牙狼 〈GARO〉 -戦国ノ希望-   作:鳳凰白蓮

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ザジとのバトルです。
自分なりに流牙の戦いを魅せられたかなと思います。
そして次回は……?


『闘 〜Fight〜』

時間が止まった世界の中で人質となった結菜たちと力を失った轟天を守るために流牙は黄金騎士に倒されたホラーの怨念が集まった時空ホラー・ザジと対決する。

 

流牙は最初から全力で動き、剣術と体術を駆使してザジを攻撃する。

 

攻撃しながらザジの最大の武器である爪と剣を特に注意し牙狼剣で防ぎ、捌いていくが爪と剣の二つの武器を相手に牙狼剣一つでは分が悪く逆に流牙が攻められていく。

 

ホラーの怨念が集まって生まれたザジの力は並みのホラーを遥かに超える強さを持っていた。

 

このままではジリ貧でやられてしまう、そう感じた流牙は自分だけが持つ『力』を駆使する。

 

「来い!!」

 

流牙は魔法衣の端を翻すと牙狼刀が現れた。

 

柄を持って勢いよく鞘から刃を引き抜き、鞘はそのまま魔法衣の中へ戻り、牙狼刀を振り下ろしてザジに斬りかかる。

 

ザジは慌てて牙狼刀を爪で受け止め、目の前に迫る牙狼剣と牙狼刀の二つの刃に目を見開いて驚愕した。

 

『何!?黄金騎士が剣と刀の二刀流だと!?』

 

黄金騎士ガロの武器は牙狼剣……それは絶対に変わらないことだ。

 

流牙のは牙狼・翔へと形を変えた事で牙狼剣が前の物よりも一回り大きくなっていたが、それでも古から受け継がれてきた牙狼剣と言うことには変わらない。

 

しかし、牙狼刀と言う鬼を討滅するだけではない魔戒の力を持つ刀を操ることにザジは驚きを隠せなかった。

 

今まで戦ってきた黄金騎士は皆、牙狼剣主体の戦いをしていた。

 

その中には拳や蹴りなどの体術を加えた者や牙狼剣を納める赤い鞘を使った二刀流を扱う者もいた。

 

しかし流牙は今まで戦ってきたどのガロの継承者とは異なる力を持っており、その事にザジは恐怖を覚えるがそれと同時に心が湧き上がるような興奮が体を走る。

 

『面白い!それでこそ、殺しがいがあると言うものだ!!』

 

大笑いをしながらザジは大剣と爪を激しく振るい、流牙も牙狼剣と牙狼刀で受け止めていく。

 

流牙は敢えて受け止めることに専念し、反撃の時を静かに待っていた。

 

激しい動きの中に必ず隙が生まれる……ザジの爪を牙狼剣で受け止めるとすぐに手の甲を牙狼刀で突き刺した。

 

『グォオッ!?』

 

ザジは激痛に耐えながら大剣を振り下ろすと流牙は牙狼刀から手を離して魔法衣から牙狼剣の鞘を取り出した。

 

牙狼剣を鞘に納めると仕込刃が十字に展開し、鞘に納めたまま大剣を受け止めるとその衝撃で仕込刃が発射された。

 

鞘から発射された仕込刃はザジの顔に突き刺さった。

 

『グォオオオッ!!?』

 

思わぬ反撃にザジは絶叫すると、流牙は回し蹴りを食らわせてザジを蹴り飛ばし、手の甲に刺した牙狼刀を抜いた。

 

そして、一気に牙狼剣と牙狼刀で怒涛の剣戟をザジに喰らわせる。

 

「うぉおおおおおおおっ!!!」

 

二つの白銀の刃が煌めき、ザジの体を次々と切り裂いていく。

 

戦国の世で数多の鬼を切り裂いてきた天狼の刃が怨霊を滅多斬りにする。

 

そして、滅多斬りにされたザジの体は力を失って消滅するが、まだ気配が完全に消えていなかった。

 

「……ザジ!まだ続ける気か!」

 

『当たり前だろう……!』

 

ザジの声が響くと森の異空間が今度は無数の星々が煌めく夜に廃墟が宙に漂う不思議な世界へと移動させられた。

 

『今までは貴様自身の力を見せてもらった。次は黄金騎士としての力を見せてもらうぞ!!』

 

再び現れたザジはその体を一回りも巨大化させてその力を何倍にも増幅された『超ザジ』へと姿を変えた。

 

『さあ、黄金の鎧を纏え!この空間は貴様の鎧の時は存在しない!そして、今度こそガロの系譜を永遠に消し去ってやる!!』

 

魔戒騎士の鎧は99.9秒の時間制限があるが、魔界や異空間ではその制限が一切無くなり、心滅獣身の心配がなくなる。

 

「そうはさせない……俺は誓ったんだ。この想いを、ガロの輝きを未来へと繋いでいくと!必ず貴様を倒し、みんなの元へ戻る!!」

 

流牙は牙狼剣を掲げ、円を描いてガロの鎧を魔界から召喚して一瞬で装着し、大剣と大刀となった牙狼剣と牙狼刀でザジに斬りかかる。

 

巨大化したザジの剣のような爪が牙狼剣と牙狼刀とぶつかり合い、激しい火花が散る。

 

すると、牙狼剣と爪が激突した瞬間、ザジの胸から腕が現れて流牙の首を掴んだ。

 

「ぐあっ!?」

 

『ウラァッ!!』

 

ザジは流牙の首を抑えながら巨大な足で踵落しを喰らわせて思いっきり蹴り落とした。

 

「があっ!?」

 

そのまま廃墟を破壊するほどの勢いで叩き落とされ、流牙は異空間の真下……底が見えない奈落へと落ちて行った。

 

ザジは飛ぶ術がないガロ……流牙にトドメを刺そうと急降下をしながら爪を前に突き出す。

 

しかし、ザジは知らなかった。

 

流牙だけのガロの力……心の闇を受け入れた漆黒の輝きを。

 

「はぁっ……ふっ!!」

 

牙狼剣から闇の力が溢れ出し、金色の鎧が漆黒に染まり、背中に漆黒の翼が現れた。

 

『な、何ぃっ!!?』

 

そして、流牙は急降下するザジを通り越して空高く舞い上がり、蝙蝠のような漆黒の翼を大きく広げた。

 

鎧が牙狼・闇へと姿を変えたことにザジは口を開けて呆然とした。

 

『お、黄金騎士が……ガロが、漆黒の闇を纏っただと……!?』

 

今まで戦って来た全てのガロは皆、同じ黄金の輝きを秘めていた。

 

しかし、黄金騎士が漆黒の闇を纏うその姿に今までのガロとは違いすぎることにザジは再び混乱するのだった。

 

「これが俺の大切な人の想いの力で手に入れた、俺だけのガロの力だ!」

 

流牙は黄金の光と漆黒の闇を持って邪悪なる怨念を討つ為に空を駆け抜ける。

 

ザジも翼を背中から生えさせて流牙の後を追いかけ、今度は亜空間の夜空を高速に翔ける激しい空中戦となった。

 

幾つものの刃が激突し、互いに強く弾き返し、ザジは体に力を込めると翼から無数の短剣を作り出して一斉に発射した。

 

無数の短剣は流牙の周りを取り囲み、串刺しにするように弾丸のように飛んだ。

 

「はぁあああああっ!!!」

 

全ての短剣を牙狼剣と牙狼刀で斬り落とし、鎧を闇から翔へと戻して急降下しながらザジの間合いに入る。

 

間合いに入って来た流牙を追い払おうと、爪を振りかざしたザジに対し、流牙は体を横に回転させながら牙狼剣と牙狼刀で斬りはらい、遂にザジの両腕を斬り落とした。

 

『ぐあっ!!ば、馬鹿な!?』

 

「はっ!!!」

 

ザンッ!!!

 

そして、ザジの胸に牙狼剣と牙狼刀を深く突き刺した。

 

『グゴッ!?』

 

「ザジ……これで、終わりだあっ!!!」

 

牙狼剣と牙狼刀を持つ両手から両腕に全ての力を込めて左右に斬り開き、ザジの胴体を真っ二つに切り裂いた。

 

胴体を真っ二つに切り裂かれたザジの下半身は消滅し、残った顔などの上半身も少しずつ砂のように消滅しながら流牙を睨みつける。

 

『これで、終わりではない……俺はまたいつか必ず蘇る……そして、何度もその称号を継ぐ者たちを呪い、襲うだろう。その称号がある限り、お前たちは永遠にその命を狙われ続けるのだ!!』

 

ザジは消滅しても倒されたホラーの怨念が募り、必ず蘇って再びガロの継承者に襲いかかる。

 

それは黄金騎士の切っても切れない宿命の呪いとも言えるものだった。

 

「例え何度お前が時空を超え、戦いを挑もうとも過去から現在、そして未来へ紡がれる想いの力がある限り、俺は……否、『我ら』は絶対に負けない!!」

 

『な、何……!?』

 

流牙は守りし者として、その称号を継ぐ継承者として過去から受け継いだ『その名』を叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が名は牙狼!!黄金騎士だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黄金騎士として威風堂々と名乗る流牙にザジは怨みを込めながら叫んだ。

 

『おのれぇええええええーーっ!!!』

 

そして、ザジの体が爆発し、遂に黄金騎士に倒されたホラーの怨念から生まれた魔獣を討滅した。

 

流牙は討滅したザジに背を向け、ガロの鎧を魔界に送還しようとした……その時だった。

 

『っ!?流牙!まだ終わってないぞ!』

 

「何!?」

 

ザルバの警告で急いで振り返ると討滅し、宙に舞うザジの粒子が集まり、ボコボコと不気味に混ざり合っていく。

 

「何だ!?何が起きているんだ!?」

 

『流牙!ザジは鬼の力を吸収していたみたいだ!』

 

「鬼の力!?」

 

『だが、ホラーと鬼の力が奴の中で混ざり合い、ザジと言う支配者がいなくなったことで新たな存在が生まれようとしている!!』

 

ザジの粒子が集まり、形を成して現れたのは翼を持った素体のホラーの体に巨大な爪と角を持った魔獣が現れた。

 

「ホラー……!?いや、鬼なのか……!?」

 

『あれは……ホラーと鬼のハーフみたいな存在だ!ホラーの怨念から生まれたザジが鬼の力を取り込んだ事で偶発的に生まれたんだ!』

 

集まった粒子から次々と生まれるホラーと鬼のハーフ……『ホラー鬼』

 

ホラー鬼は狙いを定めると翼を羽ばたかせて一斉に流牙に襲いかかる。

 

『『『ゴォオオオオオッ!!!』』』

 

「ぐっ!?があっ!?」

 

流牙は攻撃を受けながら牙狼剣と牙狼刀を振るうが、ホラーや鬼が持つスピードやパワーを兼ね備えた最悪な存在に追い詰められていく。

 

それが次々と生まれて行き、鎧にダメージを与えて行き、九頭竜川の時の鬼と同じように大量のホラー鬼に押しつぶされそうになっていく。

 

亜空間による鎧の時間制限がなくなり、心滅獣身になる心配がなくなったが、それでも絶体絶命の危機には変わりなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

邪悪なる力に流牙が命が奪われそうになったその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ヒヒィーン!!!』

 

馬の高い声と共に空の果てから一つの金色に輝く流星が飛来し、流牙を囲むホラー鬼に突撃し、全てのホラー鬼を吹き飛ばした。

 

ホラー鬼に押しつぶされそうになり、横たわる流牙の前に現れたのは一人の騎士だった。

 

「黄金騎士……!?」

 

流牙の目に映ったのは金色の輝きを放つ魔導馬に跨る黄金騎士。

 

黄金騎士は流牙を見下ろしながら鎧の中で静かに口を開いた。

 

「……無事のようだな」

 

騎士は流牙に素っ気なくそう言った。

 

それは……流牙の橙色の瞳とは異なる、翡翠の瞳を持つ黄金騎士ガロだった。

 

時空を超えた奇跡……二人の黄金騎士が出会うのだった。

 

 

 

.




それは世界を彷徨う一人の旅人。

愛する者を救う果てしない旅。

旅人は彼と同じ黄金の輝きを秘めていた。

次回『鋼 〜Kouga〜』

鋼の牙が闇を切り裂く。



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