魔法少女リリカルなのは~管理局員の奮闘~   作:愛川蓮

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転生者~傍観するのは我にあり2~


第7話

よう、読者の皆さん。傍観系転生者の橋出観男ですよっと。

 

今回、俺は転校してきた管理局員3人組を千里眼で観察していたんだが……どうやらあいつらは、3人とも転生者ではないらしいというのがこの1日観察をしていてわかった。

まず、転生者特有の大量の魔力がなく、良くてB+、低いとCというランクだった。次に3人とも転生者のように原作キャラに妙な仕草をしないことだ。

これは踏み台の鎌瀬や不深山のように、ニコポ・ナデポを持っている転生者が撫でるために手を近付けたり気持ちの悪い笑顔をしながら近付く事を指す。オレ主の織主は、そんな他の転生者達を必要以上に痛め付けて周りを怖がらせる様な行動を言う。

 

 

で、織主が昼休みにアヤト・ミズサキに踏み台達を倒そうと言ったんだが……アヤトはあっさりとその提案を蹴った。曰く、健康体に薬をぶちこむ様な真似はしないんだと。そういやパトレイバーでも言ってたなそんなこと。

それから、管理局は二次創作では魔力が凄いからとオリ主を入れようとするんだが……アヤトは織主にはっきりと管理局には入れないと言った。なんでも犯罪者だからと言って、事件を起こしてないのに半殺しにしようと言うような危険な奴が、どんな犯人でも出来る限り無傷で捕らえようとする管理局に入れるわけがないということらしい。

まあ、当たり前だよな〜〜。二次創作ではスルーされてたけど、普通なら踏み台転生者とはいえ、再起不能にするというのは軽くて傷害罪、重いと殺人未遂だからな。

二次創作のオリ主が踏み台にやってる事って、読者からすると犯罪なんだよな〜〜……あ、織主の奴が二次創作の事をぶつぶつと呟いた後で「とにかく、なのは達が踏み台達の餌食にならないように注意しないと」と言って屋上から出ていった。

だから、何でお前は原作に関わりあいたく無いのにそんな事をするんだ……

俺は織主の関わりあいたくない詐欺に溜め息を吐きながら、教室に向かって走った。

 

…………

放課後、俺は千里眼で3人組+なのはとユーノを見張っていると、昼休みに織主が危険人物だと認識した切っ掛けをアヤトが話していた。

まあ、情報を共有するのは当然だな。俺も他の傍観系転生者とは連絡を取り合ってるし。

で、隣の組にいるTS転生者百合島レズの名前の話になると男子が4人とも引っ繰り返った。

当然だよなあ……俺も名前を知ったらずっこけたし。

てか、何で俺を含めた転生者の名前はやたらと変な名前ばかりなんだろうな? 本当に不思議だ……

 

あ、なのは達がジュエルシードの発動に気が付いた。

これは第2話のジュエルシードだから、犬が変化した奴が相手になって、なのはが砲撃魔法を初めて使う展開になる……筈だ。

なんせ、俺みたいな傍観系を除いた他の転生者達は、第1話から原作に接触出来なかったせいで凄まじく殺気立ってるから、正直何が起こるかわからねえんだよなぁ……

まあ、俺がやる事はたった一つ。傍観に徹する事だけだ、焦る事ねえか。

 

…………

なのは達がジュエルシードが発動した現場に到達すると、そこにはケルベロスに変貌した犬と仰向けになって気絶した飼い主がいた。

……愛犬が宝石みたいなのをくわえたと思ったら、怪物に変貌したらそりゃ驚いて気絶するか。

で、なのは達がやって来てデバイスを展開しようとしたら……後ろに現れた隣街の踏み台転生者であるフミーダイ・ヒモテが王の財宝を放ちケルベロスをズタボロにした。

 

確か、あいつは転生者とみるやハーレムの邪魔と言わんばかりに特典で叩きのめしてた筈だから、王の財宝をギルガメッシュ(オリジナル)には及ばない点を除けば特典を使いこなしてるんだよなぁ……

ま、オリキャラ3人のお手並み拝見と行くか。

 

…………

「まさか鎧袖一触とは……」

管理局員3人組は、見事な連携でフミーダイの王の財宝をものともせずに俊殺した。

フミーダイもそれなりに強い筈なんだが……特典に胡座をかきすぎてまともに魔法を訓練しなかった事が裏目にでたな。魔法をそれなりに訓練してたらまだ抵抗を出来た筈だ。

で、なのはの方は……ケルベロスの機動力に苦戦していたが、ディバインシューターでケルベロスの行動範囲を狭め、そこにユーノがバインドで雁字搦めにした後で、後になのはの代名詞になる『ディバインバスター』でケルベロスを消し飛ばし、そのままジュエルシードを封印した。

 

「……なんという馬鹿威力」

俺は、なのはの砲撃魔法のトンでも威力に冷や汗をかいた。

 

…………

 

「あ~あ、まさかユーノを含む4人がなのはを離脱させるとは……」

フミーダイの馬鹿が……自分の行動したらどうなるかを確りと確認してから行動しろっての……あいつも自分のやったことで、なのはが戦線離脱するなんて予測もつかなかったんだろうな。

で、フミーダイはというと……目を覚ました後交番の警官達に暴言を吐いて交番を飛び出して家路についたら、漆黒の刀のデバイスを手に持ち、同じく漆黒のバリアジャケットとマントを羽織った中二病の塊のような男に殺されていた。

 

確かあいつの名は……『転生狩人(てんせいハンター)』って名前の典型的な転生者殺しの転生者だった筈だ。

……そういや転生者殺しって、どうして同じ転生者なのに神様に転生者を倒す様に頼まれるうえに、人殺しをするのにあっさりと人殺しに慣れるし……しかもそれを『俺可哀想~~』に利用するしな。

そんでもって神様も神様だ。幾ら転生者で失敗したからって、何で転生者に頼むんだろうな……そいつがしくじった転生者と同じような転生者でない保証ってないのに……まあ、ご都合主義って言えばそれまでか。

 

「……ん? あれは……」

俺が溜め息を吐きながら千里眼を起動させると、そこには前に言ったなのはの隣にいて話しただけで不深山に殺されかけた『鮎川春雄(あゆかわはるお)』が買い物袋を持って歩いていた。

因みに鮎川は不深山に殺されかけたせいで軽い対人恐怖症になり登校を拒否し危うく引きこもりになりそうになったらしいがなのは達や先生、両親の説得でなんとか踏み留まったらしい。

 

「……って、ん? ジュエルシードの反応!?」

俺がサーチャーを鮎川の周辺に張り巡らせると、鮎川の近くで3人程の転生者がジュエルシードの思念体(面倒だから以降はジュエルシードと呼称する)と戦闘をしていた。

……ジュエルシードにボッコボコにされてたけど。

 

「畜生!? 何でたかだかジュエルシードの思念体がこんなに強いんだよ!? 話が違うぞ!?」

「うるせえ! それから射線に入るんじゃねえよ! 撃てねえだろうが!」

「くそ! このままじゃ俺達は物語(げんさく)に入れないうえに織主になのは達を全員持ってかれるぞ!」

あ~……昨日の展開を見てなかった奴等か。既に原作はずれ始めているにも関わらず、原作に入るためにジュエルシードを……? って不味い!? あいつら結界の張り方が甘過ぎだ! あれじゃ中の音が外に漏れて……

 

「? なんだろこの音……?」

ぎゃーす!? 予想通りに鮎川が音に気付いて結界の隙間から中に入っちゃったよこん畜生!

 

「『狙撃(スナイパー)』! ちょっくら頼みたい事が出来た! 一般人がどっかの大馬鹿野郎達が張った結界の中に入っちまった!」

『手伝いたいのはやまやまだが、俺は今織主に追われていて助けにいけないんだ! すまない! それから織主は転生者狩りを再開するつもりらしい!』

そう言って、俺の傍観者仲間である『清光狙撃(せいみつスナイパー)』は通信を切った。

……織主の奴、一時期は鳴りを潜めていた転生者狩りを再開したのかよ。懲りねえ奴だなホントに……って言ってる場合じゃねえ!?

 

「……え? 何、あれ……?」

「ん? おい! 丁度良い囮がいるぜ!」

「ち! 仕方ねえ、あいつに思念体を押し付けて逃げるぞ!」

「くそ! くそ! くそ! 何が最高の第2の人生だよあの糞神め! 『最悪の』の間違いじゃねえのか!?」

そう言って転生者達は悪態を吐きながら逃げ出した。

当然、そこにはジュエルシードと鮎川が残るわけで……

 

「あ……あ……」

鮎川が目の前に現れた化物(ジュエルシード)と逃げ出した人間(てんせいしゃ)を見て、不深山(きょうふ)を思い出したのかぺたりと座り込む。

俺は全速力で現場に駆け付けようとするが、千里眼と最低限の魔法しか覚えてなかったうえに、焦っている為か飛行魔法が普段より遅い!

 

「くそったれが! 間に合わねえ!」

『ガアァァァァァァァァァァ!』

「う……あ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

そしてジュエルシードは悲鳴をあげた鮎川を……

 

「危ない! 『サンダースマッシャー』!」

撥ね飛ばして肉塊に変える前に金色の砲撃に吹き飛ばされた。

まて、サンダースマッシャーって事は……

 

「大丈夫!?」

俺の予想通り金髪をツインテールにしていて赤目の少女……なのはの最高にして最大の友になる『フェイト・テスタロッサ』が鮎川のすぐ側に舞い降りた。

 

「う、うん……」

「良かった……だけど、ここは危険だから早く逃げた方が良い」

「そ、そうしたいのはやまやまだけど……腰が抜けて立てない……」

鮎川は必死に立ち上がろうとしているみたいだが、足が子鹿みたいにガクガク震えているうえに、恐怖で腰が抜けたせいで立てないみたいだな。

 

「そう……『アルフ』、この子を安全な場所まで連れてって」

「あいよ、運び終えたらすぐに援護に向かうからね」

「お、お犬さんが喋った!?」

「犬じゃない! あたしは狼だ!」

「……! 来る!」

ジュエルシードが突っ込んでくると、言われたフェイトの使い魔であるアルフは鮎川の首根っこを噛んで自分の背中に掬い上げると買い物袋を首にかけてそのまま走り出した。

 

……念の為に鮎川をつけるか。

フェイトが圧倒しているジュエルシードの方はサーチャー(録画機能付き)を向かわせ、俺は鮎川とアルフを千里眼で追跡する事にした。

 

…………

 

「ここらで良いかい?」

「う、うん……マンションも近いし……ありがとう、狼さん」

「アルフで良いよ、そんな畏まって言われると耳の裏が痒くなる」

俺の千里眼が2人を見付けると、鮎川がアルフにお礼を言うところだった。

 

「はいこれ、あんたのだろ?」

「あ、ありがとうアルフさん!」

「じゃあ、あたしはあの子の所に行くから」

「あ、あの!」

そう言って鮎川に買い物袋を渡してフェイトの所に行こうとするアルフを鮎川は呼び止める。

 

「なんだい?」

「あ、あの子にも僕が『ありがとう』って言ってたって伝えて下さい……お願いします」

「そんぐらいならお安いご用だよ。じゃあね、もう寄り道するんじゃないよ!」

そう言ってアルフはフェイトの所に走って行った。

 

「……あの子、綺麗だったな」

そう言って鮎川は家路についた。

 

で、フェイトの方は……げ!? 織主!?

 

俺がフェイトの方を千里眼で見ると、そこでは織主とフェイトが対峙していた。

因みに、近くには恐らく今の今まで追い回されていたであろう狙撃が息を潜めていた。

 

「……ジュエルシードを渡して下さい」

「君の物である証拠はないだろう? それにこの街には危険な奴等がいるんだ。そこで提案なんだけど……俺の家で住まないか? 部屋が余ってるしそれにご飯だって……」

……おいおい、原作に関わらない決意は何処に行った。

俺と同じ気持ちなのか、狙撃も呆れた表情で織主を陰から見ていた。

 

「……嫌だ。貴方はさっきの子が襲われた時に陰から覗くだけだった」

「う!? そ、それは……」

「何!?」

俺はフェイトの言葉を聞いて慌ててサーチャーの録画画像を覗くと、魔法で巧妙に隠れてはいるが確かに織主が鮎川の側にいた。

こ、この野郎……! クラスメイトの危機に何をのんびりしてやがった……!

 

「そ、それは鮎川なら大丈夫だと思って……」

「嘘、あの子にリンカーコアはなかったしデバイスも持っていなかった。何の力もないただの子供だったんだ。それを見捨てた貴方を私は信用出来ない」

「……っ! で、でも危険な奴等が……」

「話にならない。アルフ!」

「あいよ! くらいな!」

「え? な、がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

フェイトが命令すると、アルフが織主を後ろから殴り飛ばしノックアウトさせた。

 

「アルフ、ジュエルシードを回収して帰るよ」

「あいよ、昨日もそうだけどどうしてこんな奴みたいな奴らがたくさん言い寄ってくるんだろうねぇ……?」

「知らないし興味ないよ。私はただ母さんの願いを叶えるためにジュエルシードを集めるだけだよ」

「……ま、それもそうか」

そう言ってフェイトとアルフは何処かに行った。

ついでに狙撃も一発織主に蹴りをいれた後、すたこらさっさと逃げていった。

 

「……俺も帰るか」

俺は頭を掻きながら家路についた。

もう少し探索系統以外の魔法も練習しようかなぁ……?

 

…………

 

数日後……

 

「ふぇ、フェイト・テスタロッサです! 今日から宜しくお願いします!」

「(……何がどうしてそうなった!?)」

俺はクラスに転校してきて、顔を真っ赤にして自己紹介するフェイトを見て、またしても椅子ごとずっこけた。(そして鮎川もずっこけた)




如何でしたか? 次回はフェイトが何故転校する事になったかです。
次回もお楽しみに!

それにしても転生者殺し系の転生者ってどうして他の転生者と似たり寄ったりな行動をするんでしょうか……?

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