「……マジかよ」
「うん……」
「私が、母さんの本当の娘から作られた、クローン……?」
俺達は空から落ちてきた鮎川の話を聴くと、その話はかなりヤバイ話だった。
「プレシア・テスタロッサが主任をしていたプロジェクトの事故は知っている。罪をプレシアに擦り付けた連中は後日全員が僻地に左遷させられるか、クビになるか、逮捕されるかのどれかになっていた筈だ」
「そうなんだ……」
「まあ、今更な話なんだけどな」
ユウヤが複雑な表情でそう言うと、ヤマトが苦々しい顔で溜め息を吐いた。
「フェイトちゃん……大丈夫?」
「なのは……うん、大丈夫」
なのはが心配そうな顔で自分がアリシア・テスタロッサのクローンだと知って顔を青ざめているテスタロッサを気遣うと、テスタロッサは弱々しい笑顔でなのはにそう言った。
……強がりだな。心は折れかけているのに、それを強靭な意思で繋ぎ止めている……ってところか? どっちにせよこのままだと不味いな。
「なんとか時の庭園にいる奴等と連絡をとらないとな……」
『みんな! 時の庭園から通信が来たわ! 急いで艦橋へ!』
師匠が難しい顔で呟いた瞬間にエイミィさんがそんな通信を入れてきたので、俺達はずっこけた後でアースラの艦橋に向かって走り出した。
………………
『ご機嫌よう、アースラの諸君。俺は傲慢な管理局を打倒する事で全ての管理世界を解放する正義の軍隊『
「……管理局所属艦アースラ艦長のクライド・ハラオウンだ。通信に応じてくれたことに感謝する」
『ふん、お前達の言いたいことはわかっている。『人質を解放して投降しろ』だろう? 条件をのめばすぐにでも解放してやる。……爺臭いしゃべり方をする男だけをな』
「……何?」
『条件は三つ。一つ.フェイト・テスタロッサをジュエルシードと共にすぐに明け渡すこと、二つ.アースラは今すぐ地球から退去すること、三つ.管理局は地球で何が起ころうとも介入をしないことを全管理世界に放送すること。これらをすれば我等は人質を解放する』
「……っ! それじゃあ無条件降伏みたいなものじゃないか!」
『おっと、口には気を付けろ。俺の機嫌を損ねれば人質の命は……』
クロノの言葉をトウラーノは首を斬る動作をしながらせせら笑う。
要するに殺すってことかよ……!
『返事は明日の午前10時まで。それまでに本局と話し合って条件をのむかどうかを決めろ。それでは通信を……』
「待って! 母さんは……母さんは無事なの!?」
トウラーノが通信を切ろうとすると、テスタロッサが焦った顔でそう言った。
『フェイト、あのような耄碌虐待毒婦の事は忘れろ。お前は俺達と共に管理局を……』
「違う! お前達が私を奪いに来てから、母さんは変わった。私と距離を取っていても、冷たい態度を取っていても、その根底にある優しさは変わらなかった! もしも母さんを傷つけてみろ……私は、地の果てまでお前を追いかけて報いを受けさせてやる!」
『フェイト……そこまであの毒婦とモブキャラに洗脳されていたのか。安心しろ、あの毒婦は生きている。最も、お前の洗脳を解いた後で今の今まで虐待していた報いを与える予定だがな。今度こそ通信を終える』
通信が切れると、アースラに重い空気が降りる。
「明日の午前10時……」
「後半日しかねえじゃねえか……」
「……アルフ、リニス。行くよ」
「……何処に行く気だ」
俺達が時間が無いことに焦っていると、テスタロッサが何かを決意した表情で艦橋を出ようとするとゼストさんがその前に立ち塞がった。
「時の庭園に行って母さんを助ける。ただ、それだけだ」
「無謀すぎる! それこそあいつらの思う壺だ!」
「それでも! それでも、私は、母さんを、アリシアを……助けたい! 例えアリシアの代替品として見ていても、私を愛情を持って育ててくれた母さんを、私の姉を……あんな奴等の手に置いておく訳にはいかないんだ!」
「そうだとしても、無茶だわ! 敵は時の庭園の防衛機構を全て掌握している上に魔導師の数も不明……此方は精鋭揃いのゼスト隊や、執行官であるクロノ、トップエースクラスの魔力を持つ高町さん達やミズサキ君達がいるけど戦力としては圧倒的に不利なのよ!?」
テスタロッサがデバイスを握りしめながら言った言葉に、クライドさんとリンディさんが必死に説得をしようとする。
……まあ、そんな風にしながらも俺達やユーノを見張る余裕があるんだけどな。
「(アヤト、なんとか気を反らせられない?)」
「(……無理だな。どんな手段を使ったとしても即座に師匠達に制圧されるのがオチだ)」
「(……だよねー)」
俺とユーノがアイコンタクトをすると、隙のない師匠達の見張りを見て二人揃って溜め息を吐いた。
「(打つ手……なしかよ……!)」
俺は目の前で涙を流しているテスタロッサと悔しそうな顔をしている鮎川を見ながら歯を喰い縛っていた……
…………
「さーて、そろそろ反撃といこうかのう……」
そう言って私と同じ牢屋に入れられた太公望は立ち上がった。
「此処からどうやって出るつもりなの? 私のデバイスは取り上げられたし、よしんば出る手段があったとしても魔法を封じられていたんじゃあ……」
「……わしは魔法を使って脱獄するとは一言も言っておらんぞ?」
「は?」
太公望が言った意味がわからずに混乱していると、太公望は懐から杖の様なものを取り出すと……
「久しぶりに技名でも言うかのう……『
それを横凪ぎに払うと杖から真空の刃が発生、牢屋の檻を両断しそのまま壁に大きな切り傷を付けた。
「……は?」
「やはり『
私が呆然としていると、太公望は頭を掻きながら溜め息を吐いていた。
「取り合えず通信室へ行くぞ、お主の娘達に来てもらう必要がある。……通信魔法は封じられておるようじゃしな」
「なるほど……人質が自分で逃げ出した事をフェイト達に気付いてもらう為ね?」
「うむ。その通りじゃ」
太公望がそう言って私の手を縛っていた手錠(魔法を封印出来る優れものよ)を小規模な真空の刃で破壊しながらそう言った。
「通信室は此処からかなり離れているわ。多分だけど逃げ出した事がわかればすぐにでも警戒のレベルが跳ね上がるわよ?」
「安心せよ、手は打ってある」
「……?」
私がその態度に疑問を感じていると……
「ぐぼぁ!?」
「な、何で『リリカルなのは』にこいつらが……がばら!?」
見張り役達が扉を破りながら吹き飛んできた。
黒焦げのこんがり焼かれた姿で。
「時間ぴったり……ぬおおおおおおおお!?」
次の瞬間、太公望は壊れたドアから飛んできたミサイルを叩き込まれて壁に叩きつけられた。
「生きてますか、太公望?」
「……生きてるみたいよ」
「お久しぶり~!」
「……『アストレア』、再開の挨拶は後だ」
「今は太公望さん達の無事を伝えないと!」
「あ、うん。ごめんクール『ツナ』に『
「取り合えずこれで夜中に叩き起こされた怒りは晴らせたわね」
『本当は私が直接殴ってあげたかったんだけど……』
「『エドナ』、気持ちはわかるけどなぁ……」
『今は喧嘩をしてる場合じゃない』
壊れたドアの向こうには背中から翼を生やした桃色、青、金色の髪の女の子(……何故か青色の女の子だけ背丈も胸も小さいわ)達、額に炎を灯した二人の男の子、白い髪の神々しい衣を纏い両腕に岩で出来た拳を従えた女性、そして金髪に左腕に風を纏った剣を持つ少年がいた。
「ぬぐぐ、『ロゼ』……何故『イカロス』にわしに向けて『
「はいこれ。貴方のでしょ?」
「え、ええ……」
ボロボロの太公望が立ち上がりながら文句を言うと、白い髪の女性はそれを無視しながら私にデバイスを手渡した。
「……太公望、マスターからの伝言です」
「……なんじゃ?」
「……『『アステリオス』のマスターは見つかったのか? 見つかったのならどんな人物か教えてくれ』だそうです」
「
「……プランA?」
私が言葉の意味を考えて首を傾げていると……
「侵入者だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「プレシアも脱走しているぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
そう言って集まった彼らが魔法を放とうとする。しかし……
「正面突破じゃ! 死なないように手加減はするが遠慮はするな!」
「『
「アルテミス」
「『
「『『グランドシェイカー』!』」
「『バーニングアクセル』!」
「「「「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」
あっという間にボロボロにされて吹っ飛んでいったわ。
「プランAって、もしかして『
「そうなんです……」
「わりい、家をめちゃめちゃにしちまって……」
私は言葉の意味がわかり愕然としていると、金髪の男の子と額に炎を灯した男の子の片割れが私に苦笑いをしながら謝った。
「別に良いわ……どのみち、私には不要になるものだし……それから危ないわよ?」
「え?」
「へ?」
「「ぐばら!?」」
空中から彼らに襲いかかろうとした敵を『フォトンランサー』で即座に撃ち落とす。
「助かりました! 重力10倍! クー、レン!」
「任せろ!」
『詠唱廃棄……』
「『『
重力により動きを止められた傀儡兵を剣から発生した環状の風が一気に凪ぎ払う。
凄い……
「これが、異界の戦士の力……一部伝承で描かれていない力があるけど」
「なんだそりゃ?」
「わしら通称じゃ。どうやら『あの時』の事が伝説になっとるらしい……」
「あ~『あの時』のね?」
あの時……聖覇の決戦の事かしら?
「と、通信室が見えたわ!」
「……この周辺だけ妙に人間の敵が少なくないか?」
そう言って金髪の子が訝しげな顔になるけど、私達には他に目指す場所がないので傀儡兵を破壊しながら突入する。
だけど……
「うわっちゃあ……」
「ここまでするか……」
「……修復できんように完全に壊されておるな」
「私達が連絡をとろうとするのは敵にはお見通しだったわけね……」
そこには完膚なきまでに破壊された通信機器があった。
「となれば……手段は一つじゃ」
そう言って太公望は額に炎を灯した子の一人を見る。
「ツナ、頼んだ」
「わかった」
そう言ってその子は装備していたグローブを上に向ける。そして……
「『
天井を貫き、恐らく時の庭園の近くで待機しているであろう管理局の艦にも見えるレベルの炎がグローブから発射されたのを見て私はあきれ気味にこう言った。
「貴方達って……伝説で言われてる通りとんでもないのね……」
と……
……………………
「なあ、なんでアリシアの入ったカプセルが必要なんだ?」
「フェイズの命令だよ。姉を蘇らせてフェイトを完全に取り込もうって作戦なんだろ」
アリシアの入ったカプセルを運びながら話す二人の転生者達。二人はフェイズからアリシアを彼らが乗ってきた艦に乗せるように言われて運搬をしているのだ。
「でもよ、鮎川だったか? あのモブキャラ、ムカつくよなぁ……なんの力もないのに原作に関わりやがって!」
「そうだな。それにフェイトとも親しそうに話すから憎さも二倍だ。……ま、その幸運も今日までだけどな」
「どういうことだ?」
彼らは鮎川春雄に対して逆恨みも混じった愚痴を溢していると相方が言ったことにもう一人が興味深そうに聞いた。
「ん? ああ、あいつをフェイズが危険だって判断しているみたいでさ……アースラに電波を侵入させて転送システムを起動させて虚数空間に送り込んで殺す作戦をたててるみたいなんだ。あ、フェイトやなのは、淫獣に管理局のオリキャラ達は普通に時の庭園に来させるけどな」
「マジかよ!? エグい作戦をたてるなぁ……ま、身の程知らずのモブキャラには相応しい末路だな!」
「そうか。では、そんな醜い計略を嬉々として話すお前達には相応しい死を与えようか」
「「え?」」
そう言って二人が振り向くと……即座に首から上が回転し、そのままごとりと地に落ちた。
「「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? い、何時の間に……!?」」
「お前らが話していた間さ」
そう言って黒衣の男は血を吹き出している二人の体からアリシアのカプセルを遠ざけると、アリシアの体を魔法で観察する。
「……何者かがアリシアの遺体に手を加えていたな、アリシアが『
黒衣の男は溜め息を吐きながらそう言うも、その顔は何処となく嬉しそうな顔だった。
「死者蘇生ではなく、融合騎としての復活か。……まあ、融合騎化させたのが誰であれプレシアの願いはある意味叶ったのだから感謝はすべきだろう。しかし……」
黒衣の男は先程までの嬉しそうな顔を消し、見るものを凍り付かせそうな冷酷な顔になる。
「そこには鮎川春雄というお前達が身の程知らずのモブキャラと罵った相手がいなければ感動は成り立たないのだ」
そう吐き捨てて、彼は二人の遺体を消し飛ばすとそのまま転移して何処かへと飛んでいった。
それから数分後……
「う、ん……? あれ……? ここ……何処……? ママやリニ、ス……は?」
そう言って目覚めた少女は自動的に開かれたカプセルから出て時々くしゃみをしながらフラフラと歩き始めた。
……それから十数秒後、空になったカプセルを発見してフェイズ・トウラーノが怒りの声をあげたのは完全に余談である。
如何でしたか? リアルで色々あって遅れましたが、こうして新年に出せたことはある意味幸運でした……
次回もお楽しみに! それから今年も宜しくお願いします!