「はぁ……はぁ……」
私『アリシア・テスタロッサ』はポッドの中で裸で目覚めてから数十分間、歩き回ったん、だけど……
「此処、何処ぉ!?」
……完全に見知らぬ場所で迷子になっていました。
「そもそも……私、どうして此処にいるの!?」
確か……あの日は、ママにとって大事な日で、ママがあわただしく出ていって……リニスと一緒に家でママの帰りを待っていたらママが働いていた辺りが光って……
「それから……どうなったんだっけ?」
確か、リニスを連れて逃げようとして……急に息苦しくなったと思ったら、目の前が暗くなって……
「何時の間にか此処にいたんだよねぇ……」
私が訳のわからない事態に頭を悩ませていたら、目の前に扉の開いた部屋があった。
「やった! 此処が何処か、わかるかも!」
……服も欲しいんだけどね。正直、裸のままだと肌寒いし、風邪もひきそうだし……
「お、お邪魔しま~す……」
私がそろりと入ると……そこは資料室みたいで、派手に荒らされた後だった。
「う~ん……服は……無い、かぁ……」
私は溜め息を吐きながらせめて此処が何処か知ろうとして……
『経過観察日記:個体番号1769番 フェイト』
そう書かれた書類に何故か心惹かれた私は、椅子に座って、その書類を開く。
『新暦59年9月13日 アリシア死亡から30年』
「……え?」
私が……死んだ? でも、そんな……どうして……それにこの筆跡は……ママ?
『この日、私はこのプロジェクトを……アリシアの蘇生を夢見て必死の思いでやって来たプロジェクトがついに身を結んだと歓喜した。失敗に失敗を重ねて漸く……漸く完璧にアリシアを蘇生した……と、思っていた。あの子が、フェイトの利き手がアリシアと反対の右手であるという事実に気がつくまでは……』
「何、これ……なんで、ママはこんな事を……?」
私は、ママの日記を震える手で読み進める。
『新暦59年10月13日 アリシア死亡から30年と1ヶ月
……此処1ヶ月の経過観察でフェイトのアリシアとの相違点は以下のようであるとわかった。
①:右利きであること
②:活発で明るく物怖じしないアリシアとは違い、大人しく控え目な性格であること
③:魔力ランクはC+であったアリシアに対して、フェイトはAAAだということ。恐らく私の魔導師としての資質を殆ど受け継いでいると思われる
④:魔力光はアリシアの水色に対し、金色だということ
……他にも勉強好きなど細かい違いはあるけど、それはおいておく。私は、アリシアの完全蘇生だけが望み! あんな紛い物じゃない! どうして……(此処からは筆跡が乱れに乱れている)』
「……ママ」
私は、ママの変貌への悲しみと哀愁、望まれずに産まれてきてしまった妹と言うべきフェイトへの同情に包まれながら、日記を読み進め……ある日でママの感情に変化が生じたのを見つけた。
『新暦61年3月22日 アリシア死亡から31年と6か月と9日
……最近、自分のフェイトを見る目が変わっているのを感じた。感情は……多分、母性ね。理由は自分でもわかる。多分、1ヶ月前にあの子を奪いに来た連中の言葉が効いているのね。
「フェイトはアリシアの望んだ妹」……実際に言われた言葉はもっと鋭いものだったけど、私にはとても痛い物だった。
アリシアの望んだ妹……そうね、そうなのよね……フェイトは、いいえ『プロジェクトF』を開始してから作り上げてきた全てのアリシアのクローンはアリシアの遺伝子から作り上げたアリシアの……妹。あの事故が起こる前の誕生日にアリシアに言われたこと、『妹が欲しい』。私は、はからずもアリシアの願いを叶えていたのね……でも、今更あの子の母親になんて……』
「……続きを読まなきゃ、くちゅん!」
私はくしゃみをしながら続きを読み続ける。
『新暦65年4月23日
かねてより計画していた『プロジェクトJS』を始める日が来た。予定では私が奴等の言っていた『ユーノ・スクライア』の輸送船に魔法を撃ち込む筈だったんだけど……奴等の一人が先走って攻撃してくれたお陰で手間が省けて良かったわ。後はあの子を、フェイトをあの子の支えになってくれる『高町なのは』のいる町へ送り込むだけ……アリシア、あなたの下へもうすぐ行けるわ』
「もうすぐ私の下へ行ける……? ママ、まさか……」
『新暦65年5月2日
最近、フェイトがクラスのとある男子……『鮎川春雄』の事を喋り始めるとモジモジしたり、顔を赤らめる事が多くなった。理由を聞いてみると、鮎川君がジュエルシードを物質にフェイトに高町なのはと共闘をするように言った理由が『フェイトが悲しそうにしていたから』と言ったときから鮎川君を見たり、話したりしていると胸がドキドキするから……らしい。……良い変化ね。鮎川君の事は奴等に聞いてもまるでわからなかったけど……恋をするのは、とても良いこと(私だってあの人と恋をした時には世界が普段よりも色鮮やかに見えた)。フェイトの心を支えてくれる、柱が増えることだから……』
「……」
私はママがある段階でフェイトをわざと傷付けて全ての罪を自分に擦り付けて死ぬつもりじゃないか? と疑問に思いながら日記を読み進める。
『新暦65年5月14日
今日、フェイトが通信の際に悲しい様なホッとしたような顔をしていたので聞いてみると鮎川君が管理局からジュエルシードの件から手を引くことを高町さんから聞かされた事を言った。まあ、温泉の時から無茶をしたり、フェイトと親しくしている所為で危害を加えられる様な事態になっているんだから当然の措置だけど……でも、多分だけど力を得るか、誰かから力を借りるかしてまた戦いに加わるわね……奴等から得た知識に鮎川君のような力のない子がそんな風に私のところに来る物語があったから……』
「……奴等って、誰?」
私は首を傾げながら日記を閉じる。
……ママの所に、フェイトの所に行かなくちゃ。私は生きているって事を、そして、ママがしようとしていることをしなくていいって……言わなくちゃ!
「良し、行くぞ~!」
私が気合いを入れながら部屋を出ようとして……
「その前に服を着ろ」
「きゃぁぁぁぁぁ!?」
何時の間にか後ろにいた黒衣の男の子に悲鳴をあげながら平手をお見舞いした。
……………………
「本っ当にごめん!」
「いや、良いんだ。いきなり声をかけた俺も悪かった」
『……本当に『シャオ』はタイミングが悪い。そのタイミングの悪さが『カミト』や『クロヒコ』に呆れられる点だった』
「『フィレア』、うるさいぞ。それに、俺はもう『あの世界』とはなんの関係もなくなった。あの世界は俺がいなくても回っていくことはわかったからな……」
私はほっぺに赤い紅葉がついた男の子に謝りながら男の子の持ってきた服を着ていた。
……そもそも、この子は誰なんだろう? さっきの声は何?
「ああ、俺『達』の事はどうでも良いんだ。それは、重要じゃない」
……あれ? 顔に出てた?
「ああ……服は、着たな。フィレア、転移」
『わかったよ。シャオ……』
私の視界から男の子が消えて……驚いた顔をしているママと……虚ろな眼の私に似た女の子……フェイトがそこにいた。
「あ、アリシア!? どうして此処に!? それになんで……」
「……ママ、お説教は後回し。今は、フェイトと話をさせて」
「……わかったわ」
私がそう言うと、ママは暖かい顔をして襲いかかってくる人達に魔法を撃ちまくる。
「……フェイト」
「……だ、れ……?」
「私は、アリシア。アリシア・テスタロッサ。貴女のお姉ちゃんだよ」
「アリ、シア……? 私の、オリジナル……私、は貴女の……居場所を……」
「私の居場所をフェイトは取ったりなんてしてないよ。むしろ、私を亡くして悲しくしてたママの側にいてくれてありがとう」
「それ、でも……私のせいで、春雄が……」
私がフェイトに話しかけると、フェイトは辛そうに全てに絶望したかの様な表情で、涙を流しながらそう呟く。
「……春雄って、あそこで戦っている子達の誰かの事?」
「……そんな訳、ない……虚数空間に送られ、て生きてるわけがない」
……フェイトがどうして絶望しているのか、わかった。私のクローンであることがわかった上に大切な人が死んだと思って、その悲しみで壊れそうになったんだ。
「何故だ!? 何故お前のような
ママに襲いかかっていた人達のリーダーがそう言いながら戦っている子達の一人を吹き飛ばした。
「ぐぅぅぅぅぅ!? そんなの……フェイトに、フェイトに悲しい顔をしてほしくないからだ!」
「……春、雄?」
良かった(あんまり良くないけど)……フェイトの好きな子は、生きてるんだ。
「なんだと!?」
「フェイトは僕と一緒に話してる時に時々見せる笑顔や、初めて僕と会った時の凛々しい顔が似合うから……君達のせいで、絶望した顔や、悲しい顔は似合わないから……だから、だから僕はフェイトを支えてあげたい! フェイトの側にいたい! ……この気持ちはまだわかんないけど、例え身の程知らずって言われても……僕は、フェイトの側で一緒に笑っていたいんだ!」
「この……身の程知らずのモブがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
咆哮と共に男の子にボールの様に吹っ飛ばされる鮎川君……このままじゃあ……!
「春、雄……私は、私は……!」
「……フェイトはどうしたい?」
『……貴方はどうしたいですか?』
私とフェイトのデバイスの問いに、フェイトは涙を流し立ち上がりながら答える。
「アリシア……バルディッシュ……私は、春雄と一緒にいたい。この気持ちを、春雄の言葉で知っちゃったから……この気持ちを伝えたいから。だから、お願い。私に力を貸して、バルディッシュ!」
『……yes、sir!』
「……私も、力を貸すよ。フェイト」
私はフェイトの答えに笑いながらそう言う。……私の身体の事をフェイトと会ったことで知ったから。
「……アリシア? どういう事……?」
「……こういうこと!」
そう言って、私は目を閉じると私の身体に付けられた『
私の身体が光に包まれ、その光が収まると私の服はエメラルドとスカイブルーを基調とした服になり、フェイトにその機能を送信する。
「!? あ、アリシアが私の……私専用の『
私から送られた情報に愕然とした表情になるフェイト。……私もこれを知った時にはちょっと驚いたんだよね。
「そう言うこと! ……フェイト、私も一緒に戦わせて!」
「アリ、シア……うん。お願い!」
「オッケー! お姉ちゃんに任せて!」
「……うん!」
私はフェイトの隣に並び、その
「「ユニゾン……イン!」」
私達がそう言うと、私の身体がフェイトに溶け込みフェイトの全ての情報が私に流れ込んできた。
……あいつ、フェイトの兄だのなんだの言いながら……最低な奴じゃん!? ぶっ飛ばさなきゃ気がすまない!
『……アリシア、気持ち悪くない?』
「全っ然! むしろ、力が沸き上がってくるよ! 行こう、フェイト! あいつをぶっ飛ばす為に!」
『うん……行こう!』
そう言って私達はフェイズの所へと突っ走る。フェイトの想い人を助ける為に、この戦いを終わらせる為に……
如何でしたか?
次回はユニゾンフェイトの無双回……と、管理局3人組の危機兼強化への布石回です!
次回もお楽しみに!