牙狼 〈GARO〉 -戦国ノ希望-   作:鳳凰白蓮

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続々と流牙の誑しという名の毒牙にかかる人続出です(笑)
まあ魔戒騎士には跡取りは必要ですし何も間違っては・・・・・・(爆)
早く一葉ちゃんや市ちゃんを登場させたいです。


『守 〜Gard〜』

詩乃の危機に間一髪駆けつけた流牙。

 

流牙の後にひよ子と転子が遅れてやってきた。

 

「ひよ、ころ。詩乃ちゃんを頼む」

 

「はいっ!」

 

「了解です、お頭!」

 

「くっ、貴様ら何やつだっ!?我らを美濃国主・斉藤龍興さまの臣と知っての狼藉!」

 

「そんなこと知らないよ。少なくとも……たった一人のか弱い女の子を寄ってたかって武器を持った男を使って囲った大馬鹿者を俺は許せないね」

 

「お、大馬鹿者だと!?」

 

「全く……莉杏がいたらブチ切れて手がつけられなくなってるよ」

 

ボソッと呟きながら斉藤達を睨みつける。

 

普段は激昂しやしい流牙を宥める莉杏だが時折女の子関係などで流牙以上に激昂することがある。

 

「とにかくあんた達の相手は俺一人で十分だ。かかって来な」

 

「何を呆けたことを!たった一人に何が出来る!それに、武器を放り投げた愚か者の癖に!」

 

斉藤は流牙が投げた牙狼剣を掴んで武器を奪い取ろうとしたがそれは無理だった。

 

「なっ……!?う、動かない!?そんな馬鹿な!?」

 

牙狼剣……魔戒剣の刃であるソウルメタルは女には扱うことはできない。

 

増してや、守りし者ではない悪き心を持つ人間に魔戒剣を持ち上げることすら不可能である。

 

「どけ」

 

「うわぁっ!?」

 

流牙は斉藤の前に立ち、片手で思いっきり飛ばして地面に突き刺さった牙狼剣を軽々と引き抜く。

 

「この剣はあんたみたいな人が持つもんじゃないんだよ」

 

「どこまで我に侮辱を……ええい、何をしている!相手は一人だ!取り囲んで討ち果たせ!」

 

斉藤家の足軽が流牙を取り囲もうとするが、牙狼剣を鞘に戻した流牙はパキポキと手の関節を鳴らす。

 

「怪我はあまりさせないつもりだが……痛いのは我慢しろよ!!」

 

流牙はアクロバットな動きをして足軽を翻弄し、刀や槍の武器を踏みつけたり、叩き割ったりして破壊する。

 

「女の子をいじめる奴らには、俺の相棒に代わって性根を叩き直してやる!覚悟しろ!!」

 

そして、流牙は拳や蹴りで鎧越しにダメージを与え、足軽を怪我をしない程度に叩きのめして戦意を喪失させていく。

 

「ええい!何をやっておるのだ!たかが山賊に遅れを取るなど、日の本最強である美濃八千騎の名の穢れであるぞ!」

 

「し、しかし……!奴はかなりの手練れ!徒士風情では相手が務まりません!」

 

「ちっ。……ならばあれを出せ!」

 

「はっ!」

 

斉藤は足軽に鉄砲を持たせて流牙達を撃ち殺そうとした。

 

「鉄砲か……」

 

「て、鉄砲だー!」

 

「まずいですよお頭!すぐに退かないと!」

 

鉄砲の登場にひよ子と転子は驚くが、流牙は驚いておらず、つまらないと言った表情をしながらひよ子に尋ねる。

 

「ねえ、ひよ。初めて会った日の屋敷の模擬戦の事を覚えてる?」

 

「え?あっ!そうだ、お頭は……」

 

「ふははははっ!貴様ら山賊など、鉄砲一丁あれば皆殺しにできるのだ!我ら美濃武士に逆らったことを死んで後悔するが良い!」

 

「じゃあ撃てば?」

 

「何!?」

 

「ほら早く撃ってみなよ。その鉄砲で俺を殺してみろよ」

 

「はっ!そんなに死に急ぎたいなら今すぐ殺してやる!撃てぇっ!」

 

流牙に向けられた鉄砲から弾が飛んでくるが、

 

キィン!!!

 

鞘から牙狼剣を抜き、弾の弾道を見切って弾を真っ二つに切り裂いた。

 

「なっ!?ば、馬鹿な……」

 

「ええっ!?鉄砲の弾を切ったぁっ!?」

 

「えへへ。実はね、お頭は和奏様と模擬戦をした時に弾を今みたいに切ったんだよ!」

 

「何と、そんなありえない事を最も簡単に出来るなんて……」

 

「それで終わり?日の本最強も大したことないね」

 

「くっ、おのれぇっ!!」

 

斉藤達が鉄砲の弾を切られたことで動揺しているとそこに激しい音と煙が足軽達を襲う。

 

それは流牙が作った竹筒の花火だった。

 

「俺が作った花火……おー、効いてるな」

 

その花火を撃ったのは一足遅れてやってきた帰蝶だった。

 

「流牙!大丈夫!?」

 

「帰蝶さん。心配しなくて良いよ。あと少しで全員の性根を叩き直すから……」

 

花火で足軽達を倒しやすくなり、帰蝶に礼を言おうとしたその時だった。

 

「っ!?帰蝶さん!伏せろ!!」

 

「グォオオオオオ!!」

 

帰蝶の背後に何と鬼が現れ、流牙は叫びながら牙狼剣の柄を握る。

 

「えっ?きゃあっ!?」

 

「はっ!!」

 

流牙は牙狼剣を鞘から抜くと同時に投げ飛ばし、真っ直ぐ飛んだ牙狼剣は鬼の顔に突き刺さってそのまま後ろに倒れて消滅する。

 

「大丈夫か、帰蝶さん!」

 

「え、ええ……ありがとう」

 

帰蝶に駆け寄り無事を確認するとザルバからの呼び出しでカバーを開く。

 

『流牙!どうやら今までの派手な音で鬼が出てきたようだ!』

 

「そうみたいだな……帰蝶さん、こっちに!ひよ、ころ!帰蝶さんを頼む!」

 

流牙は帰蝶の手を握って引っ張り、ひよ子と転子の元へ向かうが続々と鬼が現れた。

 

その数は十体ほどで更に奥から続々と姿を表す。

 

「お頭様、鬼がこんなに……」

 

「これはちょっとまずいですよ……」

 

「まさかこんな事になるなんて……」

 

「流牙ぁ……」

 

流牙以外の全員が鬼の出現に恐れ、特に帰蝶に関しては襲われかけたことで不安になり、流牙の手を強く握りしめていた。

 

今、この四人を守ることが出来るのは流牙だけ……流牙は守りし者として四人に勇気と希望を与える。

 

流牙は腰に差した刀を守り刀として帰蝶に渡し、軽く抱き寄せてポンポンと背中を軽く叩く。

 

「大丈夫だ、帰蝶さん。君は久遠の一番大切な人だ。君には鬼の指一本触れさない」

 

「流牙……」

 

帰蝶は初めて男性に抱き寄せられ、顔を真っ赤にしながらも嫌だとは思わず、寧ろ先程まで不安だった心が消えていき、素直に頷いた。

 

「ひよ、ころ。俺が傍にいる、恐れるな、勇気を持て。みんなを頼む」

 

次にこの中で比較的戦えるが鬼に怯えるひよ子と転子の肩をポンと叩く。

 

「詩乃ちゃん……心配するな。必ず君を攫うからね」

 

最後に詩乃の頭を撫で、獲物を目の前にしてよだれを垂らしている鬼達の前に立ちはだかる。

 

「必ず、俺がみんなを守る。黄金騎士の名にかけて!!!」

 

流牙は牙狼剣を掲げ、円を描いて光の輪が浮かび上がらせ、魔界からガロの鎧を呼び出す。

 

光の輪から金色に輝くガロの鎧が召還され、流牙の周りを舞うかのように一周するとそのまま流牙の体に装着される。

 

人々に希望を与える金色の光……黄金騎士ガロが降臨した。

 

「あれが……みんなが言っていた、黄金騎士……ガロ……!」

 

「あれがお頭様の鎧……!」

 

「戦場に現れた希望の光……!」

 

「金色の天狼……!」

 

話を聞いていただけで実際には初めてガロの鎧を目にする帰蝶達はその金色の輝きに心の中に希望の光が灯された。

 

「はぁあああああっ!!!」

 

流牙は地を蹴り、飛びながら牙狼剣を振るい、鬼を切り裂いていく。

 

しかし、予想よりも鬼の数が多く流牙の攻撃が間に合わなくなる。

 

「くっ、数が多い!?」

 

帰蝶達を守りながら戦っており、尚且つ鬼の数が多い。

 

こういう時に相棒である莉杏との法術の連携がどれほどありがたかったがよく分かる。

 

このままではすぐに鎧の制限時間が過ぎてしまう。

 

烈火炎装で一気に決めようと考えていたその時だった。

 

「流牙!刀が光ってる!」

 

「えっ!?」

 

帰蝶に守り刀として渡した刀が光を帯びていた。

 

刀を流牙に渡したら何かが起きると直感を信じた帰蝶は刀を抜いて流牙に向けて投げた。

 

「受け取って!」

 

回転しながら飛ぶ刀を流牙は左手で握ると、淡い光がだんだ強くなり、不思議な事が起きた。

 

刀が金色の輝きを放ち、一回り大きくなると同時に牙狼剣のような金色の輝く装飾を持つ大刀へ変化した。

 

「刀が……変化した!?」

 

『どういうことだ?こいつは魔戒剣だったのか?』

 

「いや、そんなはずはない。久遠と帰蝶さんが普通に持っていたし……」

 

仮にソウルメタル製の魔戒剣なら女である久遠が持てることは不可能である。

 

しかし今はそんなことを考えている暇はない。

 

「とにかく、使えるなら使うしかない!」

 

急遽二刀流となった牙狼剣と刀を握りしめて流牙は全力で振るう。

 

単純に攻める武器が二つになった事でより効率よく大量の鬼を斬ることができる。

 

「うぉおおおおおっ!!!」

 

色々な状況下で戦えるように日々修行をしていたので難なく二刀流を扱え、鬼を次々と斬り裂いていく。

 

変化した刀は牙狼剣とほとんど変わらない鋭い切れ味で鬼を難なく斬ることが出来る。

 

そして、ようやく鬼をほとんど斬り裂いて消滅してこれで終わりかと思ったがまだ一体残っていた。

 

その一体は怯えている斉藤に襲いかかっていた。

 

鉄砲で痛手を与えているが何故か鬼は斉藤を執着して狙っている。

 

鬼の恐ろしさに斉藤は腰を抜かしてしまい、足軽達は逃げてしまった。

 

「ま、まて!我を置いていくな!最後まで戦え!!」

 

もはや戦う力のない斉藤に鬼が襲いかかろうとした。

 

「……はぁっ!!」

 

鬼の背後から流牙は牙狼剣と刀を突き刺し、左右に斬り裂いて鬼を両断した。

 

「あ、あぁ……な、何で……助けた……?」

 

「例えお前が誰だろうと、鬼から人を守るのが俺の使命だからだ。さっさと行け」

 

「まさか、お前は……黒俣の戦場に現れた、金色の天狼……!?」

 

「何だそれ?もしかして俺の事か?」

 

「ひ、ひぃいいいっ!?ば、化け物!!」

 

斉藤は流牙のガロの鎧を見て化け物呼ばわりし、屁っ放り腰でかっこ悪く逃げた。

 

「無様で散々な言い様だな……」

 

流牙は帰蝶達の方を振り返ると同時にガロの鎧を解き、魔界に送還する。

 

ガロの鎧が送還されたことで牙狼剣と刀が元の姿に戻る。

 

しかし、それと同時に刀に異常が起きた。

 

刀の龍の文様が描かれた柄に大きなひびが入り、砕け散って地面に突き刺さった。

 

流牙は一瞬刀が壊れたのかと思ったが、刀身は無事で安心する。

 

すると、柄の下にある中心と呼ばれる部分に何かが刻まれていた。

 

「まさか……この紋章は……!」

 

流牙は刻まれていた紋章をザルバにも見せると驚いたように声を上げた。

 

『こいつは驚いたな。こいつに刻まれているのは紛れもなくガロの紋章だ!』

 

それは牙狼剣やガロの鎧の腰にある三角形の形をしたガロの紋章だった。

 

何故この刀にガロの紋章が刻まれているのか分からないがやはりこの世界に流牙が来たのは何か大きな運命があるのではと考える。

 

しかし、今は考えるよりも先にやることがあるので流牙は刀を牙狼剣と共に魔法衣の中にしまった。

 

流牙はまるで家に帰る子供のような笑顔で帰蝶達の元へ行った。

 

「みんな、ただいま」

 

「お頭ぁーー!ううー、怖かったですー、怖かったですよぉ!」

 

「あはは、ひよ怖がっていたからね。でも、流牙様の剣技、やはりお見事です!是非お暇があるときにでも稽古をつけてください!」

 

「俺の剣は我流で他人から見たら少し無茶苦茶なところがあるんだけど……」

 

「それでもお願いします!」

 

「あ、じゃあ、私も!」

 

ひよ子と転子は流牙に師事を仰ごうとしたが誰かに剣を教えるなどやったことないため迷ったが、鬼から生き残るためにと考えて仕方ない感じで頷いた。

 

「分かった。剣の相手ぐらいはしてやるよ」

 

「「やったー!」」

 

二人は手を叩いて喜び、次に流牙は詩乃に目線を向けた。

 

「無事でよかったよ、怪我はない?」

 

「お陰様で、大事ありません。それより……私は攫われるのですか?」

 

「ああ。君には強い意志と素晴らしい才能がある。こんなところで死んではいけない。俺たちと一緒に行こう」

 

「……己がこうも求められるとは思ってもみませんでした……この室町の世はしきたりやつまらない慣例などで私は変人として扱われていますので……」

 

「そうなんだ。そういう意味だと俺も変人だ。俺の名字は道を外れた道外、名前は流れる牙の流牙。変人同士、一緒に流れてみないか?」

 

「一緒に流れる……ふふっ」

 

「あれ?俺変なことを言った?」

 

「いいえ。あなたのその不思議で魅力的な言葉で私はこうして逃げに参ったのですよ」

 

「君を攫えて本当に良かったよ。詩乃、俺たちと一緒に来てくれるか?」

 

流牙は改めて手を差し伸べると、詩乃は満面の笑みを浮かべてその手を取った。

 

「……我が身、我が魂の全てを持って、あなた様にお仕え致しましょう。我が名は竹中半兵衛茂治。通称、詩乃。……流牙様に我が才の全てを捧げます」

 

「え?俺に?久遠は?」

 

「はい。分かっておりますよ。織田久遠様にも間接的に我が才を捧げましょう」

 

「……間接的?」

 

「当然です。何故なら私は流牙様のモノ。……となれば流牙様が織田殿の側にいる限り、私の全てを捧げることと同義となるでしょう。だから間接的、です」

 

「え、いや、あの、詩乃が俺のモノ?全てを捧げる?」

 

詩乃の言葉に訳が分からず頭に疑問符を浮かべていると左手から高笑いが響き渡る。

 

『アハハハハッ!こいつは傑作だな!』

 

「ザルバ!何笑ってるんだ!?」

 

ザルバは珍しく大笑いをして口をパクパクと開いていた。

 

『流牙、お前はなかなかの女誑しじゃないか!これで未来の黄金騎士の跡取りに問題はないな!!』

 

「何を言ってるんだお前は!?」

 

「これは……!?やはり聞き間違えではなく、本当に指輪が喋った!?」

 

『俺様の名前はザルバだ、お嬢ちゃん』

 

「では、ザルバ殿と。ザルバ殿の仰る通り、流牙様は人誑し、女誑しの天才でしょう。この私さえ……その……」

 

「まあでも、お頭はそれで良いんじゃないかなぁ?」

 

「正室は久遠さまっていうのは盤石だけど、色んなところで噂を聞くもんね」

 

ひよ子と転子の言葉に流牙は驚いて焦り始める。

 

「待って!?なんかみんなに物凄い勘違いされているんだけど!?それからその色々な噂って何のこと!?」

 

「……誑すのも良いけど、ちゃんと面倒見なさいよ?あと正室は絶対に久遠だからね!そこを蔑ろにしたら……わかってるわね?」

 

今度は帰蝶がジト目で流牙を睨みつける。

 

「ちょっ、帰蝶さん!?どうしてそんなに睨みつけているの!?面倒は見るけど誑しって本当に何のこと!?」

 

「教えてあげない……それから、結菜よ」

 

「えっ?」

 

「私の名前。帰蝶という名とは違う、もう一つの本当が結菜。本当は母様と父様、それに久遠と家中の者にしか呼ばせたくはないんだけど。……あなたも呼んでいいわ」

 

帰蝶……結菜の名前を呼ばせるということは流牙を認めたという事と同義である。

 

その事に気づいた流牙は嬉しくなり、子供のような笑みを浮かべる。

 

「結菜か……良い名前だね。それじゃあ、改めてよろしくな、結菜」

 

「あ……あり、がと……」

 

「よし……それじゃあ帰ろうか。尾張に!久遠の元に!」

 

「ええ!」

 

「「「はい!」」」

 

流牙達は詩乃という新しい仲間と一緒に尾張へ戻った。

 

 

一方、遠くから流牙を見つめる一つの影があった。

 

それは中性的な顔立ちをし、良質な服を着ている者で邪悪な笑みを浮かべていた。

 

「ふむ。あれが噂の天人か。あははっ!良い、あれは素晴らしく良いな。既に磨かれているが、更に磨きをかければ眩き金色の如く輝く美しい器だ!」

 

流牙の今までの鬼との戦いを遠くから静観しており、その磨かれた力を絶賛していた。

 

「しかし、まさか『あの刀』があのように姿形を変えるとはな……わざわざ見に来た甲斐があったというものだ。ふふっ……彼奴にはこの乱れた世を救うために、もっともっと活躍して貰おう!」

 

流牙の持つ謎の刀について何か知っており、これからも流牙の戦いを遠くから監視するようだった。

 

「応援しておるぞ、道外流牙……黄金騎士ガロよ!!」

 

 

その後、尾張に戻った流牙達は早速詩乃を久遠に紹介し、織田家の……流牙隊の一人として働く事になり、詩乃は流牙隊の長屋に住むことも決定した。

 

そして、一発屋という料理屋で軽い歓迎会を行い少々騒いで夜となり、皆が寝静まった頃……。

 

「やっぱり、運命だったんだな……」

 

外に出て月明かりに照らされながら刀をもう一度よく見ていた。

 

刀の中心に刻まれている紋章は牙狼剣に施されている紋章の飾りと見比べても同じものだった。

 

そして、その裏には更に驚くべきことに日本語でも英語でもない魔界に古くから伝わる旧魔戒語で文章が刻まれていた。

 

「旧魔戒語か……ザルバ、読めるか?」

 

『ああ。しかしまさかこの刀に旧魔戒語が刻まれているとは思わなかったぞ』

 

「俺もだよ。ザルバ頼む」

 

『読むぞ……この刀に導かれし者、守りし者として大いなる闇が覆う外なる世界を救え……と書いてあるな』

 

まさしくそれは番犬所からの依頼のような言葉だった。

 

流牙がこの世界に来たのは偶然ではなく必然だったと。

 

「大いなる闇が覆う外なる世界を救え、か……言われるまでもない」

 

流牙は確かにこの刀に導かれてこの世界に来た。

 

しかし、鬼と戦うと決め、みんなを守ると誓ったのは自分自身の心と意志。

 

「俺はこの世界を守ってみせる。そして……必ず元の世界に帰る!」

 

流牙は新たな決意を胸に刀を次に向かって掲げる。

 

 

 




新たな地、新たな出会い。

それはその場にいては求める事はできない。

ならば踏み出せ、求める者には新たなモノが出迎える。

次回『旅 〜Travel〜』

そこにあるのは可能性の宝庫。



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