魔法少女リリカルなのは~管理局員の奮闘~   作:愛川蓮

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9歳~接触、転生者!~


第5話

「じゃあ、水崎君は橋出君の隣、暁君はバニングスさんの隣、萩野君は雪村君の隣、スクライア君は高町さんの隣の席よ」

あれから士郎さんによって学校まで連れてこられた俺達は、なのは(何時までも名字呼びは他人行儀すぎるとのこと)のクラスの担任の先生に案内され、なのはのクラスに来て自己紹介をしていた。

 

……戸籍を作って即学校に転校できるとか、士郎さんはどんなコネがあるんだ?

あらゆる意味で敵に回したくはねえな。

 

そして、俺がこの教室に入って気付いた事は魔力を持つ人間がなのはを含めて7人もいた。(内2人は全く気付いていないみたいだけどな)

他の3人もわかったのか渋い顔をしている。

魔導師だからってなのはみたいに無条件で味方みたいな奴は少ないだろう。俺は他の6人については警戒をするよう他の3人に念話で伝えた。

 

「あ〜〜……水崎で良いのか? 俺は橋出観男、よろしくな」

「ああ、今日から隣になる水崎綾人だ。よろしくな! 橋出!」

「お、おう……(しっかし、なんで管理局員であるこいつらがこの学校に転校してきたんだ? テンプレの如く士郎さんが何かしたのか……?)」

俺は何やら考え事をしている橋出を訝しみながら席に座り、先生の方を向くヤマトとユウヤも隣に挨拶をしている所だった。

で、ユーノは顔を真っ赤にして挨拶をしながらなのはの隣の席に座り、なのはも顔を真っ赤にしてユーノに話し掛けていた。

 

……!? 殺気……!? 何処から……?

 

「じゃあ、転校生の皆は今日は隣の人に教科書を見せて貰ってね? じゃあ38ページを開いて……」

俺が殺気の出所を探るためにユウヤにサーチャーを放つ様に念話を出すと、橋出が机をくっつけてその真ん中に教科書を置いたので顔をくっつけて教科書を読んだ。

……ユーノとなのははそれで完璧にラブコメってたけどな。

 

…………

 

「ねえねえ? 水崎君、何処から来たのかな? お父さんとお母さんはお仕事は何をやってるの?」

「暁君、特技は何? 」

「萩野君! 好きな食べ物は何!?」

「スクライア君、高町さんと親しそうな会話をしてたけどどんな関係なの!?」

 

俺達は休み時間になると、あっという間に好奇心旺盛なクラスメイト達に包囲されて、質問と言う名の弾幕に曝されていた。

 

「あー、えーと、あの……」

「はいはい、転校生達が困ってるからそんなにいっぺんに質問しないの。質問するなら一人一回ずつよ」

そう言って俺達を助けてくれたのは金髪の女……確かユウヤの隣の席の『アリサ・バニングス』だった筈だ。

 

「ありがとな、バニングス。助けてくれて」

「どういたしまして、クラスの纏め役として当然の事をしたまでよ」

俺が礼を言うとバニングスはさも当然のような事を言った。

 

「あ、そうそうこのクラスで日常茶飯事の事があるから……」

「我が嫁達よ! そいつらから……」

「焔」

「あいよ」

「離れ……べばあ!?」

バニングスが何やら言おうとしたところに、左右の目の色が違う銀髪の男が近付いてきたのをバニングスは隣にいた赤髪の男に命じてぶっ飛ばさせた。

 

「気にしないようにね?」

「その前にあれがこのクラスで日常茶飯事の事なのか!? つーかあいつは大丈夫か!?」

「ええ、あ、あいつは気にしなくていいわ。クラスの皆を『モブ』と言うわ、私とすずかとなのはを『我が嫁』だのと言うわで傍迷惑な存在だからああいう扱いで良いのよ」

俺がバニングスに吹っ飛んでいった男の事を聞くと、バニングスは汚物でも見るような目で男を盛大にディスった。

 

「あ、紹介が遅れたわね。こいつは黒崎焔、あたしの執事よ」

「黒崎焔だ、よろしくな水崎」

「おう、よろしくな」

俺と黒崎が握手をするとチャイムがなり、先生が入ってきたので俺達はそれぞれの席に座った。

……気絶していた銀髪の男は憎々しげに黒崎を睨むとそのまま荒々しく座った。

 

……確かにありゃかかわり合いになりたくないタイプだな。

 

………………

 

「少し良いかな?」

「……ん? え~と……誰だ?」

昼休み、俺が昼飯を食った後教科書を読んでいると、黒髪の爽やかな雰囲気を纏った男が話しかけて来た。

ただし、爽やかな雰囲気に混じって殺気と闘志が入り雑じった気配を感じてもいるが……

 

「ああ、俺は織主晴夢。よろしくな水崎」

織主は名乗ると、此処ではなんだからと屋上にまで俺を連れ出した。

 

「で? 何の用だ?」

「ああ、用事は質問と提案だよ。

質問の方は……水崎君、君は、いや君達3人は『転生者』なのか?」

……あん? 転生者? なんだそりゃ?

 

「転生者? なんだそりゃ? 俺達はそんなのじゃねえぞ?」

「……そうか、それなら良いんだ(しらばっくれてるのか? それとも……いや、今は良いか)。提案の方はクラスの嫌われ者の鎌瀬と不深山を一緒に潰さないか?」

……いきなり何を言いやがるこいつは!?

 

「いきなり潰すなんて言われて首を縦に振れるわけがねえだろ!? つか、鎌瀬と不深山って誰だよ!?」

「ああ、ちょっと性急すぎたね。不深山はアリサの執事の黒崎君に殴り飛ばされた奴、鎌瀬は昼休みが始まって早々にすずかによっていってすずかの執事の雪村君に吹っ飛ばされた奴だよ」

……ああ、あいつらか。

 

「……誰かはわかった。でもよ、いくら嫌われ者だからっていきなり潰すはないと思うぜ?」

「……クラスの皆はあいつらに迷惑してるんだ、それになのは達だってあいつらに嫁と言われ続けて困っている筈だ。それを見捨てるのか?」

「見捨てるって……俺は今日此処に転校してきたばかりだぜ?」

「……君達は友人が救える力が、魔法があるのにそれを使わないのか!? あいつらはいつか魔法と特典を使って何かをしでかす筈だ! 管理局員である君達にはそれがわからないのか! その前にあいつらを再起不能にしてからの方が君達がジュエルシードを探すのも楽になるはずだ!」

……それが本音か。

 

「悪いが、管理局は事件を起こす前に犯人を捕まえるなんて健康体に薬をぶちこむ様な真似はしねえんだよ。

それに再起不能なんて犯人が満足に生きられない様な事もな。ついでに言わせてもらうが、将来お前の様な『危険人物』が管理局に入ろうとしたら弾かれるだろうぜ」

「な!? 俺の何処が危険人物なんだ!?」

「……事件を起こす前に犯人を『再起不能』にしようなんて奴が、犯人を出来るだけ『無傷』で捕まえようとする組織に入れるわけがねえだろうが」

俺は話は終わりだとばかりに屋上を出たが、織主はぶつぶつと「なんでだ……? 俺が読んでた二次創作の主人公は確かに『踏み台』を再起不能にしても皆に褒められていて……」とか宣っていた。

 

……織主、鎌瀬、不深山の3人は協力者としてはペケだな。

俺は溜め息を吐きながら念話で他の4人に織主、鎌瀬、不深山の3人に注意するように言った。

 

…………

 

「てなことがあった」

「春人君と焔君が織主君を『あいつは危険人物だから近付いたら(近付いては)ダメだ(ダメです)』なんて言ってたのはそういう事だったんだ……」

俺が4人に屋上での事を話すと、なのはは納得した顔で呟いた。

……バニングスと月村の執事は勘が良いな。

普通なら、多分あの爽やかなルックスで騙されると思うぜ?

 

「ユウヤ、結局殺気を放った奴の正体は誰だったんだ?」

「……隣のクラスの黒髪のツインテールの女だ。

……俺達やなのは達にサーチャーを放ってたし、織主と同様にジュエルシードを知っていたうえにユーノを『いんじゅう』と呼んでいたぞ。

因みにサーチャーは全部破壊したから話を聴かれる心配はない」

「僕の方も歩き回ってたら、『原作』がどうたらって言う奴がちらほらいたよ」

「……女の子の方は『百合島レズ』さんだね」

俺達4人は女の子につけるにはあんまりな名前に揃ってずっこけた。

 

「なんだその無茶苦茶な名前は!?」

「名字の百合島は兎も角……レズなんて名前をよく付けられたねご両親は!?」

「……何でも2人とも同性愛者だったらしいの。因みに男の子だったらホモって名前にする予定だったんだって」

「知りたくなかったよそんな情報! てか、何でそんな2人が結婚できたの!? そして結婚したの!?」

「2人とも大会社の跡取りで政略結婚なんだって」

「激しく納得! そして嫌な顔をしたのってもしかして……」

「うん、百合島さんもお父さんとお母さん同様に同性愛者なんだ……私やアリサちゃん、すずかちゃんに何度言い寄ってきたかわからないよ。それに焔君や春人君の事を『薄汚くて欲望まみれの男子』なんて言って悪評を振りまいて2人から引き離そうとしたし」

……また清々しいくらいの自分本位な奴だな。

俺は溜め息を吐きながら話すなのはを見て、百合島も協力者にしない事を決定した。

 

……それに疑問もあるしな。

 

「どうしてあいつらはジュエルシードの事を知っていたんだ……?」

「……そういえばそうだね。

織主君も百合島さんもどうして知ってたんだろう……?」

あの場にいたのは俺達3人となのはとユーノの5人だけで、会話を聴かれる可能性は限りなく低い筈だ。

なのに知っていたということは……?

 

「未来視のレアスキル……もしくはそれに準ずる能力……?」

「もしくは織主の言う転生者って奴らの世界では、この世界を元に物語が放送されていてそれを観てたからとかな」

「それはないと思うよ……?」

後に俺の推測は大当たりだった事を知るのだが、それはまた別の話である。

 

「そうだよ、マイトガインとかじゃないんだから」

「なんでユーノ君がマイトガインを知ってるの……?」

「次元世界……特に管理世界では地球のサブカルチャーは大人気なんだ」

俺も親父が録画したガンダム系列やスーパー戦隊系列の作品を見てるしな。

因みにユウヤは牙狼、ヤマトはワンピース、ユーノは勇者シリーズ(特にガオガイガー)やグレンラガン、マクロスシリーズがお気に入りらしい。

 

俺達が他愛ない話をしていると……

 

「……!」

「アヤト、お前も気が付いたか」

「ああ、こいつは……!」

「魔力波形のパターン一致、間違いない、ジュエルシードだ!」

「ユーノ君! ジュエルシードの発動した場所は!?」

「え〜と……! 近くの神社の境内……不味い! 近くに人と動物がいる!」

「どっちかが取り込まれたら不味いね……急ごう!」

「うん! 僕が案内するよ! 着いてきて!」

俺達はユーノの先導の下にジュエルシードを抑えるべく行動を開始した。

 

……そして、これが長きに渡る『転生者』達との戦いの狼煙にもなるのを俺は知らなかった。




如何でしたか?
次回は転生者との初戦闘です

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