに満ちた瞳で秋子を睨みつけていた。

 

「見捨てるのか?あんたの娘を……」

 

「そ、それしか方法がありません!最初からそうすれば……」

 

「ふざけるな!!!」

 

流牙は秋子の胸ぐらを掴んで顔を近づけた。

 

誰もがお人好しで優しいと称された流牙の暴力的な態度にこの場にいる誰もが驚いて言葉が出なかった。

 

流牙は娘の愛菜を見捨てようとした秋子に対して声を荒げた。

 

「あんたにとって、愛菜ちゃんはその程度の存在だったのか?邪魔になったらいつでも切り捨てる都合の良い存在だったのか?所詮あんたにとって娘はそんなものだったのか!?」

 

「っ!!?」

 

「今のあんたに……愛菜ちゃんの母親を名乗る資格なんてない!!」

 

それは今の秋子に対してあまりにも酷な言葉でそれを言われた秋子は唇を噛み締めて右手に力を込めた。

 

バチン!!

 

陣に大きな音が響いた。

 

秋子は両目に大きな涙を溜めながら右手で流牙の左頬を思いっきり叩いた。

 

流牙の左頬は赤く腫れ、胸ぐらを掴んだ手の力が抜けて秋子は解放された。

 

「あなたに……あなたに何がわかるんですか!!?」

 

秋子は柘榴や松葉と違って武将ではないが、美空の家老としてそれなりに鍛えており、流牙を押し倒して馬乗りをすると、拳を握りしめて流牙を殴り始めた。

 

「私だってこんなことを言いたくない!今すぐにでも愛菜を助けてこの手で抱きしめたい!あの子の声を聞きたい!あの子の温もりを確かめたい!でも、それが出来ないから、助けられないから、私が武士だから……こんなことを言うしかないんですよ!!!」

 

大切な娘を救えないかもしれないという自分の怒りと悲しみを全て流牙にぶつけて殴り続ける秋子。

 

柘榴や松葉が慌てて止めようとしたが、美空と一葉が無言で止めた。

 

美空と一葉は流牙の考えている事をすぐに察し、理解していたからだ。

 

秋子の本音を聞き出せた流牙は振り下ろされた拳を受け止めた。

 

「くっ!?」

 

「だったら……最初から諦めるなよ」

 

流牙は起き上がり、秋子の目尻に浮かんでいる涙を指ですくった。

 

「こんな涙を流すくらいなら、そんな悲しそうな表情を浮かべるくらいなら、最初から諦めるなよ」

 

「流牙さん……?」

 

流牙は秋子を退かすと瞼を閉じながら過去を語り出した。

 

「俺の母さんは……俺が修行に出てから十五年間……邪悪で卑劣な心を持った男に連れ去られて飼い殺されていたんだ」

 

「えっ……?」

 

思わず呟いた秋子の呆然と驚きの言葉、しかしそれは美空達も同様で目を見開いて流牙を見ていた。

 

「母さんは俺が修行に出てから死んだと師から言われていた。だけど、母さんは十五年間も俺の事を思い続けながら、体に走る激痛に耐えながら俺と再会する事を夢見ながら必死に生きていた。そして……母さんは師に助けられて、俺と再会することができた……」

 

流牙は春日山城の方角を指差した。

 

そこには不安で仕方ないであろう空と愛菜の二人がいる。

 

流牙は母を……波奏を本当の意味で救う事は出来なかった。

 

しかし、空と愛菜はまだ救う事が出来る。

 

「だけど、あんたの娘は死んでいない!春日山城に、手が届くところにいるんだ!!愛菜ちゃんはあんたと再会するのを待ち続けている、母親のあんたが簡単に諦めちゃダメだ!最後の最後までまで抗えよ!!」

 

「でも……どう考えても、二人を無事に助ける方法が……」

 

「……美空!」

 

「何かしら……?」

 

「俺が……二人を必ず助ける!春日山城から連れ出して、美空と秋子さんの元に連れ戻す!!」

 

「……出来るの?」

 

「いやいや、リュウさんも見たっすよね?春日山城は見て分かる通り難攻不落っすよ」

 

「出来るわけがない」

 

「問題ない。春日山城に潜入調査をしてから作戦は既に考えているし、可能性は充分にある。相手は難攻不落な城にいるからこそ侵入されないだろうと油断しているからそこを突く」

 

何度も城に忍び込み、更には囚われた人を何人も救出もしてきた流牙には大きな確信があった。

 

流牙は秋子を立たせ、両肩を掴んで愛菜を諦めないように奮い立たせる。

 

「秋子さん……俺はどんな絶望的な状況でも僅かな可能性がある限り、最後まで戦い続ける。だから、あんたも最後まで諦めるな!!」

 

流牙に自分が一人の母親であると諭され、神にも縋る気持ちで流牙の前で頭を下げ、再び涙を流して怒りや悲しみではなく今度は切なる願いをぶつけた。

 

「流牙、さん……お願いです……愛菜を、愛菜を助けてください……!」

 

「任せてくれ」

 

流牙は秋子の母としての本音を聞き、美空に目線を向ける。

 

「道外流牙どの」

 

「……ああ」

 

「力をお借りしたい。春日山城内に囚われている二人の娘、空と愛菜を取り戻して頂きたい。成功の暁には、この私の全てをかけて、あなたが満足する恩賞を授けましょう」

 

「承知した!必ず……二人を助ける!」

 

美空との固い約束を交わし、流牙は空と愛菜を取り戻すと誓った。

 

「とりあえず詳しい話は後にしましょう。流牙……あなたはまず自分の陣に戻ってその顔を冷やしてきなさい。色男が台無しよ」

 

「色男じゃないけど、そうさせてもらうよ」

 

流牙は一葉達と共に流牙隊の陣に戻った。

 

陣に戻るなり流牙の所々赤く腫れた顔を見てみんなは驚愕し、急いで冷たい水を用意して濡らした手拭いで顔を冷やしていく。

 

また、秋子が殴ったと聞き、小夜叉や梅を筆頭に殴り込みに行こうとしたが、流牙にわざと殴られるように言ったのだからと梅たちを止めた。

 

それから少し経つと流牙に内緒で美空の陣に結菜と一葉が呼ばれた。

 

何事かと二人は疑問を抱いていると、美空はどうしても聞きたい事があった。

 

「ねえ、流牙のお母上に何があったの?」

 

それは美空が聞いて当然の内容だった。

 

秋子の言葉に流牙が豹変し、秋子の本音を聞き出して空と愛菜を必ず助けると約束した。

 

しかもそれはもはや美空に恩を売るとか関係無しに流牙のただ助けたいという強い意志が感じられた。

 

何故そこまでするのか、美空は不思議で仕方なかった。

 

「あの、美空様……」

 

「どうしてそれを余たちに?」

 

「あなたたち二人が流牙に一番近い存在だと思ったからよ」

 

美空から見て結菜と一葉が流牙に一番近い存在だと思い、二人を呼んだ。

 

流牙の母、波奏との壮絶なる過去を話していいものだろうかと二人は悩んだが、流牙さあれほど大きな騒ぎを起こしたのだ。

 

いずれ流牙の口から語られる可能性がある。

 

辛い過去を語らせるよりはマシだと思い、二人は怒られる覚悟で美空たちに話すことにした。

 

「良かろう……話した方が良いな。結菜」

 

「そうですね……では、まず美空様と秋子さんに一つ質問します」

 

それは流牙が初めて結菜に質問した時の言葉だった。

 

「もしも二人のご息女……空さんと愛菜さんが敵に目を潰されたら、自分の目を犠牲にしてでも、その子たちの目を元に戻したいですか?」

 

 

細く欠けていく月が暗闇を照らす夜。

 

美空は陣から離れて一人で河原にいた。

 

冷たい川の水で足を濡らし、バシャバシャと足を遊ばせながら月を見上げた。

 

「本当に難儀で馬鹿な男……」

 

美空は流牙の事を考えていた。

 

結菜と一葉から流牙と波奏の過去を聞いた。

 

幼き日の約束を守り続け、十五年の長い間も不屈の心で耐え続け、そして己の光を愛する息子に捧げた。

 

人間は欲の深い生き物……だがここまで自分ではない息子の為に己の全てを捧げられる母親はこの世界に何人いるだろうか?

 

少なくとも、自分の母親は愚かな人種に入る。

 

母親の所為で自分の人生は何度も狂わされ、今は愚かで無能な姉と結託して空を人質にするという愚行に出ている。

 

その母親のお陰で多くの大切な者ができたのは確かだが……流牙と波奏の親子の絆は美空にとって衝撃的なものだった。

 

波奏は己の身と魂を削り、ガロの鎧を金色にする為に想像を絶する激痛と邪悪な者に利用されている苦痛を十五年も耐えてきた。

 

その苦しみから解放されてやっとの思いで息子と再会出来たのも束の間、強敵の刃で潰された息子の両目を何のためらいもなく自分の目の光を対価に元に戻し、二度と息子の顔を見られなくなってしまった。

 

最後は魔獣となりつつあるその身を人間として死ぬ為に息子の剣で斬られる事を望んだ……。

 

どれだけ天はこの二人に悲しく辛い試練を与えれば気がすむのだろうと美空はその話を聞いて他人事なのに珍しく苛立って近くの木に怒りの拳をぶつけるほどだった。

 

そして、流牙は波奏と必ず生き残り、その瞳に多くの笑顔を写すという約束を交わして波奏に牙狼剣の刃を突き刺し、唯一の家族との永遠の別れを告げた。

 

美空は流牙をお人好しで魔戒騎士としての修羅の道を生きる事しかできない難儀な男だと思っていたが、それは少し違っていた。

 

最愛の母の願いと約束を胸にその命が尽き果てるまで戦い続ける、優しくも哀しき戦士だったのだ。

 

「一葉様たちがあいつに惹かれていく理由が少し分かってきたわ……」

 

流牙の心の優しさや戦士の強さ、助けてくれた事に対して惚れた事も理由の一つでもあるだろうが、根本的な理由は一つ……。

 

優しすぎる流牙が壊れないように側で支え、守りたいと思うからこそ自然に周りに多くの女たちが集まるのだろう。

 

そして、そんな流牙が愛する娘たちの空と愛菜を必ず助けると約束した。

 

「あんたに越後の未来を託したわよ……流牙」

 

余りにも部の悪い賭けかもしれない、だが美空は越後の当主として、空の母親として、流牙ならそれをやり遂げると信じ、賭けてみたくなった。

 

越後の未来を背負う二つの幼星の未来は流牙の手に掛かっているのだった。

 

 

 




偶然か必然の出会いによって人は集まる。

時を重ね、紡ぐ大切な繋がり。

次回『信 〜Trust〜』

心と心の繋がりが大きな力を生む。



.

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。