よし、魔力は万全。キャスターも昨日一日かけて地理はバッチリ。それじゃあ、打倒敵マスターに向けて!
「登校するわ、キャスター。ついてきて」
「マジかよ」
マジもマジ、大マジである。昨日は不可抗力だったけど、学校には行けるなら行くべきだ。これをマスターになったからといって改めるつもりもないし、何より――――
「あの学園にマスターはいないはずだし、登校するのは朝と昼の間だけ。聖杯戦争とは無縁の安全地帯なのよ」
「どうしてマスターがいないと判るんだ?」
「わたし、管理者だもの。あそこにはマスターになれる生徒や教師はわたしを除いて一人もいないのはとっくに確認済み」
「……まあ、行って問題ないならいいさ。そこら辺の事情はマスターの方が詳しいだろうしな」
わたしの言葉に納得した様子のキャスター。魔術師同士の闘争は夜に行うのが暗黙のルールだし、それまで肩肘張っても仕方ないだろう。……それに、昨夜のアレをどうしても聞き出したかったし。
「そろそろ二十分か。行きましょ、キャスター」
「嘘でしょ、キャスター……」
「……ああ。アンタの予想が外れるのは想定内だったが、コレは予想の斜め上だな」
正門を潜った先に異変はあった。魔術の痕跡があっただとか、そういった方面のモノではない。なにやら近くの掲示板に生徒たちが群がっているではないか。野次馬たちを押しのけ、異変の正体を確認する。
――――ソレは一枚の乱雑に書き殴られたビラだった。
『ハンガリーから堂々来日! 期待の超新星アイドル、2月2日19時より穂群原学園体育館にて怒濤のゲリラライブ開催! この瞬間を見逃すな!!』
「……コレってなんなのかしら、柳洞くん?」
いつの間にやら傍らにいた男に問い質す。
「知らん。だが、掲示許可がないのは明白だ。さっさと剥がして、コトの犯人を見つけ出さねばな」
ビラが剥がれるのを名残惜しそうに見届ける野次馬たち。……人の口に戸は立てられない。噂になるだろうなぁ、コレ。
「……この時期にハンガリーから、ってどう考えてもそういうことよね?」
「ああ、だろうな」
「なんなの? マスターの脳みそがツルツルなの? それともサーヴァントってみんな頭沸いてるの?」
「ああ、かもな。……って、さり気なくオレまで貶してんじゃねえよ」
「……おはようございます」
ガラガラと二日ぶりの教室に入る。ここでもさっきのアレが話題になっていた。神秘の秘匿が危ぶまれる。いざとなったら、あの監督役に責任を擦り付けようか。
「おはようございます、遠坂さんっ。……ところでその」
「おはようございます、三枝さん。どうかしましたか?」
「後ろの男の人は知り合いですか?」
……後ろ? 振り向いても誰もいない。当然だ、だってキャスターは霊体化してるんだから視えるわけ――――
「ちょっ、由紀っち!? 季節外れの怪談はもうお腹いっぱいだって!」
「こ、公園の時の天丼はよせ由紀香! 笑えん冗談だ!」
本気で怖がる氷室さんとマキジ。
その様子を不思議がる三枝さん。
――――思い至ったわたし。
「おい、マ」
“しばらく口を閉じてなさい、キャスター!”
急いで念話で指示を飛ばす。
「あの、今しゃべ」
「しゅ、守護霊でもいるのかしら? わたしにはさっぱりだけど不思議な話ね」
「?」
“いい? 彼女の前では霊体でもピンチじゃないかぎりアクションを起こさないでちょうだい!”
キャスターが頷く気配はない。いや、頷かれたら三枝さんに視られるのだから、それで正解だけど。
「おかしいなぁ……」
首を傾げる三枝さんと戦々恐々の氷室さんと蒔寺。三人娘で唯一の常識人が一番「こちら」側に近いのだから、世の中とは不思議なものだ。
「和久津さんにもあのヒト、見えなかったですか?」
「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ……」
三枝さんの無茶振りに対し、両手を合わせて念仏を唱える和久津さん。……その右手には包帯が巻かれている。
「……和久津さん? その手、怪我でもしたのかしら?」
「あ、コレですか? それが僕も気付かないうちに痣が出来ていまして」
「痛みはしないかしら? 念のため病院へ行ったほうがいいわよ」
「だ、大丈夫ですから。心配いりませんからっ」
まあ大事ないならこれ以上はお節介か。……ああ、思い出した。アレを聞かなくちゃ。
「そういえば和久津さん。昨夜あなたと桜がヴェルデを出るところでアレを目撃したんだけど……」
「……ああ、あの外国人ですか?」
「ええ、どうやら桜と一悶着あったらしいけど……どんな内容だったの?」
「うーん、彼女が言うには昔の知り合いにそっくりだったらしいけど……」
「男の方に見覚えはなかった、と?」
「はい、そうらしいです」
……ますます謎が深まった。あの引っ込み思案の権化があんな態度に出るなんてよっぽどのコトだ。でも、ただの一般外国人に彼女が深く関わることなんてないだろうし……。
「ありがとう、和久津さん。参考になりました」
「いえいえ。……でも、ちょっと意外」
「意外? なにがかしら?」
「アレを見たってことは、遠坂さんったら昨日は学園、ズル休みしちゃったんですね」
……恥ずかしながら、その通りです。
彼女の言葉が告げられると同時に、HRの鐘がなる。さらに時同じくして葛木が教室に入る。いつも通りの2-Aが始まった。
今日は土曜日。午前中で授業は終わり、残った生徒は部活動などに精を出す。わたしとしては例の下手人が現れるまで体育館付近で待機中。今の時刻は午後六時。部活を終えた生徒たちが退出していく。
……さて、そろそろか。体育館の四方を囲むように置いた宝石を起動する。
「――――
人払いの結界。あんな馬鹿げたチラシでも、来てしまうような野次馬がいるかもしれない。でも、アレはわたしに対する挑戦状のはず。戦いに一般人を巻き込むなんてわたしのプライドが許さない。
そして時が経ち、時計の短針が7を指した。すると突如照明が落ち、スポットライトが体育館の奥を照らす。……本格的だなあ。
「元気にしてたかしら? ブタ共、リス共?
体育館中に勝ち気な少女の声が響く。声の質は文句ナシなのが無性に腹立つ。で、そんな美声の主が遂に正体を現した。
「さあ! 私を彩る華々しい初ステージの幕開けよっ!! ――――――――って、なんで誰もいないのよぉ!?」
「当たり前だろ、つかテメエバカだろ」
「そうねキャスター。ツルツルなのはサーヴァントの方だったわね」
「さ、さてはあなた達の仕業ね……! お肌ツルツルなんて褒めたところで許してあげないんだからっ!」
……とまあ口論したところで、改めてコイツの姿を見てみる。角が二本と尻尾が一尾。可愛らしい容姿も含めて、まさに小悪魔系といった出で立ちだ。……でも、コイツがサーヴァントだってことは明らか。見た目や言動に騙されたら痛い目を見ることになるはず。
「で、キャスター、だったかしら? はっ、よくそんな地味なクラスで私の前にノコノコ出てこれたわね」
「言うじゃねえか、小娘。なら、そういうテメエは何の英霊だい?」
「何の? ……そんなの決まってるじゃない。私は、アイドルのサーヴァント!」
「――――――――」
「アハハハハ、はは……え? あの、その目はいったいどういう意味かしら……?」
わかった。コイツに人を騙す知能なんてない。正真正銘のダメサーヴァントだ。
「……で?」
「で、って何よ……?」
「実際のクラスは?」
「……だから、アイド」
「実際のクラスは?」
「いやあの」
「実際のクラスは?」
「ランサーよ! これで満足でしょ!」
「ふざけるなあっ!!」
「なによ! ちゃんと正直に答えたじゃないっ!」
わたしとキャスターの声がハモる。そりゃ当然だ。どうしてあのクー・フーリンがキャスターで喚ばれて、こんな駄サーヴァントがランサーなんて強クラスなのか。世の理不尽を嘆いても致し方ないだろう。
「畜生、ふざけやがって! こんな槍の扱い方も知らないような小娘なんかに……!」
「怒鳴りたいのはコッチの方よ! もういいわ、とっとと贄になりなさいっ!」
怒り心頭といった様子のランサーが、マイクスタンド(?)を振りかぶって襲い掛かってくる。
「――――バカが!」
対するキャスターは迎撃のためにルーンを紡ぐ。
――――かくして今宵、此処に戦端は開かれた。……絵面がマヌケなのはご愛嬌ということで。
「ウソ……」
駆けるランサーの速度に驚嘆する。本来槍兵のクラスは高い敏捷を持つと云われているけれど、こんな、こんな――――!
「遅えぞ小娘ッ! その脚でランサーってホントにナメてんのか!?」
ランサーの動きは強化した視力があれば、わたしでもつぶさに把握できる。それがキャスターなら言わずもがな。
「
中空に出現した蔦は敵を拘束せんがため、ランサーへと殺到する。疾さではもちろんこちらの方が上。ランサーの反応を許さずに、茨は少女の柔肌に叩きつけられ――――傷つけることも敵わず、かき消された。
「対魔力……!?」
そう、ランサーは三騎士。当然そのスキルも保有している。魔術によるダメージを減衰させるソレが、神代の魔術師であるキャスターのルーン魔術を無効化するということは――――
「気をつけて、キャスター! コイツの対魔力は、たぶんAランク相当!」
「オイオイ、マジかよ!? コイツ、このナリで実は大物だってのか!?」
「よそ見してんじゃないわ、よッ!!」
技術を何も伴わない、純粋な力による振り下ろし。その身に纏う装飾も相まって、彼女からは英雄というよりもむしろ怪物という言葉が想起された。そして怪物を討つのは英雄である騎士の役目と相場が決まっている。がんばって、わたしの騎士サマ! ……今のあんたは騎士とは程遠い姿だけど。
「ああ、クソッ! やりづれえ……!」
魔術が無意味と見るや、キャスターは己が杖で、襲い来る槍を巧みにいなし射程範囲外に離脱。さすがはケルトの大英雄、クー・フーリン。腐っても棒術はお手の物である。
「あら、キャスターのくせして接近戦の心得もあるのね? 私の槍を避けるなんて、まったく生意気なんだからっ」
「……うるせえ。オレの本職は槍使いだっつうの」
「あらら、ゴメンなさいね、元槍兵さん。私、あなたと違って今まで槍とか握ったことがなかったの。それなのにお役を奪うカタチになっちゃって!」
キャスターのこめかみ辺りの血管がブチリと千切れた。客観的に見ても判るのだから、この時彼は内心どれくらいキテたのだろうか。
「……そーかい、そーかい。ならこのオレが直々にテメエをシゴき上げてやる! 覚悟しやがれッ!」
「それじゃお言葉に甘えて……イッくわよぉー!!」
そう言ってランサーは自身の槍に跨る。……いったいアイツはほんと何がしたいんだろう。そう首を傾げた瞬間――――
「オイオイこんな滅茶苦茶なの最早槍でもなんでもねーだろ――――ッ!?」
槍を駆って突進を仕掛けるランサー。見た目としては箒に跨るイメージ上の魔女に近い。ライダーかキャスターにでも転職した方がいいんじゃなかろうか。
……でも、コレでなかなか莫迦にできない。わたしの眼にはもうランサーの姿は映らない。初速を超えてグングンと迫るランサーは、速度という欠点を見事に克服していた。それに対するはキャスター。攻勢魔術が彼女に弾かれるのは既に明白だ。そんなことも判らないキャスターではない。ならば彼の取る対策とは――――
「――――
『硬化』のルーンが刻まれた杖が、突進するランサーの槍と交差する。いくらこちらの技術が上でも、筋力の差は覆せない。結果、反動を抑えきれずに壁際まで押し込まれてしまう。……けれど、彼は見事に耐え切った。
「甘いわよっ!」
先程まで突進していたランサーが勢いのまま痩身を翻す。それに伴い振るわれる尻尾は殺人的なスピードだ。まさか、そのまま叩きつける気か……!
わたしが危惧した通り、キャスターに迫る彼女の尾。当然キャスターも防ぐために杖を掲げる。
「――――アハッ」
それを待っていた、とランサーが不敵に笑う。振るわれるはずだった尾は徐々に減速していき、その分の運動エネルギーが彼女の持つ槍へと転換される。
単純なフェイント。しかしどちらの技も喰らえば耐久に乏しいキャスターでは危険で、判っていても防ぎきれない。そして、致命の一撃が放たれる。杖をあらぬ場所へ掲げるキャスターは隙だらけもいいところであった。
「キャスター……!」
このままではキャスターがやられる。その運命を打破するにはランサーを妨害しなければ――――いったいどうやって? 標的であるランサーは知っての通り、対魔力:A。神代の魔術すら防ぐソレに、現代のちょっと優秀な程度の魔術師であるわたしがどうやって張り合えるというのだ。
……自分の無力さに打ちひしがれる。これが聖杯戦争。神代の再現であるこの舞台に、わたしのような人間が介入する余地なんて――――
「――――
キャスターが『火』のルーンを放つ。狙うはランサー……ではなく頭上の巨大なバスケットゴール。壁と繋がっている支柱部分を容赦なく焼き払い、ソレは灼熱を纏いながら――――ランサーの頭上へと落下していく。だが、それでは間に合わない。単なる自重落下がサーヴァントの一撃に比肩するはずもない。いったい彼は何を――――
「――――マスターッ!!」
キャスターの声が弱気になったわたしの心を呼び覚ます。それに含まれるのは信頼の証。そう、キャスターはわたしに頼っていた。
……ランサーを直接介さずに彼女を止める術、それは確かにあるはずだ。でなければキャスターはルーンを無駄撃ちしないし、第一わたしに声をかけたりしないだろう。
自身のサーヴァントからの謎解きにしこたま悩む。
――――そして、コンマ1秒後にようやく解答に辿り着いた。
「
キャスターの口角が正解だ、とばかりに釣り上がる。重力付加の術を、秘蔵の宝石を介し手加減抜きで特大の火球と化した備品に叩き込む。結果、落下スピードが段違いになったソレは、ランサーの槍と競うように速度を上げていき――――
「痛ッたあ――――ッ!!」
果たして、作戦は成功した。
本来、サーヴァントには神秘の伴わない物理攻撃は通用しない。現代の銃や爆弾がどんなに高火力でも、サーヴァント相手には無力と化す。そして、このランサーは高い対魔力を持つ。わたしたちの魔術では、直接彼女を傷つけることは敵わない。ではこのサーヴァントにはどう対処すべきか。
――――答えは簡単、神秘を乗せて物理で殴ればいい。教会には現代火器を聖別して、対魔武装とする技術があるそうだが、要はそれと同じ要領である。
狙いは見事的中。キャスターとわたしによって魔術兵器と化した元バスケットゴールは、ランサーの脳みそ空っぽの頭に直撃し、怯ませる程度の隙は作れた。
「マスター! 一先ずここから離脱するぞ!」
「ええ!」
衝撃の余波を受け、脆くなった壁を踏み砕く。そして癇癪を起こしているランサーを尻目に体育館から脱出。コイツはとことんキャスターと相性の悪いサーヴァントだ。逃げるにしても、戦うにしても、距離を取らなければ始まらない。
取り敢えずは校庭に辿り着いた。……後ろを振り向けば、ノロノロとランサーが後を追って歩いてくる。
「さっきはよくもやってくれたじゃない……! 許さないわ、こうなったらギッタンギッタンの串刺しにしてやるんだからっ!」
「ああ、もうしつこいったら……!」
……さて、どうしようかしら。いくらあの残念サーヴァントでも、流石に二度も同じ手は通用しないだろう。というかここ校庭だから、武器になりそうなモノなんて落ちているはずもないし。なら、このまま撤退するべきか。それとも――――
『あのなぁ、そういう時のためにあんのが
『……あるのね。対魔力を突破する手段が』
キャスターを召喚した直後の会話を思い出す。そう、キャスターには絶望的な相性の差を覆すほどの切り札があるはずなのだ。
「……ちょうどいいわ。キャスター、貴方の真の力を見せてちょうだい!」
「――――おう、任されたぜマスター」
直後、キャスターの周囲の空間が一変した。宝具を使う前兆なのか、彼の纏う魔力の濃度が人智の及ばない領域まで深まっていく。後ろで眺めてるだけのわたしですら察知できたのだ。対峙しているランサーともなれば――――
「勝負に出るのね、キャスター。……いいわよ、なら私も――――!」
ランサーが得物を構える。……彼女もわたしと同じ目論見か!
「キャスター! 競り負けたら承知しないんだからっ!」
「我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社――――」
言葉を紡ぐたびに、キャスターの周囲のマナが濃密さを増していく。それにしてもこの宝具詠唱、ルーン魔術とは別の原理で存在するのだろうか。ならば生み出されるのは、今までのルーン魔術の次元を超えた、決戦兵器に違いない。
「――――とっておきのナンバーで魅せてあげる!!」
キャスターの宝具に応えるためか、ランサーは自身の槍を地に突き刺す。――――そして、彼女の背から禍々しい翼が生える。……頭部の双角、爬虫類じみた強靭な尾、対魔力:A、そして今の翼。ここまで揃った推理材料が、彼女の正体の一端を明確に導き出した。
「――――まさか、竜種!?」
竜種、それは幻想種の頂点。ランサーの見た目からして、彼女は純粋な竜種ではなく
「倒壊するは『
キャスターが唐突に詠唱を中断して、わたしの目前に飛び退く。いったい何を、と怒鳴ろうとした瞬間――――彼ら二人の間に割り込むように、地表に突き刺さる一振りの剣。
「……え?」
そして、それは爆発した。
「ナンデよぉぉぉぉッ!?」
竜種自慢の肺活量が、溜め込んでいた鬱憤を爆発させるために夜空へと解き放たれた。
「……今日は厄日だわ。覚えてなさいよ……!」
突然の横槍により手傷を追ったランサーが、捨て台詞を吐いてようやく撤退していく。
「……どうキャスター、追えそう?」
「いや、無理くせえな。『探索』のルーンをアレに掛けても弾かれるのがオチだ。それよりも――――」
虚空を睨んだキャスターが新たに『探索』のルーンを刻む。
「邪魔してきやがったアーチャーの野郎に、お礼参りしてやろうじゃねえか」
「やっぱりアーチャーなの? 一瞬見えたのは剣だったけど……」
「剣士が自分の得物を投げつけて爆発させる、なんて真似するはずねえだろ。……よし、追えそうだ。あのランサーよか対魔力も低そうで何より」
……次なる相手はアーチャーか。さっきの狙撃を、キャスターは二日前の宣言通りキッチリ対処してみせた。ランサーの対魔力しかり、キャスターの矢避けの加護しかり、サーヴァント同士の戦いは相性と情報が何より大事なのだと、しっかり把握できた。ならば善は急げ。今日学んだ教訓は、アーチャー相手にたっぷりと復習させてもらおう。
校庭と体育館という災害現場をそのまま残し、正門から出る。せっかく監督役自らが学園に出向いてるんだ、彼らの仕事を奪うのは失礼だろう。
そんなことよりアーチャーの追跡だ。ルーンは深山町の北側を指し示している。和風建築の多いエリア。そこがアーチャーの拠点か、それとも――――
「――――ちょっと待った。ほんとにこの方角で合ってるの?」
「ああ、アーチャーはオレらより一足先にそこに到着したハズだ」
わたしたちが歩く方向、その行き着く先には一軒の立派な武家屋敷が建っている。実際に足を運んだことはない。けれど、そこの住人をわたしはよく知っていた。
「……キャスター、急ぐわよ――――ッ!」
アーチャーが何故そこに向かったのかはわからない。わたしはただ頭に浮かんでくる疑問を押し殺して、脚をひたすら動かした。
――――その屋敷の家主の名は、和久津智という。
時刻は午後八時。確かに冬は日が沈むのが早い。だがここまで人通りがないのはいかがなものか。視界に映る「
「……アーチャーを狙いなさい、キャスター。もうひとりの方は、わたしが――――」
“何とかする”――――と言い終わらないうちに、目の前の屋敷から感じる気配が二倍以上に膨れ上がった。
「――――」
予想していない展開に、思わず言葉を失った。わたしが思考停止している間、剣戟の音が一つ、二つと響き渡る。そして決着がついたのか、這々の体で撤退する赤き外套の男。……でも、圧倒的な気配はまだ屋敷に残っている。
「――――どうやらおいでなすったようだぜ、マスター」
そしてキャスターの言葉と共に現れる二つの影。
一つは甲冑を身に付けた騎士。小柄ではあるが、放たれる威圧感はわたしに一切の油断を許さない。
そしてもう一つ――――
「……和久津さん。あなたもマスターだったのね」
右腕に令呪を宿した少女。伝説に謳われる騎士を伴うその姿は、まるでお姫様のように可憐だ――――と、わたしは場違いにも思ってしまった。
凛視点しゅーりょー。
戦闘描写を文章だけで表現するのって大変だな、とつくづく思いました。