俺の夢にはISが必要だ!~目指せISゲットで漢のロマンと理想の老後~ 作:GJ0083
カリカリ
カリカリ
ひたすらペンを走らせる。
カリカリ
カリカリ
白いノートが黒く染まっていく。
カリカリ
カリカリ
なぜ自分は苦痛に思いながらこんな事をしているのだろうか?
カリカリ
カリカリ
人生は常に勉強だと言う奴がいる。だが、そんなのは一部のドМの自慰行為に近いと思う。
カリカリ
カリカリ
だって俺はこんなにも辛いのだから。
カリカリ
カリカリ
関係ないが小学生は世界一自由な生き物だと思う。
カリカリ
カリカリ
だからそう。京都に行こう。
ペンを置き、財布とケータイをポケットに突っ込む。
着替えなんて向こうで買えばいい。
着の身着のまま玄関のドアノブに手が掛かる。その瞬間。
『♪~~♪~~』
某電波な少年番組のプロデューサーが登場しそうな音楽が鳴る。
ケータイのディスプレイを見ると、そこには。
『篠ノ之束』
無視したい。無視したいけど、その後が怖い。
大人しく電話にでる。
「もしもし」
『やっほーしー君』
「何用です?」
『それはこっちのセリフだよ。しー君こそ外に何の用があるのかな?』
自分が首輪付きって事忘れてたよ。
「束さん、脳ミソがとろけそうなんです」
『しー君ってそこまで頭悪くないよね? 世間一般では秀才レベル程度だけど、前世の知識もあるんだし、そんなに難しい?』
「俺の脳は、体育系6文系4で出来てるんで、理系? 知らない子ですね」
『それでよくISの勉強をしたいなんて言えたね?』
「だって必要な事なんだもん」
『だもん。じゃないよまったく。早く机に戻りなさい』
束さんに怒られ渋々机に戻る。
まぁ、自分から教えを請うておいて逃げようとしたのだから、怒られるのはしょうがない。
ケータイをハンズフリーにして机の上に置く。
「所で束さん、そっちの調子はどうよ」
『ISはデウス・エクス・マキナで、地上の全ての戦争を終わらせる為に神から遣わされた機神だ! って言う科学者が現れたね』
「束さんはついに神になったのか。確かに、束さんは俺を転生させた女神に似てるかも」
『も~、束さんが女神みたいに綺麗だなんて、しー君てば褒め上手なんだから』
「いえ、その女神も束さんみたいにうざい感じでした」
『ひどっ!』
束さんは何やら作業中らしく、取り留めのない会話をしながら俺もISの勉強に戻る。
内容はあって無い様なものだ。
束さんの愚痴だったり、最近の一夏や箒の様子だったり。
どれくらい喋っていただろうか。
そろそろ寝ようかな? そう思った時。
『ねーねーしー君、しー君てさ、前世では束さん達と知り合いだったの?』
「急にどうしたんです?」
『しー君があんまり聞いて欲しくなさそうだったけど、しー君は束さんやちーちゃんに詳しいし、知り合いだったのかな~って』
ペンを動かす手が止まってしまった。
「ノーコメントで」
『しー君はある意味タイムスリップしてるんだよね? だとしたら、この世界にしー君が二人居るはずなんだけど、調べてみたらしー君はこの世界で一人だけなんだよね』
「ノーコメントで」
心の中は汗だくだ。
いつかは聞かれると思ってたけど、日常会話の延長で聞いてくるとは。
『そもそもしー君はなんで自分がISを動かせると知っていたの?』
「ノーコメントで」
今まで聞かれなかった事が不思議なくらいだが、原作云々は本当に話したくない。
『この世界は創作の世界で、読み手として一夏や千冬さんのプライベートを覗き見してました』なんて事は絶対に知られたくないのだ。
アニメで箒やヒロインズのお風呂シーンも見てるしな。
もしバレたら……束さんに記憶をデリートされる可能性もある。
気まずい沈黙が続く。
『う~ん、しー君の脳みそ一回開いてよい?』
「勘弁してください束様」
『冗談だけどね。しー君、束さんは別に無理矢理聞き出す気はないんだよ?』
「本当に?」
『ホントだよ。だってしー君の脳波が可哀想なくらい恐怖に怯えてるんだもん。束さんだって情けはあるんだよ?』
記憶を消される恐怖が束さんの同情を買ったみたいだ。
『そんなこんなで、お喋りしている内に完成なんだよ!』
束さんは本当に見逃してくれるらしく、あっさりと話題を変えた。
ありがたく乗っかるとしよう。
「おっ、新しい発明品ですか?」
『残念ハズレ。答えはしー君のISだよ』
今なんと?
「束さん。本当に? 冗談ではなく?」
『いえーす。やったねしー君、これで夢が叶うよ』
一度深呼吸をして腹に力を貯める。
「よっしゃぁぁぁぁ~!!」
『ぴゃ!?』
突然の大声に束さんの悲鳴が聞こえるが気にしない。
「それで!? 束は今どこにいる!? 今から会えるのか!? それとも今から来るのか!?」
『しー君落ち着いてよ! 耳が! 束さんの鼓膜が破れちゃうから!』
「おーけい、落ち着く。で? いつIS貰えるの? ハリーハリーハリー!」
『全然落ち着いてないじゃん。しー君、素が出るほど嬉しいのはわかったから、もう少し声のボリューム下げてよ』
おっといけない。興奮しすぎた。
「すみません、落ち着きます」
『完成したけど、今すぐは無理だよ。そうだね。二日後迎えに行くから待っててよ』
「二日後ですか……そちらにも都合があるでしょうし、了解です。束さんが来るのを心待ちにしています」
『うんうん、束さんに会えるのがそんなに嬉しいなんて。しー君てば素直じゃないんだから』
会いたいのはISなんだが、もうなんでもいいや。
「そうですね。待ってますから」
『それじゃあ、束さんはまだやる事あるから。また二日後にね。おやすみしー君』
「はい。楽しみにしてますよ束さん。おやすみなさい」
電話を切って背もたれに寄りかかる。
ついにこの時が来た。
IS……自分だけの翼。
興奮が収まらず、とても寝る気分ではない。
だけど丁度いい。旅の計画でも立てておこう。
パソコンを立ち上げコーヒーを入れる。
「さてさて、まずは日本からだな」
カタカタとキーボードを鳴らしながら、夜が更けていった。
◇◇ ◇◇
二日後、街近くの山の地下にある束さんの秘密基地。
そこに俺と束さんがいた。
「しかしまぁ、よくこんな場所作りましたね」
学校の体育館ほどの何もない広い空間。
壁はコンクリートなのか。灰色で味気ない。
「ここはしー君がISの練習をする為に作ったんだからね。感謝するんだよ?」
胸を張ってドヤ顔する束さん。
俺の為にわざわざ作ってくれたのか。
本当にありがたい。
「束さん素敵です。最高です。束さんに足を向けて眠れません」
「そうそう、もっと感謝したまえ」
ニコニコと上機嫌な所悪いのだが。
「それで、ISは?」
申し訳ないが、俺はISが楽しみで寝不足なのだ。
早く実物を見てみたい。
「もうちょっと待ってよ。今日はしー君の先生も呼んでるから」
「先生?」
俺が首を傾げて聞き返した時。
コツ、コツ、と、地下に続く階段を歩く音が聞こえて来た。
入口に目をやると。
「千冬さん?」
織斑千冬がそこにいた。
「久しぶりだな。神一郎、束」
千冬さんは高校生になってからできるバイトが増えた為、前以上に忙しい日々を送っている。実際会うのは剣道大会ぶりだ。
「先生って千冬さんがですか?」
「そうだよ? しー君はちーちゃんみたいにいきなり操縦は無理だと思うから。ちーちゃんにお願いしたんだよ」
それは凄くありがたい。
将来のブリュンヒルデに教えて貰えるなんて光栄だ。
だけど、千冬さんにそんな暇あるのか?
「千冬さんは忙しいと思うんですが、時間を割いてもらって良いのですか?」
「気にするな。家庭教師の様なものだ」
千冬さんが腕を組みながら束さんに視線を当てる。
その束さんは笑いながら俺の方見ている。
なるほどね。
「バイト代は世間一般の平均額でいいですか?」
「あぁ、それでいい」
これでいいんでしょ?
そう束さんに視線で訴えれば、束さんは笑顔で頷いてくれた。
世の中持ちつ持たれつ。これで俺も気兼ねしないし、千冬さんも時間を無駄にしない。
束さんもなかなか考える様になったもんだ。
「みんなそろった所で、しー君のISのお披露目を始めるよ~」
束さんが腕を高く上げ、俺と千冬さんに笑いかける。
「上を見たまえ!」
そう言われて上を見れば……なにもない。
「実はしー君の後ろだったり!」
ばっと振り返る。
「うおっ!」
思わず声が出た。
いつの間にか、目と鼻の先、黒い塊が鎮座していたからだ。
後ろに下がり全体を見る。
色は黒、装甲は黒光りしていて、大きな翼が付いている。
「これが、しー君のIS『黒騎士(仮)』なんだよ!」
ばば~んっと効果音がしそうなほど声を高らかに上げる束さん。
「これが俺のIS……ん? (仮)って?」
普通に“かっこかり”って名前に付けてたけど。
「しー君は自分で名前を付けたがると思ってね。さぁしー君、この子にカッコイイのを頼むよ」
そうか、俺に付けさせてくれるのか。
「流石束さん、わかってらっしゃる」
そう言ってサムズアップすれば、束さんもやり返してくれた。
千冬さんは呆れた目をしているが、まだ彼女には早かったみたいだ。
しかし名前か、うん、実は考えたりしてました。
この名前ならこの子に合うだろう。
そう……。
「このISは『流々武』だ!」
これしかないだろうと、自信満々に言うも。
あれ? 二人の様子がおかしい。
「なんですか? ダメですかね?」
だとしたら困るんだが。
「えーとね、しー君、束さんが言うのもなんなんだけど、それって目に見えない巨大な力に殺されそうな名前じゃない?」
束さんは冷や汗をかいている。
「神一郎、その名前を使う覚悟があるのか? 下手すれば死ぬぞ?」
千冬さんもなにやら恐怖している。
「じゃあ、『邪乱』とか『紅き男爵』とか?」
それぐらいしか候補がないんだけど。
「しー君が良いならそれでいいよ」
束さんはどこか疲れ顔だ。
IS開発が忙しい中作ってくれたんだ。今度なにか甘いものでもご馳走しよう。
「早速やってみようか? しー君、ISの動かし方は勉強してきたね?」
「もちろんです」
流々武に触れる。
「これからよろしくな相棒」
まるで俺の声に答える様に体が光に包まれる。
眩しさに目を瞑る。
光が収まるのを感じて目を開けると。
「おぉぉ」
本日二度目の驚きだ。
視線が高い。それだけではない、まるでゲーム画面を見ている様な感覚。
これはフルフェイスだからだろう。
「しー君、どんな感じ?」
「動いてみていいですか?」
「いいけど、ゆっくりだよ?」
「了解です」
ISの操縦で必要なのは想像力。
そして想像力はオタクならば誰しも持っているもの。
流々武がゆっくり歩き出す。
一歩、二歩と確実に歩く。
うん、これなら。
少しだけ浮くイメージする。
それと同時に流々武も浮く。
そのまま、ゆっくりと空を飛ぶ。
焦る気持ちがあるが、基本は大事な事だ。まずはスピードを出さず空を飛ぶ事が当然だと脳に覚えさせる。
慣れてきた所で束さんの前にゆっくりと着地した。
束さんは、空中ディスプレイを出し。データを確認していた。
「問題ないみたいだね? お次はしー君の希望した機能を使ってみようか」
「了解です」
ISに搭載された機能を発動する。
が……これって自分じゃよくわからないな。
「どーです? 消えてます?」
「ちょっと待て神一郎。それはなんだ?」
千冬さんが驚くとは珍しい。
「何ってステルス機能ですが?」
これが束さんに頼んで付けてもらった機能。
「ちゃんと消えてるよしー君。ちーちゃん、これはその名も『新ミエナクナ~ル君』だよ」
束さん、その名前はやめて欲しい。
「しー君、音声発動できるようにした方がいいでしょ?」
いや、本当にわかってらっしゃる。
またもサムズアップする二人。
「では、『夜の帳』で」
あ、これは理解されなかったみたいだ。束さんは首を傾げている。
闇夜に消えるが如く姿を消す。ってイメージだったんだけど。
まだ厨二は理解できないか。
「よくわかんないけど、登録できたよ――次は拡張領域に入ってる物を出してみようか」
「俺が頼んだ三つですか?」
「そうだよ、束さんが責任を持って作ったからね。その辺に売ってる物より丈夫だよ」
それは楽しみだ。
まずは――
「ハンマー」
右手に現れたのは黒いハンマー。
その感触を確かめる様に握る。
うん、働く漢の道具だけあって無骨で格好良い。
「次、ツルハシ」
左手に現れたのは黒いツルハシ
まるで三日月の様なフォルムは厨二心をくすぐる。
その二つを消し、最後に。
「シャベル」
これも今までと同じく色は黒。
黒光りする先端がどんな土でも容赦なく掘れそうだ。
「完璧です束さん」
流石職人気質の科学者。
文句のない出来だ。
「気に入ったみたいだね。それで、それの名前は?」
「ありませんよ?」
「ないの?」
「ないです。これはあくまで道具ですから、名前はありません。ハンマーはハンマーだし、シャベルはシャベルです」
「そっか、そうだね」
束さんは嬉しそうに微笑んだ。
「束、神一郎のISはなんなんだ?」
今まで口数の少なかった千冬さんが束さんに問いかける。
確かに用途がよくわからないよね。
「しー君のISは“ステルス性”に主眼を置いた機体だよ。現存するあらゆるレーダーに写らず、姿を消すから目視もされない。もちろんISのハイパーセンサーも誤魔化せる仕様なんだよ。まぁそっちの方に力入れすぎて、機動性なんかは白騎士の半分位だけどね」
「なぜそんな機体に?」
「そこからは俺が説明します。ISで旅に出るには、誰にも見つかる訳にはいかないからです。だから何よりもステルス性が重要でして」
「あのハンマーやらは?」
「あったら便利かな~と思って」
シャベルがあれば雪山でビバークが楽だろうし。
ツルハシとハンマーとかは洞窟探検で必要になるかもしれないしね。
「お前は本当にISを兵器として見る気がないんだな」
千冬さんがしみじみと言う。
なにを今更。
「ISを兵器にするか否かは乗り手次第ですよ」
「そうか、そうだな」
千冬さんは何が面白いのか笑っていた。
「それじゃあ、本格的に訓練始めようか。ここからはちーちゃんの出番だよ」
「任せろ」
そう言う千冬さんは、白騎士を纏いブレードを構えていた。
あれ? 良い事いったはずなのにガチバトルの匂いがしないか?
やっと専用IS出せました。
イメージはガンダムのフラッグカスタムかパトレイバーのグリフォンをイメージしてもらえれば。
ルビ振りのやり方がイマイチわからなかった。
あった方がいいよね?勉強しときます。
ポケモンGO始めたけど、ポケモンの鳴き声がゲームボーイ版と同じで凄い懐かしい気持ちになった。
楽しすぎる。