魔法少女リリカルなのは~管理局員の奮闘~   作:愛川蓮

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9歳~否定と運命~前編


第12話

「21、13、20、10、8、11……やっとこさ6個か。先は長いなぁ……」

俺はメモ帳に書いたジュエルシードの番号の中で、今日まで集めたジュエルシードの番号の上に線を引きながらぼやいた。

 

「うん、でもバニングスさん……アリサ達が協力してくれたおかげで発見しやすくなってるからもう少しで全部集まる……筈だよ」

ユーノも苦笑いをしながら俺を諭すが……

 

「ユーノ君もアヤト君もジュエルシードの事は考えるのをやめて! 今日はすずかちゃんの家で遊ぶんだから今日だけはジュエルシードの事は忘れてよ!」

「うお!?」

「な、ななな、なのは!? なんで腕に抱きつくの!?」

不満そうな顔をしたなのはが、俺からメモ帳を取り上げながらユーノの腕に抱きついた。

そう。俺達は一緒にジュエルシードを探すとアリサ達(すずかや焔、春人にはやて、優斗にも一緒にジュエルシードを探すんだから名字呼びは変と名前で呼ぶように言われた)が協力を申し出た際に、すずかから家に遊びに来るように言われたんだ。

……すずかの家が猫屋敷と聴いた瞬間に、ヤマトは即座に逃げ出したが。

 

「どうしてヤマト君逃げちゃったんだろ?」

「猫アレルギーなんだよあいつ。基本的に動物好きなんだが猫だけはダメなんだ」

「ああ。ついでに言うならどんな動物にでも好かれやすいんで猫も積極的に近付くんだが、アレルギー体質のあいつには地獄のような時間になるだろうな」

俺とユウヤはヤマトが逃げ出した原因を言うと、なのはは「にゃはは……それじゃあ仕方ないね」と苦笑いをしながらユーノの肩に頭をのせた。

……ユーノの顔がトマトのように真っ赤になり、なのはの顔も同じくらい真っ赤になった。

 

「なのはちゃん、みんな。いらっしゃい」

俺達がすずかの家に着くと、すずかが門の前に立っていて俺達を待っていた。

 

「すずかちゃん、今日は誰が他に来たの?」

「え~と……アリサちゃん、焔君にはやてちゃんと石田君それから鮎川君とテスタロッサさんも来てくれたんだ」

「フェイトちゃんも来たの!?」

「うん。鮎川君が強引に誘ったんだって。テスタロッサさん、なのはと鮎川君以外のクラスから少し孤立してたから……」

因みに、俺達はなのはを焚き付けたのがテスタロッサと知っているので渋い顔をしていた。

……リンカーコアの反応があったから魔導士だってわかってるしな(テスタロッサもわかってるだろうけど)。

 

「(にしてもテスタロッサの奴は何者なんだろうな?)」

「(さあな、魔導士って事はわかるが目的が全くわからん。管理局に連絡さえできればテスタロッサ姓でフェイトという少女がいるかどうか調べる事が出来るんだが……)」

「(僕としてはなのはをジュエルシードとの戦いに駆り出したから怒りたいんだけど……なのはが友達になっちゃったからなぁ……)」

そう。街路樹のジュエルシードを倒した翌日に、なのはがテスタロッサを名前呼びした事で教室中のクラスメイトがよってたかって質問したが、翠屋でユーノと喧嘩したときにユーノと始めて出会った公園で泣いていたのをテスタロッサが見て話して……といった具合で名前呼びになったらしい。

……たぶん、その時に行動で俺達を納得させろとか言われたんだろうなぁ。

 

「(余計な事をしてくれたよホントに……)」

「(アヤト君……? 聴こえてるよ?)」

俺が念話でぼやくと、なのはが念話で割り込みながら物凄く怖い笑顔を向けてきた。

 

「(スイマセンデシタ)」

「(わかれば良いの)」

「(弱いな)」

「(弱いね)」

俺は片言になりながらなのはに謝ると、なのはは満足したように歩き、ユウヤとユーノが呆れたような表情を向けてきた。

 

「あ、なのは……こんにちは」

「フェイトちゃん!」

テスタロッサがなのはを見て挨拶すると、なのはは花を咲かせたような笑顔を向けながら駆け寄って楽しそうに話始めた。

 

「……」

「ユーノ、『不満です』って顔に書いてあるぞ」

「うるさいな」

どうやら、なのはがテスタロッサと仲良く話しているのが気に食わないらしいユーノが不満そうな顔をしているのをユウヤがちゃかしたらプイッとそっぽを向いた。

 

…………

 

「……あら?」

俺達が席についてお茶を飲みながら猫と遊んでいたら、すずかが眉を潜めながら呟いた。

 

「すずか、どうした?」

「うん、最近産まれた子猫がいないの。さっきまでいたのに……」

「あ、それならさっき森に行ったから鮎川が探しているぞ」

「戻ってこないって事は……迷ったか?」

「あ~じゃあ、ヤマトに空から探してもらうか」

俺はすずか、焔、ユウヤの言葉に苦笑しながらこの家の上空からエリアサーチでジュエルシードを探しているヤマトに念話をする。

 

「(ヤマト、エリアサーチで子猫と鮎川を探して……)」

「(アヤト、ごめん! 今ちょっと、手が放せない! 鮎川君も危ないってのにこいつは……)」

俺の念話から返ってきたのはヤマトの息も絶え絶えな念話だった。

と、同時に爆発的な魔力がすずかの家の森から漂ってきた。

魔力ランク……AAA+!? 化け物クラスの魔導士がヤマトに襲いかかってきたのかよ!?

 

「(アヤト、ジュエルシードだ!)」

しかもジュエルシード付きかよ!?

 

「悪い、ちょっとトイレに行ってくる!(なのは、ユーノ! 緊急事態だ! ヤマトと鮎川があぶねえ!)」

俺は慌てて椅子から飛び降りると、3人に念話をするとそのままヤマト達の救援へと走り始めた……

この時俺は気付いていなかった。テスタロッサが何時の間にかいなかった事に……

 

…………

 

「あーあ……すずかの家が猫屋敷でなければ僕も遊べたのになぁ……」

僕『ヤマト・ハギノ』は、空中で頭をかきながら広域のエリアサーチでジュエルシードを探していた。

 

とほほ……昔から父さん達が管理局の仕事で犬とか一角獣(ユニコーン)天馬(ペガサス)、果ては幼竜(ベビードラゴン)まで保護や管理をしていたから動物は昔から好きなんだけど……どういうわけか僕は猫アレルギーだったから猫は昔から触れなかったんだよなぁ……ううう、猫も好きなのに。

 

 

「……あ、ジュエルシードの反応がある」

僕がエリアサーチで示された方向を振り向くと、そこにはジュエルシードを嘴にくわえたカラスがいた。

 

「あっちゃあ……どうりでユウヤのサーチャーや僕のエリアサーチで引っ掛からないわけだよ。

発動されずに動物に運ばれてるんだから……まあ、最近はサーチャーが壊されまくってるのもあるけど」

にしてもサーチャーを壊してるのは何処のどいつかな……

僕がジュエルシードをカラスから奪いながら考え事をしていると……

 

「俺の世界だけじゃ飽きたらず地球まで滅ぼそうとする悪の管理局員め……死ね!」

後ろからの殺気と声に振り向きながらSD9の杖で声の主の攻撃を受け止めようとして……

 

「貧弱な管理局の手先ごときに俺の剣が受け止められるものか!」

そのまますずかの家の森の地面に叩きつけられた。

……くそ!? カラスがまっ二つになってるって事は非殺傷設定を切ったデバイスを使ったって事か!

 

「ぐぅぅぅ……くそ! 誰……ぶえっくしょん!」

僕が上を向きながら相手を確認しようとするとくしゃみがでる。これってつまり……

 

「くしゅん! 近くにぶえっくしょん! 猫がはくしゅん!」

「は、萩野君大丈夫!?」

僕が猫を探そうと立ち上がると、声がしたので振り向くとそこには子猫を抱えた鮎川君がいた。

 

「ああ、はくしょん! 大丈……くしゅん! 大丈夫だから……ぶえっくしょん! 猫を遠ざけて!」

僕がくしゃみをしながら鮎川君にそう言うと、鮎川君は慌てて遠ざかり、僕は猫のフケみたいな細かい物も防ぐ特殊な結界を身体の周囲に張り巡らせた。

……ふう、だいぶ楽になった。

 

「あの……いったいどうして空から降ってきたの? どうしてテスタロッサさんみたいな格好を……」

「っ!? 危ない!」

僕は鮎川君の質問に答える暇すらなく、慌てて鮎川君を押し退けてSD9で振るわれた剣を防ぐ。

 

「ぐ、うう……! き、君はいったい……何者なんだ!」

「俺か? 俺の名は当初の目的を忘れ特権に溺れる悪しき管理局からすべての次元世界を救う救世主……『カンリ・ヒテイ』だ! この名を地獄の閻魔の土産にして……死ね! 管理局員! 『セイヴァー』! カードリッジロード!」

カンリは訳のわからない事を言いながら遠ざかると、デバイスから薬莢を排出して……って『カードリッジシステム』!? もしかしてあいつ……『ベルカ式』!?

 

 

「散れ、管理局員! 『救済一閃』!」

『セイヴァースラッシュ』

そのままカンリは巨大な光の刃を形成して切りかかってくる。僕は後ろに鮎川君がいる関係上逃げるわけにもいかないのでラウンドシールドを展開するとそのまま光の刃を受け止める。

 

「っ……! 長くはもたないか……鮎川君! 早く逃げて! このままじゃ僕ごと君も斬られる!」

「ご、ごめん、猫が……」

「猫がどうし……げ!?」

僕が鮎川君の言葉に振り向くと、周りに繁った木々と同じくらいの大きさになった子猫がそこにいた。

よりにもよって、今ジュエルシードが発動したの!?

 

「くっそぉ……! 子猫のままだったら抱えて逃げれたんだけどなぁ……!」

徐々に押し込められて罅の入っていくシールドを必死に堪えさせながら僕はうめく。

すると……

 

「(ヤマト、エリアサーチで鮎川と子猫を探して……)」

……アヤト……ナイスすぎる!

 

「(アヤト、ごめん! 今ちょっと手が、放せない! 鮎川君も危ないってのにこいつは……!)」

僕はアヤトに念話を送りながら力を込めて……っ!? 罅が……!

 

パッキィィィン……

「シールドが……!」

「彼や子猫は可愛そうだけど管理局を殲滅するためだ。必要な犠牲だと目を瞑ろう」

あまりに身勝手なことを言いながら剣を振るおうとするカンリを睨み付けながら、僕はカンリの振るう光の刃に……

 

「サンダー……スマッシャー!」

斬られる前に雷の砲撃がカンリを吹き飛ばした。

 

「……え?」

「……今のって、テスタロッサさん!」

僕が呆けていると、鮎川君が頬を赤く染めながら振り向き、僕も釣られて振り向くと黒いマントと黒いバリアジャケットを身に纏い金色の鎌を手に持ったテスタロッサさんがそこにいた。

 

「鮎川君、どうしてここに……?」

「子猫を探して捕まえたら迷っちゃって、それで……」

「……そっか。それなら良かった(彼を……傷付けずにすむ)」

鮎川君がテスタロッサさんに説明すると、テスタロッサさんはほっとしたような顔になりながらジュエルシードを封印した。

話す片手間で封印できるなんて……

 

「また、助けてくれたんだね……」

「あ~……う、うん」

頬を赤く染めながら言う鮎川君にテスタロッサさんも顔を赤く染めながらそっぽを向く。

……普通そこは男女逆じゃない?

 

「ヤマト! 無事……か?」

「え……? フェイト……ちゃん?」

「……あいつは!?」

「……ユーノの船を襲ったやつか?」

「うん! その通りだよ!」

僕はアヤト達が来たのを見て余計にややこしい事態になりそうだと思いながら、頭を振りながら立ち上がるカンリに向けてSD9を構えた……




明けましておめでとうございます!
再び前後編のていとなりましたがどうか首を長くして更新をお待ちください。
それでは本年度もこの作品をよろしくお願いします!
次回もお楽しみに!

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