「……そりゃ、本当か?」
薄暗い地下室で少年『
「ああ……俺は未来視のレアスキルを持っていてな。……このままだと、プレシア・テスタロッサは『プロジェクト
そして富美大は狙撃を含む傍観転生者全員に『とある映像』を送りながらこう言った。
「そして、それを防ぐのはあの青年と……魔力を持っていないあの『三人』だ」
その映像には猫の絵が描かれた黒い外套を羽織り、白い翼の生えた女性を従える『鮎川春雄』と杖を構えた青年、ダイヤモンドにも似た透明な剣を右腕に着けた『月村すずか』、髪が銀髪になり瞳が深紅に変わった、まるで女騎士のような装備を身に付けた『アリサ・バニングス』がいた……
………………
「……これは一体どういう状況かしら?」
私『プレシア・テスタロッサ』は本拠地にしている『
「……はぁ、傀儡兵は地面に埋まっている奴を引きずり出しなさい。私は坊やを寝室まで連れて行くから」
私は溜め息を吐きながら傀儡兵に命令をすると、鮎川春雄を抱き抱えると寝室に連れていこうとして……
「んぅ……おばさん、誰?」
寝惚け眼の鮎川春雄に言われた事にずっこけ、鮎川春雄と一緒に顔を打ち付けた。
…………
「……此処、何処?」
僕が目覚めるとそこは……顔色の悪いエルフのように耳の尖ったお兄さんがいました。
「……誰だ、てめぇは?」
「あ、鮎川春雄と申します……お、お兄さんは?」
お兄さんから如何にも不機嫌なオーラが漂っていて、物凄く怖いです……
「……鮎川、ああ、さっきまで『
……どうして中国の偉人の名前が出てくるんでしょうか?
「どーでも良いんだよ、そんなことは。……それにしても今日はズカズカと此処に踏み込んでくる奴が多いな」
「?」
僕が周囲を見回すと……
「あれ……? 鮎川!? あんた、三日間も此処で何してんのよ!?」
「あ、鮎川君!? 此処にいたの!?」
僕の後ろに怒り心頭なバニングスさんと心配そうな顔の月村さんがいました。
「ぼ、僕にも何が何だかわからないんだけど……それに三日間って何!?」
「三日間って何って……あんたジュエルシードに関わるなって言われた日の放課後に行方不明になったのよ! ミズサキ達は訳のわからんことを言う連中の残党の仕業かって頭を抱えていたし、テスタロッサは心配そうにあんたの席を見てたし、あんたの両親は声が枯れるまで探し回るしで……もう大変だったのよ!」
「フェイトや、お父さんにお母さんが……」
そ、それなら早く戻らないと……
「……少し黙れ」
「「「……はい」」」
僕たちは静かな怒りを発しながら何かを探す王天君さんにビビりながら黙りました。
「……そらよ、お前らこれを持ってけ」
そう言って王天君さんはごそごそと懐を探ると、天使の翼が描かれた宝石と、ダイヤモンド(後で月村さんに『模造』ダイヤモンドである『ジルコニア』だと言われました)、剣が描かれている玉を僕、月村さん、バニングスの順に渡しました。
「お前ら、自分の好きなヤツや友達が命懸けで戦ってるのに自分が戦えないのを悩んでるんだろ? それを使えば戦えるようになるはずだ」
「……良いんですか? そんな真似をして?」
「太公望の奴が『連中』に預けられたやつだ。『
「僕らはおまけ扱いですか!?」
「おまけだ」
王天君さんの言葉に僕がガビーンとなっていると、体が浮き上がるような感覚が現れました。
「……夢から目が覚める見てえだな。じゃあな、二度と此処に来るなよ」
王天君さんがそう言うと同時に僕の意識はそこで途絶えました……
………………
「……此処は?」
僕が目を覚ますと、そこはふかふかのベッドの上でした。
「あれ? 何で王天君さんから渡された宝石が……? それに何でミャオまで!?」
僕の傍らには王天君さんに貰った宝石がネックレスとして置いてあり、何故かミャオが僕の側で寝てました。
「とりあえず、此処から出なくちゃ……」
僕はネックレスを首に描けて、寝巻きから服に着替えた後、鞄を背負い、一緒に起きたミャオを肩に乗せて部屋から出ました。
………………
「む……起きたか、坊主」
「うん。太公望さんは僕が起きるのを待っていてくれたの?」
「うむ。三日間も目が覚めなかったから心配したぞ……って、ちょっと待てい! 何故わしの名前をお主が知っておる!? それに何故その
僕が部屋を出ると部屋のすぐ横の壁に背中を預けていた太公望さんがいたので僕が太公望さんの名前を言ったら……すごい勢いで驚かれました。
「え、えっと……夢の中で王天君さんに教えて貰ったんです。これも王天君さんに貰いました……友達のバニングスさんや月村さんも一緒に」
「アヤツめ……」
僕が目を反らしながら言うと、太公望さんは頭を抱えながら溜め息を吐きました。
『太公望様、『鮎川春雄が起きたならさっさと来なさい』とご主人様がお呼びです』
「わ! ロボットだ!」
「むぅ、わしとしては鮎川を説得してコアを取り上げたいんじゃが……仕方ないのぅ……(まあ、鮎川は信頼できそうな
僕がロボットに目を輝かせていると太公望さんは難しい顔つきで溜め息を吐いていました。
………………
「漸く起きたのね」
「おばさん……誰ですか?」
僕が部屋にロボットに案内された部屋に入って早々に言った言葉に黒髪の綺麗なおばさんは床に両手両膝をついてorzになりました。
「鮎川、女性にそういうことは厳禁じゃぞ」
「は、はい……」
そして僕は呆れたような表情の太公望さんに注意されました。
「……鮎川春雄は小学生、小学生だからおばさんと言われてもしょうがないわよね。そうね、そう思いましょう……」
「あの、おばさん……大丈夫ですか?」
「……私の名前は『プレシア・テスタロッサ』。貴方が仲良くしているフェイトの母よ。よく来たわね、鮎川春雄」
おばさん……プレシアさんはそう言って立ち上がると僕に微笑みながらそう言いました。
……同時に僕も聞きたかった事を言える人が目の前にいることがわかって内心驚きながらも話を始めました。
「あ、あの……プレシアさんは、どうしてフェイトにジュエルシードの捜索を命じたりしたんですか……? フェイトはそのせいで、高町さんと戦って、友達と戦ってるせいで傷付いているのに、どうして自分でジュエルシードを探さないんですか……?」
「……そうね、その理由はこれを見せてから言うわ」
そう言ってプレシアさんは後ろにあるコンソールを操作すると、壁がドアの様にスライドし、て……え?
「ふぇ、フェイト……?」
そこにはフェイトを少し小さくしたような女の子が……うわわわわわ!?
「な、何で裸なんですか!?」
「……鮎川、あれはお主の言う『フェイト』ではないぞ」
僕が慌てて目を塞いでいると、太公望さんは深刻そうな声色でそう言いました。
……フェイトじゃない?
「……フェイトはその子の『
「……え? クローンってどういう……」
「……流石は『
「……やはりか」
「……その通りよ。フェイトはこの子……『アリシア』のクローンよ」
プレシアさんは悲しそうな顔で話を始めました。
プレシアさんとアリシアは母子家庭であり、リニスさんはアリシアが無理を言って飼わせて貰っていた普通の猫でした。
プレシアさんは技術職だったために、アリシアと過ごす時間は少なかったけれど、とても幸せな日々を過ごしていたようです。……事故が起こるまでは。
前任者の杜撰なスケジュール管理、企業のよるテストの前倒し、技術的な危険性……それらが重なりあった結果の事故で、アリシアは死亡……プレシアさんはそれらを全て擦り付けられ、悲しみにうち震えていたそうです。
「だからこそ、私はアリシアを蘇らせる為に、過去の文献を片っ端から探してこの計画……クローンを製作し、そこに記憶を植え付けることで対象を復活させる『プロジェクトFATE』に行き着いたのよ」
「……じゃが、完全な死者蘇生の方法などありはせぬ。出来ても、それは他人でしかない」
「……そうよ。最もアリシアに良く似ていたあの子でさえ、リンカーコアの大きさや魔力適正、魔力の色などが食い違っていた。お陰で私はあの子を徹底的に虐待していたわ」
「……!」
僕がプレシアさんを睨んでいると、プレシアさんは「だけど……」と言いながら続きを話始めました。
ある時、フェイトを奪うためにプレシアさんに襲い掛かってきた集団がいたそうです。
プレシアさんはあっさりと撃退しましたが、集団の一人が襲いかかる前にこう言ったそうです。
「お前はアリシアの願いを無下にしているだけだ! フェイトはアリシアが望んでいた『妹』だろうが!」と。
プレシアさんはその言葉に衝撃を受けたそうです。
妹……アリシアは誕生日で「妹が欲しい」と言った事があったそうです。
「あの子は、フェイトはアリシアの遺伝子を使って産み出したクローン……つまり、アリシアが望んだ……『妹』。彼らの内の一人の言葉で、私は漸くそれに行き着いたのよ」
プレシアさんは懐かしむ様な顔でそう言いました。
「でも……!? ゴホゴホ……!」
「ぷ、プレシアさん!? ……あ」
僕が慌ててプレシアさんの背中を擦ると、プレシアさんは血に濡れた手を僕に見せました。
「……肺の病か」
「ええ、肺癌よ。それも末期のね」
「これが私が一緒に行けなかった理由よ」とプレシアさんは言いました。
「……健康でも行く気はなかったけどね」
「……どうしてですか?」
「……娘の幸せの為に、死ぬ気か」
「ご名答よ。私は、あの子の母親にはなれないわ。だからこそ、海鳴に散らばったジュエルシードを集めさせる名目であの子を行かせたのよ。……襲撃者達から得た知識でそこであの子に友達が出来るのはわかっていたから」
「どうしてそんなことを……」
「私はあの子を傷付け過ぎたわ。何より……アリシアを一人ぼっちにさせたくなかったから……」
『じゃあ、今すぐアリシアの元に送ってやるよ』
その声と共に、大きな揺れが襲いました。
「これは……転移反応!? しかも同時に傀儡兵や時の庭園の防衛機構がハッキングされている……!?」
「……動かないで」
僕の首に刀が突きつけられ、太公望さんとプレシアさんが驚愕の表情で僕の後ろを見ました。
「何時の間に……しまった、霧の『幻覚』か!」
「……正解。高度な『藍色の炎』は機械をも騙せる」
「侵入警報がならなかったのと、ハッキングはそれね……」
「違うにゃ、藍色の炎で出来るのは監視カメラとかを騙すくらいだにゃ。ハッキングの方はシロが得意なのと……私達が所属している組織の人間に体をデータに出来る奴がいて、それでデータを書き換えてるだけだにゃ。……いけ好かない連中だけど、能力だけはすごいにゃ」
僕に刀を突き付けているミツルギさんが侵入した方法をミツルギさんの使い魔である『ユカリ』さんがそう言うのと同時に扉が開かれ、中に年齢も装備もバラバラな人達が入ってきました。
「よう、プレシア・テスタロッサ。俺は『フェイズ・トウラーノ』、プロジェクトFATEにより作られたフェイトの兄だ」
「……そのわりには、アリシアに似てないけど?」
「……ふん、血や遺伝子の繋がりなど、同じプロジェクトにより作られた苦しみに比べたらあってないような物」
「……要するに、同じプロジェクトで作られた以外接点がないんじゃな……ぐえ!?」
「太公望さん!?」
太公望さんが呆れ返ったような声でそう言うと……リーダー格の男の子に殴り飛ばされました。
「黙れ……! 口答えした罰として、そのガキを殺してやる」
「「な……!?」」
「フェイトを惑わせた罰だ、死ね。一瞬だ、苦しみもなく死なせて……!」
『ご主人は僕が守る! 『
「へ?」
「え!?」
男の子の攻撃が僕に……当たる寸前に聞こえた声と共に発生した魔方陣に吸い込まれて、僕は空中に投げ出されました。
『な、何で空中に!?』
「春雄!」
僕はそばから聴こえる声に驚きながら、僕は此方に迫ってくるフェイトを見て、安心しました。
だって……高町さん達が一緒にいたから……
僕は安堵と共に早くプレシアさんの危機をフェイトに伝えなくちゃいけない気持ちになりました……
如何でしたか?
次回はクライマックスに向けて怒濤の展開が繰り広げられます!
次回もお楽しみに!