皆さん大ファンの最強無敵の伝説降臨です!!!
インフルエンザでダメージを受けながらもなんとか書き切れました……。
ザジを撃破した流牙だったが、ザジが取り込んだ鬼の邪気が暴走し、ホラーと鬼のハーフであるホラー鬼が誕生してしまい、流牙は絶体絶命の危機に陥った。
そこに颯爽と現れたのは壁画と同じ金色の鎧の騎士と金色の馬……正しくそれは黄金騎士ガロと魔導馬轟天だった。
「ガロと、轟天!?」
流牙は今までで一番の驚きで目を疑った。
そのガロは翔になる前の鎧の形で瞳の色が橙色ではなく、詩乃と同じ翡翠の瞳をしていた。
ガロは轟天に乗ったまま見下ろしながら流牙に話しかけた。
「立てるか?」
「はい……」
流牙は立ち上がり、ガロと向かい合った。
何とも不思議な光景だった。
自分もガロの鎧を身に纏いながら翔以前の昔の形をしたガロの鎧を纏った者と向かい合う事に流牙は奇妙な感覚を覚えた。
「形は少し異なるが、それはガロの鎧か?」
翡翠の目を持つガロは流牙の纏う鎧を見ながら静かにそう尋ねた。
「はい!!」
流牙は緊張しながら声を出して返事をした。
鎧越しの声しか分からなかったが、その佇まいはとても落ち着いており、自分よりも遥かに上の死地を潜り抜け、卓越した騎士であると瞬時に理解した。
「……まだ戦えるか?」
「当然です……ふっ!」
流牙は牙狼剣と牙狼刀を拾い、牙狼剣を掲げると再び闇の力を纏って牙狼・闇となり、漆黒の翼を広げ、その姿に翡翠のガロは目を疑った。
「ガロの金色の鎧が漆黒の闇を纏った……!?お前、まさか暗黒騎士なのか!?」
魔戒騎士の禁忌……心滅獣身のその先の禁断の境地、闇に堕ちた最凶最悪の騎士。
それが暗黒騎士。
闇の力を扱う流牙に翡翠のガロは暗黒騎士なのかと勘違いをするが流牙は首を左右に振って否定する。
「違います!この力は俺を想う大切な人と、俺自身の心の闇を受け入れたことで手に入れた光と共にある闇の力です!!」
流牙の強い意志を持つ声に翡翠のガロはジッと流牙を見つめた。
流牙のガロの鎧は確かに漆黒の闇を纏っていたが、その奥底から眩き金色に輝く光が秘められていた。
「なるほど……確かにお前から強い光を感じる。まさか対を成す光と闇を備え持ち、尚且つ二刀流のガロがいるとはな。お前には俺にはない力を持っているようだな」
翡翠のガロは流牙の事を認めると、その直後にホラー鬼達が次々と増殖していき、亜空間の星空を覆い尽くすまでの数となっていく。
「無限に増え続けている……一匹でも倒し損ねたらまた増えるな。お前、烈火炎装は使えるか?」
「もちろんです!」
流牙は牙狼剣と牙狼刀を交差させて火花を散らせるとその身に翡翠の魔導火を纏って烈火炎装を発動させる。
「ふっ……」
翡翠のガロは何かを思い出したかのように小さく吹き出した。
「あの、何か……?」
「……昔、お前と同じ二刀流の魔戒騎士とこうして烈火炎装を纏いながらホラーの大群と戦ったことを思い出しただけだ」
翡翠のガロも流牙と同じ色の魔導火を纏って烈火炎装を発動させる。
同じだが異なる金色の輝きを持つ二人の黄金騎士ガロ……闇を照らすその輝きを恐れたホラー鬼たちは一斉に襲い掛かる。
「ハァッ!!!」
「フッ!!!」
翡翠のガロが先陣を切って轟天を走らせ、その後を流牙が漆黒の翼を羽ばたかせて続く。
烈火炎装を発動しているガロの鎧はその魔導火に触れるだけで並みのホラーは問答無用に焼き尽くされて消滅する。
それに加えて同じソウルメタルで構成された体を持つ轟天の体にも魔導火が灯され、止まることのないその脚で天を駆け抜け、主であるガロと共に突撃してホラー鬼を焼き尽くしていく。
流牙は空を自由自在に駆け巡りながら牙狼剣と牙狼刀を振るい、轟天と共に駆ける翡翠のガロと同等の戦いを見せた。
二人の黄金騎士が天を風の如く駆け抜け、闇を焼き尽くすその姿はさながら亜空間の夜空を彩る二つの流れ星だった。
わずか数分で数百……否、千体近くのホラー鬼を討滅し、最後の一体を二人同時に斬り裂くと怨霊の最後の悪あがきが起きた。
微かに残ったホラー鬼の邪気が一つに集まり、そこにザジの意識が再び目覚めた。
『おのれぇ……黄金騎士めぇえええええーーーーっ!!!』
ザジの最後の怨念……余りにも儚い怨念が二人の黄金騎士に襲い掛かる。
『ヒヒィイイイーン!!!』
轟天の高い叫び声と共に後ろ足で立ち上がり、前足で地面を思いっきり叩きつけ、聖なる蹄音を響かせた。
キィーン!!
轟天から放たれた衝撃波が周囲に響かせると、二つの牙狼剣に大きな変化が起きた。
牙狼剣の刃が何倍にも巨大な両刃となり、大型のホラーも一撃で葬れるガロの必殺剣の一つ……『牙狼斬馬剣』へと姿を変えた。
轟天の蹄の音は牙狼剣を構成するソウルメタルに大きな変化を与えることができる。
流牙は自分の牙狼剣も変化した事に驚きながら残り全ての魔導火を牙狼斬馬剣に纏わせ、翡翠のガロも同じように牙狼斬馬剣に魔導火を纏わせる。
そして、向かってくるザジの怨念に二人は牙狼斬馬剣を振り上げる。
「「うぉおおおおおおおっ!!!」」
魔導火を纏わせた牙狼斬馬剣で同時にザジの怨念を叩き斬り、今度こそ塵一つ残さずに消し去った。
ザジとホラー鬼を残らず全て討滅し、今度こそ戦いが終わるとザジが作り出した亜空間が消え、代わりに真っ白な亜空間へと変わった。
流石に濃厚な戦いを続けた流牙は疲れが出て鎧を魔界に送還した。
そして……翡翠のガロは轟天を魔界に送還してから地に降り、元の大きさに戻った牙狼剣を鞘に収めた。
「これでもう大丈夫だな」
翡翠のガロも流牙と同じように解除して魔界に送還した。
鎧を解除したガロの装着者……それは純白の魔法衣に漆黒の軽装の鎧に身を包んだ茶髪の男だった。
黒のイメージがある流牙とは対照的にその男は白のイメージが強かった。
男の左手中指には流牙の持つカバーが付いたザルバとは異なる前の姿のザルバがはめられており、静かに流牙に近づいた。
流牙はその男に対して姿勢を正し、頭を深く下げた。
「助けてくれて、ありがとうございます」
この男には敬意を表して礼を言わなければならないと流牙は誠心誠意を込めて礼を言う。
「礼には及ばない。それよりも、お前もガロの称号を継ぐ者か?」
「はい!俺は道外流牙!黄金騎士ガロの称号を受け継ぐ者です!!」
「道外、流牙……なるほど、あの子の言っていたガロはお前のことか……」
男は何かを知っていたようでなるほどと言った風に小さく頷いた。
「え?」
「いや、何でもない。今度は俺が名乗る番だな」
鋼牙は無愛想な表情から小さく笑みを浮かべて名を名乗る。
「俺の名は冴島鋼牙だ」
流牙とは異なる世界の黄金騎士ガロの継承者……冴島鋼牙。
鋼牙は流牙よりも魔戒騎士として、黄金騎士として格上であり、先輩として流牙と話す。
「お前はザジに連れ去られてこの世界に来たな?だとしたらもうすぐ元の世界に帰れるだろう」
「そうですか……でも、あなたはどうしてこの世界に?」
「俺はある目的のために時空をさ迷っていた。少し前に倒したはずのザジの気配を感じて轟天でここに来たんだ」
「そうでしたか……あの、ある目的とはもしかして、あなたの大切な人を探して?」
鋼牙の憂いの表情に流牙は大切な誰かを探しているような気がした。
「分かるのか……?」
「何となくですが、例えば……あなたの奥さんとか?」
既にたくさんの妻を持つ流牙は鋼牙の時空をさ迷う理由を推測すると、鋼牙は静かに頷いた。
「……そうだ、俺の愛する女だ。亜空間の歪みに飲み込まれて今もさ迷っている」
「亜空間の歪みに!?大丈夫なんですか!?」
「心配ない、あいつは強い女だ。息子の為にも必ず連れ戻す」
必ず妻を連れ戻し、愛する息子の元へ戻る。
それは一人の男として、夫として、父として、鋼牙の瞳には強い決意が込められていた。
「鋼牙さん……」
「そろそろ時間か……」
鋼牙の体が徐々に薄くなり、この亜空間にいられなくっていた。
すぐに次の亜空間へ移動しなければならなくなり、鋼牙は流牙に背を向けてゆっくりと歩き出す。
そして、最後に流牙に顔を向けて言葉を送る。
「流牙、俺は自分の旅を続ける。お前は自分の守りし者としての信じる道を突き進め」
「はい……!!!」
流牙は強く頷いて頭を深く下げ、鋼牙は再び歩き出して光の中へと旅立って行った。
そして、鋼牙を見送った流牙の体も徐々に薄くなり、亜空間から消えた。
(もっと強くなろう……黄金騎士として、守りし者として、鋼牙さんのように……)
異世界の黄金騎士ガロの継承者、冴島鋼牙との出会いは同じ黄金騎士として流牙はもっと強くなることを心に誓った。
☆
流牙は元の異世界に戻り、轟天の前に降り立つと緊張の糸が途切れてその場に座り込む。
その直後にザジに止められた時間が動き出し、結菜たちは突然座り込んだ流牙に唖然とする。
「流牙……どうしたの?」
「ごめん……疲れて動けないや。このまま寝かせて……」
そのまま大の字に横たわり、流牙は眠りについた。
突然流牙が眠りについたことで結菜たちは慌てて駆け寄った。
魔戒法師の血が流れ、記憶を持つ光璃は流牙に何かが起きたと察してすぐに地上へ運んで流牙の体に異常がないか調べた。
調べた結果、流牙は急激な疲労で眠ってしまった事がわかり、そのまま流牙を天馬神社で休ませる事にした。
『……ブルッ……!』
一方、地下に眠る轟天は流牙が扉を開けた事で意識を取り戻し、目覚めようとしていた。
それにより、流牙の持つ牙狼剣、そして……魔界に眠るガロの鎧が静かに鼓動を繰り返して輝きを放っていた。
一度失われた黄金騎士ガロの力……その全ての力が蘇る時が近づいていた。
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力を失いしもう一つの金色。
長きにわたる眠りから目覚める。
それは天狼の失われし全ての力が揃う時。
次回『轟 〜Gouten〜』
天に轟く輝きが闇夜を照らす。
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