「……鮎川が不深山に転移でどっかに飛ばされて行方不明だとぉ!?」
「ああ、不深山……に憑依した転生者は俺がぶちのめして本部に転がしてある。……尋問をするから、一緒にこれるか?」
俺が声を荒げて狙撃に確認すると、狙撃が頷きつつ俺に俺達の組織『傍観転生者の会』の本部にこれるかどうか確認してきた。
「悪い、アースラの事で今は手一杯なんだ……尋問の結果は後で教えてくれ」
「了解……傍観転生者の中で、一番原作に介入することを嫌っていたお前が原作に介入することになるなんてな」
俺が狙撃に謝ると、狙撃が苦笑いしながらそう言った。
「本当になんなんだろうな、まったく……(鮎川……大丈夫だよな?)」
俺は溜め息を吐くと共に、鮎川の無事を祈らざるを得なかった……
………………
あれから数日後、俺達は……
「なのは達の善意を利用する悪の管理局め! この俺が……「うるせえ!」ぶげえ!?」
「くたばれ、KY……「『
「子供を戦わせ……「君もなのはや僕達と同じ子供でしょ。バインド」むぐー!?」
「おーい、鮎川! 何処だー!」
「いたら返事をしてー!」
「本当になんなんだこいつらは……」
訳の判らんことを言いながら俺達に襲いかかる変な奴らを撃退しながら、ジュエルシードと行方不明になった鮎川を探して走り回っていた。
つーか、善意を利用するって……リンカーコアを封印する前にそんなことを言っていた連中もいたけど、俺達はなのはの善意を利用していない。
なのはが協力しているのは全部なのはの意思だし……最も、協力を頼んだのはなのはに勝手をされて余計な被害(なのはが大怪我したり、死亡したりするような事態も含む)が出ないようにするためだ。本来は師匠達やクロノを中心としたアースラの乗員達で戦力的な面は事足りるしな。
……つっても、なのはレベルの魔導師は貴重だからっていう理由もあるにはあるけどな。
因みにアリサや焔達もアースラに招待して、今までの礼と全員が日常に戻るように言ったんだが……全員が全員一致で協力し続ける事を宣言したんで場が紛糾しかけたんだけど、師匠が折衷案としてリンカーコアがあった焔と春人の魔力適正にあったデバイスを貸し与えて協力させるって事で妥協した。
にしても……
「焔が魔力変換資質の『氷』で、春人が魔力変換資質の『炎熱』……しかもそれに応じたデバイスに適正があったのは何かの皮肉か?」
「しかも二人の戦闘スタイルに思いっきり噛み合うしな」
焔は変換資質が氷だったからアースラで保管されていた(クロノも変換資質が氷だったんだが相性が悪かったらしい)グローブ型のデバイスである『スノーホワイト』を、春人は変換資質が炎熱だったから同じくアースラで保管されていた刀剣型のデバイス『フレイムアイズ』をそれぞれ受領した。
そんで、慣らし運転も兼ねてジュエルシードと鮎川の捜索に出撃したんだが……剣術を学んでいた春人には刀剣型のフレイムアイズはそれを応用して戦闘に使うことで魔法に頼らなくても十分に戦えるし、焔は執事になる過程で学んでいたボクシングでスノーホワイトを的確に相手の急所に叩き込み、そこに魔方陣を打ち込むことで時間差で相手を凍らせるという戦法であっさりと捕縛に成功しているしで……俺達、護衛として来る必要があったのか?
「……それは言わない約束だよ」
「だよなぁ……」
俺が頭を掻いていると……
『みんな、緊急事態よ! すぐにアースラに戻ってきて!』
アースラのオペレーターである『エイミィ・リミエッタ』さんに言われて、俺達は捕縛した連中を連れて、慌てて転移でアースラに帰還した。
………………
「どうしたんですか!?」
「これをみて!」
俺達が(捕縛した連中を引きずりながら)慌てて司令室に飛び込むと、エイミィさんがモニターに映像を呼び出す。
そこには……
「な……テスタロッサ!?」
海に大規模な魔法を撃ち込むテスタロッサと、そこから現れるシードモンスター……しかも今まで見たことがないほどの巨大なものが写っていた。
「フェイトちゃん……今すぐ助けにいかないと!」
「同感だ!」
「僕も賛成です! 行きましょう!」
「ぼ、僕も行くよ!」
慌ててなのは、焔、春人、ユーノの四人が出ようとして……
「駄目だ。許可できない」
司令室から先頭で出たなのはが司令室に入ってきたクライドさんにぶつかり、残りの三人はそのまま自分の前の人物(なのは、焔、春人)の背中にぶつかった。
「は、鼻が痛い……」
「す、すまない、用があったから司令室から出ていたんだが……」
「……じゃなくて、なんで出撃出来ねえんだよ!? 向こうでテスタロッサが危ない事になってるのに……!」
焔の言うとおり、テスタロッサは大技を使ったことで魔力が低下したのと一度に海の中にあったジュエルシード(反応は六個だ)を一辺に起動させた所為で凄まじい戦闘能力になったシードモンスターに圧倒されていて、正直撃墜されてもおかしくないくらい動きが鈍かった。
だけどよ……
「だからと言って、無条件で犯罪者を助けるわけにはいかない。それに……彼女は最早死に体だ、見捨てるしか……」
「は! 自分の保身のためかよ! 可哀想だよなあリンディさんも……「ちょっと黙ってて」モガモガ……」
クライドさんの言葉にぐるぐる巻きにされている奴の一人がクライドさんを罵倒して……怒りの四つ角を額に浮かべたリンディさんにバインドで鼻以外の全部を塞がれた。
……正直、今のリンディさんは、かなり怖い。
「このチキン野郎が! そんなに自分の身が可愛いのかよ!」
「こんな女の子が命懸けで戦ってるのにそれを見捨てるだと!? このゴミ虫野郎が!」
「お前らなんてさっさと臆病風を吹かせて帰っちまえ!」
「そして二度と地球に干渉するな!」
「やはり管理局は糞な組織だな! いずれ俺達が潰してやる!」
「……俺だって彼女を助けたいんだ!」
そんなことを身勝手に喚く連中にいい加減苛立った俺達が実力行使に出ようとすると、クライドさんが怒鳴った。
「俺だって、本当はあそこで苦しんでいる彼女を助けたい……だけど、俺はアースラの乗組員達やゼスト隊、高町さん達の命を預かっているんだ! 俺の正義感だけで彼らや彼女達を危険な任務に行かせるわけにはいかないんだ……!」
クライドさんは握り拳を震わせながら悔しそうな顔でそう言った。
……そうだよな、クライドさんは艦長という立場だからこそ非情とも言える判断を下したんだ。こいつらの言うように臆病風に吹かれたわけじゃないんだ。
だから……
「ところで馬鹿弟子……お前の小隊の仲間はどこに行った?」
やべ、師匠にばれたか……
『ユウヤ、ヤマト! まだか!』
『今終わったところだ!』
『ユーノに転移装置の座標を転送!』
「……まさか!? メガーヌ、クイント! スクライアを取り押さえろ!」
「クロノ!」
「師匠にクライドさん、もう遅いぜ! なのは、焔、春人、橋出! ユーノに掴まれ!」
「「「???」」」
「なんで俺まで……」
「ユーノ!」
「転移魔法……発動!」
俺がヤマトとユウヤから連絡を受けると、師匠とクライドさんは俺が何をしようとしたのか気付いたらしく、慌ててユーノの近くにいたクイントさんとメガーヌさん、クロノにユーノを押さえ込ませようとしたが……俺がユーノに掴まりながら叫ぶと他の三人は頭に疑問符を浮かべながら(橋出は戸惑いながら)ユーノに掴まり、俺達はユーノの転移魔法によりメガーヌさんとクイントさんの手とクロノのバインドが届く一歩手前で転移装置の前に転移した。
「遅せえぞ、二人とも!」
「これでも急いだ方だよ!」
「最新の艦だからセキュリティが堅かったんだ! 多少の遅れは我慢しろ! さっさと行くぞ!」
「え? え? どういうことなの!?」
「説明は後だ! とっととテスタロッサの所に行くぞ!」
「え? う、うん!」
『馬鹿弟子……いや、アヤト・ミズサキ!』
俺が転移装置のロックの解除に手間取った二人に怒鳴ると、二人も転移装置に乗り込みながら怒鳴りテスタロッサの下に転移する。
そして疑問符を浮かべているなのは達(ユーノと橋出除く)と共に転移装置に飛び込もうとすると、師匠から通信が入る。
『お前は自分が何をしようとしているのかわかっているのか!』
「……命令違反に犯罪者の補助、だろ? そりゃさ、クライド艦長の判断は間違っちゃいないさ。俺だってテスタロッサが『ただの』犯罪者なら見捨ててたさ」
俺は一拍置いて師匠に「だけど……」と言うと、俺の正直な気持ちを言った。
「テスタロッサは俺の、俺達のクラスメイトなんだ。クラスメイトが目の前で死にかけてるってのに見捨てるほど俺も、なのは達も大人じゃねえんだよ。それに……師匠だって薄々は予想してたんだろ? 俺達がテスタロッサを見捨てずに助けに行くって」
『……まあな、仮に今の状況でフェイト・テスタロッサを助けに行こうとしなかったら私はお前をぶん殴っていた筈だ』
「ひっでえ、理不尽だ」
俺が師匠のため息混じりの言葉に突っ込むと、師匠は『だがな……』と言うと俺に真顔でこう言った。
『命令違反は命令違反だ。罰則はなくとも説教は覚悟しておけ』
「それは織り込み済みだっての!」
俺は師匠の言葉にそう言うとそのまま転移装置に飛び込んだ。
…………
「フェイトちゃん!」
「なのは!? それに黒埼君達もどうして……」
「助けに来たの! フェイトちゃんに傷付いてほしくないから!」
「僕もなのはと同じだよ! なのはの友達が傷付くのを黙って見ていられないんだ!」
「クライドさん達には止められたけどな……」
「それでもなのは様やすずかお嬢様のご友人が傷付きそうな姿を黙ってみられるほど大人ではありませんので」
俺が海に到着するとなのは達がテスタロッサを説得していた。(ユウヤとヤマトはシードモンスターの迎撃をしていた)
「なのは……私は」
「半分こ!」
「え……?」
「ジュエルシードをきっちり半分こ! これで手を取り合えるよね!」
「なの、は……でも、私は……」
テスタロッサが戸惑っていると、なのはは今回のジュエルシードの半分をテスタロッサに譲渡することで共闘しようと言う。テスタロッサは今までのなのはとの友情を放り捨てたすずかの家での戦闘が未だに尾を引いているのか、俯いたまま反論するが……
「喧嘩しても、また仲直りすれば良い。アリサちゃんがそう言ってくれた! だから、フェイトちゃん!」
「……うん、わかったよ。なのは、一緒に!」
「……! うん!」
「(……眼福、眼福!)」
橋出が共闘の態勢をとったテスタロッサとなのはを見て何故かホクホク顔になっていたが、俺は首を傾げながらジュエルシードの攻撃を撃ち落とす。
「なのはにテスタロッサ! 俺がジュエルシードを抉り出すからその隙に封印しろ! 他のメンバーは俺を援護してくれ!」
俺がそう言うと、なのはとテスタロッサ以外のメンバーはシードモンスターの周囲を飛び回り、放たれる触手や竜巻を次々と払いのける。
「それじゃあ、新魔法のお披露目といかせてもらうぜ! 『ランス・ビット』、展開!」
俺がそう言うとT4Wを中心に槍の穂先型のビットが四個展開される。ランス・ビットはT4Wの穂先を中心に回転を始め、魔力の渦が穂先に産まれる。
「螺旋走破! 『スパイラルバンカーショット』!」
俺はそのまま魔力の渦『スパイラルバンカーショット』を撃つと、即座にスパイラルバンカーを作り突撃する。
「『デュアルバンカーブレイク』! ぶち抜けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
二つのスパイラルバンカーの相乗効果により産み出された破壊力はシードモンスターを貫くと、その内部にあったジュエルシードを露出させ、俺が空中で止まってもスパイラルバンカーと融合したスパイラルバンカーショットはシードモンスターの背後にあった海を貫き海底に穴を空けるほどだった。
「今だ!」
「レイジングハート!」
「バルディッシュ!」
俺が振り向きながら二人に言うと、二人はジュエルシードにデバイスを向けながら同時にこう言った。
「「ジュエルシード……封印!」」
そしてジュエルシードが封印されるとシードモンスターが海に戻った影響で巨大な津波が発生し、俺達はそれを避けるために空中に上がると俺達を追ってきた師匠達がそこにいた。
「全く……命令違反をしたんだ。指揮官クラス全員の説教は覚悟しておけよ」
師匠の言葉にあらかじめ予想していた俺達は溜め息を吐いて……? 空に何か転移してきたぞ?
「橋出、空から落ちてくるのをお前の千里眼で……」
「鮎川だ」
「は?」
「鮎川が飼い猫と一緒に空から落ちてくる」
「そうかそうか……笑ってる場合じゃねー!?」
俺達は橋出の言葉を聞いて慌てて鮎川を受け止める為に移動しようとするが、鮎川が落ちてくると聞いた瞬間に飛び出していたテスタロッサが既に受け止めていた。
「春雄、この数日間何処にいたの!? それにどうして空から……」
「ふぇ、フェイト……それに橋出君達も……」
俺達が駆け付けると鮎川は涙目になりながらこう言った。
「お願い……プレシアさんを……フェイトのお母さんを助けて!」
こうして、鮎川の言葉を切っ掛けにジュエルシードを巡る戦いは急転直下の事態を向かえることになる……
如何でしたか?
次回は鮎川君視点です。
次回もお楽しみに!