とあるA3ボーダーの叫び。
現在感想募集中です。
文才が見当たらないな、偵察を頼む。そんな作者ですが、よろしければ読んでいただけれたらと思います。
こう書いたらいいんじゃないか? と言った意見がございましたら遠慮なく感想にお書きください。
ただ、荒らしだけは断固NGですのでご了承ください。
その日、いつものように彼は愛機であるエアロン・エアハート社製ブラストランナー『へヴィガード』に乗り込んで戦場を駆け抜けていた。
ブラストランナーに装備する武装群、兵装。そう呼ばれる武装の組み合わせ一式、四種類あるその兵装の中でも最も火力に秀でた兵装である『重火力』兵装を装備したへヴィガードは、その手に持ったガトリング『GAXダイナソア』と高火力ロケットランチャー『サワード・コング』があらゆる障害を吹き飛ばし、背面にマウントされた榴弾砲『ギガノト榴弾砲』と右腕に装備された巨大な杭打ち機『ラページパイク』がその名の通りあらゆる敵を消し炭に変えた。
その日の彼は近日まれにみるほど調子が良かったといえよう。ヘヴィガードの駆動、サワードコング、ギガノト榴弾砲の先読み射撃、戦績を表すポイントも絶好調。撃破章や重火力章といった一定の戦績を挙げたボーダーへ贈られる勲章も手に入るといった具合だった。
だから、この時の彼の脳裏に一抹の不安、不信感といったほうが良いだろうか? この絶好調に対してどこか現実味がないと感じており、同時にこれから自分の身に何か悪いことが降り注ぐのではないだろうか? そういった不安があった。
そして、その不安は的中してしまうこととなる。
ニュードが地上に降り注いだことによって年号が西暦から『復興歴(R.E)』へと変更され、ニュード採掘機体『ブラストウォーカー』が戦闘用『ブラストランナー』へと姿を変え、コンスタンツァの虐殺、GRF、EUST両陣営の衝突が本格化するとともに、民間軍事会社『マグメル』がブラストランナーを管理することによって完全な代理戦争の火蓋が切って落とされ数十年。あらゆる新技術がブラストランナーに使用され、さらなる火種となり、泥沼化しつつある戦いをさらに激化させる。だが、続くと思われていた戦場に戦慄が走った。
年号にしてR.E55年。突如として各地のニュード採掘施設が襲撃をうけた。『エイジェン』と名乗る謎の軍事組織による襲撃である。
エイジェンはブラストランナーとその武装を開発する企業をはるかに超える技術を利用して作られた、巨大兵器、通常のブラストランナーとは比べ物にならないスペックの強化機体、大量の無人兵器。規格外の武力を誇る彼らの目的は、地球環境をニュード汚染によって改変し、ニュード汚染耐性を持たない生物の完全なる根絶。
この規格外の相手を前にGRF、EUST両陣営は休戦を余儀なくされ、民間軍事企業マグメルを中核とした『マグメル連合軍』を組織。マグメル所属のボーダーたちはエイジェンを相手に更なる戦いに身を投じることとなった。
戦闘が終結し、戦場を撤退しようとした彼らの目の前に突如として空を覆い尽くす円盤のような巨大な物体が出現した。まるで台地をひっくり返したような鉄の塊、エイジェンの巨大兵器である。
本来、エイジェンの動きはある程度予測されており、それに応じて迎撃する戦場や武装などを調整することが可能であるのだが、今回のエイジェンの襲撃は完全なイレギュラー。予想だにしない事態に両陣営が混乱、指揮系統が完全にマヒした。これによって彼らは態勢を立て直すこともままならぬままエイジェンの無人兵器、強化機体と戦うこととなる。
空を覆い尽くす無人兵器の群れ。次々と友軍機が落とされていく中、ボーダー達の耳に吉報が舞い込んできた。
『サテライトバンカー』衛星軌道上に存在する衛星砲の照準装置の投下に成功したのである。これを受けてボーダーたちの士気は一気に上がる。が、巨大兵器を撃破するためには巨大兵器内部のコア部分を破壊しなければならず、内部に侵入するためには外部の防衛機構を沈黙させてサテライトバンカーの一撃で巨大兵器を一度機能停止まで追い込まなければならない。
そこから戦場はさらに激化した。巨大兵器を破壊するためにサテライトバンカーを運搬、防衛しつつ、ニュード採掘施設を防衛するボーダー。巨大兵器を守るために執拗にサテライトバンカーを狙うエイジェンの無人兵器と強化機体。
ブラストランナーは撃破されても数回なら再度出撃することが可能であるが、それでもその再出撃できる回数には制限がある。
少しずつではあるが確実に巨大兵器へとダメージを蓄積させていくボーダーたち。だが、エイジェンの猛攻を前に一人、また一人と復帰不能の状態へと追い込まれていく。
そして、その時は訪れた。
『巨大兵器の活動が再開されました!! 急いで脱出してください!!』
無線からマグメルの顔、手続きやブラストランナーの采配などあらゆる仕事をこなす。フィオナの声が無線から響き渡る。
巨大兵器内部。ニュードによる電磁加速砲、自動砲台と内部に待機していた強化機体を破壊し動力部であるコアがあと少しで割れるところに響き渡るその無線。
この無線が聞こえてきて数秒粘って内部から脱出、これが巨大兵器に対するボーダーたちのセオリーであるが、この時ばかりは違った。
ここで粘らなければ自分たちのベースが落とされ、また一歩エイジェンの理想とする世界が実現に近づくのだ。だからここで負けるわけにはいかなかった。だが、数秒というものは長いようで短いものだ。
再起動の準備が始まったのだろう。コアの光が増しはじめ、巨大兵器内部にサイレンが鳴り響き始める。銃身から煙をあげながら必死でコアに攻撃を続けていたブラストランナーが一機、また一機と内部からの脱出を始めていた。
ここで無理に命を懸ける必要はないのだ。これを教訓に次の戦いへと備えればいいだけ。今回は敗退してもしかたがない戦いだ。彼も彼らに倣って巨大兵器内部から脱出しようかと考えていた。
だが、そんな思考とは裏腹に、ダイナソアが稼働限界を超えて火を噴き始めているにも関わらず彼はその場にとどまって引き金を引いていた。
彼は表面的には理解していないように見えて、理解していたのだ。もう彼のへヴィガードは限界を超えていた。
度重なる強化機体と無人兵器の猛攻、巨大兵器からの砲撃。あらゆる攻撃を味方の盾となり受け止め、そして敵を粉砕してきた。
活動限界を超えたそれだけの無理を重ねればいくら頑丈さが売りなへヴィガードといえども機体にガタがくるのは当然といえる。
ダイナソアが轟音を上げて大破した。熱に耐えきれずに砲身が焼き切れたのだ。彼はダイナソアを投げ捨てた。これで彼の持つ武器はすべて使い切られたといえる。
背面のギガノト榴弾砲は敵の攻撃と過剰な使用によって砲身が半ばから溶けて曲がっていた。虎の子であるサワードコングも弾が無くなり、強化機体に鈍器として振りぬいたため手の中にない。
へヴィガードもあらゆる関節が震え、装甲からはニュードが噴出していた。カメラレンズもひび割れてろくに視界が確保されていない。
こんな状態ではたとえ脱出に成功しても着地の衝撃で機体が大破するのが落ちだろう。もう終わりだな、彼はそんなことを考えるが、彼の思考とは裏腹に身体はどんどんとこれから行う大博打のための準備を始めていた。
右腕に装備されたラページパイクが展開される。ニュードにより加工された杭が頭を出し、パイクのギミックが作動。杭を打ち出すためにドゴドゴという重低音が甲高いサイレンの中に響き渡る。
彼の手がコックピットにある赤いボタンに触れる。それはブラストランナーが戦場を離脱する際に利用するリミッターカットのためのスイッチ。これを押すことで、機体脚部に備わった無限軌道と腰部のスラスターが限界を超えた出力で稼働し、へヴィガードであっても超高速移動が可能となる。だが、これを使用すると機体に過大な負荷がかかり、機体の制御が難しくなるため戦闘時に使用することは無い。だが、彼は躊躇わずにボタンを押した。
スラスターが展開され、甲高い吸引音とともに黄金色の火が灯る。無限軌道が稼働を始め、野獣の如き唸りをあげる。
瞬間、爆発したかのような衝撃とともにスラスターが轟音を上げる。無限軌道が限界を超えて回転し、そのあまりにも速過ぎる加速に上半身が仰け反る。
彼の動きは迅速だった。急激な加速によって暗転しそうになる視界のなかで機体を操作。バキンッという甲高い金属音とともにへヴィガードが前傾姿勢をとり、そして……
へヴィガードは跳んだ。高く、高く。その巨体をもって敵を粉砕せんと。
回転する視界の中、彼はダメージによって赤く輝いている巨大兵器のコアを見据えた。通常、ボーダーたちの戦場では、ベースと呼ばれる部分にコアが収められており、これは台座の上にある。ブラストランナーの跳躍では届かぬそのコアにパイクを当てることは不可能である。
だが、巨大兵器のコアははめ込まれているようなものであり、奥行きはあるものの高さはそこまでではないのだ。だが、ただ跳ぶだけではこのコアに手が届かない。
だからこその加速。コアを守るための防衛機構はすべて死んでおり、残るは無防備なコアただ一つ。
回る、廻る、まわる。もはや自分がどこを見ているのかわからない。だが、彼は迷わず引き金を引いた。
へヴィガードが拳を振り下ろす。回転とへヴィガードから生み出される圧倒的破壊力を載せた杭が打ち出される。コアに杭が突き刺さり……。
この日、巨大兵器が謎の爆発を起こしてその姿を消した。そして、マグメルの名簿の中から一人のボーダーの名前が抹消されたが、それを知る者は誰も居なかった。
ISと呼ばれる物がある。正式名称をインフィニット・ストラトス。主に核となるコア、そして四肢に装着されるISアーマーによって構成される、全く新しい概念の宇宙開発用マルチフォーム・スーツである。
その機構もまた、オーバーテクノロジーといっても差し支えないものだ。
パッシブ・イナーシャル・キャンセラーと呼ばれる慣性制御システム。三百六十度あらゆる角度、距離を近くすることが可能となるハイパーセンサー。様々な物質を情報化し、保存することができるデータ領域。あらゆる物理的衝撃から装着者を守るバリアシステム。そしてシールドを貫通し、装着者に生命の危機が迫った時に発動する絶対防御と呼ばれる緊急バリア発生システム。
そして何より特徴的だったのが『ISは女性にしか使用することができない』ということである。なぜ使用できないのかは未だに解明されていないのだが、それはまた別の話だ。
これほどの新技術によって開発されたISであったが、発表当初の世界での評価は子供の夢、ただの妄想の類としか思われていなかった。
なぜか、それはこのISと呼ばれる物を開発したのが『日本という島国の一女子高校生』だからである。
その女子高校生の名前は『條々乃束(しのののたばね)』後に世界に名を轟かせることとなる天才科学者の名前である。
そして、ISが世界の場で発表されてから数か月後、世界が恐怖に包まれた。
突如として世界各地の軍事施設が何者かの手により同時刻に施設コンピューダーをハッキングされたのだ。そして施設内にある一部のミサイル、数にして約二千が日本に向けて発射されたのである。
当然、各国はミサイルを迎撃するためにスクランブルを発令。が、施設機能が掌握されているがために、出撃できた迎撃のための戦艦や戦闘機の数は少なく、とてもすべてのミサイルを撃墜できるものではなかった。
日本が消滅する。世界中の誰もが諦めたその時、空から光が降り注いだ。
その光は正確無比にミサイルへと直撃し、それによってミサイルの第一波のほとんどが吹き飛んだ。空から降り注いだ光。その発生源、太陽を背にしたそこに影が立っていた。
影、それはISを身にまとった女性。純白の装甲を纏ったその姿はさながら神話の戦乙女。ISを纏った彼女は、ISのスペックを余すことなく使用し、半数以上のミサイルを撃墜した。
そして、彼女の戦いを、ミサイルを切り伏せ、この時代ではまだ実用化されていなかった荷電粒子砲を音速のミサイルに必中させる。
彼女がこの場に舞い降りて数分、この場にいる者にとっては数時間にも感じれる濃密な時間が過ぎた。ミサイルは全弾の撃墜に成功し、日本に被害は及んでいない。世界各国もこの奇跡を称賛してこの日が終わる――はずであった。
だが、現実は非情にもそのようなハッピーエンドは望んでいなかった。それは、一本の通信から始まった。
各国の首相、および内閣と軍上層部による『IS操縦者の捕獲命令』が下ったのだ。
当然、現場からすれば堪ったものではない。彼女が居なければこの事件をほぼ無傷で収束させることなど不可能だっただろう。彼女は英雄なのだ。
だが、悲しいかな。彼らは軍人。上層部からの命令は絶対であり、それに逆らうことは許されなかった。
そこから彼女と彼らの戦いが始まった。
いや、戦いと言うにはあまりにもお粗末な一方的な殲滅戦と言ったほうが良いだろう。
白騎士にはISという規格外の力があった。白騎士には、いや白騎士を操る女性には天武の才があった。だが、たとえそうであっても最新鋭の戦闘機と戦艦、空を覆い尽くすミサイルを全て迎撃し、破壊することができるだろうか?
答えは否。いくら白騎士といえどその全てを防ぐことは不可能である。では、なぜ白騎士は一方的に戦えたのか。
結果として、各国の軍隊は全滅。だが、この戦いにおいて死傷者はゼロ。そう、最新鋭の兵器と未知の性能を誇る存在がぶつかり合ってこの結果は、戦争という殺し合いをしていたのであれば絶対にありえない数字なのだ。
彼らは皆、ミサイルを前に果敢に立ち向かっていった彼女に対し、畏敬の念を抱いていた。そんな彼らがどうして彼女に銃口を向けることができるだろうか? 彼らは全力で戦うフリをしたのだ。
その後、このハッキングによるミサイル発射およびIS一機による各国の軍隊の全滅という大事件は『白騎士事件』と呼ばれ、ISという存在の知名度を跳ね上げるとともに、何かに憑かれたかのように世界が女尊男卑の世界へと変わっていくこととなる。
そして白騎士事件からさらに数年がたった。世間は完全に『ISが使える(可能性があるから)女性が偉い』という風潮へと切り替わった。まあ、男卑とは言えど、アイドルなどの俗にいうイケメンと呼ばれる部類の男性たちは女性から可愛がられているので、むしろ顔が良い男性にとってはある意味最も生活しやすい環境になったともいえる。
そして、ISは本来の目的である宇宙開発というステージから大きく離れ、兵器として世界に浸透し始めていた。
兵器とはいえ、ISの核を担うISコアの絶対数が製作者の意図で決して増えないため、今までのような戦争をするわけにはいかない。
そのため、ISを使用した競技を行うことでそれを代理戦争として利用することに決めたのだ。
そして、このISという新機軸の兵器の操縦者を育成するために『IS学園』と呼ばれる、ISの操縦者およびそれの運用に関わる人材の育成のための教育機関が、日本国某所海洋の人工島に作られた。
そしてこの日、IS学園ではクラス対抗リーグマッチ戦が開催されていた。これはその名の通り、クラスごとに一人の代表者を決め、代表者同士がISを駆り戦うというものである。
そして、そのような催し物が行われている学園から数キロ離れた海上、そこに約数百メートルの人工島が浮いていた。
それはフロートによって水面に浮いた島。海上を侵攻してきた敵を撃退するための銃座などが備え付けられたその数か所ある島の一つに、一つの人影があった。
それは人、そう呼ぶにはあまりにも武骨で巨大であった。それは巨人、鋼の巨人であった。
『ふぅ、こちらボーダー。特に何も見当たらない。というかそろそろ帰還してもいいか?』
その巨人の中から人の声が響いた。恐らく声からして男。年齢は二十代、それもなり立てほどだろうか。そんな彼の言葉に応えるように女性の声が響いた。
『馬鹿、そんなもの駄目に決まっているだろう』
『千冬みたいなIS操縦者は分からないだろうが、コックピット狭いし熱いしでヤバいんだよ』
『そうだとしても、そこから動くことは許されないからな。悪く思うな』
『まあ、家主さんの命令だからな。態々自ら宿捨てるわけにもいかないし』
『分かっているなら態々言わなくていいだろう』
『いや、コックピットってすることなくて暇なんだよ』
『まったく、そんなことでは何か見逃してしまうぞ?』
『そいつぁ万が一にも――っと、ようやくか』
それまで女性と親しげに話していた声が一気に鋭く、低くなる。甲高い駆動音を響かせながら巨人が腕に持ったガトリングを腰溜めに構えた。
『どうした? まさか――』
『そのまさかだ。とりあえず通達はしてみるが、期待できそうにない。そっちも準備しておいてくれ』
『分かった』
ブツッという音とともに無線が切れ、彼はまた一人となった。彼の視界の右下に地形を表すミニマップが展開され、同時に各所に設置された浮島のセンサーから急速で接近する物体のデーターが送られてくる。
ミニマップに白い点、正体不明の物体の現在位置を表す点が記される。ものすごい速さで自分の方――正確にいえば自分の後方にあるIS学園へと向けて飛ぶ謎の物体。彼は巨人に新たに増設された外部スピーカーから迫る謎の物体へと注意を促す。
『こちらはIS学園守衛部隊だ。貴官の機体はIS学園の領空を超えている。速やかに退避せよ。繰り返す。こちらはIS学園守衛部隊だ――』
業務関係のオペレーターのまねごとのために拙い口調でありながらも何度か警告を繰り返す。日本語以外にも英語など憶えている限りの主要言語を使ったものの、相手は速度を落とすどころか、むしろ加速しているようにすら思える。
『そうか……そっちのほうが好みだ!!』
巨人が唸りをあげる。巨大な腕が背中に回され、装備していたガトリングが展開される。腰溜めに構えて重心を落とす。その動きで浮島が揺らぐが気にすることではない。ガトリングの銃身が回転し始める。
彼の視界に黒い点が映る。それは徐々に巨大になっていく、いや、遠近法で小さく見えるだけで高速で近づいてきているのだ。
『進路そのまま……来い!!』
彼は確信があった。サイズ差というものもあるが、それでもISという兵器の武装では愛機に傷をつけることは難しいということが。しかし、真正面から撃ちあおうかと準備していた彼の首筋にチリッと痛みが走る。それはあまりにも小さな痛み。だが、彼はその痛みに忠実に従った。
ベースへと突撃するときの緊張、背後から斬られるのではないかという不安、センサーに引っかかった瞬間の緊張感を前にして構えを解いて急遽ブースターを起動させる。
青白いプラズマを発しながら機体が加速する。巨人が動くのとほぼ同時に巨人のいた場所に光が程走った。
『っおおおおおおおおおお!?』
突然動いた巨人の重量で浮かび上がった浮島の一部が光に飲み込まれ爆発する。浮島にしがみつくことでなんとか転落は防いだ彼であったが、彼が揺れを沈めている間に敵機はすでに彼の上を超えた後であった。
『やっぱフロートの上じゃ無理があったか』
自分の仕事が失敗したにもかかわらず、彼は落ち着いた様子で巨人を立ち上がらせると無線の電源を入れた。この後に女性の一喝が待っているとも知らずに……。
IS学園アリーナ。現在ここでは専用機と呼ばれる、国家の代表やその候補生のみが使用できるISを所持した生徒による一対一のISバトルによって熱気が渦巻いていた。
観客が熱狂しているのは、専用機を持っている二人の戦いという事もあるが、もう一つ、その対戦相手の一人が男性であるということもある。
名前を『織斑 一夏(おりむらいちか)』というその少年は、女性にしか操れないはずのISを世界で初めて起動させた男性のであり、同時に今では世界に知らない人は居ないであろうとも呼ばれている、ISによる世界大会『モンドグロッソ』において圧倒的力をもって優勝『ブリュンヒルデ』の称号を手に入れた『織斑 千冬(おりむらちふゆ)』の弟であるということも関係しているだろう。
「中々やるじゃない、一夏!」
一夏の駆る純白のIS『白式(びゃくしき)』と中国の代表候補性『鳳鈴音(ふぁりんいん)』の駆るIS『甲龍(シェンロン)』が空中でぶつかり合う。
白式の持つワンオフ・アビリティーと呼ばれる特殊能力『零落白夜』はISのシールドエネルギーを無効化するという凶悪な能力である。
だが、この零落白夜という強力な能力を持つが故に、白式は近接武器である刀一本しか武装することができず、さらには零落白夜は発動しただけで多くのエネルギーを消費し、そして白式の持つ刀の刃の部分にしか発現しないという、あまりにもピーキー、悪く言えば欠陥だらけのIS。
それに対して甲龍は、パワータイプでありながら近~中距離をこなし、尚且つ燃費が良い事を売りにしている。
機体のスペックだけをとれば機動力や攻撃力などで白式は甲龍を超えるが、総合的な評価は甲龍の方が上だ。
だが、それでも白式が喰らいついているのは操縦者である二人が同じ土俵で戦っていること、そしてなによりISについてまともに関わることがなかった一夏のセンスによるものだろう。彼のセンスについては、甲龍に搭載されている『衝撃砲』と呼ばれる、空間を圧縮しそれを見えない砲弾として撃ち出すこれを、白式から計測したデータと勘で避けていることからも窺える。
激しく斬り合う二人。試合はこのまま膠着するかと思われた――が、その時甲龍が動いた。
「ッ今!!」
鍔迫り合いから持ち前のパワーで白式を弾き飛ばした甲龍の両肩、アンロックユニットの球体がスライド。中から中からスピーカーのような窪みが覗いた。衝撃砲の発射形態だ。
弾き飛ばしたといってもその距離は些細なもの。白式に両肩から放たれる見えない砲弾を避ける余裕は無い。
凰は笑う。これで終わりだと、この距離では衝撃砲は躱せない。
だが、そんな彼女の予想とは裏腹に、一夏がとった行動は一つ。
「ぉおおおおおおおおおおおおお!!」
「正面!? ばっかじゃ――ッ!?」
吹き飛ばされた位置から一直線に空を駆ける白式。チャージが始まっている甲龍を前にそんなことをするのは愚の骨頂、であるのはそれが普通の速度であったらの話。
瞬間的に任意の方向に加速する技術『イグニッションブースト』一夏はこれを使ったのだ。
白式の出力でそれを行えば、今甲龍が位置までは文字通りの一瞬。衝撃砲のチャージを開始している甲龍に近接攻撃以外の防衛の手段はない。が、今の甲龍が刃を振るうよりも速く、白式はその手の零落白夜で甲龍を切り裂くはず。
決まった。誰もがそう思ったとき突如としてそれは起こった。
アリーナには観客席とフィールドを切り分けるように強力なシールドが張られている。そのシールドをいとも簡単に貫く光。轟音を上げて地面に着弾し砂を巻き上げるそれに、会場全体の空気が固まった。
土煙、それの中から現れたのは一体のIS。
全身を硬質な黒い鎧で身を固めたそれは、ゆっくりと辺りを見回し――状況が理解できずに空中で固まっている二人に目をとめた。
『二人とも!! 急いでそこから離れろ!!』
突如として響き渡る織斑一夏の姉、千冬の声に一夏は反射的に行動した。
刀を即座に量子化すると、鳳の身体を抱えて全力で飛んだ。
退避する瞬間、一夏は目撃した。まるで黒いISを追いかけるかのようにフィールドへと飛び込んでくる一つの光の柱を…。
次の瞬間、光が撒き散らされ一夏の身体が吹き飛んだ。突然の状況に一夏が状況を理解する前に、先ほどとは比べ物にならない轟音。地面が揺れ、さながら地獄から響き渡る雄叫びのごときそれが響き渡る。
錐揉みに吹き飛ぶ白式。だが、気づけば一夏が抱えていたはずの鳳が一夏を支えるように飛び、その身体を支えていた。
「大丈夫!? 一夏!!」
「悪い、鈴。……でも、今のは一体――」
状況がうまく飲み込むことができず、土煙の上がる場所を見る二人。ISのハイパーセンサーでも見ることのできないの中、突如として爆音とともに影が――黒いISが火を噴きながら煙の中から飛び出してきた。
「なっなんだ!?」
あらぬ方向に拉げた腕、装甲の一部が剥げ落ち内部の機械が剥き出しになっている黒いIS。
二人はそれに驚愕する。基本ISというものは人間が搭乗してはじめてその力を発揮することができる。二人はそう習ったし、なにより世界中のISに関する常識であった。そんな常識が壊されたことで驚くのは当たり前であるが、これ以上に常識を真正面からぶち壊す存在が現れるとはその時の二人は思いもしなかった。
白式と甲龍のハイパーセンサーが煙の中に蠢く影を捉えた。
無人ISをあんな姿に変えた相手が煙の中にいる。二人はその場で戦闘態勢を整える。試合の直後でエネルギーがほとんど残されていないものの、まだ戦える。最後の最後まで諦めてはやらない。
二人がそう覚悟を決めた、次の瞬間。突如としてフィールド上を突風が吹き荒れた。
今まで滞留していた煙が風に乗り、煙が晴れる。そして、煙の中から出てきたモノに二人は驚き、そしてまったく別の反応を示した。
鳳鈴音が最初に感じたのは圧倒的破壊力であった。
両腕で保持する凶悪なガトリングガン。背中から覗く恐ろしい大きさの砲身と、肩にマウントされている大砲のような、おそらく形状からしてロケットランチャー。全身を大口径の武装で固めたそれを見て、彼女は圧倒的暴力の象徴だと感じた。だが、それと同時にそれを振るうであろう巨人の姿を見て思った。『鈍重そうだ。火器にさえ気を付ければ倒すことは簡単だろう』と。
織斑一夏が最初に感じたのは楯のイメージだ。端から見ても分かるほど、その角ばった身体は強固で、その装甲はあらゆるものを弾き返せるのでは、そう感じるほどの力強さを持っていた。
巨大なガトリングを保持するその腕は、決して器用ではないだろうが、あらゆる銃火器を操り、敵を受け止めることができるだろう。その太い脚は、決して折れぬ大木。大地に根を張る大木のように、どんな重い物であっても耐え抜き、決して退くことは無いだろう。彼は思った『俺の求めている理想だ』と。
プラント防衛に特化したパーツたちは、その重量に匹敵する圧倒的装甲と力を持って味方を守る楯となる。
その圧倒的火力を有する武装群は、向かう先に居る敵機を、進行する敵を食い止め撃滅するための力。
ブラストランナー随一の火力を誇る『重火力兵装』を装備。エアロン・エアハート社の顔とも呼べる二大ブラストランナーの一つ『へヴィガードシリーズ』の最新型である『へヴィガードG型』である。
へヴィガードが保持したガトリング『GAXダイナソア』の銃身が唸りを上げて回転。瞬く間に最高速まで加速し、弾倉に詰め込まれた弾丸を吐き出す。
その光景はさながら獲物に食らいつく肉食恐竜の如く。GAXシリーズ最高火力を誇るダイナソア。恐竜の名に恥じぬその火力は、無人ISを飲み込まんと牙をむく。
だが、無人ISとて黙って見ているわけではない。歪んだ四肢を起き上がらせPICによる加速、そして歪んだ右腕に装備されている粒子砲の銃口をへヴィガードに向ける。
撃ち出される光。アリーナの強固なシールドを撃ち抜いたそれは、正確無比にへヴィガードへと突き進む。
いくら重装甲であるといっても、あのシールドを撃ち抜いた攻撃に耐えれるはずはない。だが、避けようにも腰を据えたへヴィガードでは避けることすらままならないだろう。二人は次に起こるであろう、へヴィガードが大破する姿を想像して思わず眼を逸らそうとして、その光景に思わず目を見張った。
一夏と鳳の二人は知らないことだが、へヴィガードを含めるニュード技術の結晶たる汎用兵器の総称はブラスト『ランナー』なのだ。確かにへヴィガードはブラストランナーの中でも鈍重な方に分類されてはいるが、市街地や溶岩地帯などのあらゆる環境において既存の兵器を圧倒した大地を疾走する者の名は伊達ではない。
腰部ブースターが展開され青白い炎を噴き上げる。脚部滑走機構が作動、無限軌道が高速回転し大地を抉る。
イグニッションブーストを思わせる短距離ステップ。ビームが左腕を掠めるものの、決して揺るぐことなくダイナソアを放ち続ける。
無人ISが再度加速しようとし、突然体勢を崩した。今までの戦闘での被弾によってPICを操作するシステムに異常が発生したのだろうか、急に動きの鈍くなった無人ISにダイナソアが牙をむく。
無数の弾丸を受けて頭部が弾けた。更に胴体への衝撃、無人ISが弾丸に押されるようにその動きを停止させる。
へヴィガードがダイナソアを肩のマウント部分へ格納。右腕を振り上げると共に全力で駆け出した。
一直線に無人ISへと駆けるその姿は正しくランナーそのもの。右腕に装備されたラページパイクがドゴドゴという溶岩の煮え立つような音をたてながら火を灯す。
無人ISが再度右腕を振り上げた。再度放たれる閃光。だがそれはへヴィガードの翳した左腕に受け止められる。
弾ける装甲、吹き出す緑色の混じった炎。だが、へヴィガードはそんなもの問題ないと言わんばかりに加速する。
右腕を腰だめに、滑走機構と腰部ブースターの加速によってコマのように一回転。遠心力によって強化されたへヴィガードの拳が無人ISの胴体を抉る。
浮き上がる身体、無人ISが『く』の字に曲がる。それと同時にラページパイクの杭が胴体を貫く。シールドなんぞ関係あるかと言わんばかりの破壊力が無人ISに叩き込まれ、杭を打たれた場所を中心に真っ二つに割れる無人ISは、上半身と下半身がその勢いのまま上空へ打ち上げられ――爆散した。
無人ISの破壊とともに今まで学園に掛けられていたプロテクトなどが一斉に解除され、アリーナに教師陣が結集。へヴィガードと一言言葉を交わすと、へヴィガードは黄色い光とともに姿を消した。
IS学園にはこの謎の巨人についての質問などが相次いだが、IS学園側はこれを完全に黙止。あくまでこの巨人も所属不明の謎の兵器という形で各国に説明した。
このような説明で国が納得するはずもなかったが、IS学園という治外法権、あらゆる国の干渉を受けないという性質と、あの謎の巨人についての資料の少なさから渋々納得するしかなかったのだ。
だが、この戦闘からほんの数日でブラストランナーと呼ばれる存在が世界へ響き渡ることとなるのだが、これはまた別の話だ。
「なんだあの威力は!?」
「ギガノトは凄まじいって言ったよね俺!?」
「二人を巻き込んだらどうするつもりだ!?」
「大丈夫!! 誤射っても-10ポイントで済むから!!」
「それはお前たちだけの話だろうが!!」
「ちょっ!? チフダウナーは勘弁!?」
「待て貴様!!」
「そんな物(出席簿)でCSされたら大破一直線だから断る!!」
「元気ですねー二人とも」
これは、とある一人のボーダーの戦いの記録である!!
ただ無人ISがパイクで吹っ飛ばされる姿を描きたかっただけというww