インフィニット・ストラトス~異世界に降り立つは魔王と呼ばれし精霊~ 作:ガーネイル
待ってくださってる方がいるか分かりませんが……
9.2人の転校生
クラス代表戦で起きた騒動もひと段落して久しぶり落ち着ける日が来たため、エミルは部屋でのんびり過ごしていた。ちなみにエミルが使ってない方のベッドの上では小さくなったフェンリルとシムルグがリラックスしている。なぜ、ベッドの上に居るのかというと先日、大人しくさせたのはいいがずっと閉じ込めておくのもどうかと思い、サイズを小さくして召喚したのだ。サイズ的には子犬、小鳥と変わらない。
「さてと、今日は何を作ろうかな……」
冷蔵庫を漁りながら昼食の献立を考えていると扉がノックされた。エミルは扉を開け、誰が来たか確認する。扉の前にいたのは鈴だった。
「あれ、鈴さん。こんな時間にどうしたの?」
「この前のお礼よ」
「この前?」
エミルは全く何のことか覚えていないようだった。もっともエミルからすると大半のことが条件反射なのでそのせいなのだろう。
「この前、私を慰めてくれたでしょ。そのことよ。後、一夏をかばってくれてありがとう」
「気にしなくていいよ。ただ、少し毒抜きが出来たらなって思っただけだし」
「それでもいいのよ、いいから黙ってお礼を受け取りなさい」
「そう……だね。ありがたく受けるよ」
「よろしい。それじゃあ、少し台所を借りるわよ」
鈴はそう言うと部屋に入って冷蔵庫を漁りだす。その後、献立を決めたのか食材を取り出し調理にかかった。
「見られてるのも落ち着かないからゆっくりしてていいわよ」
「うん、そうするよ。あ……」
調理の音で目を覚ましたのかフェンリルとシムルグがすぐそばまで来ていた。
「あ?」
そう言って鈴がエミルの視線の先に目を向ける。するとそこには、鈴にとって先日見た『変なやつ』がそこにいた。そして、鈴が綺麗な笑顔を浮かべて言う。
「あとで事情を教えてくれる?」
「う、うん」
これはどうやらエミルに拒否権はなさそうだ。エミルは一頭と一羽を連れてベッドの方へ移動する。そして鈴は調理を再開した。
「お待たせ」
鈴が作っていたのは酢豚である。エミルはこの世界の出身ではない為、料理名は分からない。でも、美味しいのであろうというのは分かっていた。早速、箸を手に取り酢豚を一口運ぶ。
「うん。美味しいよ!」
「そう? ありがとう」
そう言って鈴は嬉しそうにふわりと笑みをこぼす。その笑顔に少し朱くなるエミル。ふと微笑んだ鈴の顔は柔らかく、かわいらしいものだった。
食べ終わったエミルは食器を片づけ、元いた場所に腰を掛けなおす。
「で、さっきの説明してもらいましょうか」
一息ついたところで鈴が先ほどとはがらりと変わり、悪い顔をしている。
「そうだね……。今から言うことは全部本当のことだよ。嘘のように感じるかもしないけどね」
鈴はエミルの言葉に首を縦に振り、ゆっくりと頷く。
「まず、僕はここの世界の人間じゃない。まぁ、そもそも人じゃないんだけどね。それで、僕がいる世界では魔物と言われている生き物が存在している。で、先日暴れていて、今ここで大人しくしてるのがサイズこそ小さくしたけどその魔物で、鳥の方がシムルグで今、犬みたいな感じになってるのがフェンリル。それでその魔物を管理、統括しながら魔界の扉を守護してるのがラタトスクって言う精霊。で、そのラタトスクっていうのが僕」
「は? え? えっ??」
エミルの言ったことに混乱しきっている鈴。それもそうだろう。目の前にいる男がこの世界の人間ではない上に、人の形をしているのにそもそも人間じゃない。そしてなにより目の前に男は自分が精霊と言っている。さらにはすぐそばで大人しくしてるのが動物ではない。
「えっと、つまり何? 簡単に言うとあんたは人間じゃなくて、そこにいるのはただの動物じゃない。っていうこと?」
「まぁ、ざっくり言い過ぎだけどそういうこと」
「信じられない部分の方が多いけど、まぁあんたは嘘をいうような感じはなさそうだし、何より、目の前にその魔物っていうのがいるわけだし信じるしかないわね。そういえば、このことを知っている人は?」
「魔物の話まではしてないけど千冬さんが唯一このことを知ってる。それ以外は知らないよ。だから、ここまで話したのは鈴さんが初めてだよ」
「そうなんだ。……そ、そろそろ部屋に戻るわ。また今度、その子と遊ばせてね」
「うん、分かったよ。いつでも来てね」
鈴が部屋を出て行くとエミルは鈴が見えなくなるまで手を振っていた。
翌日の朝
今日もまた真耶が朝礼を始める。すると、普通では考えられないことを宣う。
「今日は転校生が二人います」
「「「「「えーーーーーーー!!!!」」」」」」
クラスが絶叫の渦に包み込まれる。それもそうだろう。何せ、一日でしかも同じクラスに二人の転校生が来るとはいったい何事だろうか。そもそも転校生が同日に一つのクラスに来ること自体おかしい。驚くのは当然のことだ。
「それでは。入ってきてください」
扉を開けて転入生が入る。入ってくるのはいいのだが、
「それでは、自己紹介をお願いします」
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いと思いますが、みなさんよろしくお願いします」
そのうちの一人、シャルルと名乗った者が男性だったのだから。
シャルルがにこやかな笑顔を浮かべている一方、クラス全員は何一つ反応できないでいた。
「お、男?」
誰かがそう口にする。
「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を」
人懐っこそうな顔に礼儀正しい振る舞いと中性的な整った顔立ち。そして濃い金髪を首の後ろで丁寧に束ねている。その印象はまさに貴公子だった。
「きゃ……」
誰かがそういうとエミルは咄嗟に耳を塞いだ。学校初日にも発生した大音量の喜声が響き渡る。そんな雰囲気を察知したのだろう。なお、一夏はぽけーっとしている。
「「「「「「きゃあーーーーーーーーーーーー!!!!」」」」」」」
ついに歓喜の叫び声が発せられた。
「男子よ! しかも三人目」
「しかも私たちのクラス!」
「美形な上に、守ってあげたくなる系!」
「地球に生まれてよかったー! お母さんありがとう!」
「一夏君と並んで黒髪と金髪で絵になりそうだけど、エミル君とも並んで金髪同士でも絵になりそう!」
「一シャル? それともエミシャルかな? 私の創作意欲が刺激される!!」
とりあえず、一番最後の怪しいのは放っておくとしよう。一組の女子陣は朝からテンションゲージが振りきれている。
「えっと、まだ一人いるんですが……」
そう転校生はもう一人いるのだ。小柄な体形に輝くような銀髪を腰近くまで下ろしている。醸し出されている雰囲気は軍人。全身からは冷たく鋭いオーラのようなものが放たれている。まさにそれは研ぎ澄まされたナイフのようにも感じる。
なお、その少女はクラスの女子など眼中になく、完全に見下している。
「……挨拶をしろ、ラウラ」
「はい、教官」
二つ返事で頷くラウラと呼ばれる少女。なお、千冬はその反応に面倒くさそうな表情をしていた。
「ここではそう呼ぶな。もう私は教官ではないし、ここではお前も一般の生徒だ。私のことは織斑先生と呼べ」
「了解しました。……ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「…………」
「あ、あの以上でしょうか?」
「以上だ」
何とも言えない空気にいたたまれなくなった真耶が出来る限り笑顔でそう聞くが、ラウラの返事はまるで刃物のように鋭いものだった。真耶が若干涙目になっている。その時に一夏とラウラの目が合う。
「! 貴様が!!」
そう言って一夏の元へ歩み寄る。
バシン!!!
何も言わず無言で一夏を平手打ちを喰らわせた。そして口を開く。
「私は認めない。貴様があの人の弟であるなどと、認めるものか」
「いきなり何しやがる!」
「ふん……」
一夏のもとから離れていくラウラ。だが、一人それに対して口を開く。
「初対面のやつに向かって平手打ちとはずいぶんと常識のないやつなんだな」
それは燃える火のように赤い色の瞳をしたエミル、つまりラタトスクだった。
「何だと……」
振り返り、苛立ちを見せるラウラ。それに対してさらに煽るように口を開くラタトスク。
「ふん、事実だろ。それとも何だ? お前の国は初対面の相手に平手打ちするのが挨拶か? 随分と面白い場所だな」
「貴様、それ以上私と祖国を侮辱してみろ、二度とそんな生意気な口を叩けないようにしてやる」
まさに売り言葉に買い言葉。それでもラタトスクは続ける。
「俺はお前がやったことに対していっているだけだ。事実を言って何が悪い。生意気な口を叩けないようにしてやるだと? 本当に面白いことを言うんだな。お前みたいな小娘風情が何人にかかって来てもお前じゃ俺には勝てねぇよ。出直して来い」
「そこまでだ。馬鹿者。……これでHRを終わる。各人はすぐに着替えて第二グランドに集合。今日は二組と合同でISの模擬戦を行う。解散!」
こうして朝のHRはようやく終わりを迎えた。
今回はここまでです。
もう一つ言えばもう一つの作品の二話目も投稿してます。
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