「それじゃあ皆さようなら」
「「「さようなら〜!」」」
「……さようなら」
僕は南先生に(多分)暗い顔をしながらお別れの挨拶を言い、ノロノロと鞄に教科書を詰めながら、隣の席にいるフェイトを見る。
フェイトは高町さんに昨日の決定を『念話』で言われたのか、僕を見るとホッとしたような、寂しそうな表情を浮かべていました。
「……フェイト、また明日」
「う、うん……また明日」
僕はフェイトに別れを告げると久方ぶりに1人での帰り道を歩き始めます。(昨日まではフェイトと一緒でした)
僕はとぼとぼと歩いていると、急に寂しさと無力感が沸き上がってきた。
「欲しいよ、フェイト達を止める力が……ジュエルシードなんて平気な力が、水崎君達みたいな力が……欲しいよぉ……」
「なんじゃお主、何で泣きながらとぼとぼ歩いとるんじゃ?」
僕は無力感から泣きながら歩いていると声が聞こえたので上を向くと、そこには桃饅をかじりながら喋っているみたこともない服を着ているお兄さんがいました。
「……お兄さんには関係ないよ、ほっといてよ」
「だあほめ、そんな顔をして泣いとるガキをほっとく奴がおるか。良いから話してみよ。力になれるかもしれんぞ?」
「……」
僕はそんな事を言いながら桃饅を頬張っているお兄さんに冷たい視線を向けながら、ポツリポツリと昨日の夜の事を話始めました……
……………………
「さて、と。お客さんに何も出さないっていうのは失礼だな。リンディ、お茶を出してくれ」
「クライドさん、リンディさん。俺達が捕まえた奴らにはお茶ではなく水道水で充分です」
そう暁君が言うと、後ろでぐるぐる巻きにされている子達が何やらもごもごと言っていますが、暁君はそれをスルーします。
リンディさんはそんな暁君に苦笑いをしながら立ち上がると、予め用意してあったのかポットの中にあるお茶を僕らに、水道水を水崎君達が捕まえた子達に差し出しました。
僕はそのお茶を飲んで……あまりの甘さにむせました。
「な、なんだこりゃあ!?」
「甘い、甘すぎる! 甘すぎて舌が変になりそうだ!」
「……ケーキより甘いお茶なんて初めて飲んだの」
「疲れた頭には良さそうだけどなぁ……」
「……やっぱりか」
水崎君達があまりのお茶の甘さにそれぞれの感想を言うと、暁君が溜め息を吐きました。
「リンディ……あれほど君特製のお茶は出すなと言ったのに……」
「え~? ……美味しいのに」
「重度の甘党の貴方の味覚と普通の人の味覚を一緒にしないでください」
「ユウヤの言うとおりだよ、母さん」
クライドさんが眉間を揉みながら言った言葉にリンディさんは首を傾げ、暁君が再び溜め息を吐きながら発言し、クロノさんがそれに同意しました。
……え? 『母さん』!?
「「「「「「わ、若い!?」」」」」」
「「「……言うと思った」」」
僕達の驚愕の言葉に暁君、クライドさん、クロノさんの3人が同時に溜め息を吐きました。
…………
「さてと……口直しも済んだ事だし、自己紹介に移ろう。私は『クレア・リーズベルト』。
そこの馬鹿弟子の師匠で隣にいる私の隊の隊長であるゼストの婚約者だ」
僕達がリンディさんが持ってきたお煎餅と普通のお茶で口直しをすると、水崎君と仲が良かった女の人が自己紹介をしました。
「師匠、漸く婚約まで漕ぎ着けたのかよ」
「お前が犯罪者と一緒に時空転移しなければ一気に結婚までいけたんだぞ全く……この馬鹿弟子め!」
水崎君がクレアさんを茶化すと、クレアさんは呆れ気味な声で水崎君のおでこにデコピンをしました。
「いってぇ!? 師匠! 今のデコピン、魔力を込めただろ!?」
「無茶をした罰だ。甘んじて受けろ」
「くそぅ……」
そう言って水崎君が不貞腐れた顔で座り直します。
「続けるわね? 私は『クイント・ナカジマ』。クレアさんと同じくゼスト隊長の隊にいるわ」
「因みに1男1女の子持ちの人妻だぞ」
あれ? 1男1女の部分で橋出君や他の子達が驚きで目を見開いているけど……どうしたんだろう?
「次は私ね。私は『メガーヌ・アルピーノ』。他の2人と同じくゼスト隊長の隊に所属しているわ」
「因みに凄腕の召喚師で、今年娘が産まれた」
水崎君……どうしてそうプライベートな事を言っちゃうんでしょうか?
現にクイントさんとメガーヌさんが「「余計な事は言わないの!」」って言って、両側から頬っぺたを引っ張られて「ふぉ、ふぉへんなはい……」って謝らさせてるし……
「『ゼスト・グランガイツ』だ。よろしく頼む」
ゼストさんは一言挨拶するとそのまま口を閉じました。
無口でクールな人なんでしょうか?
「僕は『クロノ・ハラオウン』。この艦所属の執務管で艦長と副艦長の息子でもある」
「俺とは家族ぐるみで幼馴染みだ」
「(……マジかよ)」
暁君の言った事に橋出君が変な汗を流しながら頭を抱えていました。
「さて、自己紹介も済んだところで……今までの経緯を説明してくれないか?」
「は、はい! 実は……」
クロノさんに促されて、スクライア君が話したのは月村さんの家でヒテイ君に襲われた後で言われた事と同じことでした。
魔法の事、ジュエルシードの事、水崎君達と合流した事、妨害してくる人達の事、フェイトの事も全部話しました。
「……自分が発掘した危険なものを回収するために戦う、立派な事だ」
「だけど、同時に危険すぎるわ。せめて管理局に連絡するとか考えなかったの?」
「カンリ・ヒテイがしつこく攻撃してたのと、それが原因で通信機が壊れてしまったので……」
「……そうか。だが、そんな状況にも関わらずよく頑張ったな」
「……あ、は、はい」
クライドさんとリンディさんに注意されてスクライア君が落ち込むけど、クライドさんは微笑みながらスクライア君を誉めてスクライア君は嬉しそうな顔になりました。
「(カンリの事について話すのは後で良いか……)さて、ミズサキ『三等空尉』、アカツキ『三等空尉』、ハギノ『三等空尉』の三人はアースラに合流して活動してもらうよ」
……ん? 三等空尉? 水崎君達は『空曹』って階級だったのんじゃ……?
「「「……階級が上がってる!?」」」
「暴走しかけた天国の門を封印したのが評価されたのよ。……行方不明だったから、死んでいた時の保険もあったんでしょうけど」
水崎君達もそう思ったのか驚いているとリンディさんがその理由を言いました。……ぼそりと小声で呟いた事はなんだったんでしょうか?
「高町とスクライアはジュエルシードの事を管理局に任せてそのまま元の生活に戻れるが……」
「嫌です。ここまで来たからには僕にも参加させてください!」
「私も、フェイトちゃんを止めるって決めたから。それに中途半端なままでは終われないもの!」
「……だろうな」
クレアさんが高町さんとスクライア君に確認をすると、高町さんとスクライア君は即座に参加することを表明しました。
「あ、あの僕は……」
「言われなくても鮎川はダメだ。てか、ジュエルシードやテスタロッサの事はこっちに任せて日常に戻れ」
「君はダメだ。それからフェイト・テスタロッサには事件が終わるまで近づかない方が良い」
「参加……え?」
僕がフェイトの事を理由に参加できないことを言おうとしたら、水崎君とグランガイツさんが即座に否定の言葉を言いました。
「で、でも僕は……」
「……鮎川。お前、今回の事件で何回命の危機に陥った?」
「あう……」
僕が反論しようとすると、水崎君は即座に僕が今回の事件で何回危機に陥ったのかを言い始めました。
「先ずカンリの攻撃だよな? 次に温泉でのジュエルシードに学校での危険な嫌がらせ、そんでもって今夜のお前に対する過剰なこいつらの攻撃……魔力の無い一般人のお前が生き残ってこれたのが奇跡なんだぜ?」
「で、でも!」
「『でも』もくそも無いんだよ。鮎川が死んだら鮎川の家族が悲しむし、鮎川の好きなテスタロッサも泣くんだぜ?」
「ぼ、僕は別にフェイトの事を好きだなんて……」
「(顔を真っ赤にして言っても説得力ねえよ)」
僕が水崎君の言葉を否定すると、水崎君は残念そうな顔で僕を見ていました。
「そ、それでも僕は……」
「……それ以上、文句を言うなら私たちは君を管理局の監視下に置かなければいけなくなるわ」
「そうなれば本当に二度とテスタロッサさんと話せなくなるわよ?」
僕が更に反論しようとすると、クイントさんとメガーヌさんが怖い顔と声で脅してきました。
……僕は、僕は、
「わ、わかりました。ジュエルシードの事には今後、関わりません」
「……ごめんね」
「すぐに終わらせて、テスタロッサと話し合いできる時間を作るさ」
僕の言葉に萩野君が寂しそうな顔で、暁君が力強い表情でそう言いましたが、僕には余り入ってきませんでした。
「あ、お前らはデバイスは取り上げ、リンカーコアを封印した後で管理局の監視下に置くから悪しからずな?」
「橋出君はその目を活かしてジュエルシードの探索を行ってもらうわ。良いわね?」
「……へーい(……なんで傍観系転生者ってすぐに原作に巻き込まれるんだ?)」
水崎君の言葉で雁字搦めになっていた子達がわめき、橋出君は不満そうな顔をしていましたが、僕には関係のない話でした。
………………
「それでも、それでも僕は、僕はフェイトの側にいたくて、フェイトを止めたくて。でも、その力がなくて……」
「(これは、随分と大事になっておるな……)」
僕がベンチに踞っていると、お兄さんは何やら思案顔でした。
「あ、あの! 僕にリンカーコアって言うのは……」
「ない!(ついでに言うなら『仙人骨』もないが……これは言わなくてもいいの)」
僕が言ったことは、即座にお兄さんに否定されてがっくりと肩が落ちるのを感じました。
「僕は……どうすれば良いんだろう……」
「(……諦めて日常に戻れと言うことは簡単じゃが、それだと本気で傷付く可能性があるし……かといって懐にある『これ』を渡すのはこやつを戦いから遠ざけた連中の気持ちを踏みにじることになるし……ううむ、悩むのう)」
僕が膝を抱えて座ると、お兄さんは凄く悩んでいて……え?
「魔法……陣?」
「……む? いかん!」
僕が足元に現れた魔方陣に戸惑っていると、お兄さんが魔方陣から僕を引き離そうとして……僕の意識はそこで途絶えました。
…………
「鮎川、お前なら変えられる。プレシア・テスタロッサに定められた……「不深山、てめぇ!」ぶげら!?」
鮎川春雄と謎の青年を魔方陣で何処かに飛ばした不深山は、戦闘をしていた狙撃からの攻撃を受けて台詞の途中でノックアウトされた。
如何でしたか?
色々あって遅れましたが何とか投稿できました。
次回もお楽しみに!