インフィニット・ストラトス~異世界に降り立つは魔王と呼ばれし精霊~ 作:ガーネイル
今回はいつもよりほんの少し長めだと思います
13.学年別トーナメント!?
エミルは千冬を呼んでもらい、イオンとネロ……
千冬との話もひと段落し解放された後、エミルが寧とウルゥリィヤに校内の案内をしている。途中で騒がしくなりだす。騒いでいる内容は第三アリーナで代表候補生が模擬選を行っているということだった。
一度案内を切り上げ、模擬選を見に行くことにする。すると、悲鳴があがる。フィールドの方をみると砂が俟っている。晴れると、セシリアと鈴がタッグでラウラと戦っているところだった。近くに一夏とシャルル、箒の三人を見つけ、合流する。フィールド内では鈴がラウラに龍砲を放つが意味をなさなかった。
「AICだ」
「そうか、あれを装備していたから龍砲を避けようともしなかったんだ」
「AIC? って何?」
寧が疑問の声を上げる。シャルルがそれに答える。
「あの黒いIS、シュヴァルツア・レーゲンの第三世代型兵器なんだよ。正式名称はアクティブ・イナーシャル・キャンセラー。別名は慣性停止能力」
「へぇ」
それを聞いた時の寧の顔は輝いていた。どうやら興味をそそられた様だ。一方、一夏はあまり気のない返事をする。箒がどれだけのことか分かっているのか確認する。
「今見た。それで十分だ」
そんな話をしている間も戦闘は続いていく。そしてシュヴァルツア・レーゲンからワイヤーのようなものが五本射出され、鈴が操る甲龍の元へ飛んでいき、足を捕える。その瞬間ブルーティアーズがピットとミサイルを使い、ラウラを攻撃するが届かない。そしてワイヤーが奔る。セシリアと鈴が衝突し、地面に叩き落とされる。ラウラが接近し、龍砲を使おうとするが破壊される。タイミングを計りセシリアがミサイルを放ち、その場から離脱する。煙が晴れる。そこに現れたラウラは先ほどと何も変わらず無傷のままだった。そして再びワイヤーが射出され次はセシリアと鈴の首を捕える。首が締まり動けない二人をラウラが痛めつける。そして二人のISが次々と破損していく。目の前で繰り広げられるのは一方的な攻撃。それを黙って見ていられるほど薄情でもない。
「一夏!」
「おう!」
一夏とエミルはISを装備し、一夏の雪片でアリーナの壁を破壊し、侵入する。
「シャルルは寧とウルゥリィヤをお願い」
「うん! 任せて」
エミルはシャルルに一言お願いした後、先に行った一夏を追いかける。
「その手を放せ!」
一夏が先行してラウラに攻撃を入れる。がAICによりそれは止められる。そのとき、鈴とセシリアのISが強制解除され地面に倒れる。
シュヴァルツア・レーゲンのレールガンの銃口が一夏に向く。
「やらせないよ!」
エミルがチャクラムを投擲し、攻撃を阻止する。そのままセシリアと鈴の元へ向かう。
「ごめん。しっかり捕まってて」
エミルが二人を抱きかかえ、ラウラから距離をとる。
ラウラが一夏の攻撃を避けエミルの方へレールガンを放つ。エミルはそれを瞬時加速を用いて回避する。そしてアリーナの壁際に下ろす。
「二人とも大丈夫?」
「エミル?」
「無様な姿をお見せしましたわね」
「ううん。二人が無事でよかった。…………すぐ戻る。だから、そこで待ってろ」
IS学園でラタトスクが
「気を付けてくださいまし」
「分かってる」
ラタトスクが向かう時には一夏の不利に見かねたのかシャルルが助太刀に入っていた。
ラタトスクは
「動けないやつを痛めつけるとはドイツの軍人とやらは暴力が趣味ならしい」
「違うな。これこそ、弱者を
「はっ。そんなものが力だと思っているなら底が知れているな。前にも言ったがもう一度言うぞ。一から出直して来い」
「何だと?」
「聞こえなかったか? そんなものは力でも何でもないと言っている。お前がやっているものはただの弱い者いじめで見せかけの力でしかない。それが分からないなら国に帰れと言っている。もっともお前の国もたかが知れていそうだな」
「貴様! また祖国を、ドイツを馬鹿にしたな!」
「だからどうした? 悔しいなら俺を倒してみろよ。ま、出来るならだけどな」
「その減らず口、二度と叩けないようにしてやる!」
そう言ってラウラがブレードを出し、攻撃に出ようとした時、何かがそれを止める。
「やれやれ、だからガキの相手は疲れるんだ。それとキャスタニエも煽りすぎだ」
「教官!」
「ふんっ」
その何かは千冬だった。千冬がISを部分展開で刀だけを展開し競り合っている。それだけの状態でラウラの攻撃を止めたのだ。
「模擬戦をやるのは構わん。だが、アリーナのバリアーを破壊する事態になられては教師として黙認しかねる。……この戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」
「教官がそうおっしゃるなら」
ラウラはそう言ってISを解除し、アリーナから出ていく。
「織斑、デュノア、キャスタニエ。お前たちもそれでいいな?」
「「ああ」」
「教師には、はいと答えろ。馬鹿者」
「は、はい」
「……はい」
一夏は額に汗を流しながら、ラタトスクはものすごく不満気に返事をする。
「僕もそれで構いません」
シャルルの発言を聞き入れた後に千冬が学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止してその場は解散となった。
夕方。エミル、シャルル、一夏は鈴とセシリアの様子を見に行っていた。寧とウルゥリィヤは真耶の元で勉強している。
「別に助けてくれなくてもよかったのに」
「あのままやっていれば勝ってましたわ」
「お前らなぁ」
「そういうことにしておくよ」
シャルルが二人の元にお茶を運ぶ。
「二人とも無理しちゃって」
「無理って?」
何のことか分からない一夏が首を傾げる。エミルは頷いているがきっと意味は違うだろう。
「二人とも、好きな人の前で格好悪いところ見せたから恥ずかしいんだよね?」
その声は二人の元には届かない。
「ん?」
一夏が一歩踏み出すと鈴が慌てだす。
「な、なな、な、何を言っているのか全然分からないわね!」
「べ、べ、別にわたくし、無理なんてしてませんわ!」
鈴とセシリアはそう言うが顔が明後日を向いていて怪しい。
「そんなことより何で二人はボ―デヴィッヒさんと戦ってたの?」
エミルが相手の急所に直球を投げ込む。
「「げほっげほっ」」
二人が同時にむせる。
「いや。それは……」
「ま、まぁ。それは何というか、女のプライドを侮辱されたからですわね」
「あ、もしかして一夏かエミルのこと――」
何か言いかけたシャルルを二人が取り押さえる。
「アンタって本当に一言多いわね!」
「そ、そうですわ! 全くです!」
「まぁまぁ、落ち着きなよ。二人とも怪我したばかりなのに動きすぎだよ。少しは大人しくしないと」
そう言ってエミルがセシリアと鈴の肩に手を置く。そして、二人が声にならない悲鳴を上げ蹲る。
「ご、ごめん。でも、そんなに痛いならやっぱり大人しくしてた方がいいよ」
エミルにそう宥められセシリアが自分のベッドに戻った時、保健室の棚にある薬品がカタカタと揺れだす。そして、保健室の扉が開き、大量の女子生徒が入室してきて、エミルと一夏、シャルルが囲まれる。
「な、なんなんだ?」
「どうしたの? 皆」
「「「「「「これ!!!!」」」」」」
そう言って女生徒たちが三人に突き出したのは学年別トーナメントの申し込み要項。それを手に取り読み上げる。
「えっと……なにこれ」
「今月開催される学年別トーナメントではより実践的な模擬戦闘を行うため、二人組での参加を必須とする。」
「なお、ペアができなかった者は抽選で選ばれたもの同士が組むこととする。締切は……」
「とにかく、私と組もっ、織斑君」
「私と組んで、デュノア君」
「私と組もうよ、エミル君」
女生徒に押し寄せられ、タジタジな男子生徒三人。もっとも一人は男装だが……。
「ご、ごめん。僕はシャルルと組むから。……一夏、後は頼んだよ」
「えっ!?」
一夏の視界に入るのは空腹時に獲物を見つけた肉食獣の如き目をしていて数えるのも馬鹿らしいほどたくさんの女生徒。そして徐々に追い詰められていく一夏が取れるたった一つの行動。それは――。
「三十六計逃げるに如かず!」
戦略的撤退である。
「あ、逃げた!」
「待って、織斑君!」
「者ども、奴を捕らえろ!」
来た道を戻り、一夏を捕らえんとするために走り去っていく女生徒たち。
「一夏……君のことは忘れないから」
「いやいやいや、あいつまだ死んでないから。っていうか、あんたも優しそうな顔して結構えげつないことするわね」
「遅かれ早かれ、こうなるかもしれんかったんだし。気にしたら負けだよ」
そんなことを笑顔で言い切るエミル。何というか、エミルも図太くなったものだ。精神面といい色々と……。
「それもそうですわね。そんなことよりエミルさん。私と組んでくださいませんか?」
「私と組みなさい! 何回か一緒にご飯を食べた仲じゃない!」
その場がエキサイトしそうになった時。
「ダメですよ」
誰かが止めに入った。その場にいる全員が声をした方を見ると真耶がいた。
「お二人のISはダメージレベルCを超えています。トーナメント参加は許可できません」
「そんな! 私、十分に戦えます」
「わたくしも納得出来ませんわ!」
もっとも二人が引き下がらない理由としては優勝したら一夏、エミル、シャルルいずれかと付き合えるという噂のせいでもあるのだろう。もっとも男子勢はそれを知り得てはいない。なぜならその取り決めは女子の中だけなのだから。
「ダメなものはダメです。当分は修復に専念しないと後々重大な欠陥が生じますよ」
そう言われては黙るしかないセシリアと鈴。二人は顔を見合わせ頷き、エミルとシャルルを見据える。
「いい? あんたたち、絶対に優勝しなさいよ」
「わたくしたちの分まで頑張ってくださいな、心から応援いたしますわ」
本音はおそらく想い人を取られたくないという一心だけだろう。
「うん、任せてよ」
「ありがとう。二人の気持ちに応えられるよう頑張るよ」
それに対し善意として解釈する二人。
「ふふっ。美しい友情ですね」
真耶も善意で受け取る。それから数時間後にその場は解散となった。
もう空には月が昇っている時間。エミルとシャルルは一緒に歩いていた。
「ありがとうね、エミル」
「え?」
「ほら、トーナメントのペアを言い出してくれたよね? 僕、すごい嬉しかったんだ」
「他の人にバレたら後が大変だしね」
「エミルは優しいね」
「僕は当たり前のことをしただけだよ。だから気にしないで」
二人の間に何やらいい雰囲気が流れ出す。
「あ、エミルだ!」
「本当だ」
が、そこでエミルを呼ぶ者がいた。
「あれ、寧とウルウリィヤ? どうかしたの?」
「エミル。私のことはネロでいいわ」
「分かったよ。それでどうしたの?」
「さっきまで山田先生のところでISの勉強をしてたんだよ」
「イオナサルはとても楽しそうだった」
「そっか。それじゃあ、寧たちも帰りなんだね。それじゃあ、一緒にご飯でも食べない?」
「いいの!? エミルが作るご飯はおいしいからぜひ!」
「イオナサルが行くなら私も行こうかしら」
エミルとシャルルは部屋ないし、料理の準備をするために先に帰る。寧とネロは後から来るということになった。
エミルは調理を開始し、シャルルは現在シャワーを浴びている。なぜ、こうなったかというと寧とネロが来る前に着替えを済ませるついでにシャワーを浴びたらどうかとエミルがシャルルに進言したからである。
結果として二人が来る数分前にシャルルがシャワーから出てきた。料理ができたのは二人がついてからさらに数分後である。
四人で楽しく食事を終えた後、少し話をして解散となった。
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エミルが眠りに着いた頃、シャルルはまだ起きていた。エミルが寝ているベッドへと歩み寄る。シャルルはエミルの顔を覗き込んでから頬に一つキスを落とす。
「お休み、エミル」
そのキスの真意はシャルルしか知らない。
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そして、数日後。学年別トーナメント当日がやってきた。
以上です。もしよろしければSSシリーズのほうもお願いします