『むか~し、むかし』からはじまるものを書いてみた

オリジナルだけどガンダム関係あり

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荒唐無稽な怪物と子供の話

 

 

 

むか~し、むかし。まだ世界が狭かった時代。

 

ある砂漠に囲まれた地域に『アザディスタン』と『クルジス』という国がありました。

 

この二つの国は仲が悪く。何年も、何十年も、何百年も前から戦争をしていました。

 

きっかけは些細な事。どちらが『先に国を作った』か。

しかし、そんな事はどうでもよくなってしまった事。

 

二つの国は来る日も来る日も血を血で洗っていました。

 

 

そんな時、ある満月の夜。東の東、そのまた東の果てから一匹の『怪物』がやって来ました。

 

怪物は疲れていました。お腹が減っていました。喉が渇いていました。

 

怪物はフラフラと二つの国の間を通っていましたが、ついには倒れてしまいました。

 

 

「あぁ・・・もうダメか・・・・・」

 

怪物が諦めて目を瞑っていると、怪物の背中を叩く者がいました。

 

 

「どうしたの?」

 

怪物が振り向くとそこには年端もいかない子供が立っていました。怪物は子供に言いました。

 

 

「歩き疲れたよ。お腹が減ったよ。喉が渇いたよ。」

 

すると子供は言いました。

 

 

「ならボクの家に来なよ。食べ物をあげるよ。水をあげるよ」

 

子供の言葉に怪物は驚きました。ここに来る途中、怪物は二つの国の民から石を投げられ、酷い言葉をかけられていたからです。

 

 

「良いのかい? 俺は醜い怪物だ。そんな俺を助けて?」

 

怪物は恐る恐る聞きました。子供は笑顔で二つ返事をして怪物を家に招きました。

 

子供の家はアザディスタンとクルジスのど真中の国境地点にありました。

 

子供の家に招かれた怪物はそこでもてなしをうけました。

 

 

「ありがとう。おかけで元気になったよ。でもどうして俺を助けてくれたんだい?」

怪物はまた子供に聞きました。

 

「困っている人を助けるのに理由がいるのかい?」

 

子供は照れくさそうに答えました。

 

怪物は子供が気に入りました。そして怪物は子供と暮らす事になり、色々な事をしました。

 

怪物は子供に旅の話を聞かせたり、知識を与えたりしました。子供は怪物と一緒に野菜を作ったり、食べたりしました。

 

そこで怪物が何故、怪物になったのかを

子供が何故、こんな危険な場所に住んでいるのかを話したりもしました。

 

そんな月日を重ねながら二人は仲良く暮らしていました。

 

でもある日、そんな日常は終わりをつげました。

休戦協定が破られ、戦争がまたはじまったのです。

 

真っ先に怪物と子供のいる場所は戦火に焼かれました。

 

怪物は子供を抱えて逃げました。

 

逃げて

逃げて

逃げて

 

ある洞穴に逃げ込みました。

もう大丈夫かと思った怪物は子供を背中からおろして驚嘆しました。

なんと子供は背中に矢傷を負い、破傷風にかかっていたのです。

怪物は嘆きました。そして何より自分を攻めました。

 

それから怪物は子供の看病に励みました。しかし、日に日に子供は弱っていきます。怪物は薬をもらいにアザディスタンに行きました。

 

途中、怪物は石を投げられ、酷い言葉をかけられました。それでもやっとの思いで病院につき、医者に薬を頼みました。しかし・・・

 

「敵国の子供にやる薬などない」と追い返されてしまいました。

 

怪物は今度はクルジスに行きました。

そこでも怪物は石を投げられ、酷い言葉をかけられました。それでもやっと病院につき、医者に薬を頼みました。しかしまた・・・

 

「敵国の子供にやる薬などない」と追い返されてしまいました。

 

子供はアザディスタンとクルジスの血を引いていたのです。

 

怪物は怒りました。

どうしてだと。どうしてあんな優しい子がこんな酷い目に会わなくてはならぬのかと、怪物は嘆きました。

 

怪物はただ日に日に弱っていく子供の手を握る事しか出来ませんでした。

怪物は毎日毎日、涙を流しました。でも子供は笑っていました。

 

「嫌われ者のボクに君は寄り添ってくれる。それだけで嬉しい」と

 

それでも怪物は涙を流すばかりです。

 

 

そんなある日、怪物はある決心をしました。

怪物の『血』には不思議な力がありました。この血のせいで怪物は怪物と言われていました。

 

怪物は自らの指の先を『牙』で傷つけ、血をポタリと子供の唇に落としました。

 

この行為は怪物の一族にとっては禁忌でした。

 

怪物は自分の血が子供に馴染むのを見届けると洞穴から出ていき、それっきりとなりました。

 

 

「・・・・・――?・・・」

 

自分を呼ぶ、子供の声に涙を流して・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

それから怪物は『本当の怪物』になりました。

牙を尖らせ、鉤爪を出し、二つの国を跨いで暴れました。

二つの国が今まで経験した事のない惨劇を描きました。

 

壊して、殺して、喰いました。

 

皮肉な事に怪物が暴れれば暴れる程、二つの国は協力しあい、怪物を倒そうと躍起になりました。

 

そして遂には二つの国の軍勢と怪物による一騎討ちとなりました。

 

戦いは六つの昼を跨ぎ、七つめの夜に終結しました。

 

戦場には幾つもの無惨な屍が転がり、山が積み上がる。

 

そんな血の臭いが充満する場所に怪物は立っていた。

悲しそうに、うらめしそうに

 

体に何本もの剣や矢、槍を刺されて・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

この戦いの後、アザディスタンとクルジスはお互いの文化、歴史を認め、和平の手をとった

 

和平の切っ掛けとなったあの戦場には、大きな慰霊碑が建てられた。

慰霊碑には戦場で散っていった兵士達の名前が彫られている。

その遺影にガリガリと傷をつける影が一人・・・あの子だ。

 

怪物の血が馴染んだ子供は一命をとりとめたのだ。

 

子供はガリガリとその慰霊碑に名前を刻んだ。

『怪物』の名前を。

 

 

「・・・・・よし!」

 

子供は名前を刻むと敬礼をして、その場を立ち去った。

 

 

 

子供は大好きだった怪物の名前を名乗り、二つの国を統一し、歴史に名前を残す名君となるのは後の話・・・

 

 

 

                      おわり



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