これは、提督が知ることはないお話。
提督のために行動した、艦娘のワンシーン。

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※注意※

1、これはとある動画シリーズの後付け、もとい蛇足です。
  思いついたけど動画にする時間がないので文章にしました。
  これだけ見ても、なんのこっちゃだと思うので、こちらを見た後に読むことをお勧めします
 
  第1話 → http://www.nicovideo.jp/watch/sm26047530

  第24話(終) → http://www.nicovideo.jp/watch/sm28649681

2、文章力はお察しです。許して




白露型の彼女Ex

 鎮守府本館から外に出て、白露は大きく深呼吸した。

 4月に入り、肌を差すような寒さは消え、春特有の優しい温かさが感じられるようになった。

 太陽は雲に隠れることなく、桜の花びらを温かく照らしている。 

 今までは季節に関係なく深海棲艦と戦っていたため、ゆっくりと春を感じるような余裕はなかった。

 だが、昨年の夏に深海棲艦との戦いに終止符が打たれた。戦いがないと、こんなにも余裕ができるのかと思わずにはいられない。

 それでも潮風はまだ冷たい。夏になれば潮風が心地よくなるのだが……。

 白露は知っていた。

 自分達『艦娘』に、次の夏はやってこないことを。

 

 艦娘は人間ではない。

 そのことを知ったのは、今年の2月。

 時雨・夕立・村雨・涼風の4人とカードゲームの最中で(白露はぼろぼろに負けた)、他の新しいゲームを提案しようとしていたときだった。

 それまでいなかった春雨と五月雨が部屋にやってきて、春雨の口から伝えられた。

 艦娘は人間じゃないことを。

 艤装を解体されると同時に、消えていなくなる存在ことを。

 

 そして、4月には、その艤装を解体されることを。

 

 全国各地の鎮守府を統括している『本部』が決めたそうだ。

 戦いが終わってからもずっと艦娘を居続けさせることは難しい。そこで、艤装やその他装備を解体することになった。

 だがそれは、艦娘がこの世界からいなくなることと同義だった。

 本当なら、これは駆逐艦である彼女たちが知る予定ではなかった。もっと言えば、白露が所属する鎮守府の、全ての駆逐艦娘に伝えられないはずだった。

 偶然に偶然が重なって、白露たちの姉妹は知ることになったのだ。

「白露さーん!」

 白露の名前を呼びながら、朝潮が走り寄る。

「物置にカメラが無かったですよ?」

「へ? この間あそこで見たんだけどな」

「また私を騙しましたね」

「どうしてそうなるのよ……っていうか、春雨のときのも嘘じゃないから!」

「はいはい、分かりましたよ」

 もう一度探してみます、と朝潮はどこかへ行ってしまった。

 朝潮と入れ違うように、妹の時雨がやってくる。

「姉さん、自分で探したほうが早いと思うけど」

「嫌よ、面倒くさい」

 ふん、と胸を張る白露。

「別に威張ることじゃないけどね」

 半眼で姉をにらむ妹。

 艦娘が消えていなくなることを知った白露姉妹は、提督の気持ちを考えた。

 今まで共に過ごしてきた艦娘が消えてしまうのだ。穏やかでいられるはずがない。

 それに、艦娘が消えた後もしばらくは提督としてあるべきことがあるはずだ。手に付かなくなることは目に見えている。

 そこで白露は、残りの数か月で、提督のためにできることをやろうと提案した。 

 3月には鎮守府総出で旅行に行ったり、ミニパーティーを頻繁に開いた。つい昨日にはお花見もした。

 本部の会議から鎮守府に帰ってきた提督の表情は魂が抜けたような顔をしていたが、今は以前のような明るさが戻っている。

 しかし、『今は』である。

 自分たちが消えた後で、また抜け殻のようになってしまわれては、何のために楽しことを企画したのか分からなくなる。

 そこで、鎮守府の面々で写真を撮り、提督室の写真立てに入れて飾ろうということにしたのだ。

 姉妹以外の駆逐艦娘に本当のことを言う訳にもいかないので、「提督にサプライズプレゼントを贈る」と言い訳をしておいた。

 で、肝心のカメラが見つからず、刻々と撮影時間時間が近づいていた。しばらくすれば、鎮守府の正面入り口前に艦娘が集まってくるはずだ。

「こうなったら、街に買いに行こうかな」

「そんな時間、というより、言って帰ってくる間で写真を撮るやる気が残ってる?」

「残らないね」

「じゃあ探すしかない」

「仕方ないか」

 面倒ながらも、白露は自分もカメラを探すことにし、鎮守府内に戻ろうとした。

「ありました! ありましたよ白露さん!」

「でかしたわ、朝潮!」

 カメラと三脚を持って嬉しそうに朝潮が戻ってきた。その後ろを、気だるそうな満潮が歩いて付いて来ている。

「見つけたの、あたしなんだけどね」

「満潮はどこで見つけたんだい?」

 時雨が満潮に尋ねる。

「食堂にあった。あったというより、睦月が使ってた」

「ああ、なるほど」

 納得する時雨。

「もう、朝潮ちゃん、後でカメラ返してよね」

 カメラを取られた睦月がやってくる。それに続くように、他の鎮守府の面々も集まってきた。

「Hey! 誰も提督にleakしてませんネ?」

「当前っぽい!」

「ふふふ。満潮、楽しみだね」

「ちょっと朝潮姉さん、何企んでるの。変なことしないでよ?」

「ちょっと最上、いい加減あたしに寄りかかるのやめなさいよ!」

「だって眠いし。山城が寄りかかりやすい体してるのが悪いよ~」

「鳳翔さん、今日の夕ご飯何にしますか?」

「ん~、村雨ちゃんが食べたいもので良いわよ?」

「料理なら春雨もお手伝いしますね」

「ねぇ、電。他の2人は?」

「響お姉ちゃんも暁お姉ちゃんも寝坊して川内さんが起こしに行ってくれたのです」

「涼風、泣かないでよ?」

「それは多分、五月雨ねぇが一番気を付けておいた方が良いことじゃない?」

「弥生ちゃん、写真の時は笑顔になるぴょんよ?」

「……が、頑張る」

「加賀も今日は笑っといたほうがええんちゃうか?」

「無茶を言わないでください、龍驤」

 

 和気藹々と、楽しい雰囲気が漂っている。

 こうして、みんなで過ごせる時間もあと少しと思うと、白露は寂しくなった。

 出来れば、ずっとこうして皆と笑っていたかったな、と。

 しかし、早く皆をまとめないと提督にばれてしまう。

 白露は、寂しさを消すように、でも大きくなり過ぎない程度に声を張った。

「よーし、じゃあ写真撮るよ! 正面入り口に行こうか!」

 

 時間は止まらない。

 いつか必ず終わりが来る。

 楽しかった時間も、苦しかった時間も。

 何もかも、消えてなくなってしまう。

 でも、彼の心には残すことが出来る。

 私たちは確かに在って、この鎮守府で過ごした時間は間違いなく存在したのだと。

 すべて彼の『想い出』として、色濃く残すことが出来る。

 栗色の髪をした少女は少し鼻をすすり、流れそうになった涙をのみ込む。

 取り合えず、寝坊で遅れてきた二人の頭を叩いておくことにした。

 



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