「た、ただいま〜……」
「なのは、こんな時間に何処に……随分とお客が増えたな」
「お、おじゃましま〜す……」
「失礼します」
「おじゃまします」
「夜分遅くに申し訳ありません」
あれから俺達は、高町の提案(他に良い案がなかったのもあるが)で高町の家に向かっていた。
で、俺達は高町の家に入ると高町の家族と思われる男(雰囲気から見てかなりの使い手だな)が厳しい顔で高町を睨んでいたが、俺達が入ってくるとちょっとばかり驚いた顔になった。
「あ〜えっと、ちょっと話したい事があるんでその……高町さんのお父さんかお母さん……出来ればその両方を呼んできてほしいのですが……」
俺は普段の口調を取り繕いながら、高町の家族と話がしたいと言う。
「ん? 父さん達と何か話したい事があるのか? それならちょうど良かったな。もしもなのはが戻らなかったら付近一帯を捜すつもりで父さんも母さんも起きているんだ」
……ある意味では好都合か? つってもこれから話す事になると胃が痛くなるんだけどな……
…………
「えっと、まず何処から話せば良いんでしょうか?」
俺達はあれからリビングで高町の親父さんの『高町士郎』さん、お袋さんの『高町桃子』さんと対峙していた。
……正直、士郎さんからは猛スピードで逃げ出したいくらいの迫力があるのだが、そういうわけにもいかないんで、俺は正座している足をガタガタと振るわせながら話す。
「そうだね、まずは自己紹介からかな?」
「そ、そうですか。俺は時空管理局首都航空隊第3084隊所属、アヤト・ミズサキ空曹です」
「同じく時空管理局首都航空隊第3084隊所属、ユウヤ・アカツキ空曹です」
「お、同じく時空管理局首都航空隊第3084隊所属、ヤマト・ハギノ空曹です」
「ぼ、僕はゆ、ユーノ・スクライアです。昔なのはと遊んでいました」
「そう、貴方がなのはが言ったユーノ君だったのね? 私達がなのはに寂しい想いさせていた時に助けてくれてありがとう」
「い、いえ! 別にお礼を言われることでは……」
「うふふ……なのはも謙虚で良いお婿さんを見つけたのね」
「お、お婿さんって……!?」
「お母さん! ユーノ君をからかわないで!」
「あら? 私は本気なんだけど……」
桃子さんのお礼にユーノが顔を真っ赤にしながら言うと、続けて言われた事で耳まで真っ赤になり、高町が桃子さんにユーノと同じくらい顔を真っ赤にしながらツッコんだ。
……高町とユーノが知り合いなのはわかってたが家族も知っていたか……まあ、話が脱線しているから引き戻すとするか。
「こほん、話を戻しても良い……ですか?」
「あら、ごめんなさい」
「ご、ごめんアヤト君……お母さんのバカ」
俺が脱線した話を戻すために息を吐くと、桃子さんはお茶目に笑い、高町は顔を赤くしたまま桃子さんに毒づいた。
「え〜と……あの、聞きたい事はなんでしょうか?」
「まずは君達が何者かを聞こうかな。君達は一体何者だい?」
「えっと、俺達は時空管理局に所属している魔導師でして……」
俺がT4Wを起動させバリアジャケットを身に纏うと、士郎さんと桃子さんは驚いた顔になる。
「これは魔導師の杖であり相棒であるデバイスです」
「魔法使いの杖って意外と機械的なのね。もっとメルヘンな物かと思ってたわ」
「あはは……まあ、普通はそう思いますよね……」
「古いデバイスではそういう物もあります。まあ、たいていは博物館か骨董品として古い家系の家に保管されていますけど」
俺のデバイスに桃子さんが珍しいという風に頬に手を当てて言うと、ヤマトが苦笑いをしてユウヤが古いデバイスについて説明をする。
「それから、時空管理局というのは地球でいう警察と裁判所が一緒になった組織の事で、主に様々な世界で起こる犯罪の解決や管理世界の治安の維持です。また、その世界では手に負えないロストロギアの回収もしています」
「ロストロギアとはなんだい?」
「ロストロギアというのは古代ベルカ……僕らの世界の古い時代に作られた道具の事なんです。世界の中ではとても危険なロストロギアが神器として祭られていたり時には発掘されたりするので時空管理局が封印をしているんです。まあ、さっきアヤトが言ったとおり、その世界では手に負えない物に限りですけど……」
「それから、ユーノはそれらの発掘と封印を専門として旅をするスクライアの一族の出身なんです」
俺の管理局に対する説明でロストロギアについて士郎さんが聞いてきて、ユーノがロストロギアについて説明し、ヤマトがスクライアについて補足する。
「で、お話って言うのがこの世界のこの街に降り注いでしまったロストロギアのことなんです」
「……それはユーノ君がぼろぼろの姿でなのはに運び込まれてきたのと、なのはがこんな夜更けに外出した事と関係があるんだね?」
「……はい」
俺の言葉に士郎さんが確認すると、ユーノが意を決した様に話しだした。
「まず、今回の事件のきっかけは僕らスクライアが宝石型のロストロギアである『ジュエルシード』を発掘した事なんです。このジュエルシードは普段は無害な物なのですが……持ち主の願いを叶える事が出来るんです」
「……それの何が問題なの?」
ユーノの言葉に高町が首を傾げるが本題は此処からだ。
「その願いの叶え方が問題なんだ。ジュエルシードに願いを言うとそれを曲解して叶えようとするんだ。試しに『不老不死になりたい』って大人の1人が願ったら周りの人から寿命を吸い上げる事でその吸収した寿命の分だけ不老不死にしようとしたんだ。慌てて封印したから大事には至らなかったんだけどね……これで『強くなりたい』とかの願いだったらどんな事になっていたやら……」
「……大惨事になることは間違いないな」
ユーノがそのヤバい部分を言うと、高町の顔は急速に青ざめ、ユウヤは次に言った事に顔をひくつかせた。
「それでジュエルシードは危険だって結論が出て、管理局に引き渡すために僕が運んでいたんです。
そしたら、いきなり船が襲撃されて……襲った相手は『死ね! なのはを悪しき管理局に引き込む淫獣!』とか言いながら襲い掛かってきて……襲撃時に開いた穴からジュエルシードがばらまかれてしまって」
「おいおい、結果的にそいつが原因で事件が起きたのか……」
「うん、僕はレイジングハートを持って慌ててジュエルシードを封印しようとしたんだけど……」
「返り討ちにあったと……」
俺の言葉にユーノが「うん……」と頷く。
因みに高町は「ユーノ君は『いんじゅう』じゃないもん!」と言ってむくれていた。
「それから僕は状況を打開してくれる『誰かを』求めて通信魔法である『念話』をして……」
「それをうちのなのはが聴いたわけだね?」
「はい、最初はなのはが来て驚きました。何せ慌ててたものでまさか地球とは考えませんでしたから……」
「私も驚いたんだよ? だって、ユーノ君が血塗れで倒れてたんだから」
ユーノが若干苦虫を噛み潰した様な顔をしながら呟くと、高町も同意した。
「で、なのはの家に運び込まれたんですけど……なのはに迷惑をかけるわけにはいかないって思って出ていこうとしたら……」
「私が気付いてユーノ君を追っていったの」
「そこでジュエルシードに遭遇したんだね?」
士郎さんの言葉にユーノと高町は同時に頷いた。
「それでジュエルシードの思念体に襲われていたところをたまたま時空の迷子になった俺達が見付けて……」
「なんやかんやあって、高町さんにジュエルシードを封印させて此処に来たんです。
高町さんに此処を宿にしてはどうかと聞かれたのもあるんですけど、危険な事に参加させるかもしれない以上は家族の意見も聞かなきゃいけないと思って……」
俺の言葉に続いてヤマトが言葉を繋ぐ。
……士郎さん、さっきから黙ってるけど俺達殺されないよな?
「……なのは、なのははユーノ君達を手伝いたいんだよね?」
「うん。ユーノ君に助けられた時の恩返しもしたい。
……それに此処にはアリサちゃん、すずかちゃん、焔君、春人君がいる、お父さん、お母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃんもいる。この街には私が守りたいものが一杯あるんだ。だから……ユーノ君達と一緒に戦いたい!」
「……危険かもしれないよ?」
「……それでも!」
高町の強い意見に士郎さんは黙りになる。桃子さんは「なのは……強い子になったのね」と涙ぐんでいた。
「……ユーノ君、アヤト君、ユウヤ君、ヤマト君」
俺達は士郎さんからの声かけに同時に返事をする。
「娘を、なのはを任せても良いかい?」
「……はい!」
「高町さんは傷一つ付けずにお返しします」
「俺達も全力でサポートします」
「それに管理局の船も見回りをしていてすぐに来るはずですから」
俺達の返事に士郎さんはうんと頷くと……
「恭也、美由紀。彼らは信用出来るようだよ」
「俺も聴いててわかったよ」
「私もね」
士郎さんの言葉とともに、隣の襖を開けて2本の小振りな刀(後で高町に聞いたら小太刀と言うらしい)を持ったこの家に来て最初に会った高町の兄と、外から窓を開けて(……後ろ手に鉄で出来た扇と糸を隠しているが)高町の姉と思わしき人物が入ってきた。
……つまり娘(妹)に危害を加えそうな人物だったら容赦なく殺されてたわけか、恐ろしい。
「じゃあ、お父さん……!」
「うん、彼らは今日から此処に住むよ」
「やった!」
高町が俺達(主にユーノ)が此処に住める事に喜んだ。
……そして、此処で俺の記憶は緊張の糸が切れたのと我慢していた眠気で途切れる事になる。
…………
朝、目覚めて朝食を食べた俺達は士郎さんに言われてリビングに来ると(高町は学校に行った)、そこには俺達四人分のバッグがあった。
「あの、士郎さん。これは一体……?」
「ああ、君達はなのはと同い年なんだろう? だったら学校に行かないと色々まずいと思ってね。
戸籍の作成となのはと同じ学校への転入の手続きをしたんだ」
「「「「…………はい!?」」」」
俺達は同時に驚いた。
…………
「えへへへ……」
「なのは、顔が幸せそうに緩んでるわよ」
私『高町なのは』は、アリサちゃんに言われた事で、漸くユーノ君に恩返しが出来るのと一緒に住むことが決まった事で顔が緩んでる事に気が付きました。
「そんなにユーノ君が家に来たのが嬉しいの?」
「うん!」
「ユーノは幸せ者だな!
こんなにも自分を思ってくれる奴がいるんだからなぁ……俺なんてそんな相手はいないぜ?」
「……それは、ツッコミ待ちですか? すずかお嬢様に好意を抱かれている焔が言っても説得力がないのですが……」
すずかちゃんの質問に私が答えると、アリサちゃんの執事の焔君が羨ましそうに呟き、すずかちゃんの執事の春人君がツッコミました。
……それは、アリサちゃんに好意を抱かれているのに気付いていない春人君も説得力無いよ?
「あ、先生が来た」
私が言うとみんなは慌てて自分の席に戻った。
……あれ? 席が4つ多いような……?
「はーい! 皆さんおはようございます! 今日は皆に転入生を紹介しますね!」
そう言って私達の担任である『
「水崎綾人だ! 宜しく頼むぜ!」
「暁裕也だ。短い付き合いになるかもしれんが宜しく頼む」
「萩野大和です! これからよろしいお願いします!」
「ゆ、ユーノ・スクライアです! 今日から宜しくお願いします!」
私の学校の制服を纏ったユーノ君達だった。
「え……? えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
私の声が響くと同時に、後ろの席に座っていた橋出君がひっくり返って大きな音をたてた。
何!? 何がどうなってるの~~~~!?
如何でしたか? リアルが忙しくて長引いてしまいました。
次回もお楽しみに!