運命は呪いを喚ぶ   作:ポリウー

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 迷い込んだ迷路の先で、僕らは早くも再開した。


2月2日:類との遭遇

 戦いは一瞬で終わった。いや、彼我の力量差を考えればアレは戦いではなく狩りだった。まるでアクションゲームの光景を実際に目の前で見るような臨場感と呆気なさ。

 

「コレで命の危険がなければタダのアトラクションで済んだのに」

「いや、今のは正しくアトラクションだぜ」

「そりゃ、君にとってはそうだろうけどさ……」

 

 守られるお姫さまポジションの僕も少しは考慮してほしい。

 

「そういう意味じゃねえ、コイツらの狙いは別だ。直前までオレたちに注意を向けていなかった」

「だから簡単に倒せたの?」

「状況如何で雑兵相手に戦況が変わるほどオレはヤワじゃねェ。だがコレはどうしたものか……」

「……今のヤツらの目的は他にあって、僕らは巻き込まれただけ、とか?」

「もしそうなら、とんだ傍迷惑だ。どちらにせよこの迷宮の主にはお礼参りしてやらなくちゃな」

 

 

 

 

 歩いている。出口を求めてか、深部に辿り着くためか、目的意識は曖昧だ。通路が分岐すれば右に進むぞとセイバーが言う。右にすべきだと僕も頷く。それから延々と繰り返し。幸か不幸か最初の一件以来出会った相手はゼロだった。

 

「こうも代わり映えがないと気が滅入ってくるね……」

「恐らくはそれもこの迷宮の狙いだろう。魔術的なモンか概念的なモンか知らんが設計者は大した腕だ。さて、こんな宝具を持っている相手といえば……有名ドコロじゃダイダロスか?」

 

 僕らを待ち受ける迷宮の主が誰かを予想するセイバー。この聖杯戦争において、サーヴァントの真名という情報は勝敗を大きく左右すると聞いている。敵の情報が事前に判れば、どのような対策を取ればいいかも判るからだ。その辺りは僕も大いに理解できる。敵を知り、己を知れば百戦危うからずだ。そこまで考えて気付いた。

 

「セイバーさんセイバーさん」

「なんだ、トモ」

「僕、まだ君の名前聞いてないよね?」

「……あー、まだ言ってなかったな」

 

 いくら相手がまるわかりでも、自分の手札が判らないんじゃ勝負のしようがない。確かにさっきまでの僕は戦おうとすらしなかった。けれど今は違う。だったら訊く権利がある筈だ。

 

「今は駄目だ。後にしろ」

「えー、なんで?」

「相手がオレたちを何処から見張ってるか判ったモンじゃねえからな」

「……なら、ちゃんと後で教えてね」

「ああ、イイぜ。オレの真名漏らすほどお前もマヌケじゃあるまいし、オレ自身真名隠しの宝具があるからな。コレならオレの最後の宝具を開放しない限り――――」

「セイバー?」

「……剣戟の音だ。この先で誰かが戦っている!」

 

 走りだすセイバー。静止の声なんて掛ける暇も意味もない。だって駆けるセイバーは僕の手を握っていたから。気遣いが有り難いと思ったけれど、そんな温かい想いを消し飛ばす衝撃が僕を襲った。

 

「痛い! いたいいたいいたい! 腕ちぎれちゃうのお~~ッ!!」

 

 物理法則なんて知ったことかとばかりに急加速するセイバーに当然僕の脚はついていけずに縺れる。あまりの速度に引き摺られるどころか宙に放り出される僕の身体。空圧が、ヤバイ。

 

「うっせーな! なんなら襟掴んでやろうか!?」

「それ死ぬ! 冗談抜きで窒息死しちゃうから!」

 

 

 

 息も絶え絶え。三途の川で亡き家族と感動の対面を果たし、いざ船で渡ろうかというところで渡し守が身投げしたせいで海中分解。どうやら現実の僕は無事らしい。引き戻された意識を眼前に向ける。

 

「うぅぅ……う?」

 

 そこにいたのは四人。どいつもこいつも個性的な見た目だけど、その内の二人には見覚えがある。

 

「イリヤ……? それに、T-8○0のおじさんも……!」

「いや待て、お嬢さん。俺の名前は獅子劫界離だ! エルメロイんとこのメイドじみた渾名は止してくれ……」

 

 厳つい容姿にピッタリな猛々しい名前だ。……というか、そんなことを考えている場合じゃない。イリヤの後ろには鉄仮面を纏い双角を生やした大男。獅子劫さんの後ろには可愛らしい容姿の姫騎士。絵面的には好対照な組み合わせだ。そして、この状況でそんな時代錯誤な連中を従えている時点で二人の正体は自ずと判明する。

 

「……そう。イリヤも獅子劫さんもマスターなんだ」

「それはわたしの台詞よ、トモ。キリツグから魔術を教わっていたの?」

「まさか。僕と彼はそこまでの関係に至ってないよ」

「それを聞いて安心したわ。わたしだってあなたとは友達でいたいもの」

 

 ……未だイリヤと切嗣さんの関係が見えない。何か重大な間柄であることは確実。けれど彼女の容姿は完全なコーカソイドで、切嗣さんの日本人の血は一滴も流れてないように見える。だから親戚の線は多分ない。そうなれば後の可能性の推理材料など僕にはなかった。訊けば手っ取り早いだろうけど、誰だって地雷は踏みたくない。結局、この思考を外に追い出す。今は目の前の問題解決が重要だ。

 

「この迷宮は君のサーヴァントが?」

「うん、そうだよ。あなたたちの方は安全な道にしておいたの。感謝してね」

「えーっ! ずるーい! ボクたちの方はすごくすご~くタイヘンだったのにっ!」

 

 抗議の声を上げる獅子劫さんのサーヴァント。イリヤの言葉を信じれば、僕たちの道はベリーイージーで、獅子劫さんの道はベリーハードだったらしい。その証拠に、彼らの見た目は僕たちとは反対でボロボロだ。

 

「ま、なんにせよ時間切れね。合流される前にそこのライダーを仕留めたかったけど、それも叶わなかったし」

「オイオイ逃げんのかい、アインツベルン。ちったぁ自分のサーヴァントを信用しろよ」

「そちらこそ自分のサーヴァントは大事にすべきよ、魔術使い。だってソイツ、もう立っているのもやっとなんでしょ?」

「ナメてもらっちゃ困るなぁ。ボクだって英雄の端くれなんだ、怪物退治くらいやってやるぞっ!」

 

 痛々しくも微笑ましく、そして何よりも勇ましい聴く者の心を震わせる決意表明。その姿は正しく()()。では、其が対峙する()()の姿は――――

 

「……ぁぁあああ、ぼ、ぼ、ぼぼぼ、ぼくはぁ――――」

「……フン、成る程な。これほどの大迷宮、碌に喋れん狂戦士、そしてそのツラとアタマと来りゃあ正体は一つだ」

 

 セイバーは気付く。否、この場にいる者なら多かれ少なかれアレの正体に見当が付いている。迷宮の主たる怪物の名、それを声高らかにセイバーは告げた。

 

「お前、ミノタウロスだな」

 

 予想通りの名だ。ギリシャ神話における伝説の怪物。迷宮に潜む人喰いの牛鬼。それがバーサーカーたるサーヴァントだった。イリヤが嘆息する。その仕草が何よりも明確な答えだ。

 

「……せっかく、見逃してあげようと思ったのに」

「……え?」

 

 消え入るような呟き。それに疑問を挟む余地などない。後に響く咆哮は全てを掻き消した。

 

「ぁ――――あああああああぅッ!! ちが、ちがうぼ、ぼくは――――おれはぁ!!」

 

 万感の想いを込めて猛り狂うバーサーカー。たまらず竦み上がってしまうその光景は、怪物と呼ぶに相応しい怨嗟だった。そんな彼に唯一イリヤは怯えなかった。

 

「うん、わかってるよ。あなたはアステリオス。あなたのお父さまがつけてくれた立派な名前があるもの」

「い、りや……うん、そうぼくは、でも……でもぼくは!」

 

 怪物をあやす少女。それは一種異様であり、かえって神聖な印象を与えた。やがてイリヤが振り向く。その眼は真っ直ぐ僕たちを見据えていた。

 

「この子を、アステリオスを侮辱したわね」

「怪物に怪物と言ったまでだ。そこの雌犬じゃねえがオレもそんなヤツを見過ごす道理はねェからな。で、何が言いたい、ガキ」

「殺すわ」

 

 ――――瞬間、破砕音が轟く。それは石畳を在り得ざる馬力で踏み砕くバーサーカーの生み出した悲鳴だ。窮屈な視界を埋め尽くす巨体が僕たちを襲う。その手に握る双斧を振るい――――

 

「……クソッ! 馬鹿力ヤロウが!」

 

 セイバーが打ち返す。拮抗は一瞬。押し出されるように退く。マスターとしての眼を通せば、それは当然の結果だった。

 

「セイバー! そいつの筋力と耐久、なんかAの三倍はあるんだけど!?」

「ふざけんな!? それって一発一発が下手したら宝具並ってコトだろうが!」

 

 文句を垂れながらも尚立ち向かうセイバー。その姿は危なっかしくも心強い。掌中の宝剣にはいつしか赤雷が迸っていた。

 

雷属性付与(エンチャント・サンダー)ってやつ?」

「オウ、ちょい違ェけどな! そら――――ッ!」

 

 オトコ心くすぐる武器を手に斬りかかる。その力は確かに今までのセイバーとは段違いだ。けれど、それでもバーサーカーには遠く及ばない。再チャレンジも敢え無く失敗に終わろうとした時、背後から飛び出す影が一つ。

 

「助太刀するよ、セイバー! 怪物から女の子を守るのは騎士たる者の役目、ってね!」

 

 それはライダー。所々に見受けられる傷跡は、緒戦にバーサーカーから受けたものだろう。僕のセイバー以上にバーサーカーとの力の開きがある彼女が持つは馬上槍(ランス)。その突貫は正しく突風、けれどその一撃が届いたところで戦況を左右することはないはずだ。

 

「――――触れれば転倒(トラップ・オブ・アルガリア)!」

 

 そんな当たり前を覆し得るのがサーヴァントの持つ宝具なのだと、僕は暢気にもようやく理解した。

 

「……ぉ、う?」

 

 人間山めいた巨体が崩折れる。勿論倒したわけではない。ライダーの槍は軽く触れただけ、殺傷力など無きに等しかった。では、この現象はいったい……?

 

「さあ早く! 長くは続かないよ!」

 

 藻掻くバーサーカーの姿を見て理解する。膝から下が消失していた。結果だけ見れば破格の能力だ。けれどライダーは長続きしないと言った。ならばこの隙を打つしかない。と思ったはいいけど、混乱しても尚両手の斧を振り回し続けるバーサーカーに近づく余地などあるのだろうか。

 

「でかした! そんじゃあ喰らいなァッ!!」

 

 宝剣を敵目掛けて振りかざすセイバー。その切っ先から纏っていた赤雷が放出され、標的たるバーサーカーに過たず撃ち込まれた。その衝撃は落雷もかくやというもの。……それでも。

 

「ぅ、うぅぅ……ううううううううッ!!」

 

 バーサーカーは健在だ。いつの間にか再び生え揃った両足を軸に聳え立つ。どうやって倒せばいいのか想像できないほどの絶望感が僕を襲う。セイバーに宝具を使わせればいいんだろうか。でも、そもそも僕はセイバーがどんな宝具を持つか、イマイチ把握していない。コミュニケーション不足が招いた不幸だ。ぶっつけ本番はリスキーすぎる。ならばマスターを――――イリヤを?

 

「この様子だと切りがないな。……それなら、オラよ、っと!」

 

 思考が途切れている間に、獅子劫さんが懐から出した何かをバーサーカーの向こうに豪速球で投げ込んだ。微かに垣間見えた形状と今の状況を鑑みるに……手榴弾?

 

「ちょっ、獅子劫さん!? 容赦なさすぎじゃないの!?」

 

 咎めるも時既に遅し。爆弾はイリヤを巻き込むように着弾――――する前に、イリヤを取り巻く鳥型のナニカが発射した光弾により叩き落とされた。

 

「やっぱり魔術使いって現代兵器がお好きなのね」

「抵抗がないだけさ。……それに、今のはれっきとした死霊魔術だぜ」

 

 狙いの逸らされた爆弾が破裂する。そしてその中身――僕からは詳しく見えない――がイリヤを襲う。仮初めの鳥たちが彼女を庇うと、瞬く間に霧散した。そんな魔術師たちの攻防を見て、独りごちる。

 

「……僕には、何が出来るんだろう」

 

 この争いの渦中に僕はただただ圧倒されて身動き一つできないでいた。だって、僕以外の皆が自分の力で戦っているのだから。無力なのは僕一人だけ。傍から見ればヒーローに守られるヒロインでしかなかった。

 やがて打ち合いが止み、退いてくるセイバーとライダー。平気そうな前者と息の上がっている後者。対峙するバーサーカーには掠り傷が辛うじて見受けられる程度。つくづく驚異的なタフネスだ。

 

「……最初はただの弱いヤツだと思ってたけど、連携が得意なサーヴァントだったのね」

「えっへん!」

 

 誇らしげに無い胸を張るライダー。……でも、バトルロイヤル形式の聖杯戦争において、個人戦より集団戦が得意なのは褒められたことなのだろうか。

 

「このまま体力勝負するのも芸がないし……いいわ。今夜はここまでにしよ、アステリオス」

「いりや、でも……うん、わか、った」

 

 見た目からは想像もできないほど己がマスターに従順なバーサーカー。彼が頷くとともに周囲の石壁や石畳が幻のように消えていく。今僕たちがいるのは新都。迷宮に迷い込んだ時と同じ場所だ。

 

「なんだァ? 尻尾巻いて逃げんのかよ」

「そう見えるのなら追ってくれば? もういちど、迷宮の奥で待っていてあげる」

 

 嘲りの表情を隠しもせずにイリヤが言い放つ。これがブラフならたいした演技だろう。ただ彼女たちとこれ以上戦うのはこちらも得策ではない。ライダーの消耗が火を見るより明らかだからだ。不満気なライダー本人は別として、敵の撤退を止めるような者など僕たちにはいない。

 

「次に会ったら逃さないわ。だから、ね――――」

 

 イリヤの真紅の瞳が僕を射抜く。与えられたのは慈悲の忠告だった。

 

「トモ、死にたくなかったらそれまでに手を引くのよ」

 

 そんな言葉を残して二日前と同じように去っていくイリヤ。違うのは連れ立って歩くのがセラさんではなくて、怪物(ミノタウロス)ならぬ巨人(アステリオス)だということ。こうして、嵐が過ぎ去った。

 

 

 

「改めまして自己紹介をば。僕は和久津智といいます。獅子劫さんとは昨日お会いしましたよね」

 

 昨夜のレストランでの変わった一幕を思い出す。あの時の電話口の声の主は、そこにいる彼のサーヴァントだったのだろう。

 

「ああ、あん時はお前さんに恥ずかしいトコロ見られちまったな。で、アレの元凶がこの――――」

「シャルルマーニュが十二勇士、アストルフォさ! よろしくね、トモ!」

 

 マスターを差し置いてズイと前に出るアストルフォ。その勢いのまま僕の手を握ってブンブンと振る。突然何が何だか判らない衝撃が僕たち三人を襲う。最初に立ち直ったのは獅子劫さんだった。

 

「……オイオイオイ、ライダーさんよぉ。お前さ、勝つ気あんのか?」

「もちろんあるよ?」

「だったら何やってやがんだ、このポンコツサーヴァント! 唯でさえ非力なのに真名バラしちまったら勝ち目ゼロだろうが!」

「だってしょーがないじゃん! 一目惚れしちゃったんだモン!」

「は、はい?」

 

 次に思考再開したのは僕。近頃刻一刻と築かれていく悪夢の逆ハーレムを無に帰す清涼でユリンユリンな告白だった。

 

「あのバーサーカーに襲われても気丈に振る舞おうとしたんだ。その健気な姿を見て、僕の心に火が点いたのさ! この子を絶対に守ってあげなきゃ、ってね!」

「いや、そんな男の子みたいな――――あれ?」

 

 アストルフォ。シャルルマーニュ伝説の一つ、『狂えるオルランド』の登場人物。ローランを助けるために月に向かうエピソードが有名だけど、確か性別は男性だったんじゃ?

 

「……ねえ、セイバー。歴史上の男の英雄が、ホントは女だった! ってコト、ありえるの?」

「――――」

 

 無言のセイバー。どうやらまだ機能が復旧していないらしい。仕方ないから一人で考えてみる。最近では三国志や戦国武将が女体化したアニメやゲームなど日本では珍しくない。それどころか源義経や織田信長の女性説などブームが到来する遥か前から存在している。だからきっと、彼女もその一人――――

 

「みたい、じゃなくてボク、オトコノコだよ?」

 

 ――――時よ止まれ、お前は汚らわしい。

 

「……うわー、うわぁぁぁ……」

 

 運命の女神サマ、これが呪いですか。僕だって別にしたくてしてる女装じゃないのに、なんで同類を寄越して来やがりますか。ドちくせう。

 

「あー……もしかして、引いちゃった?」

「……そりゃ引くよ、女装した男とかナイワー……」

 

 目の前には涙目の変態一号。内心で血涙を流す変態二号。やっぱり僕は呪われている。主に運命の邪神から。

 そんな葛藤に苛まれていたから、僕にその呟きは聞き取れなかった。

 

「…………ふん、まあいいか」




“汝、隣人を愛せよ”

 死んでも嫌です。というか死にます。

「和久津さん、こんにちは」
「こ、こんにちは……」

 長身の男性。大陸系のアナーキーなテイスト溢れるイケメンさん。僕のお隣さんである。学園からの帰り道、偶然にも出くわしてしまう。そそくさと挨拶だけ交わして逃げ帰ろうとする。

「……アストルフォ、いいですね」
「……はい?」

 突然何を言い出すんだという驚きと、また始まったという呆れが交差する。このお隣さん、実は家の前に女装少年もののえっちい漫画――例えば『わ○い!』とか――をゴミ出しする僕の天敵なのだ。最近顔を合わせるようになったけど、内心いつもビクビクしている。で、そんな彼が言い出したのがアストルフォ。いったいどんな話を――――

「程よく引き締まった華奢な肢体。その中に密かに醸しだされる男らしい力強さ。男としての骨格をギリギリ逸脱せずにこれだけの可愛らしさを保っているのは最早芸術と言っても差し支え無いでしょう。生やしただけとか、女装しただけのモノなど比較対象にすらなりません。そしてそれに伴う精神性も見事の一言。嫌味のない天真爛漫さと、健気な英雄的思考が絶妙なハーモニーを奏でます。そしてそんな彼を知った俺は――――その下品ですが……フフ、勃」
「さよーならーーーーーーっ!!」

 脱兎の如く逃げ出した。アパートの自室に着いた。鍵を掛けた。チェーンロックも掛けた。シーツに包まった。今日は怪夢が見られそうだ。
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