「なんで、なんで誰も転生者殺しである俺を信用してくれないんだよ!? 俺は……俺はただ薄汚い転生者達からなのは達を守りたいだけなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「逆ギレかよ!? てめえの言ってることもやってることも無茶苦茶なんだよ! なのは達を守りたいんなら……てめえがやってる事を省みてから言いやがれぇぇぇぇぇ!」
俺はそう言いながら黒衣の男に向けて突進した……
何故こうなったか、それは結構前に遡る。
…………
鮎川がとんでもない無茶をした温泉旅行から3日が経ち、少しばかり変わったことが幾つもあった。
先ず、鮎川とテスタロッサが名前で呼び合う様になったことだ。鮎川は最初の頃は顔を赤くしながらのつっかえつっかえだったが、だんだんとテスタロッサの名前呼びに馴れてきたのか最近では笑顔も見せるようになってきた。(最も、初めて名前を呼んだ日には鎌瀬が鮎川に突っかかって焔に殴り倒され、クラスメイト全員が鮎川を質問攻めにしてアリサが怒るという事態になった)
次に、鮎川が何故か執拗に狙われるようになったことだ。
鮎川がテスタロッサと歩いていたら上から鉢植えが落とされたり(これは鮎川が怪我をする前にテスタロッサが魔法で吹っ飛ばした)、鮎川の机から先生の机から盗まれた小テストの答えが見つかってカンニングだのなんだのと鎌瀬が騒いだり(これは直前に鎌瀬が鮎川の机に何かを入れていたと橋出が言ったことで鎌瀬がボロを出し、そのお陰で先生に鎌瀬が怒られるという結果に終わった)、靴箱に時限爆弾が仕掛けられていたり(これは俺が咄嗟にシールドを張って鮎川を守った)、果てはジュエルシードが鮎川に襲いかかってきたり(これはテスタロッサとその使い魔達が容易く撃破して封印した)と色々あったため、鮎川は精神的に参ってきてるらしい。
最後に、この街のあっちこっちで正体不明の死者が見つかっていることだ。
年齢は全員二十代後半~三十代前半で、デップりと太った肥満体型で何故か全員『全裸』に破れた衣服と何らかの道具の破片が周りに散らばっていたらしい……が本題はここからであり、そいつらの周りにあった衣服が最近行方不明になっている小学生達が最後に着ていた服と一致していたので調べてみたら……これが大当り。そいつらの着ていた服だったのだが……何故これが周りに散らばっていたのかは不明らしい。
なので、行方不明の小学生達の生存は絶望的だとニュースでは告げられていた。
……因みに、被害者達は全員が全員、死体の損壊が激しく身元が特定できないらしい。
……管理局員としては痛ましい限りだな。
つーことで、ジュエルシードの探索の他にもこの殺人鬼の捜索も平行してやってるわけなんだが……
「(アヤト、何か見つかった?)」
「(ユーノか? なーんにも、ジュエルシードも殺人鬼も影も形もありゃしねえ)」
俺はユーノからの念話に肩を竦めながら言った。
何せ、これまでテスタロッサ側に俺達は4個奪われて俺達は更に2個取得したからな。
テスタロッサ側の4個に俺達の8個の計12個…残り9個だから発動しなきゃ見つからないのは無理もない。(しかも毎回ヒテイ達がやって来てちょっかいを出すので余計にめんどくさい)
因みに不深山が得たジュエルシードはどっかに飛ばされた。
不深山曰く、『ここにはないはずのジュエルシードだから』らしいが、俺はなんとなく不深山の言葉に違和感を抱いていた。
なんか不深山らしくないというかなんというか……
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁwwwww!? た、助けてクレヨンwwwww!」
「…………」
俺は考え事をしていると、何処からか聴こえてくる聞き覚えのある声に溜め息を吐きながら突っ込んだ。
「あの野郎も此処に飛ばされてたのかよ!?」
俺はヤマトとユウヤに場所を教えると、そのまま悲鳴の聞こえた方向に向けて突っ走った。
…………
「ひぃぃぃぃぃ!? ヘルプ! 誰かヘルプミー! 出来ればなのはたんかフェイトたんかヴィータたんを希望!」
「残念だったな。お前がその3人に会うことは永遠にない! 潔く消えろ、この欲望まみれの薄汚い変態転生者!」
俺が現場の廃工場に辿り着くと、そこにはあの時の変態野郎がバリアジャケットだけじゃなくデバイスまで黒く染めた男に刀を向けられていた。
「……そこまでだ!」
俺は黒衣の男と変態野郎の間に滑り込むと、T4Wを黒衣の男に突きつける。
「……おおう!? 君はあの時のハリキリボーイ! 助けに来て……」
「お前は後で捕まえるから逃げるなよ!」
「あうち!? やっぱりそうなのかYO!?」
「……管理局員、何故その変態転生者を庇うんだ? 君はその変態のせいでここに飛ばされたんだろう?」
「(……また『転生者』、か)変態ってのには激しく同意するが、俺は管理局員なもんでね、事件の容疑者だろうがなんだろうが殺されそうな人間は守らなきゃならないんだよ。おとなしくデバイスを納めて投降してくれるんなら嬉しいんだが……」
「それは出来ないな。俺はこの地球に蔓延る欲望まみれの転生者からなのは達を守らなきゃならないんだ。だからそいつを殺すんだ。これまで殺してきた転生者達のようにね」
……ん?『これまでのように』?
「……もしかして、最近発見されてる身元不明の惨殺死体はお前が殺した転生者って奴らの死体なのか?」
「ああ、そうだよ。奴等はなのは達を物の様に扱ってハーレムなんていう連中なんだ。そんな奴等が普通の小学生の様に過ごす……そんなことは絶対にあってはいけないんだよ」
「ああ、そうかい……連続殺人および殺傷魔法使用、その他諸々の疑いでお前のリンカーコアを封印処理した後で拘束させてもらうぜ! アクセルバンカー!」
「……え、ぶげら!?」
俺が黒衣の男にT4Wを向けアクセルバンカーを放つと、男はポカンと呆けたような顔でアクセルバンカーを顔面に受け吹き飛んだ。
「い、いきなり何をするんだ!? 俺は転生者達からなのは達を……」
「うるせえ! 転生者だかなんだか知らねえけどお前が殺してきた連中の親が自分の子供を失ってどんだけ悲しんでいるのか知ってるのか!? そして今度は自分達の子供が被害に会うかもしれないって恐怖している親の気持ちがわかるか!? それなのに……独りよがりに守ってるだのなんだの言ってるんじゃねぇぇぇぇぇ!」
俺は黒衣の男の身勝手な言い分にぶちギレながら襲い掛かった。
「ぐう!? 転生者達を産んだ両親が転生者達を失った時の気持ち……? そんなもの考えた事もない! 転生者達は世界の癌みたいなものだ! それを駆除して何が悪い!」
「そうかよ! じゃあ牢屋と裁判所の被告人席でじっくりと知る事だな!」
俺は信じられない事を言った黒衣の男に愕然としながら槍を叩きつける。
「……っ!? つ、強い!? 今まで転生者に負けなかった俺が何でこんなに押されて……」
「スパイラルバンカー!」
「がはあ!?」
訳のわからない事を言う男に、俺はスパイラルバンカーを食らわせて吹き飛ばす。
男はごろごろと転がり工場の壁に叩き付けられる。
「くそ! くそ! くそ! 俺は転生者殺しだぞ! 薄汚い転生者達からなのは達を守ってるんだぞ!? その俺が何でなのはの仲間である管理局員に攻撃されなきゃ……」
「それは貴方が犯罪者だからだよ!」
「なぁ!?」
男がその言葉と共に舞い降りたなのはの言葉に愕然とした表情になる。
「な、なんで……どうして俺が犯罪者になるんだ!? 俺はただなのは達を『特典』で操ろうとする転生者達を殺していただけで……」
「特典や転生者って言葉はわからないけどこれだけはわかるよ! なんで殺す必要があったの!?」
「……え?」
男はまたわけのわからない事をなのはにまくしたてたが、なのはの言った事にまるで考えてなかったというような表情になった。
「その転生者って人達が特典っていうので私達にひどい事をしようとしていたならその特典を取り上げれば良いだけなのに……なんでその人達を殺したの!? この前のヒテイ君の言葉もそうだけど、どうして人を簡単に殺したり殺そうとしたり出来るの!?」
「そ、それは……だって、だって二次創作の転生者殺し達はみんな転生者を殺してもなのは達からは感謝されて管理局からも褒められて……」
「そんなのなのはでも管理局でもないよ! そんな事をして感謝したり褒めたりするような人間や組織がいたりあって良いはずがないんだ!」
「むしろそいつを止める為に全力でそいつの行動を阻む筈だ。それがちゃんとした人間や組織の行動だ」
「……お前みたいな妄想ばかりの殺人鬼の言い分は誰にも理解されないし感謝もされないし褒めたりもされないんだよ! 妄想だったらお家に帰ってママのお○○いでも飲みながらにしろ!」
なのはの問いにしどろもどろになりながら答えた男だったが、なのはと一緒に来ていたユーノやユウヤ、ヤマトに徹底的にその答えを論破された。
つーか、ヤマトの奴盛大に怒ってるな……此処最近のフラストレーションがとうとう爆発したのか?
「……んで」
「……?」
「なんで、なんで誰も転生者殺しである俺を信用してくれないんだよ!? 俺はただ薄汚い転生者達からなのは達を守りたいだけなんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「逆ギレかよ!? てめえの言ってることもやってることも無茶苦茶なんだよ! なのは達を守りたいんなら……てめえがやってる事を省みてから言いやがれぇぇぇぇぇ!」
俺は逆ギレして襲い掛かってきた黒衣の男の言葉を男の攻撃を捌きながら突っ込んだ。
そもそも俺達の誰にも信用されないのは人を殺していたからだ。
つまり……自業自得って事だ。
「援護するよ、アヤト! 『トラップバインド』!」
俺は男と切り結びながらヤマトの使った魔法を確認すると、男を『予定の位置』まで吹き飛ばす。
「ぐぅぅぅ!? ま、まだ……」
「……大当たり!」
「な!? さ、さっきまで何も無かったのに……!?」
これがヤマトがユーノと共に作った特殊なバインド……引っ掛かるまで見えないバインド『トラップバインド』だ。
因みに原理はあらかじめデバイスに登録した座標に圧縮してボール状にしたバインドを配置し、それにぶつかったり触れたりした敵を拘束する……らしい。
らしいというのはユーノの言うことが専門的すぎてわからなかったからだ。(尚、なのはやユウヤもわからなかった事を追記しておく)
「吹き飛べ! 『ブラスターバレット』……バースト!」
「う、うあああああああ!?」
そしてバインドでぐるぐる巻きになった黒衣の男に、今度はユウヤがユーノと共に作った魔法であるなのはのディバインバスターをモデルにした魔法……『ブラスターバレット』が男を吹き飛ばした。
これはあらかじめ弾状に圧縮した魔力を発射する際に一気に解放することで、その威力を120%まで上昇させる砲撃魔法……なんだが度重なる戦闘でガタが来てるのかデバイスの調子が極端に悪いために現状では30%での砲撃が精一杯だった。(それでも威力は他の魔法とは段違いだけどな)
で、俺の新魔法は……魔法を覚えたときにT4Wにガタがきた為、これまで以上に酷使する新魔法は管理局が迎えに来たときに修復ついでに登録するということでお預け状態になっている。トホホ……
「……アヤト、嘆いてないでさっさとあの男を簀巻きにして警察署に捨てていくぞ」
「ご丁寧にもこいつが持っていた殺した人間のリストと一緒にね」
俺が新魔法のお預けに嘆いているとユウヤとヤマトがリンカーコアを封印し魔力の使用を妨げる『封魔魔法』を男にかけデバイスを取り上げているところだった。
つーか、ヤマト。お前笑顔が黒いぞ?
「黒くて結構……こいつに殺された子供達の親の痛みに比べれば安いもんさ」
ヤマトがゴミを見るような目で男にそう吐き捨てる。
ま、こいつのやってきた事を考えれば当然か。
「さて、警察に……行く前に下着泥棒は何処に行く気だ?」
「え、え~と……よ、妖精の国?」
「そうかそうか……捕まえろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「自由への逃走!」
「逃がさない! トラップバインド!」
「ぬふぉあ!? またもや拘束プレ……」
「黙れ、ランチャーバレット……シュート!」
「くたばれ変態野郎! スパイラルバンカー!」
「アー!?」
「……3人ともよっぽど取り逃がしたこと怒ってたみたいだね」
「てか、アヤト。管理局員が『くたばれ』はないんじゃないかな……?」
ユウヤが変態をランチャーバレットで大空に打ち上げると、俺は飛行魔法で先回りをしてスパイラルバンカーで変態を地面に叩きつけるのだった……
で、気絶した変態にも殺人鬼と同じ封魔魔法をかけると、俺達は殺人鬼を警察署の玄関前に放置し変態を引き摺りながら意気揚々と翠屋に帰還するのだった。
……変態が魔法を封じられているにも関わらず、どうやってか熊のぬいぐるみと入れ替わって逃げたのに気付いて俺達3人が『orz』になるのは俺達が翠屋に帰ってすぐの事である。
そんなわけでいきなりですが転生者殺しは此処で退場となります。
何故此処で退場するのかというとなのはが転生者(特にヒテイ)達から言われる『殺す覚悟』に対する回答を得るためのキャラだからです。
にしても何で転生者殺しってチートを奪うだけに留めずに殺すんですかねえ……?
次回もお楽しみに!