俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~   作:GJ0083

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グラブルリリンク追加ストーリーきたー!
ところで早見ボイスのハーヴィンであるマギ姉様を操作させてくれまいか? 期待してるぞ運営。


ダンジョンアタック⑦

 琉々武に汚れた装甲を手で払いながら立ち上がり改めて周囲を見回して確認する。

 これまでと同じ石作りの緩い傾斜の通路。

 少し明かりが減って暗くなったかな?

 

「無事かフォックス」

「なんとか。そちらは?」

「ダガー小隊が少し消耗した様子だが肉体的には問題ない。軽く調べたがこの通路にはなにもないようだ。一時間の休息を取り次に向かう」

「了解です。自分は少し距離を取らせてもらいますね」

「一応は警戒をして目の届く範囲に居ろよ。ほら、水と食料だ」

「ありがとうございます」

 

 ダガー小隊は地面に転がり気怠そうにしている。

 あのゾンビ雨の中を高速で入りきったんだ、そらそうなるは。

 スター小隊はスター1が立って警戒し、残りの二人は壁に背を預け休息中。

 そこから少し離れた所でISを解除して仮面を外し、タオルで顔を拭き水で喉を潤す。

 うんめぇぇぇぇ! よくよく考えれば久しぶりの水だ。

 携帯食料を食べ水を飲む――ふぅ、ようやく一息つけた。

 少しでも早く回復する為には睡眠かな?

 ぶっちゃけ動き回って爆風で吹き飛ばされて脳内麻薬ドパドパ状態だけど、休める内に休まないと。

 なので秘密兵器ドンッ! 【篠ノ之束寝息ASMR】の出番だ!

 説明しよう。 

 篠ノ之束ASNRとは束さんの隙を見て寝息を集めた珠玉の一品である。

 世界で俺だけが作成可能だと思われる非売品です。

 ダガー小隊を見習って地面に横たわる。

 壁に背中を預けるくらいじゃ熟睡できないからな。

 では琉々武ヘッドを装着しまして。

 

『すぴー、くかー』

 

 やはりASMRを聴くなら琉々武ヘッドに限る。

 高音質で音漏れなし! 時代の最先端ですぜ!

 あぁ脳内の興奮物質が浄化されていく……。

 これなら束さんへの怒りを一時的に忘れ穏やかに眠れそうだ。

 束さんへの怒りを束さんで癒すとかどうなんだろう? ま、余すとこなく使えるアンコウ的な生き物だとでも思えばいいさ。

 ではお休みなさい。

 

 

 

 

 

「起きろフォックス」

「ふぁ!?」

 

 声に驚いて目を開けると、自分を見下ろすスター1と目が合った。

 

「時間だ」

「ふぁ~、準備するのお待ちを」

 

 欠伸をしなが身を起こし、寝起きの喉の渇きを癒して荷物をしまう。

 他のメンバーは居ないようだ。

 

「みんなは?」

「先に行って扉周辺を調べている」

 

 もう動いてるのね。

 気を使ってギリギリまで寝かせてくれたみたいだ。

 手早く準備を終えスター1と一緒に通路を進む。

 直線で200メートルくらいかな? 上層に比べやや薄暗い通路の歩き門にたどり着く。

 

「報告を」

「これといって仕掛けはなしです」

「ならすぐにでも行けるな。フォックス、目は覚めてるな?」

「行けます」

 

 疲れは……まだ正直ある。

 でも全快するならお風呂に入って一晩ぐっすり寝るくらいじゃないと。

 なので弱音はなし。

 気合入れて行くぞい!

 

「スター2,スター3は扉を開けろ。フォックスは私の横に、ダガー小隊は後ろを頼む」

 

 2-2-3で扉の前に並ぶ。

 さて次はなんの間かな。

 強欲と傲慢……七つの大罪だと一番重い罪は傲慢だっけ?

 別に階層と罪の重さが揃ってる訳じゃないが……どうせラスボスは束さんだよねって確信がある。

 なら次は強欲か。

 どんな罠が来るか――

 扉が開き新しい部屋の様子が見えてくる。

 部屋は全体的に薄暗く、中央の台座がスポットライトで照らされている。

 

「中央の台座以外に部屋の四方に石像がありますです」

「ボールとボタンと……あれはUSBメモリか? 石像に注意しつつ進むぞ」

 

 注意深く進み台座に近付く。

 それぞれの物品には説明書と言えばいいのか、詳細パネルが取り付けられていた。

 

 ――なんの変哲もない赤いボタンには『篠ノ之束がある程度の願いを叶えてくれるボタン』

 

 ――三個のボーリング玉に見える物には『ISで襲ってきたバカを返り討ちにした際の戦利品』

 

 ――USBメモリには『テロ組織、アル・アクサのリーダーの所在地と主要拠点のデータ』

 

 

 

 

 

 

 

 お前の考える物欲おかしいんだよっ!!!

 は? マジかよこのラインナップ。

 テロ組織情報の価値はわからんが、俺はここでゴールして地上に戻りたい。

 それと俺の知らない所で三機のISを返り討ちにしてたのが驚き。

 ある程度の願いか……エロいのはダメだけど健全なコスプレ撮影くらいならいけそうだな。

 

「所在が曖昧な浮いてるISコアが3つ……」

 

「あのアル・アクサのデータ……だと?……」

 

 あかん俺はもちろん他のメンバーにも魅力的に見える品らしい。

 これ貰ったらどうなるんだろ? あの石像が襲ってくる……もしくは天井が落ちてくるか床がぬけるとか? でも殺す気のトラップはないだろうけどお宝の没収はありそうだな。

 

「一応の確認ですが、これ貰ってそのまま帰りません?」

「おま……お前、それはないだろう。確かに逃すのは惜しいが」

「許されるなら欲しいですが、我々ダガー小隊はスター1の指示に従います」

「ダガー小隊はあのテロ組織と関りが?」

「作戦で少し」

 

 少しっていう割にはダガー小隊全員の顔が怖い。

 これは仲間が殺された恨みとか、そんな暗い想いがありそう。

 これ以上は聞かない方がいいな。

 

「スター1はISコアが欲しいんですよね?」

「ISコアの価値を考えれば当然だろう。作られた個数はそう多くなく、各国への分配は篠ノ之博士によって決められた。その中でISコアを三個もアメリカにもたらされるのは国益的に大きい」

 

 あーね、所持ISの数=国の戦闘力と言ってもいい世界の価値観が出来上がりつつあるもんね。

 そら欲しいか。

 でも問題は四方の石像なんだよねー。

 あれなんだろう? あの手の石像って絶妙にどこかで見たことがあるが名前は知らないってパターンが多い。

 仏教関係ぽいけど鎧を身に着けてやや鬼寄りの顔付き……夜叉系? ちょっと分らんな。

 

「部屋の隅に二体づつ立ってるあの石像に心当たりある人」

「知ってる」

 

 手や首で否を表すメンバーの中で唯一声を上げる人物が居た。

 スター3だ。

 

「あれは仏教で財宝や人の守護をしている八大夜叉と呼ばれる鬼神」

「財宝を守護……ある意味分かりやすい。よく知ってましたね」

 

 日本人なのに財宝の守護とか言われても毘沙門天くらいしか知らんぞ。

 

「趣味」

「なるほど」

 

 それはいい趣味してる。

 仏像ってカッコいいよね。

 

「ふむ、宝に触ったら襲ってくる系か? なら逆に言えばタブーを侵さなければセーフだろう」

 

 そう言ってスター1が仏像の一つに近付きその肌に触れる。

 ノックの要領で叩いたり手に持っている武器の刃を確かめたりとべたべたと触りまくる。

 よう触れるな。

 仏像の大きさ二メートルを超えている。

 動いて襲ってくるかもしれない仏像とか怖すぎだろう。

 

「なるほど、普通の石像ではないな。中身まで石ではないし石剣も砥がれて強度は不明だが実用性がある」

「宝に触ったら襲ってくるのは確定です。隊長、どうしますです?」

「要所に置いてあるのだから上層で襲ってきた奴らとは性能は違うだろう。それが8体、こちらはIS4機と歩兵が三人……博打をするには難しいな」

「追加情報。八大夜叉は毘沙門天の部下的なポジション。倒せたとしてもそれで終わらない可能性がある」

 

 おかわりありそうだな。

 最悪合体してスーパー毘沙門天とかになりそう。

 やはりスルー安定……いや待てよ?

 

「宝に触らない限り動かないなら今の状態で破壊すればいいのでは?」

「……それは許されるのか?」

 

 なんか呆れた目で見られてるが、ゲームじゃあるまいし番外戦術は番外ではないのだ。

 柔軟に行こうぜ。

 

「手持ちの爆弾ってまだあります? あ、やっぱいいです。動かない石像ならハンマーでいけるでしょ」

 

 拡張領域からハンマーと取り出し、大きく振りかぶって――

 

『許すかぁぁぁ!!!』

 

 おっとと、目の前に束さんのホログラムが。

 驚いてハンマーを振り損ねたじゃないか。

 

『なにしてんの!? ちょんとお約束を守ってよ! ズル禁止!』 

「……後出しでルール追加とかダサくない?」

『ダサくない!』

 

 うーむこの必死さ、さては今攻撃しても反撃なしで壊せると見た。

 

「篠ノ之博士、答えが貰えるとは思えないが聞きたい。もし宝に触ったらどうなる」

『ん? この石像が爆発して生き埋めになる』

 

 ……動く石像じゃなく爆発する石像とは新しいな。

 じゃねーよ! 

 

「ねぇバカなの? バカなんだよね? 生き埋めとかマジで言ってんの?」

『この天才に向かってバカとは失礼な。ちょっと石像との距離が近くて危ないから心配してあげたのに』

「必死なのは命の危険があったからかい」

 

 どこぞのアホが爆弾をハンマーで殴ろうとするんだもん、そりゃ思わず飛び出るわな。

 

「……生き埋めか。篠ノ之博士は私達を殺す気はないと思っていたが」

『爆弾は閃光と衝撃が主だから適切な距離を保ってれば死なないよ。生き埋めって言っても天井の一枚板が落ちる程度だし大丈夫……たぶん』

「そこは自信をもって断言してくれや」

『例え衝撃で死んでも生き返させられる自信はある』

 

 その最終的に心臓動いてればいいだろ理論やめろ。

 確かに衝撃での心停止くらいなら束さんがどうとでもしてくれそうだけども。

 

「わざわざ実用に耐えうる石剣を用意したのはブラフか?」

『そだよ。動いて襲ってくると警戒して見てたら爆発するの。面白いでしょ?』

「たちの悪いブービートラップで笑えないな」

『そりゃ残念。どうやら束さんとは趣味が合わないみたいだね』

 

 殺伐とした空気は嫌いだなー。

 中学生にこの空気は重いと思うの。

 未だ始業式にも出てないけどね!

 ふっ、自業自得とは言え束さんへの怒りが抑えられないぜ……。

 いやほんと、冷静に考えて俺なにしてんの?

 同級生たちが新しいクラスメイトと一緒に甘酸っぱい青春を始めてるのに、俺はアメリカの地下空間で現役軍人と一緒にキャッハウフフしてんだよな。

 できればお宝ゲットして束さんをぎゃふんと言わせたい。

 

「どうします? お宝を狙うかこのまま素通りするか」

「出来れば欲しいが……篠ノ之博士、ここにある宝は間違いなく貰えるんだな?」

『そりゃもちろんちゃんとあげるよ。取り上げたりしません』

「トラップは爆破だけか?」

『……(にこり)』

 

 良い笑顔で黙るんじゃねーよ! こりゃまだ他にあるな。

 

「それは教えてもらう事は?」

『そこまで求めるの強欲過ぎじゃない?』

 

 束さんが爆破してからしそうな事……毒とか?

 笑いガスとか腹痛ガスとか、そういった見てる方は笑えるけど味合う本人には笑えないレベルの嫌がらせはしそう。

 

「悩ましいな……見逃すにはエサが旨すぎる」

 

 被害を抑えるだけなら案はある。

 周囲の壁を壊してそこに石像をまとめて爆破させるとか? ガス系なら専用機持ちなら大丈夫、ダガー小隊もガスマスクくらいあるだろう。

 問題は戦闘系だな。

 スター3が言っていたが、石像のモチーフは毘沙門天の部下ポジション。

 ならバリバリ戦闘系の毘沙門天が待ち構えてる可能性は高い。

 束さんと戦う前に消耗したくないなー。

 

「篠ノ之博士、なんとか穏便にお宝を貰える方法ってないの?」

『ないよ。ここは目先の欲望に囚われれば私に会えない、そういうコンセプトだから』

 

 なーる。

 手頃な宝で済ませるか大きな宝を目指すか、か。

 束さんにある程度のお願いできる権利と電脳ダイブ型のVRMMO……比べるまでもないな。

 

「今は諦めるべきかと。どうしても欲しいなら篠ノ之博士を捕縛してからにするべきです。ラスボス手前の部屋って事を考えると、ここでしくじると一気にゲームオーバーかもですし」

「後回しが正解か――」

 

 はいそこISコアをいつまでも眺めない。

 ダガー小隊も悔しそうな顔しない。

 運が良ければこの部屋に戻って回収できるから。

 

『お、諦める? ちなみにここで諦めたらチャンスはないよ? ボタン一つでお宝ちゃんは回収されちゃうから後で手に入れようとか無理だから』

 

 束さんが右手に持つボタンをヒラヒラと見せつけてアピールする。

 諦めモードに入ってるのに煽るんじゃないよ。

 てかせめてUSBメモリだけくれない?

 束さんには価値のない情報だろうし、ダガー小隊にあげてほしい。

 

「回収と言うのはあくまでこの部屋からだろう? 結局のところ貴女を捕縛できれば手に入る。違うか?」

『違うね』

 

 おいスター1が固まってるからやめてやれ。

 本人以外もれなく顔を背けてプルプル震えてるじゃないか。

 

「では、どこに回収されると」

『気になる? んじゃさっくり終わらせてあげますか――ポチっとな』

 

 束さんがボタンを押すと台座の縁からケースがせり出てきて、裸状態だったお宝がケースにしっかりと包まれる。

 美術館などにある普通の台座とは違うのは、ケースの形が山なり……まるで弾丸の様な形になっている事だ。

 そしてしっかり封をされると中で煙が発生し、その煙でお宝が見えなくなる。

 

『この煙は時間経過で固形化してね、宝を固定しながら衝撃から守ってくれるのさ』

 

 そして台座が下から押し上げられ、そのままケースの先頭が天井付近に近付く。

 天井には台座と同じ大きさと思われる丸い穴が空いた。

 

「篠ノ之博士、穴の奥ってどうなってるの?」

『青空がばっちり見えてるよ』

 

 ……弾丸と銃身じゃないですか。

 

「全員耐爆姿勢!」

 

 スター1が慌てて指示を出す。

 身を屈めながら口を開けるんだっけ? ISは……また琉々武をホコリまみれにするのは嫌だし、大人しく教科書に従おう。

 発射寸前の台座に背を向けて身を丸め口を開ける。

 

『準備はいいいかな? ゴーノーゴー判断ゴー! イグニッション!』

 

 後ろでなにか燃焼系の爆音がしてて超怖い!

 なんかゴゴゴ言ってて背中に風の圧力が掛かっている!

 

『うーむ、小型化は成功。残りの問題は精度かな? ちゃんと届くといいんだけど』

 

 微かに聞こえる束さんの声を聞くに、なにかの実験もついでにしてる?

 あ、これ拳銃じゃなくてロケットか!

 単発の音じゃなくて持続的に爆音が聞こえるのはそれだからだろう。

 随分と小さいロケットを作ったんだね。

 行き先はダナンかな? だとしたら大陸間弾道ミサイル並み?

 まーたけったいな物作って。

 そんなんだから国に狙われるんだぞ。

 

『弾道安定はしてるのね。ほい、顔上げていいよー』

 

 背中に感じる風がなくなり、怖いくらいの静けさに戻った。

 台座を確認すると確かになくなっている。

 グッバイお宝ちゃん。

 

「国内からミサイルを撃つとは豪胆だな。正体不明の飛翔物、軍が確かめようと追うだろうが……補足できると思うか?」

「難しいと思うです。あの大きさですし、そもそも従来のレーダーに引っかかるかどうか」

「材質がステルス性を持ってる可能性もある」

「残念だが諦めるしかないか。篠ノ之博士の元に他国のISコアが回収されてる情報だけでも価値があるから良しとしよう」

 

 そうそう、素直に諦めようぜ。

 俺は全ては終わったらあのボタンを狙うがな。

 

『じゃ、束さんはこの辺で。愚かな挑戦者たちよ! 次が最後の試練である! なんちて』

 

 ホログラムの束さんが消えたので、これで強欲の間はクリアって事だね。

 束さんにしてはあっさり去ったな。

 普段ならもう少しお宝に触る様に誘導しそうだけど……あぁそう言えばもう飽きてるんだっけ。

 巻きで終わらせにきてるな。

 とは言え流石に最後はしっかりやるだろう。

 

「さて、思いのほかあっさり終わったが消耗を抑えられたと見れば良い結果だ。次に向かうぞ」

 

 この場に残っているのは爆発する石像のみ。

 もう見るべき物がないと判断したスター1が出口に向かう。

 出口の門を開ければ緩い下り坂で薄暗く道の先が見えない。

 この暗い道はいよいよラストバトルって感じを演出してていいな。

 

「今までとは違い暗いな。道中にトラップはないと信じたいが……ここまで来て下手を踏みたくない。念を入れてて行くぞ。スター2、スター3はISを使用し先頭に、中央にダガー小隊、最後尾は私とフォックスだ」

 

 IS使用了解。

 琉々武を纏い最後尾へ。

 今まで以上に慎重に進む。 

 慎重になるのは大事だ。

 束さんの事だから最後に地上に戻る系のトラップとかありそうなんだよね。

 

「前方の右手側の壁から光が見えるです」

 

 少し先の壁が僅かに光っている。

 道を照らす明かりとは違い淡い緑色の光だ。

 先頭の二人だけが確認の為に光に近付く。

 

「チェック……これは魔法陣?」

「篠ノ之博士がオカルトに傾倒してた情報なんてあったです?」

「初耳。でも遠目に見る分には問題なさそう」

 

 スター3がハンドサインで呼ぶので近付くと、壁が光っているのではなく壁の間に出来た空間の地面が光っているのがわかる。

 壁の一部が凹み床に魔法陣。

 まるでRPGのワープ装置に見えるな。

 ……試してもるか。

 ペットボトルを取り出し魔法陣の上に投げる。

 魔法陣の上をペットボトルが転がり、動きが止まった瞬間に魔法陣とペットボトルが上に消えていった。

 超高速エレベーター?

 

「どこに繋がっているか分からないが、どうやら上に行けるらしいな。ところでフォックス」

「はい?」

「勝手な行動をするな。ただの移動装置だったからいいが肝が冷えたぞ」

「あ、すみません」

 

 俺は束さんへの理解から行動したけど、他のメンバーからしたが正体不明の魔法陣にちょっかい出すヤバい人間か。

 ごめんなさい。

 今更だけど、本来の流れなら強欲の間で宝を奪って魔法陣から脱出ってのが正しい流れっぽいな。

 魔法陣が置いてあった場所から更に進むと、先に部屋の明かりの様なものが見えた。

 トンネルの出口を思わせるその先はそこそこ大きな空間。

 目に入る物は奇麗な池とIS専用のハンガー。

 ……ラスボス前のセーブポイントだこれッ!?

 

「次の部屋に入る扉の作りは同じだが、それ以外は今までと随分と雰囲気が違うな。ダガー小隊は水を、スター小隊はIS用の装備を確認してくれ」

 

 スター1の指示でそれぞれが怪しい置物を調べる。

 ダガー小隊は水を汲み試験紙を浸して安全を確認し、スター小隊はIS用のハンガーの隅々までチェックしている。

 さて結果は?

 

「試験紙の結果はごく普通の地下水です。汚染されている様子はありません」

「IS用のハンガーはトラックなどに積み込む際に使われる簡易組み立て式で、アメリカ軍の標準装備と同じ物です。それとバッテリーが付属されていて、ここでISのエネルギー回復が可能と思われるです」

 

 回復の泉まで用意するとは中々の拘り。

 そうだな……束さんは飽きてきてるみたいだしここはひとつ――

 

「スター1、提案が」

「言ってみろ」

「この場所は恐らくゲームでよくあるボス戦前のセーフゾーンです。せっかく篠ノ之博士が用意してくれたのですから休みを取りませんか? 12時間ほど」

「いやそれは長いだろ」

 

 だめ? 疲れてるし12時間睡眠は余裕ですよ?

 壁の向こうに居るだろう束さんを待たせてイライラさせようぜ。

 宮本武蔵作戦で行こう。

 

「だがまぁ休息は大事だ。強欲の間では戦闘事態はなかったが、嫉妬の間での疲れは抜けきっていない。ここはありがたく休ませてもらおう。これより8時間の休息を取る。ダガー小隊は食事との寝床の用意を、スター小隊はISの点検してからエネルギー充電だ。フォックスは自由にしていろ」

 

 遊んでていいお許しが出たので動き出す皆さんを横目に扉の方へ。

 自宅に帰宅する気軽さで門の扉を開ける。

 

「ふんふふふーん♪ デリバリーミサイルは順調だね。これなら人が乗っても大丈夫。でも乗り込むとなると居住性がなー……少し大型化するけど仕方がないか。やっぱり快適がいいよね」

 

 そういえば束さんってミサイルで移動してた描写があったな。

 あのミサイルはそれのひな型か。

 ちょっと楽しそう。

 頼んだら乗せてくれるかな?

 

「……んあ?」

 

 あ、目が合った。

 

「……しー君?」

 随分と楽しそうですね?

 束さんの現状――だだっ広い空間の真ん中で大きな丸形クッションを抱きかかえ手元でモニターをいじり、横にはコーラの缶とポテチが置いてある。

 全力で暇を楽しんでやがる。

 

「なにしてるの?」

 

 無死してバタンと扉を閉める。

 んでもう一回開ける。

 

「いや」

 

 バタン

 

「だから」

 

 バタン

 

「ねぇってば」

 

 バタン

 

「おい」

 

 バタン

 

「やめんか!」

「あいたっ!?」

 

 背後から後頭部への一撃。

 頭を押さえながら振り向くと鬼の形相のスター1が居た。

 

「なんです?」

「なんです? じゃない! 何をしているんだ!」

「何って嫌がらせ? あ、中に篠ノ之博士居ましたよ」

「ますますなにしてるんだお前はっ!?」

「それと半分は敵情視察です。扉の向こうはISで飛び回れる位の広さがあったので、最後はガチンコバトルになるかと」

 

 ガチンコと言いつつ束さんは手加減してくれるだろうけど。

 じゃなきゃ勝ち目がなさすぎる。

 本気だったらキレるぞ俺。

 

「勝手な真似をするな! 余計な刺激を与えたらどうなるか分らんぞ!」

 

 グリセリンかなにかかな? 

 

「ルールは守るでしょう。少なくとも奥から出てきてこの場所で戦うなんて真似はしませんよ」

「……そだね。でもちょっかい出されたら穏やかな心でいられないかもよ?」

 

 扉からひょこり顔を出した束さんがジト目で睨んでくる。

 大人しくしてないと難易度が上がるor俺への露骨な集中攻撃ですね了解。

 やれやれ、嫌がらせは始まったばかりだぞ。

 堪え性がないな束さんは。

 

「だそうだ。頼むから大人しく寝ててくれ」

 

 むぅ、スター1にお願いされてはな。

 なんて冗談だけど。

 怠惰の間を出てから仮眠で一時間くらい寝たけど、ぶっちゃけ体の芯には疲れが残ってる。

 なにせ街中を走り回ってゾンビ軍団と組手して最後は崩壊するビルから逃げて爆風で吹き飛ばされたんだ。

 もう休みたいのが本音です。

 束さんへの嫌がらせはスッキリ眠るためだったりする。

 

「じゃあお言葉に甘えてお先に失礼しますね。適当に過ごすんで気にしないでください」

「ん? ISのエネルギー充電やメンテナンスはいいのか?」

「そっちは起きてからするんで」

「ならいいが寝坊はするなよ?」

「頑張ります」

 

 子供ボディだといくらでも寝れるから気を付けないと。

 起きたら自分以外は準備を終わらせており、彼らに見られながら慌てて準備……うん、アラームは最低でも5回は鳴らそう。

 

「ところでさ」

 

 顔を出したままだった束さんが会話に入ってくる。

 まだいたんだ。

 

「君らっていつ部屋に入るの?」

「12時間後ですね」

「12時間……早まったりは」

「しないね」

「うむむ」

 

 なんとまぁあ哀れな顔を。

 束さん、貴女には絶対に殺してはいけない手加減ダンジョンマスターの役は無理だよ。

 でもこれが最後だから頑張って待っててほしい。 

 頼むから寝かせてくれ!

 スター1がなにか言いたげ……そういえば休憩は8時間って言ったっけ?

 すまん、8時間睡眠じゃたぶん足りない。

 ラスボス前に体力を全快にしたいんです。

 

「まぁいいけど、次に扉を開けたらそれが試練開始の合図と取るからね? 12時間以内に扉を開けたら嘘付いた罰として全力で殲滅するから」

 

 束さんは最後に俺の目を見つめながらそう言って扉の奥に消えて行った。

 今から12時間はプライベートな時間にするから邪魔するなって事か。

 ……邪魔して~。

 寝るか風呂か何するのかは知らんけど、邪魔したいぞ。

 でも日常の一コマなら怒らせても腹パンで終わりだけど、ここで怒らせてダンジョンから強制退出とかになりそうだからダメだよね。

 大人しく寝るとします。

 

「私はISのメンテナンス作業に戻る。いいか、くれぐれも余計な真似をするなよ」

「了解キャプテン」

「そこはせめてイエスマムにしとけ」

「イエスマム」

「ふふっ」

 

 敬礼付きで返したらスター1が笑ってくれた。

 ラスボス前でだいぶ仲良くなったよね。

 これでダンジョン最下層で仲間に見捨てられるフラグは消えただろう。

 

 

 ――篠ノ之束とガチバトルってマジ? 冷静に考えて勝てる気しないんだが?




ダガーチーム→念入りに装備の点検
スターチーム→ISの点検整備
し→爆睡
た→爆睡
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