魔砲少女リリカル☆ザミエル   作:結城勇気

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 ちょっと時間かかっちゃいました。ごめんなさい。

 言い訳だけさせてもらうとですね、ちょっと一週間ほど祖父母の元にお泊りに行ってきました。
 その時ノートパソコン持ってかなかったんで、一週間丸ごと書けなくってですね。まぁだいぶかかりました。
 もってきゃいいじゃん! って話なんですけどね……外に持っていくこと自体が怖くって。壊れたらどうしよう! って感じで。





 今回、前の数話に比べたらちょっと短めです。ちょうどいいところで区切ったら大分短くなりおったわい。


第四話「結界内の攻防」

 ユーノ・スクライアはただ茫然とその光景を見ていた。

 

 始まりは彼の痛覚が反応してからだ。

 

 なのはによって唐突に蹴り飛ばされた彼は、地面に着地する直前、突然巻き起こった暴風によって大空に舞い上げられ――それを見た。

 

 誰もいない場所から(・・・・・・・・・)金の斬撃が飛んだ。

 

 それも一つ二つではなく、五つどころか十に至るまで。少なくともユーノが滞空し、地面に足をつけるまでの数秒間認識するだけでも数十、下手すれば百の斬撃が、誰もいない空間から振るわれたのだ。

 

 隠れた場所から放たれた可能性はない。結界内の森は謎の――おそらく金髪の少女が起こしたのだろうが――ソニックウェーブによって木々があらかた薙ぎ倒されているため、隠れる場所など(はな)からない。そもそも斬撃は、なのはを包囲して三六〇度あらゆる場所から振るわれる。つまりどちらにしても隠れている訳ではない。

 

 ならば光学迷彩でも使っているのか――否である。

 

 カメレオンのように周りに溶け込む方法や、光を透過・回折させる方法、空間を歪曲させる方法など、光学迷彩はいくつかの手法が存在している。が、これらは地球よりも科学の発達した世界ですら完成させることが出来ていない。

 

 カメレオンの場合は対象の表面に周りの風景をカメラで撮影し投影することで行うが、対人で使えるほどの大きさにすることが出来ていないし、光を透過・回折させる方法だと確かに透明にはなれるが、使用者が敵を見ることが出来なくなる。空間歪曲は失敗して世界を一つ消してしまったために凍結されたと聞く。

 

 誰かが完成させた、と考えることも出来るだろうが、可能性としては薄い。そもそも金髪の少女(彼女)の戦闘タイプはそういったものではない、とユーノは解していた。

 

 すなわち、異常なほど究極的なスピードタイプ。

 

 目視する事すら不可能とするほどの神速によって圧倒する、それが彼女。一撃離脱ではなく、一撃必殺。つまりは走れば終わる。彼女が走ったことを認識する前にこちらは倒されているのだ。

 

 動体視力を超えていること、さらにソニックウェーブが巻き起こることから、少なくとも音よりは確実に早い。光速だとは思えないが、それに近いかもしれない。

 

 身体が耐えきれないとかそういう問題すら度外視するほどの異常性。それが相対している敵。

 

 だが驚くべきは、金色の少女だけではない。防戦一方どころか、彼女の攻撃を捌き、更に反撃できる子供らしくない少女――高町なのはも異常であった。

 

 相手の動きは、魔力で視力を強化しようとも目視不可能な速度だ。しかしなのはは、一秒だけで数十襲い来る敵の攻撃を弾き、流し、避ける。それだけに留まらず反撃すらしてみせる。

 

 二丁の銃剣から放たれる桃色の閃光。魔法初心者だとは到底思えないほどの魔力操作、それによって最低限の魔力で出せる限りの最高の威力を連射する。

 

 彼女曰く“ブリッツ・バスター”。いつの間にか開発していた砲撃魔法だ。大した魔力も使わず、なおかつ最大限威力を落とさずに連射を可能とする。そんなコンセプトで作った(・・・)と言っていた。

 

 圧倒的才能だ。努力も欠かしていない。

 

 ……同類、なのだろう。敵である金色の少女と高町なのはは。

 

 二人から数十メートル以上離れた地面に、ユーノは着地する。

 

 小さな矮躯は、その戦いをただただ見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

      *  *  *

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――金が疾走する。

 

 地を蹴り、倒木を蹴り、空を蹴る。一瞬たりとも停止はせず、ただただひた走る。そのためだけの一挙手一投足は、自分以外の全てを引き裂き潰して轢殺する暴風だ。通り過ぎた後など死の(わだち)しか残らないし残さない。死にたくなければ眼前から退けばいい。彼女にとってはただそれだけの話でしかなく、それ以上必要ない。

 

 それが金髪の少女、フェイト・テスタロッサ。誰よりも速く、誰も追いつけない神速の狼(フローズヴィトニル)。かつてウォルフガング・シュライバーと呼ばれていた少女。それが金の正体であり、この異次元の戦闘を繰り広げる一人。

 

 相対するのは、かつて赤い女であった少女だ。名を高町なのは。シュライバーもかつて身に纏っていた漆黒の軍服をバリアジャケットとし、子供らしからぬ面をした栗色の少女。

 

 赤には程遠いほどの桃色を武器に、轢殺など許さずこんなお遊び(・・・)に付き合っている。互いに殺し合うべき時期は今ではないと理解しているが故に、あくまでこれはお遊びでしかない。

 

 そう、これはお遊び(魔法戦)だ。

 

「ははっ――」

 

 フェイトの口から楽しげな声が漏れる。

 

 ただ走るだけで巻き起こるソニックウェーブなど意にも解さず、その手に握るデバイス(相棒)『バルディッシュ』を振るう。

 

 魔力刃を展開した大鎌(サイズフォーム)となっている金色(こんじき)の刃は、動き回りながら一秒毎に数十と振るわれる。周りからしてみれば、金の斬撃が誰もいないところから飛んでいるように見えるだろう。それも三六〇度、目の前の少女を取り囲むように。

 

 だが相対している高町なのはという少女は、その程度で落とされるほど弱くはない。

 

 襲い来る金を弾き捌いて避ける。常人以上の異常な動体視力を持つ彼女には、“今の”フェイトの速度なら目視できる。そしてそれに反応するだけの身体も持っている。だから戦える。

 

「ふん――ッ」

 

 飛び退き一瞬で斬撃の包囲網から抜け出したなのはは、滞空しながら左腕を振るい、同時にレイジングハートのトリガーを引き絞る。魔法陣の展開から発動までを〇.一秒でこなし、それを連続七発。

 

 マズルフラッシュにも似た桃色の光が、左腕のレイジングハートの銃口から放たれた。弧を描くように線をつなぐそれらの正面から、七つの光柱が走る。

 

 一瞬で地面へと着弾する七つの光は、腕を振りながら撃つなどという異常な方法で撃たれたにもかかわらず、総じてフェイトに向かって正確に飛ぶ。彼女の飛行ルート、回避先を数手先読みした光柱はフェイトの眼前に迫る。

 

 ……が。

 

「あはっ、曲撃ちだなんて。遊佐司狼の真似かいエレオノーレ」

 

 桃色の線を金がすり抜ける。

 

 彼女に対して、ルートの計算など関係はない。フェイト・テスタロッサは絶対最速であり、あらゆる一瞬は数瞬と化す。どう動こうと当たるように配置されているのなら、着弾するよりも速く通り抜けてしまえばいいのだ。相手がどれだけ速かろうとも、自分は必ずそれを上回る。何があってもそれは揺らがないのだから。

 

《Photon Lancer》

 

 駆け抜けるフェイトの周りに、魔力で精製された光球、魔力弾を放つフォトンスフィア(発射体)が展開される。

 

「ボクらは今、魔法少女(笑)なんだよ? もっとそれらしく行こうじゃないか」

 

 バチバチと帯電するフォトンスフィアを置き去りにしてなのはの背後に回り、一閃。同時にスフィアが火を噴き、直射弾(ランサー)が放たれた。五×五の計二五発が、なのはに向けて射出される。

 

 正面からの弾幕、背面からの斬撃。挟み撃ちだ。

 

「私はそんなものになった覚えはないッ」

《Divine Shooter》

 

 ガキィンッ! と左のレイジングハートの刃と光刃が衝突した。

 

 ノールックで受け止めたなのはは、誘導弾(シューター)を展開してランサーを迎撃する。

 

 ランサーは弾速が速い代わりに直線状にしか進まないし、連射しているから込める魔力は分散する。つまり量より質を取ってしまえば、五発で二五発を撃ち落とすことは容易い。

 

 加えて、鍔迫り合いの接触面に魔力を一瞬で収束、爆発させる。接触している今が攻撃のチャンスなのだ。狙わないという選択肢は、なのはには存在しなかった。

 そして驚くべきことに、これまでの行動には〇.五秒も費やしていなかった。

 

 爆発寸前でフェイトはその場から逃れる。目の前が爆煙で埋め尽くされた。

 

 瞬間、全身に数多の鋭い何かが突き刺さった。

 

「ガぁッ――!?」

 

 それは桃色の針。魔力で構成された弾丸。

 

 数十発に至るそれら全てが、爆発と共にクレイモア地雷のごとくバラ撒かれたのだと、瞬時に理解するのは難しいことではなかった。

 

 爆発に当たるほど遅くない事を見越しての攻撃だ。一秒すらかけずにそんな仕掛けを施す――なるほど、さすがは赤騎士(ルべド)武器(もの)が変わろうがただそれだけ。姿形が変わろうが、彼女は間違いなくエレオノーレ・フォン・ヴィッテングルグ。

 

 戦術に特化したフェイトと、戦術と戦略を網羅した万能型のなのは。尖っている(極端)丸い(極端)か。それが二人の大隊長を分かつやり方(性質)だ。

 

「やはり貴様も弱体化しているな」

 

 爆炎を桃色の光が突き破る。雲の隙間から漏れる日光のごとく襲い来るのは連射砲撃(ブリッツバスター)

 

 ただの威嚇だ、誘導する気も当てる気も大してない。故にわざわざ疾走して避ける必要性もない。

 

「形成せずとも貴様は今よりも速かっただろう。魔法だけでのスピードかとも一瞬考えたがそういうでもない。それが今の全力疾走だ」

 

 爆煙の晴れた先には、ブーツの側面から桃色の翼を生やして浮いているなのはの姿があった。

 

「手ぇ抜いてるだけかもよ」

「貴様にそんな器用なことが出来るものか」

 

 黒円卓の幹部、大隊長たる三人。すなわち、エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグ(高町なのは)ウォルフガング・シュライバー(フェイト・テスタロッサ)、そしてゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン。

 

 彼らはまさしく魔人。最強クラスの単体戦力であり、個にして軍隊(レギオン)。内に秘める喰らってきた魂は大隊規模どころか師団規模以上。一騎当千を形にしたような存在だ。

 

 そして今相対しているフェイト、すなわちシュライバーは狂犬だ。典型的なシリアルキラー(殺人鬼)である彼は、子供らしさを持つが故に野性的で、まさしく身体が戦い方を知っている。

 

 子供らしい故に手加減を知らない。誰かを殺すのは、彼にとって幼稚園児が玩具で遊ぶようなものだ。まぁ、それが魔人的には手加減と言えはするだろうが。

 

「これはお遊び(魔法戦)だよエレオノーレ。キミだって分かってるだろう。どこまでいったって実験だ、魔法がどれだけ使えるのか」

 

 フェイトは嫌に理性的に言う。

 

 つまり真の武器(聖遺物)は使わないし、必殺技(創造)だって使わない。あくまでこれは魔法戦。魔人的身体能力があろうと、必ず当たるわけでもなければ、一〇〇パーセント確実に避けられる訳でもない。

 

 何が言いたいかというと。

 

「「ボク()達大隊長の相性は関係ない」」

 

 クスリと笑うフェイトは動く。

 

《Photon Lancer Mode Guns fire》

 

 空を駆けるフェイトの人差し指の先に魔法陣が展開される。

 

 ただの発射体(スフィア)ではフェイトのスピードについて来れず、射撃しながらの高速移動が出来ない。代わりに砲撃しながらだと、スピードは落ちるし魔力消費も激しい。

 

 そのために生み出したのが魔法陣型スフィア。銃と同じように使える魔法。

 

「さぁっ、ボコボコに(穴だらけ)にしてやるよォどこがいいッ!!」

 

 目の前から消えた瞬間になのはを襲う金色の雨。超高速移動中に放たれるランサーが、包囲射撃でもされているかのように、上下左右あらゆる場所から飛んでくる。

 

 なのはは飛び回り避けながらブリッツバスターを照射する。ランサーに()められた魔力は、先のランサーと同程度。撃ち消すのは難しくない。が、前述したとおり、ランサーはあらゆる場所から撃たれる。ただ単に迎撃すればいい、という訳にもいかない。

 

「チィッ、ちょこまかとっ!」

 

 ブリッツバスターがランサーを飲み込む。

 

 展開したディバインシューターで、直撃しそうなランサーを迎撃しながら移動ルートと回避パターンを計算し、フェイトを狙う物の相手が速すぎる。どれだけ計算を修正して撃とうとも、フェイトはそれを(くつがえ)すようにすり抜けるのだ。本来ならフェイトを飲み込むはずのブリッツバスターは、一度としてランサー以外を飲み込めない。

 

 ブリッツバスターの弾速と、フェイトの移動速度に差がありすぎる。

 

 本人を直接狙ったところで当たらないし、フェイトの反応出来ない距離を考えて撃つと、近すぎて(・・・・)目標地点を通り抜けられる。逆に、それから離せば遠すぎてそこに来ない。

 

 もはや、止めるか接近戦に持ち込むか。この二つしか方法がないが、前者は拘束魔法(バインド)を使っても、ただ使うだけではブリッツバスターと同じ末路。後者はフェイトから来なければ不可能だ。

 

「ならば――レイジングハートッ!」

《Yes, My master》

 

 桃色の球体が、なのはの周囲に現れる。五や十どころではない。それは百以上あった。

 

 なのはは苦しげに顔を歪める。

 

「くぅっ……! 即興の術式だから仕方ないが……予想以上に魔力を使うっ」

 

 球体が辺りに散らばり――消える。

 

 フェイトのように高速移動している訳でもない。霧散した訳でもない。ただ消えた。

 

 ――瞬間、なのはの後方で連鎖的に爆発が起きた。

 

「ははっ、地雷、いや、機雷って訳か。でもねぇ――ッ!」

 

 ドドドドドドドドドドド――ッ!! と、なのはを囲むように爆発が連鎖する。フェイトがわざと起こしているのだろう。魔法には反応しないようにしているから、フェイト以外がかかったわけはない。ご丁寧にランサーだけは撃ちながら、展開した機雷を排除していく。

 

 爆発自体は当たらない。起爆には一瞬のラグが生じる。常人にはそれで十分なのだろうが、フェイトはその常人の域から外れた魔人。神速の彼女にとって、他人にとっての一瞬は数瞬に値する。一瞬でもラグがあれば、爆発圏内から逃れるのは容易い。

 

 なのはの視界が爆煙で埋まる。文字通り煙の壁で包まれていた。

 

「目隠しでもしたいのかい? キミにしては浅はかな考えだね」

 

 その程度でこの優位は揺らがない。それどころか相手も目隠し状態だ。

 

 だがフェイトは違った。

 

 動物的に言うならば、匂いで分かるとでも言うべきか。魂の感覚が、野性的な直感が、なのはの位置を特定する。

 

 ニヤリ、とフェイトは笑った。

 

 指先からランサーを撃ちながら、フェイトは魔力を集束させる。

 

 威力の高い射撃系統の魔法が少ないフェイトの、数少ない砲撃魔法。魔力変換資質『電気』も使用した、唯一の遠距離砲撃。

 

「サンダー――ッ」

 

 飛び回りランサーを撃ちながら――放つ。

 

「スマッ――ッ!?」

 

 放つ――その瞬間だった。

 

 左腕が誰かに引っ張られたかのように、強制的に後ろへと持っていかれた。ゴキン、と嫌な音が耳の近くで鳴った。

 

「ギ――ッ、ガァアアア――ッ!!?」

 

 左腕から全身にかけて激痛が走った。それどころか左腕に力が入らない。超速度からの強制停止だ。千切れなかったのは奇跡だっただろう。肩が外れ、肉が裂ける。暖かい鮮血が顔に降り注ぐのが分かった。

 

「浅はかなのは貴様だ、シュライバー」

 

 左腕だけではなく、バルディッシュを握る右腕と両足も更に何かに引っ張られた。(はりつけ)にされているかのように、空中で大の字にされる。

 

 かすかに正常に働いた頭が、それの正体を認識する。

 

(バ……拘束魔法(バインド)――ッ!!)

 

 かなり強固なものだ。魔人の力を以てしても、今の自分では無理矢理引きちぎることが出来ない。

 

 瞬間的に理解した。

 

 なのはが展開したのは機雷だけではなかったのだ。その中にひっそりとバインドを展開させていた。もしかしたら別の何かも仕掛けられていたかもしれない。

 

 言い訳する気はないし、言うほど今頭が回るわけでもないが、さっきまでだったら発動する前に通り抜けられていたはずだ。なら何故引っかかったのか――簡単な話だ。フェイトが減速したのだ。

 

 砲撃魔法を使うと、魔法による加速に回せる魔力が少なくなるが故の減速。

 

 なのはの言うとおり謎の弱体化しているから、単体で完全に目視できなくなるほどのスピードが出せなくなってしまっている。だから使っていた加速魔法に回す魔力が少なくなれば、当然スピードは下がる。だからバインドに捕まった。

 

《Divine――》

 

 機械音による女声が、激痛に苦しむ頭に入ってくる。

 

「バスターッ」

 

 目の前が……桃色に染まった。

 

 

 

 

 

 

 

      *  *  *

 

 

 

 

 

 

 

 拘束魔法(バインド)はただのオマケだった。

 

 精々かかれば運がいい、程度の話だったし、その分一際強固な物にはしたが、警戒を考えて数も四、五個程度を離れたところに仕掛けただけだ。爆発ではなくクレイモア型の機雷。それも即興で作った、当たった部位に加重魔法をかけるものや、不可視型の魔力により構成されたネットなど、そちらの方が本命だったのだ。正直引っかかるとはなのはも思わなかった。

 

 だがフェイトはどういう訳か捕まった。数少ないバインドに。

 

「……ハイドリヒ卿のご加護か」

 

 そう考えた方が嬉しい。

 

 なのはは爆煙の中を突破し、緑を視界に入れる。

 

 落ちていくフェイトが目に入った。左腕から血が溢れ、まき散らしながら倒木の海に墜落していく。

 

 と、その時。

 

「フェイトォオオオオオオオオオオオッ!!?」

 

 聞き覚えのない声が、フェイトの方から聞こえた。

 

 フッ、とフェイトが橙色の何かに攫われた。

 

「フェ、フェイトッ! あっ、あぁっ! う、腕が……こんなッ」

 

 それは――奇怪な狼だった。

 

 喋るところはもちろん、毛色がオレンジと赤という、染め上げられたような色をしている。大きさは普通の狼よりも大きい。額には何故か宝石のような石がついていた。

 

 その狼はキッ、となのはを睨んだ。

 

「お前……お前ェッ!!」

 

 なのははその狼と、背に乗せられぐったりしたフェイトを上から見下ろす。

 

「貴様、シュライバーの、それの仲間か」

「アタシはフェイトの使い魔だッ」

「使い魔……なるほど」

 

 使い魔。すなわち、アニメや漫画のみならず、ファンタジー物の物語、特に魔法の出てくるものには大体出てくると言っていい存在だ。

 

 主の目となり手足となる下僕。物語のよって区区(まちまち)だが、目の前にいる使い魔を名乗る橙色の狼は自我を持ち、人間と同じように思考するタイプのようだ。下手すれば魔法も使えるかもしれない。

 

 だがなのはは、現状警戒する必要はない、と考えた。

 

「――私を睨みつけるのもいいが、とっととそいつを連れ帰って治療したらどうだ。そのままだと失血死するぞ」

 

 私は邪魔はしない、と地面に降り立つ。

 

 目の前にはジェルシードがあった。

 

 おそらく、先の戦闘による流れ弾が多数命中した結果、形を保てなくなったのだろう。近くに猫が寝ている。

 

「……リリカルマジカル、ジュエルシード封印」

《Sealing》

 

 ジュエルシードを封印して、レイジングハートの内部に格納する。

 

 見ると、既にフェイトと橙色の狼は血の跡を残して消えていた。

 

 一瞥だけして、なのははレイジングハートを待機形態に戻らせる。

 

 そのまま気にした様子もなく、なのはは同じく流れ弾で気絶していたユーノを拾いあげ、結界を解除してアリサ達の元へと歩みを進め始めた。

 

 

 

 




 やっぱり戦闘描写は難しいのう。
 そして相変わらず戦闘だと調子のってルビ振りまくってしまう。読み辛かったらごめんなさい。



 思ったけど、マキナがはやてになるって予想してる人いたけどさ。
 それってつまり、はやては拳圧だけで骨折れるってことだよね。

 ……怖っ。
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