そして原作のネタバレ?を含みます。
アニメでも放送していた部分なのでアニメを見ていた方は大丈夫かと思います。
3年E組の生徒たちが自分の持つ想いの刃を本気で交え終わった後。今までよりもクラスの一人一人がより全員との関係が深まった。中でも特別深まったのは.....赤羽業と潮田渚。この二人だろう。
今日みたいな帰り道は多分二度とやってこないんじゃないかな。だって僕もカルマく....かるまも
「渚く....なぎさ」
「慣れないよね〜。僕もだよかるま」
僕らは中学一年生からの付き合いだ。そして今は三年生。帰り道も一緒で休日も一緒の日が多い。それだけいたら普通、ニックームとか呼び捨てとかもしくはお前とかそんな風に呼び合っていてもおかしくないと思う。でも僕らはついさっきまで「くん」をつけて呼び合っていた。そうしてたことに特別な理由はきっとないんだと思う。でも僕もカルマも....「遠慮」している部分があった。他のクラスメイトには出来ることがお互いに出来なかった。どうしてかは分からない。
「やっぱり元に戻ーー」
「良いよ、このままで。あと何回か呼び合ったらなれるでしょ。なぎさ」
今、すごいドキってした。ただ名前を言われただけなのに緊張。じゃなくて!呼吸が止まるような感じ。
「どうしたのなぎさ?」
「えっ//いや、別に!なんでもないよ!」
赤い頭が青い頭に近づくと青い頭は彼から危険を察知したかのように遠ざかった。けれどその顔は怯えていない。夕日に照らされる中でも分かるくらい赤くなっていた。
どうして!? 見慣れているはずの顔なのに、聞き慣れているはずの声なのに、どうしてこんなに胸が苦しくなるんだろう。耳じゃなくて直接心臓に入ってくるような気がして鼓動が早くなる。今までこんなことなかったのに。
「もしかしてなぎさ....まだ痛む?」
「へいき!平気!」
青い頭は近づいてくる彼に両手を向けていた。まるでこれは拒絶である。そんな青い頭の対応に彼は赤い髪の毛をいじった。彼に拒まれる心当たりが彼にはない。さきほど仲を深めたばかりである。
「ちょっ、どうしたのなぎさ?変だよ?」
「なんでもないよ!かるま!」
うっ....恥ずかしい。「かるま」は今まで「カルマくん」って形で何度も声に出してきたのに声に出してみると恥ずかしい。「くん」を付けないだけでこんなに恥ずかしいの? 言っても、呼ばれても恥ずかしいなんて初めてで僕どうすれば良いのかよく分からないよ。かるまは何も言ってこないで僕のこと見てるし。早く何か喋ってーー
「あっ!良いこと思いついた!」
僕は今までの経験で察した。かるまが両手を合わせて思いつく良いことは全部かるま以外の人にとって悪いことだってことを。でもそれをかるまはやらないと気が済まない。だから止めても無駄。諦めるしかない。けど、いつもどんなことか少し楽しみにしてる僕もいる。
「何を思いついたの?」
「顔を合わせたまま名前を呼び合って、先に目をそらした方が負けっていう遊び!」
「何それ!何の意味があるの!?にらめっこで良いじゃん!」
そんなのできるわけないじゃん。名前を呼んでも呼ばれても胸が苦しくなるのに顔を見たままなんてもっと苦しくなるよ。
「意味ならあるよなぎさ」
ううっ....そうやって僕を見て名前を呼ばないでよ。
「い、意味って?」
「名前で呼び合うことに早く慣れる!」
カルマくんは親指を立てて僕に向けた。全然グッドじゃないのに。
「そんな変なことしなくても慣れるよ」
「じゃあやるよなぎさ」
む、無視....じゃあ僕も無視してやるんだから!
「じゃ俺が先行ね?」
「....うん」
二人はたったまま顔を合わせた。赤い頭の膝は曲がって青い頭に高さを合わせていた。
僕にはかるまを無視することなんてやっぱり出来ない。だっていくら無視したって僕に話しかけて気そうだしそれに、かるまは僕が無視をしていることに気がつかないで返事が来るまでじっと待ちそう。これじゃあ無視する方がつら....あっ! 僕も良いこと思いついた!
「なぎーー」
「なぎさ、目つむるの反則。罰として次なぎさは連続ね」
彼はそう言いながら長い人差し指を青い頭の額に押し続けた。
僕の思いついた良いことは簡単に使えなくなった。しかも更に追い詰められた。
「ええ!そんなの聞いてないよ!」
「良いから早く俺を呼んで!」
も〜。かるまは僕に名前を呼ばせたいだけじゃん。ていうか本当にどうして顔を見ながら言わなきゃダメなの? 絶対何か企んでるよ。
「か....」
「聞こえないよなぎさ。てか、顔ごと下向いてるし」
「だ、だって」
「ん?」
僕はこのかるまの「ん?」って言って聞き返してくるのが....嫌。かるまは優しいから僕の言うことを全部聞こうとしてくるんだけど、僕だって言ってること全てを聞いてほしいわけじゃないんだ。聞かれたら恥ずかしいことだってある。それにその「ん?」の度に耳、というかその横顔を僕に近づけるの....恥ずかしいからやめてよ。
「なんでもない」
「じゃあなぎさは罰ゲームね」
「えっ!それこそ聞いてないよ!」
「どうせ先に言っててもなぎさ負けてたでしょ?」
そ、そうだよ。どうせ僕が先に目をそらしてたよ。そもそもかるまは自分が勝てることを最初から知ってたんだ。名前で呼ぶことに慣れるのなんて本音じゃなくて、どうせ本当の狙いは僕に罰ゲームをさせることなんでしょ。
「キスして」
笑顔で何か言われた。すぐに理解をすることが出来なかった僕はその文字を頭に浮かべてみた。
「......キキ、キス!?む!無理だよ!ムリムリムリ!ムリ!ていうかなんでキス!?」
「へ?だってキス以上に恥ずかしいことないでしょ?だからキスができれば名前で呼ぶことにも恥ずかしさを感じないよ」
確かにそうかもしれないけどさ! 何言ってるの? だいたい僕男だよ? キスって普通、ずっと一緒にいる仲の良い人たちがする.....違う違う違う!キスは男の人と女の人がするもの!
「ね?納得したでしょ?」
納得....確かにキス以上に恥ずかしいことなんてないと思うからかるまの説明は正しいとは思うけどさ。でもいきなり過ぎるし。それに僕顔を見るだけでもーー
「そんなに恥ずかしいなら目閉じて良いよ」
「あり....がと」
僕は無意識にお礼を言っていた。別に言われなくても目は閉じるに決まってるのに。
夕日を受ける青い頭の顔に影がかかった。赤い頭が足を伸ばして青い頭よりも高い位置に来た。しかしまた、赤い頭は下がっていく。でも今度は膝を曲げていない。倒れるように青い頭へと向かっていく。彼は両手で自分の体の中に青い頭の少年を閉じ込めていた。そして赤い頭は青い髪の毛と接触した。
〝渚〟
名前を呼ばれたから目を開けたら、僕は赤い目と見つめ合った。その瞬間。唇に温度を感じた。熱い。体中が熱い。初めての温度が僕を包んだ。僕はそれに食らいついた。もっと近づきたい。もっと触れたい。業をもっと知りたい。
片方に比べると細く小さな腕。その腕は小さいながらも強く赤い頭の体に抱きついていた。その強さに負けないようにと、赤い頭は自分の腕の中にあるその体をさらに抱き寄せた。先ほどまで賑やかに響いていた少年たちの声は消え、聞こえるのは言葉のない
「キスってヤバいね!さすがに俺でも恥ずかったよ」
彼は気まずい空気を嫌ってそう言った。だが、彼の予想に反して返事が聞こえてこなかった。
「ねえ、こっち見てよなぎさ」
彼は青い頭の肩を掴むと自分の方へ回した。
「もう//カルマなんて大っ嫌い!」
「その顔、怒ってんの?」
「怒ってないよ!」と、にやける顔に叫んだ青い頭の顔は頬を膨らましていた。けれどその青い目は丸いままであった。その目を見て安心した彼は「渚。これからもよろしくね」と言って右手を出した。その手に向かって小さな右手がゆっくりと近づいた。
「うん。よ、よろしく....業」
「あっ!今呼んでくれた!」
「さっきも呼んだじゃん」
「さっきまでのよりもちゃんと聞こえた!」
「き、気のせいだよ」
名前を呼ばれても平気。名前も呼べた。顔を見ていられる。き、キスって凄いな。暗殺の技のキスとは違う。していることは同じなのに。まるで僕は今まで業とキスをしてみたかったって気が....//// 違う! それはない! だって業は僕の親友だもん。し、親友だよ。少なくとも今は。
終わり
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