ふと思ったことを書きました

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ふと思ったことを書きました


彼女の悲しみ

「え? 鳳翔さんが寝てない?」

 

僕、榊原祐輔は秘書艦の吹雪ちゃんからの報告を聞いて驚いた

 

「はい……数日前、たまたま夜遅くに起きてしまって、水を飲もうと部屋を出たんです……そしたら、お風呂場の電気が点いてたんで中を見たら、鳳翔さんが掃除をしてたんです」

 

「鳳翔さんが……」

 

吹雪ちゃんからの話を聞いて、僕が顎に手を当てていたら、続けて

 

「それに、瑞鳳ちゃんや龍穣ちゃんに聞いたら、一回も部屋に居るのを見たことが無いって……」

 

瑞鳳ちゃんや龍穣ちゃんは、鳳翔さんと同じ軽空母だから寮は同じ

だから、鳳翔さんが使ってないのに気づいたんだ……

 

「ねぇ、吹雪ちゃん……何時頃だっか、覚えてる?」

 

僕が問い掛けると、吹雪ちゃんは少し唸ってから

 

「確か……深夜三時頃だったかと……」

 

「そんな時間に……」

 

僕はその時間を聞いて、思わず唸ってしまった

 

「祐輔さん……どうしましょう……」

 

吹雪ちゃんから不安そうに問い掛けられて、僕はしばらく黙考した

確か、鳳翔さんはあの大戦を生き残った軽空母の艦娘だったよね……

もしかして、それが関係してるのかな……

 

「吹雪ちゃん、鳳翔さんに伝言をお願い出来る?」

 

「はい、いいですよ!」

 

「それじゃあ、伝言だけどね……」

 

僕は吹雪ちゃんに、鳳翔さんへの伝言を伝えた

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

数時間後、夜の9時過ぎ

僕は寝間着に着替えて、私室で待っていた

すると、ドアがノックされて

 

『祐輔さん、呼ばれたと聞いたのですが……』

 

という、鳳翔さんの声が聞こえた

 

「はい、どうぞ」

 

僕は鳳翔さんに、入るように促した

さて、僕の仕事の始まりだ……

 

祐輔sideEND

 

第三者side

 

「失礼します……」

 

祐輔に促されて、鳳翔は静かにドアを開けて入室した

鳳翔の服装は、普段着ている割烹着だった

 

「あの……用とは一体……」

 

と鳳翔が問い掛けるが、祐輔は答えずに

 

「とりあえず、こっちに来てください」

 

と鳳翔を手招きした

鳳翔は首を傾げながらも、祐輔の方へと近寄った

祐輔はベッドの近くに立っており、その表情は真剣だった

 

「鳳翔さん、ここに座ってください」

 

祐輔はそう言いながら、ベッドを指し示した

鳳翔は言われた通り、ベッドに腰掛けた

祐輔は鳳翔の隣に座ると、鳳翔の目を見つめて

 

「鳳翔さん……正直に答えてください」

 

「はい……」

 

祐輔の真剣な表情に鳳翔は、キョトンとした様子で頷いた

 

「鳳翔さん……いつ、寝てますか?」

 

「それは……」

 

祐輔からの問い掛けに鳳翔が答えようとしたら、祐輔が被せるように

 

「寝てませんよね? 吹雪ちゃんや瑞鳳ちゃん、龍穣ちゃんから聞きました」

 

祐輔のその言葉に、鳳翔は息を呑んだ

 

「鳳翔さん……なにがあったんですか?」

 

祐輔が問い掛けると、鳳翔は顔を俯かせた

 

「鳳翔さん……話してください。僕は鳳翔さんの力になりたいんです」

 

祐輔は微笑みを浮かべながら、鳳翔の頬を優しく包み込んだ

 

「僕は家族が苦しんでるなら、助けになりたいんです」

 

「家族……?」

 

祐輔の言葉を聞いて、鳳翔は呆然とした表情を浮かべた

 

「うん……僕にとって、艦娘の皆さんは家族なんだ……だから、お願い……話してください」

 

祐輔がそう言うと、鳳翔は涙を滲ませて

 

「夢を……見るんです……」

 

「夢?」

 

鳳翔の言葉に、祐輔は首を傾げた

 

「私が見送った……パイロットの方々の夢です……」

 

「まさか……あの大戦ですか?」

 

祐輔の言葉に、鳳翔は頷いた

今から数十年前

第二次世界大戦時、鳳翔は世界初の空母として建造された

建造された当初は、日本帝国海軍の第一航空戦隊空母として活躍

赤城や加賀が建造され始めてからは、新人パイロット達の練習空母として従事

その後、終戦前に退役しそのまま終戦を迎えた

 

「私で訓練したパイロットの方々は、そのほとんどが空に散りました……だと言うのに、私は最後まで生き残って戦後に復員船として働いた後に解体されて国の復興に使われました……」

 

語っている鳳翔は途中から、声を震わせていた

 

「どうせなら……どうせなら、あの人達と一緒に沈んでいれば……」

 

鳳翔のその言葉を聞いて、祐輔は目を細めて

 

「ダメですよ、鳳翔さん……散っていった先人達は鳳翔さんや国を守る為に戦ったんです……家族を守るためにね」

 

「家族……」

 

祐輔の言葉を聞いて、鳳翔は視線を祐輔に向けた

 

「ええ……艦のクルーは家族と同じで、国には家族や恋人が居ます。彼らはその家族を守るために、戦場に向かったんです……その彼らの思いを、行いを否定しないであげてください」

 

「でも……」

 

祐輔の話を聞いても納得出来ないのか、鳳翔は俯いた

そんな鳳翔の頭を、祐輔は優しく抱きしめながら

 

「それに、僕にはなんとなく分かるんです……彼らが戦場に立って戦ったのが」

 

「え……?」

 

鳳翔は呆然とした様子で、僅かに顔を上げた

 

「僕も、艦娘の皆さんを生かすために、守るために提督をやってるんです……誰一人として倒れさせないために」

 

「祐輔さん……」

 

祐輔の話を聞いて、鳳翔は目を潤ませた

 

「そのためなら、僕は上からの命令も無視します」

 

祐輔はそう言いながら、ベッド脇の台の上に置いてある書類に視線を向けた

 

「……あれは?」

 

「上からの開発指示書です」

 

鳳翔からの問い掛けに、祐輔は書類を取って鳳翔に手渡した

鳳翔は困惑しながらも、書類に目を通した

そして、驚愕に目を見開いた

 

「これは……っ!」

 

「うん……桜花と回天です」

 

桜花と回天

 

この二つは簡潔に述べるなら、特攻兵器である

中に直接入り、操縦して敵艦にぶつかる為の兵器

この兵器は、搭乗者の生存など考えていないのだ

確かに、戦果は上がるかもしれない

だが、人道に背く兵器である

 

「僕の知り合いと一緒に調べたんですが、この二つを開発して艦娘さん達に無理矢理運用させて、精神に異常を来して自殺した艦娘さん達が数多く出てるんです」

 

祐輔の話を聞いて、鳳翔は割烹着の裾を強く握り締めた

 

「そんなの、僕はさせたくないんです」

 

祐輔はそう言うと、部屋に備えてある暖炉に書類を投げ込んだ

 

「祐輔さん……」

 

「少し脇道に逸れましたけど、僕が言いたいのはですね」

 

祐輔はそう言いながら、鳳翔の目を見つめながら

 

「一人で悩まないでください。みんな、心配してるんですよ……鳳翔さんが何時寝てるのかって」

 

「みんなが……」

 

祐輔の話を聞いて、鳳翔は涙を流した

 

「よく、一人で寝るよりも二人で寝たほうが悪夢を見ないって聞きます……鳳翔さんは一人部屋ですから、今日は一緒に寝ませんか?」

 

「……一緒にですか?」

 

祐輔の言葉を聞いて、鳳翔は少し呆然としていた

 

「ええ……それに、僕もたまには誰かと一緒に寝たいんです……ダメですか?」

 

祐輔はそう言いながら、首を傾げた

 

第三者sideEND

 

鳳翔side

 

「ええ……それに、僕もたまには誰かと一緒に寝たいんです……ダメですか?」

 

私の提督、祐輔さんはそう言いながら首を傾げました

そういえば、祐輔さんはご家族を深海棲艦の侵攻で幼い頃に亡くしてましたね……

だからでしょうか

祐輔さんは私達全員を家族って言いますね……

私は皆さんの中では結構後なので、聞いただけですが、初期艦娘の吹雪ちゃん曰わく

 

『祐輔さん、誰一人として沈めてないんですよ』

 

と言ってました

祐輔さんが提督になって、もうすぐで一年くらい

その間、祐輔さんは艦娘を誰一人として沈めてない

恐らく、そんな記録を有している提督は数少ないでしょう

鎮守府の至る所に

 

・大破進撃、ダメ、絶対!

 

・中破撤退を徹底! 場所によっては、小破でも撤退を!

 

・帰っておいで、帰ってくればまた挑戦できるから

 

 

の三つが書かれてあるポスターが貼ってあります

以前、ご友人の艦娘さんが沈んでしまった時はそのご友人と一緒に艦隊を組んで西方海域のカスダガダマ沖に居た鬼級と姫級を攻略しに行きました

祐輔さんは自身も前線で指揮を取り、いくつもの戦略や戦術で海を埋め尽くすほどに居た深海棲艦を撃破していき、姫を吹雪ちゃんが放った一斉砲撃で撃破した後も気を緩めないで指揮を取りました

私も後詰め艦隊の一人として参加していましたが、その指揮は見事の一言でした

誰かが被弾すると、すぐに詳細を把握して配置変換などを迅速に指示してました

最終的には参加した艦娘の内、半数が大破しましたが誰一人として欠けることなく攻略を終えました

そして、祐輔さんが常々言ってるのは

 

『僕は家族を絶対に死なせません』

 

です

今、その約束は守られています

 

「鳳翔さん……僕は鳳翔さんのことを放っておけないんです」

 

「祐輔さん……」

 

「鳳翔さんも大事な家族なんです……僕は家族を守りたいんです」

 

「祐輔さん……」

 

祐輔さんのその言葉に、私は堪えきれなくなり座り込んでしまいました

ありがとうございますね……

祐輔さん……

 

鳳翔sideEND

 

第三者side

 

一旦鳳翔は祐輔の部屋を退出すると、自室に戻って寝間着の浴衣に着替えると祐輔の部屋に戻ってきた

 

「どうぞ、鳳翔さん」

 

祐輔はベッドで上半身を起こした状態で、鳳翔を手招きした

 

「はい……」

 

鳳翔は恥ずかしいからか、顔を赤くしながらも祐輔のベッドに入った

 

「今日はよろしくお願いしますね、鳳翔さん」

 

「はい……」

 

祐輔の言葉に鳳翔は頷いた

すると、祐輔は微笑みながら

 

「僕なんかでは大した効果はないかもしれませんが、許してくださいね」

 

「いえ、大丈夫ですよ……」

 

祐輔のその言葉に、鳳翔は首を振った

 

「では、おやすみなさい。鳳翔さん」

 

「はい、おやすみなさい。祐輔さん」

 

二人は互いにそう言うと、抱き合うようにしながら目を閉じた

そして、この日を境に鳳翔は悪夢を見ることは無くなったという……


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